久保田利伸
1990-07-14


【収録曲】
全曲作詞作曲 久保田利伸
1.2.6.11.13.作詞 久保田利伸・川村真澄
7.8.9.12.作詞 川村真澄
1.作曲 久保田利伸・Rod Antoon
プロデュース 久保田利伸 Rod Antoon

1.Dance If You Want It ★★★★★

2.High Roller ★★★★★
3.Love Reborn ★★★★☆
4.Yo Bro! ★★★☆☆

5.Merry Merry Miracle ★★★★☆
6.Such A Funky Thang!~隕石が落ちた日~ ★★★★☆

7.gone,gone,gone ★★★☆☆
8.すべての山に登れ ★★★★☆

9.Boxer ★★★★☆
10.Indigo Waltz ★★★★★
11.Drunkard Terry ★★★★☆
12.覚えていた夢 ★★★★★
13.Such A Funky Thang!~Reprise~ 省略


1988年9月30日発売
CBSソニー
最高位1位 売上94.4万枚


久保田利伸の3rdアルバム。先行シングルは無し。今作発売後にミニアルバムの形で「Dance If You Want It」「Indigo Waltz」「High Roller」がシングルカットされた。ミニアルバムとは言っても今でいうマキシシングルの走りのようなシングル。前作「GROOVIN'」からは約1年5ヶ月振りのリリースとなった。


プロデュースには久保田利伸との共同でRod Antoonが参加した。Rod Antoonは後にSING LIKE TALKINGの作品のプロデュース(3rdアルバム「Ⅲ」から6thアルバム「ENCOUNTER」まで)も担当した。


久保田利伸自身初となるチャート1位を獲得し、最終的にミリオン寸前の94万枚を売り上げた。その結果、1988年の第3回日本ゴールドディスク大賞男性ソロのロック・フォーク部門と1988年の日本レコード大賞の優秀アルバム賞に選出された。


サウンド面では、バンドサウンドだけでなく、当時流行していた高級楽器シンクラヴィアを取り入れた打ち込みサウンドも展開されている。シンクラヴィアは当時、小室哲哉や松任谷由実、マイケル・ジャクソン等名だたるアーティストに愛用されていた。


「Dance If You Want It」は今作のオープニング曲。今作発売後にミニアルバムの形式でシングルカットされた。カセットテープの「マクセルUDⅠ」「マクセルUDⅡ」のCMソングに起用された。作曲は久保田利伸と共同でRod Antoonもクレジットされている。黒さを感じさせる爽快なファンクになっているが、当時の雰囲気を思わせるようなキラキラしたサウンドもある。疾走感溢れるメロディーやサウンドに乗っかる久保田利伸のボーカルが非常に格好良い。久保田利伸のファンクの到達点と言うべき名曲。



「High Roller」は今作発売後にシングルカットされた曲。「マクセル UDⅡ」のCMソングに起用された。重厚感溢れるファンクナンバー。今までの作品よりも本格的なファンクが展開されている。ヘビーなギターサウンドがとても格好良い。歌詞も暑苦しさを感じさせるものになっている。「チェックボードの荒野に もうダイスは投げられた きっと勝てるはずさと信じてみるのさ」という歌詞が印象的。



「Love Reborn」はここまでの流れを落ち着ける、メロウなバラードナンバー。久保田利伸の色気のあるボーカルが心地良い。力強さだけでなく、繊細さも併せ持った歌声である。キーボード主体のサウンドがしっとりとした雰囲気を上手く彩っている。サビの英語詞の部分はメロディーとぴったり合っている感じがするので聴いていて気持ちが良い。「太陽にささやかな踊りおどろう」というサビ終わりのフレーズはどこか神秘的なイメージがある。そのようなイメージはタイトルにも表れている。


「Yo Bro!」は黒人のノリを感じさせる調子の良い曲。管理人が勝手に思い描く黒人の人物像そのまま。映画でよく出てくるような、いつでも調子が良くてピンチの時にすらその状況を楽しんでいるというような人物像。実際どうなのかは分からないが、そのようなイメージがある。偏見だろうか。歌詞の中の「Hey Brother 調子はどうだい」というフレーズは今作の帯にも使われている。「Yo Bro!調子はどうだい」に変えられているが。このノリの良さは聴いているだけでこちらも楽しくなれるようである。久保田利伸が日本人なのかと疑ってしまうこと請け合い。



