CHAGE&ASKA
2001-06-20


【収録曲】
1.2.3.5.8.11.12.作詞作曲 飛鳥涼
6.作詞 飛鳥涼 6.作曲 CHAGE&ASKA
4.7.9.作詞作曲 CHAGE
10.作詞 青木せい子 作曲 CHAGE
1.2.3.7.8.10.編曲 十川知司
4.編曲 村上啓介
5.9.11.編曲 澤近泰輔
6.編曲 飛鳥涼・澤近泰輔
12.編曲 佐藤準
プロデュース CHAGE&ASKA 山里剛

1.僕はこの瞳で嘘をつく ★★★★☆

2.SAY YES ★★★★★
3.クルミを割れた日 ★★★★☆
4.CAT WALK ★★☆☆☆
5.夜のうちに ★★★☆☆
6.MOZART VIRUS DAY ★★★★☆
7.誰かさん~CLOSE YOUR EYES~ ★★★☆☆
8.明け方の君 ​★★★★★
9.CATCH & RELEASE ​★★★☆☆
10.BAD NEWS GOOD NEWS ​★★★★☆
11.BIG TREE ★★★★★

12.tomorrow ★★★★★


1991年10月10日発売
1993年12月17日発売(APO-CD)
1998年3月11日再発
2001年6月20日再発(現行盤)
2009年10月21日再発(SHM-CD リマスター)
ポニーキャニオン(1991年、1993年盤)
東芝EMI(1998年盤)
ヤマハミュージックコミュニケーションズ(2001、2009年盤)
最高位1位 売上235.1万枚(オリジナル盤)
最高位280位 売上0.05万枚(2009年盤)


CHAGE&ASKAの14thアルバム。先行シングル「SAY YES」を収録。今作発売後に「僕はこの瞳で嘘をつく」がシングルカットされた。前作「SEE YA」以来1年2ヶ月振りのリリースとなった。初回盤はスリーブケース入り仕様でブックレット付属。

CHAGE&ASKAは大ヒットが無かったが地道にリリースを行ってきた。しかし、『101回目のプロポーズ』の主題歌に起用された「SAY YES」が待望の大ヒット。そのヒットが続いている中で今作はリリースされた。初動で99.6万枚を売上げ、当時の初動売上の記録を更新した。(今作リリースから1ヶ月後に松任谷由実の「DAWN PURPLE」が史上初となる初動ミリオンを達成し、更新される)翌年もなお売れ続け、1992年1月には 当時史上初となる売上200万枚を達成。200万枚を達成した同年にリリースされたDREAMS COME TRUEやB'zのアルバムが200万枚、300万枚と次々に更新していき、現在では歴代51位。後のCDバブルに繋がる原点となった作品と言える。



「僕はこの瞳で嘘をつく」は今作のオープニング曲。Panasonicオーディオの「HALFコンポ」のCMソングに起用された。今作発売後にシングルカットされた。シングルカットでC/W曲が「TREE Digest」という今作収録曲のダイジェスト版という内容だったにもかかわらず81.1万枚という大ヒットを記録した辺りは流石全盛期と言ったところ。アップテンポで比較的ロック色の強いサウンド。そのような曲ではあるが、歌詞は浮気や不倫をごまかそうとする男を描いたもの。「推理小説を最後から めくれるような筈はない」という歌詞が印象的。
この曲についてASKAは「ちょっと考えると、男のズルさが見えてくる曲なんだけど、ズルさよりも、相手にダメージを与えちゃいけないっていう気持ちのほうが強いんです。僕としては、あえて男のやさしさを表現した曲です」と語っている。バラードで大ヒットを飛ばした次にこのような曲をシングルにしたのは素晴らしい判断だったと思う。


