1234
大江千里
1988-07-21

【収録曲】 
全曲作詞作曲 大江千里 
全曲編曲        大村雅朗 
プロデュース 大江千里

1.GLORY DAYS ★★★★★
2.平凡 ★★★★☆
3.ROLLING BOYS IN TOWN ★★★★★
4.Rain ★★★★★
5.ハワイへ行きたい ★★★☆☆
6.サヴォタージュ ★★★★★
7.帰郷 ★★★☆☆
8.昼グリル ★★★★☆
9.消えゆく想い ★★★★★
10.ジェシオ'S BAR ★★★★☆

1988年7月21日発売
EPIC/SONY RECORDS
最高位6位 売上10.8万枚

大江千里の7thアルバム。先行シングル「GLORY DAYS」を収録。近年槇原敬之や秦基博によってカバーされ、再評価されている「Rain」が収録されている。アレンジは前作、前々作と同じく全曲を大村雅朗が担当した。

内容としては、内省的な歌詞が目立つアルバムといえる。前作が無邪気なまでの明るさが際立つ作品だったが、前作の流れを継いだ曲は「ハワイへ行きたい」くらいである。今作がリリースされた1988年というとバブルの全盛期と言っても良い時期ではあるが、バブルに浮かれる人々を冷ややかに見ているような雰囲気を感じさせる曲がある。

1989年の第三回日本ゴールドディスク大賞で「ALBUM OF THE YEAR」賞を男性ソロポップス部門で受賞した。今作が大江千里にとって最後の、レコードでも発売されたアルバムとなった。 

「1234」というタイトルについては「魂がロックンロールしていること。自分の歩幅で歩けるテンポを大切にしていること。静かなデモクラシーがあること。せつないくらいユーモアがあること。それが僕なりの"1234"」と語っている。今作では「今の自分にしか書けない、自分と同じ年代の歌」に拘ったという。


「GLORY DAYS」は先行シングル曲。大江千里屈指の人気曲。1991年に大江自身のラジオ番組で人気投票を行ったところ、この曲が1位になった。ベスト盤にもよく収録される、定番の曲とも言える存在。大江千里の楽曲の中では 異質な程にストレートな歌詞が印象的。「きみと出逢えてよかった 愛だけが いま力になる」というサビの歌詞と開放感溢れるメロディーが印象的。作詞には苦戦したようだ。サビ頭の歌詞は当初「きみと出逢うレボリューション 愛だけがいま力になる」で、ミックスダウン手前までこの歌詞だったという。大江自身はこの曲について「手あかにまみれて、消しゴムの粉や鉛筆の書き込みがいっぱいある汚れたノートのような曲」と語っている。 先行シングルになったのも違和感が無いほどの良質なポップス。


「平凡」は乾いたサウンドが印象的な曲。どこか殺伐とした雰囲気漂う曲である。無駄な所を削りに削ったような難解な歌詞が並んでいる。映画のワンシーンのような歌詞が印象的。「平凡」というタイトルではあるが情熱も感じさせる。曲調は暗く、歌詞も難解なのだが不思議と引き込まれる。


「ROLLING BOYS IN TOWN 」は情景描写が冴え渡るアップテンポの曲。タイトルも歌詞の意味もよくわからないが、個人的には街の至る所でイチャつくカップルを描いた曲だと思っている。「かなわない夢だけをこれ以上あきらめたくないから」というフレーズが印象的。ちなみに、この曲のコーラスにはデーモン閣下が参加されている。何とも不思議なコラボである。


