【収録曲】
DISC1
全曲作詞作曲 岸田繁

1.東京 ★★★★★
2.虹 ★★★★★
3.青い空 ★★★★★
4.街 ★★★★☆
5.春風(Alternative) ★★★★★
6.ワンダーフォーゲル ★★★★★
7.ばらの花 ★★★★★+2
8.リバー ★★★★☆
9.ワールズエンド・スーパーノヴァ ★★★★★
10.男の子と女の子 ★★★★★
11.HOW TO GO ★★★★★

DISC2
全曲作詞作曲 岸田繁
7.作詞 RYO-Z,ILMARI,PES and SU 

1.ハイウェイ(LA mix) ★★★★★
2.ロックンロール ★★★★★
3.BIRTHDAY ★★★★☆
4.Superstar ★★★★☆
5.赤い電車 ★★★★★
6.BABY I LOVE YOU ★★★★★
7.Juice(くるりとリップスライム) ★★☆☆☆
8.五月の海 ★★★★☆
9.JUBILEE ★★★★★
10.言葉はさんかく こころは四角 (Single Ver.)  ★★★★★
11.さよならリグレット ★★★★☆
12.三日月 ★★★★☆
13.愉快なピーナッツ ★★★★☆

DISC3
全曲作詞作曲 岸田繁
1.作詞 岸田繁、佐藤征史、松任谷由実
4.作詞 石巻のみなさん 補作詞 岸田繁
6.作詞 くるり
13.作詞 鍬本良太郎、丸山もゝ子

1.シャツを洗えば(くるりとユーミン) ★★★★★
2.魔法のじゅうたん ★★★★☆
3.奇跡 ★★★★★
4.石巻復興節 ★★★★☆
5.my sunrise ★★★★☆
6.everybody feels the same ★★★★★
7.Remember me ★★★★★
8.ロックンロール・ハネムーン ★★★★★
9.最後のメリークリスマス ★★★★☆
10.Liberty & Gravity ★★★★★+1
11.There is (always light) ★★★★★
12.ふたつの世界 ★★★★★
13.かんがえがあるカンガルー ★★★☆☆
14.琥珀色の街、上海蟹の朝 ★★★★★

プロデュース くるり
2016年9月14日発売
SPEEDSTAR RECORDS
最高位 売上

くるりの5thベスト。くるりのデビュー20周年記念でのリリースとなった。初回盤はスリーブケース入りのデジパック仕様で84ページのブックレット付属。

今作のタイトルは、1996年2月にくるりが初めて世に発表した自主制作カセット「くるりの1回転」に由来する。

これまでの配信限定シングルを含むシングル曲と入手困難だった「五月の海」「石巻復興節」を合わせた38曲を収録。全曲小鐡徹によるリマスターがされている。小鐡徹は「日本のマスタリングの父」と称されるマスタリング業界のレジェンド的存在である。非常に数多くの作品に関わってきた方だが、管理人の中ではスピッツの「RECYCLE」のリマスターを行った方というイメージがある。今聴いても音質がかなり良いように思う。

今作のキャッチコピーは「今さら人に聞けないくるり」というもの。くすりと笑えるキャッチコピーだが、確かに的を射ている。くるりというバンドの名前は知っていても、どのような楽曲があるかは意外と知られていないものである。くるりというと、チオビタドリンクのCMソングを長らく担当していたイメージがある。とは言ってもCMを見て、どのような曲が使われていたのかかろうじて思い出せるくらいの知名度だろう。大きなヒット曲もある訳ではない。

楽曲の感想は今作がアルバム初収録となる曲、くるり名義でのアルバム初収録となる曲のみにさせていただく。


「ハイウェイ(LA mix)」は「ハイウェイ」の未発表バージョン。タイトル通りロサンゼルスでミックスしたもの。お蔵入りになっていたバージョン。曲の長さはシングルバージョンが4分20秒なのに対し、4分22秒。聴き比べてみると、バンドサウンドの入りが若干遅い。シングルバージョンよりもアコギの音が少なく聴こえる。元のバージョンをよく聴いた状態で聴き比べないと違いが分かりにくいと思われる。


「Juice(くるりとリップスライム)」はくるりにとって初のコラボシングル。「タッグソングス」というスピードスターレコードのコンピレーションアルバムには収録されていたが、くるり名義でのアルバムでは未収録だった。くるりの演奏にリップスライムのラップが乗っていくという曲。コラボした意味があったのだろうかと疑問が生じる。聴いているとくるりの要素が殆ど見つからない。今まで未収録だったのも頷ける。リップスライムの曲と割り切って聴いた方が良い。


