Mr.Children
1999-02-03


【収録曲】
全曲作詞作曲 桜井和寿
8.作曲 鈴木英哉&桜井和寿
全曲編曲        小林武史&Mr.Children
プロデュース  小林武史&Mr.Children


1.DISCOVERY ★★★☆☆
2.光の射す方へ ★★★★☆

3.Prism ★★★★☆
4.アンダーシャツ ★★★☆☆

5.ニシエヒガシエ ★★★★★
6.Simple ★★★★☆

7.I'll be ★★★★☆
8.#2601 ★★★☆☆
9.ラララ ★★★★☆
10.終わりなき旅 ★★★★★+1
11.Image ★★★★☆


1999年2月3日発売
トイズファクトリー
最高位1位 売上181.4万枚


Mr.Childrenの7thアルバム。先行シングル「ニシエヒガシエ」「終わりなき旅」「光の射す方へ」を収録。今作発売後に「I'll be」が「I'LL BE」と改題し、大幅にアレンジされてシングルカットされた。前作「BOLERO」からは約1年11ヶ月振りのリリースとなった。ジャケ写にはメンバー全員が写っている。これは「KIND OF LOVE」以来である。


「BOLERO」のリリース後にMr.Childrenは活動停止を発表した。当時は桜井和寿の不倫が発覚したり、解散説が騒がれたりとゴタゴタしていた。「ニシエヒガシエ」は活動停止中にリリースしたという扱いらしく、活動再開は「終わりなき旅」からされた扱いのようだ。今作は活動再開から最初のアルバムである。


制作は特に決め事を作らずに、肩肘張らずに行われた。今作や次作の「Q」はプロデュースされることに反発したメンバーによって、小林武史が一歩引いたような状態で制作が進められた。メンバーだけである程度制作してから小林武が合流していくというスタイル。


小林武史は今作発売後「これまでで最高のアルバムができた」と語った。しかし、桜井和寿は後に「もし『DISCOVERY』の頃の自分がこんな曲を書けていたら、あの頃に迷走することは無かった」という旨の発言をしている。桜井がこの発言をしたのは「IT'S A WONDERFUL WORLD」のプロモーション活動をしていた頃。


タイトルは「発見」を意味する。しかし、「深海」から続いてきた重苦しい世界観からは脱却できず。未だ何かを探しているようだ。


今作発売後に行われたライブ(真駒内アイスアリーナ公演と沖縄宜野湾市海浜公園野外劇場公演)の模様は限定発売されたライブアルバム「1/42」に収録された。



「DISCOVERY」は今作のオープニングを飾るタイトル曲。オープニングからとてつもなく重苦しい雰囲気が溢れている。歪んだエレキギターに乗っかる桜井の気だるげなボーカルが特徴。今作のモヤモヤした感じを象徴しているようである。段々演奏が激しくなっていき、ラストには桜井が"DISCOVERY"と何度もシャウトする。それは鬱屈した感情を爆発させているように感じられる。オープニングからかなり重い印象の曲ではあるが、今作の始まりにはぴったりの曲だろう。


「光の射す方へ」は先行シングル曲。「ニシエヒガシエ」のように、デジタルサウンドが前面に出た曲。タイトルだけ見ると王道の曲のように思えるが、実際に聴くとかなりマニアックな曲である。後半にはボーカルが加工されたり、左右に分かれたりと遊ばれている。当然バンドサウンドもあるわけだが、イントロでのギターがとても格好良い。高速道路を舞台にしているためか、疾走感を感じさせるサウンドである。歌詞はこの頃のミスチルらしくシニカルな世界観を持ったものになっている。「夕食に誘った女の 笑顔が下品で 酔いばかり回った 身振り手振りが大袈裟で 東洋人の顔して 西洋人のふりしてる」という1番のサビ前の歌詞が印象的。売上がかなり下降したのも頷けるようなマニアックな曲だが、意外とハマれる。



「Prism」は先行シングル「終わりなき旅」のC/W曲。当初はこちらをA面にする予定だったというが、小林武史の「復活1発目としては地味だ」という忠告によってC/Wとなった。タイトルは曲の印象から付けられたという。やはり鬱屈した雰囲気が漂う曲なのだが、意外とキャッチーなメロディーである。ロックなのかポップなのか言い切れない曲。「自分に嘘をつくのがだんだん上手くなってゆく」というサビの歌詞が印象的。これは小林武史との言い争いから考え付いたフレーズなのだという。聴いていると自分のことを歌われているような気分になって耳が痛くなるのだが、何故か引き込まれる。このような曲に対してプリズムというタイトルを付けるのは皮肉めいている。まさに「屈折」していると言うべきか。



「アンダーシャツ」はファンク色の強い曲。バンドサウンドだけでなく、ホーンも使われている。ギターのカッティングやベースが前面に出ている。社会風刺をしたような歌詞が展開されている。この頃のミスチルの楽曲では社会風刺を多くしている。当時のメインテーマだったと言っても過言では無い。自らが批判している社会に迎合しようとしている自分に対し「心はいつでも 真っ白なアンダーシャツ」と言い張っている。「いつかは誰もがやがては誰もが 死にゆく自分を愛せるだろう」という歌詞が印象的。


「ニシエヒガシエ」は先行シングル曲。フジテレビ系ドラマ『きらきらひかる』の主題歌に起用された。活動停止中のリリースという扱いである。Pro Toolsを用いたデジタルサウンドが展開された作品。どうやら活動休止中に桜井がPro Toolsの使い方を覚えてハマったようで、それを試したかったという。Mr.Childrenの楽曲としては珍しくオルタナロック色の強い曲になっている。歪んだギターが終始前面に出ており、サウンドはとても格好良い。「愛だ恋だってぬかしたって 所詮は僕等アニマルなんです 人は悲しい性をもって 破裂しそうな悩み抱えて 必死で 猛ダッシュです」という2番のサビの歌詞が印象的。非常に実験性の強い曲なのでよくシングルにしたなあと思ってしまう。サウンドは割と好き。