「SAY YES」は先行シングル曲。フジテレビの月9ドラマ『101回目のプロポーズ』の主題歌に起用されたほか、2004年には三菱自動車の「グランディス」のCMソングに起用された。ドラマも大ヒットしたが、この曲も大ヒット。チャゲアス初となる1位を獲得し、ミリオンセラーを達成。13週連続1位という今となっては意味不明なレベルの記録も達成。結果的には282.2万枚という記録的大ヒット。これはシングルの売上歴代7位である。今更語るのも難しいレベルの曲になってしまった。イントロの「ダーン!」という音からドラマチックそのもの。そこから美しいピアノが入る所は圧巻。これ以上何かが始まる予感に満ちたイントロもそうは無い。全編通して サウンドやメロディーに隙がない印象。恋人へのプロポーズを描いた歌詞だが、タイトルは直訳すると「はいと言え」である。何とも強気な男だ。曲の完成度が圧倒的に高い上にタイアップ相手が凄かったため、売れたのは必然的と言えるだろう。



「クルミを割れた日」は少年時代を振り返った歌詞が展開されたバラード。ASKAはレコーディングした後で、コード展開に気に入らない場所があったため今作から外そうと思ったという。しかし、スタッフからこの曲を収録するように推されたため収録を決めたようだ。結局、その気になっていたという部分は2002年リリースのセルフカバーアルバム「STAMP」で修正した。揺れているようにも感じられる、ふわふわとしたメロディーがとても心地良い。「クルミを割れた日」というタイトルは何かができるようになったことの例え。「割れた」は「割ることができた」という意味だろう。子供の頃の、"何かができるようになった"という経験はとても大切なものだと思う。それは年を取っても忘れられないものだろう。懐かしい気分にさせてくれる曲である。



「CAT WALK」はCHAGEが作詞作曲した曲。CHAGE曲に付いて回る「マニアック」という感想はこのような曲から持たれ始めたのだろう。独特なリズムパターンが展開されている。アダルトで謎めいた雰囲気に溢れている曲。爽やかなようでいてねっとりとしたCHAGEのボーカルがその世界観を上手く表現している。"第三者がある状況を見て語る"という形式で歌詞が展開されている。「KISSだけで 終わらない夜」というフレーズが何とも意味深。



「夜のうちに」はスローテンポの重厚感溢れるバラード。独特なベースラインが展開されている。恋愛中にふと思う、不安な気持ちになる瞬間を歌っているという。呟くような、粘っこいASKAのボーカルがこの曲の世界観を形成している。「夜のうちに 君の悲しみの場所 僕とふたりで行こう」というラストの歌詞が印象的。ここまでのアルバムの流れを落ち着けるような、息抜きのような存在の曲だと思われる。正直あまり好きな曲ではない。


「MOZART VIRUS DAY」は前の曲で落ち着いた雰囲気を再び盛り上げるような曲。"作曲 CHAGE&ASKA"というのがインパクト抜群。これはAメロとBメロをCHAGEが、CメロとDメロをASKAが作曲したからである。CHAGEが作った部分はしっとりとした静かな感じで、ASKAが作った部分はとても激しくなっている。交互に来るので不思議な感覚になるが、意外とそれがハマれる。タイトルも不思議なものだが、これは「モーツァルトの菌が入ったかのように曲のアイデアがどんどん浮かんでくる調子の良い日」という旨のタイトルである。厚みのあるコーラスワークも素晴らしい。 二人の異なる魅力を楽しめる良曲である。



「誰かさん~CLOSE YOUR EYES~」は作詞作曲をCHAGEが担当した曲。国内信販の「KCカード」のCMソングに起用された。CHAGE曰く「キミでもなく、アナタでもなく、あのコでもなく、"誰かさん" という言葉にして詞のイメージを広げていった」とのこと。「CHAGE曲はマニアックだ」というリスナーの意見を鼻で笑うかのような、優しい雰囲気溢れるバラード。仲違いしてしまった恋人同士を描いているのだろうか?"誰かさん"と言わざるを得ないくらい仲が悪くなってしまっているのかもしれない。ラストの「どうぞ…ありがとう」というフレーズが印象的。このフレーズに主人公の男の想いが込められているように感じる。