「五月の海」は「みやこ音楽」というコンピレーションアルバムに収録されていた曲。くるりのアルバムには初収録となる。アコギが前面に出たポップで爽やかな曲。歌詞は優しい雰囲気のラブソングになっている。「毛布にくるまって 眠れないまま 地図の青いいろ 潮風あおいいろ」という歌詞が印象的。夏の海ではなく、五月の海を描いているのがくるりらしい。日の目を見て良かったと思える曲。


「石巻復興節」は復興支援として作られたシングル。2011年10月に放送されたテレビ番組の企画で石川さゆりから依頼を受けて制作された。石巻に住む方々からの熱いリクエストの結果制作され、CD化されることとなった。収益は石巻市の復興のために寄付された。石巻市民の言葉を聴いて作っていったため、作詞は"石巻のみなさん"とクレジットされている。演奏ではくるりと共に東北ツアーを行った細野晴臣が参加した。温かみに溢れた曲になっている。タイトル通り民謡テイストの になっている。歌詞は「やっぺす」「おだづなよ」といった現地の方言も使われている。「やっぺす」は「一緒にやりましょう」というような意味があるようだ。「生かされている喜びを 笑顔に変えてこんにちは 心が広がり友の手を とれば幸せ ここにあり」という歌詞が印象的。震災復興という背景を除いて聴いても良いと思えるような曲。


「ふたつの世界」はアルバム初収録となる曲。NHKEテレのアニメ『境界のRINNE』のエンディングテーマに起用された。ポップなラブソングになっている。タイアップ相手のアニメ(漫画)に合わせた内容の歌詞。現世と死界を行き来するのが特徴的な作品だが、それを「ふたつの世界」となぞらえている。「もつれた赤い糸ほどいても 変わらない世界 例え遠く離れてても 胸の中でずっと 忘れないで 生まれ変わる時が来ても 心がちょっと近付いても」という歌詞が印象的。


「かんがえがあるカンガルー」はアルバム初収録となる曲。NHKの『みんなのうた』の2月、3月の楽曲として放送された。作詞はデザイナーやCMプランナーとして活動するユニットm&kの鍬本良太郎、丸山もゝ子が担当した。m&kの著名な仕事は、飲み物のキャラクター「Qoo」や花王の商品のキャラクター「ビオレママ」、東京スカイツリーのキャラクター「ソラカラちゃん」等がある。『みんなのうた』というだけあって子供向けの内容。「カンガルーがいる かんがえがある」と繰り返し歌っているが、異様に耳に残る。聴いていると眠くなってしまうような優しさがある。


「琥珀色の街、上海蟹の朝」は現時点の最新シングル。シングルは"EP"と銘打ってリリースされた。リリース前からライブで演奏されており、その頃から「上海蟹」という呼び名があったようだ。兵庫出身の女性シンガー、UCARY &THE VALENTINEがコーラスで参加した。とても可愛らしい歌声で、この曲を彩っている。ヒップホップとも、シティポップとも取れるような不思議なサウンド。浮遊感があるものの、アーバンな雰囲気が漂っている。最早くるりを相手にジャンルについて語るのは無駄なように思えてくる。ボーカルはほぼラップ調。曲中には中国の雑踏を想起させるようなSEが入っている。「上海蟹食べたい あなたと食べたいよ」というサビのフレーズが異様なまでに耳に残る。20年活動してきたくるりが、さらに新しい境地を開いてみせた。すごいぞ、くるり。やばいぞ、くるり。


ほぼ全てシングル曲なので聴きやすさは抜群。しかし、ベスト盤だと2006年リリースの「ベスト オブ くるり / TOWER OF MUSIC LOVER」もかなり優れている。役割が被っているような印象が否めないが、2006年以降の楽曲も押さえられるので今から聴くならこちらの方がおすすめ。各DISC共に収録時間がかなり余っているので、アルバム曲を少しくらい入れても良かったように思う。特に2007年リリースのアルバム「ワルツを踊れ」収録の「ブレーメン」や2014年リリースのアルバム「THE PIER」収録の「loveless」は入れて欲しかった。シングルばりの名曲だと思う。
しかし、くるりの美味しい部分を楽しむなら今作のようなシングル集が良いのかもしれない。くるりのアルバムを聴いていると、わざとなのかは分からないが必ず実験的な曲、悪く言えば捨て曲が存在する。それに反して、シングルではかなり力を入れてくる。それが前述した"くるりの美味しい部分"である。岸田繁も「聞き流すだけでくるりが分かる」という旨の発言をしているので、 入門にはおすすめ。むしろ熱心なファンにはおすすめできないかもしれない。

★★★★★