SING LIKE TALKING
1995-03-25

【収録曲】
全曲作詞作曲 藤田千章/佐藤竹善
全曲編曲       SING LIKE TALKING
プロデュース 米田恵一

1.City On My Mind ★★★★☆
2.Lovers ★★★★☆
3.Go Along ★★★★★
4.On The Crazy Street ★★★★☆
5.長い道距の果てに ★★★★★
6.Don't Let Go ★★★☆☆
7.If You Are Kind To Us ★★★☆☆
8.陽だまりの下で ★★★★★
9.Friend ★★★★★
10.HopeⅡ ★★★★☆

1989年7月25日発売
1995年3月25日再発
ファンハウス
最高位圏外 売上不明

SING LIKE TALKINGの2ndアルバム。先行シングル「City On My Mind」を収録。前作「TRY AND TRY AGAIN」からは約半年振りのリリースとなった。

プロデュースは1stと同じく米田恵一が担当した。次作以降はRod Antoonを迎えることになる。今作は前作のブラックミュージック色の強い作風とは打って変わって、AOR色の強い作風となっている。

今作のテーマは「都会」である。ジャケ写からやタイトルからもなんとなく察しがつくが、楽曲にも雑踏の中を想起させるような音が使われている。コンセプトアルバムのような作品と言える。


「City On My Mind」は今作のタイトル曲にして先行シングル曲。雑踏の音から曲が始まる。ミディアムテンポのAORナンバー。シングル曲やオープニング曲とは思えないような渋い雰囲気を持った曲になっている。間奏のギターソロが味わい深い。サウンドは打ち込みも多く使われており、どこか無機質な感じ。この曲が今作の作風の象徴だと言える。歌詞は夜の都会をドライブしているような光景をイメージできるもの。「独りで 歩けば とてもじゃないけど 冷たくて 温かで」というサビの歌詞が印象的。サウンドや歌詞から都会特有の冷たさを感じられる。


「Lovers」はしっとりと聴かせるバラードナンバー。悪く言うと地味な雰囲気なのだが、今作の中では比較的ポップな方である。サウンドはエレピとシンセのみ。ギターすら使われていない。この曲も無機質で冷たいイメージのサウンドである。切迫感を感じさせるシンセの音が特徴的。歌詞は恋人への不安な気持ちを語ったもの。「どうすればいい?もしも 失ったなら わかっている かけがえない と」というラストの歌詞が印象的。


「Go Along」は今作では数少ないロック色の強い曲。シンセとギターのバランスが取れたサウンドになっている。サビでは歪んだギターが前面に出ており、迫力のあるサウンドとなるが、メロディーはキャッチー。歌詞はシリアスな雰囲気のあるものになっている。「縋りつく 容貌(かたち)でさえ 纏り付かないでくれ」「後を引く 優しさも 邪魔をしないでくれ」というサビの歌詞が印象的。佐藤竹善の吐き捨てるようなボーカルがこの曲の世界観を彩っている。


「On The Crazy Street」はシティポップ色の強い曲。この曲の英語詞バージョンは1989年公開の映画『もっともあぶない刑事』の挿入歌に起用された。今作に収録されているのは日本語詞によるもの。力強いギターが前面に出た曲になっている。サビは英語詞。メロディーとぴったり合っており、聴いていて心地良い。この曲はコーラスワークが凝っている。それもこの曲の聴きどころの一つ。「街は溜息ばかりで 人は乾き過ぎて ただ 流されるから」というフレーズが印象的。今作の作風がよく現れた曲だと思う。
 

「長い道距の果てに」は今作の中では最も長尺の曲。6分16秒である。ロック色の強い重厚なバラードナンバー。メロディーやボーカルがとても美しい。間奏のギターソロが絶品。聴き惚れるとはこういうことかと思わされる。歌詞は恋人と久し振りに再会した男の感情が綴られたものになっている。「でも今は言える "僕"より"君"が大切だって」というサビ終わりの歌詞が印象的。1st〜3rdまでのSLTを代表する名曲だと思う。


「Don't Let Go」は前作の作風を彷彿とさせる、ブラックミュージック色の強い曲。バンドサウンドに加えてサックスが使われている。間奏ではサックスソロがある。後半では英語による会話が入っている。この部分が聴きどころ。色々意味がありそうな気がするが管理人には分からない。サビでは「どれが」という言葉が使われているが、これは「Don't Let Go」と韻を踏んでいると思われる。歌詞やサウンドを含め、とてもお洒落な雰囲気を持った曲である。


「If You Are Kind To Us」はピアノが前面に出たポップな曲。とても軽快で楽しげなサウンドである。ピアノの他にはベースが前面に出ている印象。ここまでポップさを押し出した曲は今作ではこの曲くらいか。しかし、歌詞は暗さを持ったもの。「街は飾られ あんなに眩しい それなのに 少しも 美しくない」という歌詞が何ともシニカルである。サビでは「楽しませるつもり」「忘れる時を あげたい」と歌っているので、少しだけ救われたような気分になる。


「陽だまりの下で」は静謐な雰囲気溢れるバラードナンバー。佐藤竹善はコカコーラのCMで「I feel coke」の歌を歌っていたことがあったが(1987年〜1989年頃)、そのCMのディレクターが亡くなってしまい、ディレクターの方に捧げた曲。ピアノがメインになったサウンドで、静かではあるが力強さを感じさせる。間奏ではハーモニカのソロがある。「強くたって 弱くたって 形 在るものなら 崩れて行く」という歌詞が印象的。優しさと力強さを併せ持った佐藤竹善のボーカルが素晴らしい。


「Friend」は今作では数少ない、ポップな曲調が展開された曲。1990年にはNTT青森のCMソングに起用された。青森はSLTのメンバーの出身地なので、その縁もあったのだろう。後にセレクションアルバム「REUNION」に収録された。サウンドはバンドサウンドを主体にしている。前の曲と同様にハーモニカソロが入っている。「やがて 風は 気紛れを すべて にするから」というサビの歌詞の一節が印象的。今作の中では最も一般受けするような曲だと言える。


「HopeⅡ」は先行シングル「City On My Mind」のC/W曲。"Ⅱ"と入ってはいるが、"Ⅰ"は現時点で発表されていない。SLTが解散した時か、メンバーの誰かが亡くなった時に発表する…と、かつてインタビューで語られていた。実際のところはどうなのかは分からないが。サウンドはシンセがメイン。「哀しい事や 冷たい街に 時は 立ち止まる」という歌い出しのフレーズが印象的。歌の部分は3分程度で、あとの1分は演奏を聴かせる。かなりコンパクトな曲である。この曲のラストには街中を思わせるような音が入っている。アルバムの最初と最後に雑踏の音が入っており、統一感がある。


ほとんど売れなかった作品だが、中古屋ではそこそこ見かける。不遇な初期の3部作のうちの2作目。初期の3作はチャートインしなかったうえ、ベスト盤への収録がされていない。1992年にセレクションアルバム「REUNION」に収録されたので、それでいいという扱いのようだが…この時期にも良い曲は沢山あるので残念でならない。今作の作風はシティポップやAORがメイン。「都会」をテーマにしているだけあって歌詞やサウンドにそれが現れており、統一感がある。2ndアルバムなのでサウンドは未熟な感じなのだが、逆にそれが良い味を出している。 ファンからも殆ど語られないような地味なアルバムではあるが、初期3作の中では一番好きである。

★★★★★