「Simple」はアコギが前面に出たサウンドが心地良い曲。コーラスにはシンガーソングライターの鈴木祥子が参加した。タイトル通りサウンドはシンプルな感じ。激しい曲が並ぶ今作の中では癒し系な印象。世間が描くミスチル像に合ったラブソングである。「10年先も 20年先も 君と生きれたらいいな」というサビの歌詞はとてもストレートなメッセージが綴られている。「探してたものは こんなシンプルなものだったんだ」と歌い上げているものの、結果的には鬱屈した世界から脱することはできず。そもそも何を探していたのだろうか?抽象的過ぎて分かりにくい。ちなみに、Mr.Childrenのファンとして知られるサッカー選手の長谷部誠とモデルの佐藤ありさが婚姻した時、長谷部はこの曲の歌詞の一節を引用してコメントを発表した。チョイスが中々渋い。流石はファンである。



「I'll be」は今作発売後にシングルカットされた曲。シングルバージョンはアップテンポなものにアレンジされ、「I'LL BE」と改題されている。シングルバージョンの方が先にできていたようだが、スローなバージョンをメンバーが気に入ったためこちらが収録されることとなったという。かなりスローテンポなバラードである。実に9分越え。小林武史のアイデアで、桜井は酒を飲んで少し酔った状態でレコーディングに臨んだという。非常に長い曲なのだがバンドサウンドが素晴らしいので長さはあまり感じさせない。歌詞はどれも名言と言っても良いのだが、特に「不安や迷いと無二の親友になれればいい」というフレーズが好き。こちらのバージョンも良いのだが、どちらかというとシングルバージョンの方が好き。


「#2601」はバンド史を通じても唯一の桜井和寿と鈴木英哉の共作による曲。Aメロを鈴木英哉が、残りを桜井和寿が作曲したという。曲はハードロック。ここまでロックに寄った曲はMr.Childrenの楽曲の中でもそうは無い。サビでは何を言っているのか分からない程の高音でシャウトしている。歌詞については、鈴木英哉のツアー中のプライベートの様子を描いたという。アメリカの女優のミッシェル・ファイファーの名前が登場するのが特徴的。 彼女にお世話になっているように描かれているが、本当はAVを描きたかったようだ。ミッシェル・ファイファーとお上品な感じにしてあるが、その気遣いが無かったらもう少しエロ路線の曲になっていたのだろう。



「ラララ」はフォークテイストの曲。ベスト盤「Mr.Children 1996-2000」にも収録された。今作の中では異質な程に穏やかでゆったりとした曲。ふわふわと揺れているようなアコギや弾むようなベースの音がとても心地良い。仮タイトルは「ホニャララ」だったが、メンバーから反対されたので「ラララ」となった。もしそのままだったらサビが「そんな ホニャララ そんな ホニャララ 探してる 探してる」となっており、シュールで微笑ましい曲になっていたと思われる。歌詞は日常を描きつつ、何かを探している様子が歌われている。しかし、この頃のMr.Childrenは何を探していたのだろうか?


「終わりなき旅」は先行シングル曲。フジテレビ系ドラマ『殴る女』の主題歌に起用された。このシングルをもって活動再開となった。シングルはミリオンを達成したが、Mr.Childrenにとっては現時点で最後のミリオン達成曲である。壮大な人生の応援歌になっている。ファン以外にも高い知名度と人気を誇っている曲。世代ではなくてもサビだけ知っているというパターンもあるかもしれない。Mr.Childrenと言えば「終わりなき旅」だと主張する方も多いかもしれない。重厚なバンドサウンドが展開された曲ではあるが、そのサウンドが歌詞に圧倒的な力強さと説得力を与えている。サビをはじめ、どの歌詞も素晴らしいのだが、「誰の真似もすんな 君は君でいい 生きる為のレシピなんてない ないさ」というフレーズが一番好き。この曲はMr.Childrenの姿勢そのものを表現していると言っても良いだろう。



「Image」は今作のラストを飾る曲。極めてシンプルなサウンドで曲は始まる。途中でストリングスが入って壮大に盛り上がった後に再びシンプルなサウンドに戻って終わるという不思議な構成の曲。「大切なものは いつだって 目の前に転がってる ふんずけないように 蹴飛ばさないように 歩いて行けるなら」という歌詞が印象的。「終わりなき旅」を押しのけてのラストに相応しい壮大さがある。重苦しいアルバムもここまで来ると救われたような感じになる。


大ヒット作なので中古屋ではよく見かける。Mr.Childrenの作品の中ではバンドサウンドが最も前面に出た作品と言える。しかし、Protoolsを用いたデジタルサウンドも目立つ。後にも先にも似たようなサウンドが展開されたアルバムは無い。全編通して重苦しい作風なのでライトリスナーにはかなり馴染みにくいだろう。「終わりなき旅」が収録されているからというような生半可な理由で聴かない方が良い。いつになくヘビーな作風である。管理人も何となく苦手。正直「深海」の方が聴きやすく感じる。気分が沈んでいる時に聴くとさらに暗くなれること間違い無し。聴く時はゆったりと聴いていくことをおすすめする。しかし、 ロックバンドとしてのMr.Childrenを聴くならうってつけの作品だろう。


★★★★☆