「Rain」は近年再評価されている曲。大江千里屈指の名バラードである。槇原敬之や秦基博にカバーされたことによって知名度が上がり、新たな大江千里の代表曲となりつつある。特に秦基博バージョンは新海誠のアニメ映画『言の葉の庭』の主題歌に起用されたことで若い層へのアプローチにも成功した。雨の降る街を舞台にし、別れゆくカップルを切なさ全開で描いた曲。大江千里らしい文学的で繊細な歌詞が展開されている。全ての歌詞を紹介したいくらい素晴らしいのだが、特に「別々に暮らす 泣きだしそうな空を にぎりしめる強さは今はもうない 変わらずいる心のすみだけで傷つくようなきみならもういらない」という2番の歌詞が好き。余談だが、 この曲は当初シングル候補だったという。「GLORY DAYS」と迷った末にそちらの方になったようだ。


「ハワイへ行きたい」は前作の雰囲気を引き継いだような曲。無邪気な程に明るさを感じさせる。この曲も作詞に苦労したという。大江自ら「アップテンポな曲は苦手」と言い切っているほど。歌詞は単純に「ハワイに行きたい」という願いが語られているもの。大江千里本人としては反戦歌的なメッセージも込めているという。明るさが災いしてか、アルバム内ではかなり浮いた曲のように思える。


「サヴォタージュ」はピアノロック的な曲。上京したものの、上手くいかない日々を過ごす男の日常と、秘められた情熱を歌った曲。「かかえきれない夢も変わらず この夜を抱きしめ続けてる」という歌詞が印象的。上京された方ならこの曲の世界観がよく分かるかもしれない。聴いていると不思議と熱い気持ちになれる。どこにも奮い立たせるような部分は無いのだが。


「帰郷」はピアノの弾き語りがメインになった曲。歌詞はドイツ人のマチアス・ルストが1987年にモスクワの赤の広場にセスナで着陸した事件を取り上げている。社会派としての大江千里の姿を感じさせる曲。「いつかは帰ろう 自分の生まれた町へ 思い出の場所に きみを話しに帰ろう」という歌詞が印象的。


「昼グリル」は楽しげな曲調が心地良い曲。何となくキューピー3分クッキングのあの曲のようである。歌詞は昼間から集まって井戸端会議をする主婦たちを皮肉ったもの。
「やさしそうなふりをして キズつけている なくしそうなふりをして もらいすぎてる 聞きそびれたふりをして 聞きすぎている」 

「苦しそうなふりをして 苦しめている 飲みすぎたふりをして 飲ませすぎてる ふられそうなふりをして ふりすぎてる」
一番と二番のサビより。人間の真理を突いたような歌詞は身につまされる。


「消えゆく想い」は大江千里王道のピアノバラード。「悲しみはいつも別々が背負う 大事な夢もかわりになれない」という一番のサビ頭の歌詞が印象的。カバーされたり、何かで紹介されたりするような機会があれば「Rain」くらいの評価は得られると思うのだが… 
余談だが、この曲は当時大江が住んでいた築50年の日本家屋で幽霊が出た時に作られた曲だという。大江千里は不動産マニアとしても知られており、引越しを何度も繰り返している。


「ジェシオ'S BAR」は大江には珍しいロックテイストの曲。タイトルの「ジェシオ」は元力士の高見山がもとになっている。コーラスには渡辺美里が参加している。仕事に追われる日々を過ごす男を描いた歌詞が印象的。この曲の最後に「1、2、3、4!」の掛け声がある。それ がアルバムの最後を告げる。この掛け声は普通なら一曲目の最初が相応しいと思うのだが…最後にあるからこそ、このアルバムの持つ 独特な中毒性に繋がっているのかもしれない。


ヒット作ではないが中古屋ではそこそこ見かける。今作までの作品はリマスター盤が出ているが、今作以降は出ていない。音質が今作の難点か。BOXセットではリマスター盤があるが、高価なのでオススメはできない。 


内省的な内容の目立つアルバムではあるが、何故か聴きやすいのが特徴。ベストの次の最初に聴くオリジナルアルバムとしては最適。ファン人気も高いアルバム。聴けば聴くほど新たな魅力に気付ける名盤だ。管理人は今作が大江千里の最高傑作だと思っている。  

★★★★★