「明け方の君」はここまで来て初めての明るくポップな曲。「恋人はワイン色」を彷彿とさせる軽快な曲。新しい恋人がいるのだが、過去の恋人のことを思い出してしまう男を描いている。曲調に反して割と陰を感じさせる内容の曲である。「君は心で 君は遠くで 綺麗な人で」という歌詞が印象的。この曲を制作しているときにASKAは新たな試みをしたらしく、「その試みに一瞬の、僕なりの開眼があって、曲の引き出しが増えた」と語っている。どのような試みをしたのかは分からないが、歌詞とメロディーの親和性がとても高く、聴いていてとても気持ちが良い。ASKAが作るこの手の曲は好きな曲ばかりである。



「CATCH & RELEASE」はここまでの流れをさらに盛り上げるようなCHAGE曲。ファンクテイストの曲である。タイトルは釣りの用語で「釣った魚を生きたまま、釣ったところで逃す」という意味がある。それを恋人同士の関係に置き換えて作詞をしたらしい。歌詞を見る限りだと、釣るのが男性で釣られるのが女性。「都会によくある デジタルの関係 今夜だけなら とても素敵なカップリング」という歌詞が印象的。そのような男女関係のことをキャッチ&リリースとして語っているのだろう。主導権は意外にも魚の側である女性にあるのかもしれない。



「BAD NEWS GOOD NEWS」は今作では唯一となる、作詞を青木せい子が担当した曲。作曲は前の曲に引き続きCHAGE。仕事や時間に追われて切羽詰まった状態が描かれている。CHAGEは歌詞をこの曲のイメージに合ったものにするために、4~5回ほど書き直してもらったという。良い知らせを待っているのに悪い知らせばかりが来る男を描いている。「隠れたくて そして逃げ出したくて 今なら誰も気づかない けれど 昨日の俺が 許さない顔で見てる」という歌詞が印象的。曲はアップテンポ。CHAGEが作るアップテンポの曲にはハズレが無い印象。


「BIG TREE」は実質的なタイトル曲。PanasonicのCMソングに起用された。一人一人の心に根ざした"木"を描いた歌詞。とても力強く壮大な雰囲気溢れる曲とサウンド。"木"というのは、その人のこれまでの経験のような、その人を支えるものだと解釈している。経験を積み上げると、その木はさらに大きく太いものになっていくのだろう。ここまで壮大なテーマの曲はチャゲアスの曲の中ではあまり無いと思う。「動かない景色のような 誰かがくれた生命の BIG TREE」という歌詞が印象的。 アルバムの核にふさわしい風格を持った名曲。



「tomorrow」は今作のラストを飾る曲。ラストは穏やかに、優しく締められる。ASKA曰く「昨日・今日・明日と日にちが続いていくだけなのに、人の心はどこで変わってしまうんだろう……。同じように時間が過ぎていくだけなのに、どうして幸せや痛みを分け合えなくなるんだろう……。」という気持ちを描いた曲なのだという。「愛しては愛される ただそれだけ 今日 明日とつながるだけなのに」というサビの歌詞が印象的。明日への希望は自分自身で持つ必要があるのだろう。



大ヒット作なので中古屋では溢れかえっている。「僕はこの瞳で嘘をつく」「SAY YES」の冒頭2曲がかなりインパクトが強いため、ライトリスナーにはそれだけで満腹になってしまい、それ以降のアルバム曲は印象に残りにくいかもしれない。しかし、じっくり聴くと完成度の高い曲ばかりなのが分かってくるはず。一度聴いただけでは地味に感じられる作品である。粘り強く聴いていかないと魅力が分かりにくいと思う。単純にヒット曲狙いで聴くと辛い作品だろう。管理人自身今作を良い作品だと思えるようになったのは何回か聴いてからである。

★★★★☆