「Merry Merry Miracle」は打ち込み主体のサウンドが展開されたダンスナンバー。R&Bテイストの強い曲。タイトルの意味はよく分からないが、とても楽しげな雰囲気が漂っている。何となく、久保田利伸のボーカルと打ち込みサウンドはあまり合っていないような印象がある。フェイクが非常に美しく、格好良い。「出逢いは妙でも 大切なのは 戻らない今」というサビの歌詞が印象的。



「Such A Funky Thang!~隕石が落ちた日~」はタイトル曲。うねうねしたベースラインがたまらないファンクナンバー。英語のセリフの部分が多い。女性コーラスや男性コーラスと久保田利伸の掛け合いもこの曲の聴きどころの一つ。間奏のサックスソロもお洒落。タイトル通り、「隕石が落ちた日」を描いた歌詞が展開されている。「あしたから氷河期 僕の恐竜が凍りつく」というフレーズがインパクト抜群。サウンド面でハマれる曲。



「gone,gone,gone」はメロウな雰囲気漂うミディアムバラード。あまり主張せず、久保田利伸のボーカルを聴かせるような感じのサウンド。女性コーラスがかなり目立っている。上手い具合に曲の世界観を表現している。川村真澄の歌詞と久保田利伸のバラードは相性が良いと思う。「このまま時間(とき)の空き地に さみしさは置いてゆこう」という歌詞が印象的。地味ではあるが上質なバラードだと思う。



「すべての山に登れ」はミディアムテンポのファンクナンバー。ドラムやベース、ギターのカッティングをはじめとした力強いバンドサウンドと無機質な感じの打ち込みサウンドのバランスがとても良い。いわゆる「グルーヴ感溢れるサウンド」である。メロディーは地味な印象があるが、サビはかなりキャッチー。「太陽が月を照らす 月が星をだまらす 傷ついたこの両手に オマエを抱きしめよう」という歌詞が印象的。サウンドがとても格好良く、それだけでもハマれる曲。



「Boxer」は軽快でダンサブルな曲。疾走感溢れるファンクナンバー。タイトル通り、イントロや曲の終わりにはゴングの音が使われている。力強いのだが、囁くような感じにも聴こえるサビでのボーカルが特徴。歌詞もタイトル通り、ボクサーをイメージさせるものになっている。サビでは堂々「Just like a boxer」と繰り返している。思わず体が動いてしまうようなサウンドとリズムが心地良い。


「Indigo Waltz」は今作発売後にシングルカットされた曲。アーバンな雰囲気溢れるしっとりとしたバラード。ソウルやAORを思わせる上質でお洒落な曲。「さよならが近づくといつも くり返されてきた いさかいも いきどおりも 僕らの愛が深かったせい」という歌詞が印象的。恋人同士の姿が浮かんでくるような繊細な描写がされた歌詞が展開されている。久保田利伸は作詞でも素晴らしい実力を持っていた。この曲の聴きどころは間奏のサックスソロ。ここに主人公の男の気持ちが込められているようである。 久保田利伸のバラードの名曲の一つ。



「Drunkard Terry」は今作最長の曲。6分34秒。陽気で楽しげな感じが漂うグルーヴィーなファンクナンバー。打ち込みサウンドもヘビーなもので、しっかりと聴かせてくる。「どうにもなるさ 長くはないさ 運も金も 天下のまわりもの」というサビの歌詞はこの世の真理を突いたようなフレーズだと思う。楽しげな曲調ではあるが、潔さすら感じさせるこの歌詞のインパクトは強い。



「覚えていた夢」は実質的なラスト曲。グルーヴ感のあるサウンドが展開されたバラード。この曲も都会的な雰囲気を感じさせる。恋人同士の感情の機微を描いたような川村真澄の歌詞が素晴らしい。「抱きしめて ささえたいだけなのに さみしげなくちびるが あざやかで 覚えてた 夢のように」というサビの歌詞が印象的。サビは久保田利伸の歌唱力の凄さを思い知らされる。圧巻である。


「Such A Funky Thang!~Reprise~」は今作のラストを飾るインスト。タイトル曲のリプライズである。今作に豊かな余韻を残してくれる。



大ヒット作なので中古屋ではよく見かける。1st、2ndと作品を重ねるごとに、より本格的なブラックミュージックに挑戦しているのだが、今作は今までよりもさらに濃厚なブラックミュージックが展開されたアルバムになっている。あくまで売れ線を突いていきながらも、久保田利伸自身がやりたいと思った音楽に挑戦して見事に成功を収めている。成功の裏には、自身初の海外レコーディングを行ったことも大きいのかもしれない。 リマスター盤は出ていないため、リリース当時の音質のままなのが少々痛いところ。最新の音質で聴いたらさらに良いと感じられる曲があると思う。


★★★★★