宇多田ヒカル
1999-03-10

【収録曲】
全曲作詞作曲 宇多田ヒカル
5.作詞作曲 Mick Jagger&Keith Richards(Paint It,Black)
1.5.8.9.11.編曲 西平彰
2.3.編曲 村山晋一郎
4.7.編曲 河野圭
6.編曲 森俊之、磯村淳
1.8.9.Rhythm track Arrangement Taka&Speedy
1.Additional Arrangement 河野圭
プロデュース 三宅彰 宇多田 Skingg 照實

1.Automatic -Album Edit- ★★★★★
2.Movin' on without you ★★★★☆
3.In My Room ★★★★☆
4.First Love ★★★★★
5.甘いワナ 〜Paint It, Black ★★★☆☆
6.time will tell ★★★★☆
7.Never Let Go ★★★☆☆
8.B&C -Album Version- ★★★☆☆
9.Another Chance ★★★★★
10.Interlude 省略
11.Give Me A Reason ★★★★☆
12.Automatic -Johnny Vicious Remix- (Bonus Track) ★★☆☆☆

1999年3月10日発売
1999年6月30日発売(LP)
2014年3月10日発売(15th Anniversary Edition)
東芝EMI/イーストワールド
EMI R/イーストワールド(15th Anniversary Edition)
最高位1位 売上765.0万枚
最高位9位 売上約1.7万枚(15th盤)

宇多田ヒカルの1stアルバム。先行シングル「Automatic/time will tell」「Movin' on without you」を収録。今作発売後に「First Love」がシングルカットされた。

先行シングル「Automatic/time will tell」が大ヒットし、一躍天才少女として名を挙げた当時のアルバム。今作リリース当時たった16歳の宇多田ヒカルは圧倒的な完成度を誇る曲で音楽界を席巻した。彼女の台頭に対して、音楽界を牽引してきた小室哲哉が「ヒカルちゃんが僕を終わらせた」と語ったという程。

往年の名歌手・藤圭子の娘で、帰国子女で、作詞作曲を自ら手がけ、ボーカルも今までにないような独特なもの…スター性の塊だったといっても過言ではない。日本の音楽界にR&Bブームを起こしたのも宇多田ヒカルである。


「Automatic -Album Edit-」は1stシングル曲。「time will tell」とは両A面シングルだった。フジテレビ系番組『笑う犬の生活-YARANEVA!!-』のエンディングテーマ、FM802・スペースシャワーTVの1998年12月邦楽のヘビーローテーションに起用された。聴き流しているだけでもわかる、独特なリズムが心地良い。当時の日本の音楽にはこのような曲は無かった。久保田利伸を始めとした既存のアーティストがやっていたR&Bとはまた違ったR&Bをやっていた。シングルは、トップ10圏外から一気に2位まで上がり、そこから200万枚以上売り上げた。それ程衝撃があったのだろう。この曲のPVも有名である。天井が低いところで椅子に座りながら歌っているアレ。「天才少女」として宇多田ヒカルの名を世間に知らしめた名曲。


「Movin' on without you」は先行シングル曲。日産の「テラノ」のCMソングに起用された。このシングルは153万枚を売り上げたほか、初のシングル1位を獲得した。自分から別れを切り出す内容の歌詞のためか、宇多田本人が「怖いよ〜(笑)」とコメントしたとか。R&Bとロックを混ぜたようなサウンドが展開されている。とても格好良いサウンドである。1番のサビの「ふざけたアリバイ」というフレーズや、サビに入っている「Movin' on〜」と力強く歌っている部分がかなり耳に残る。


「In My Room」は気だるい雰囲気溢れるR&Bナンバー。ふわふわとしたサウンドが展開されている。帰国子女なので当たり前なのかもしれないが、歌詞は横文字が多く使われている。現実逃避をしているような少女を描いた歌詞。サビ終わりのウソもホントウも口を閉じれば同じ」というフレーズが印象的。


「First Love」はタイトル曲にして、今作発売後にシングルカットされた曲。TBS系ドラマ『魔女の条件』の主題歌に起用され、リカットシングルながらもミリオン寸前まで売り上げた。宇多田ヒカルのシングルの中では初のバラード。タイトル通り初恋について歌った曲である。知名度の高さからか、永遠の名バラードと言えるような立ち位置を確立している。16歳という当時の宇多田ヒカルの年齢を考えると、一番年相応なテーマを歌っているように感じられる。「最後のキスはタバコの flavorがした」という歌い出しはインパクト抜群。今の時代に16歳の年齢の女性歌手がいたとして、同じフレーズを歌ったら批判が殺到しそうである。近年ではサビ前の「だろう」が「だは〜」と歌っているのではとネタにされている。色々と話題が多い曲だが、それを含めても素晴らしいバラードなのは事実。


「甘いワナ 〜Paint It, Black」はR&Bとファンクを混ぜたようなサウンドが格好良い曲。宇多田ヒカルの楽曲の中では少ない、ベースが前面に出た曲。サビの譜割りが独特な感じ。歌詞は男の駆け引きにハマってしまった女の心を歌ったもの。中々にマセたテーマである。「あなたの鎖が心地良くなってた あなたの両手に包まれた 蛍のように光っていたい」という歌詞が印象的。メドレーのようなイメージで、ローリング・ストーンズの「Paint It,Black」に通じている。


「time will tell」は先行シングル曲。「Automatic」とは両A面シングルだった。フジテレビ系番組『ごきげんよう』のエンディングテーマに起用された。「Automatic」よりも先にラジオで放送されて話題を集めていた。その割に地味な印象があるが…淡々と聴かせるR&Bナンバー。タイトルは宇多田ヒカルが幼少時に通っていたというニューヨークの質屋の名前に由来する。恐らく意味は「時間がたてばわかる」という感じだろう。サビの中にも登場している。この曲は1stシングルコレクションでは1曲目を飾っているのだが、かなり地味な印象。正直飛ばすことが多い。


「Never Let Go」は浮遊感溢れるサウンドが展開されたバラードナンバー。TBS系ドラマ『魔女の条件』の挿入歌に起用された。スティングの「Shape of My Heart」 のギターのフレーズを引用しているため、パクリ疑惑が囁かれていたが、発売前に本家から許可を得ているという。少しボーカルが聴こえにくいような音作りがされている。「真実は最高の嘘で隠して 現実は極上の夢でごまかそう」というフレーズが印象的。


「B&C」は先行シングル「Movin' on without you」のC/W曲。アルバムバージョンで収録された。タイトルは映画『俺たちに明日はない』の主人公、ボニーとクライドが元ネタ。二人の名前は歌詞の中にも登場する。仮タイトルは「何があっても」だったという。仮タイトルと同じフレーズはサビに登場する。今作のアルバム曲の中では比較的ポップでキャッチーな印象。「約束はしないで 未来に保証は無い方がいい 賭けてみるしかない」というフレーズが印象的。色々と達観してしまったような言葉を16歳が書いて歌っているのは不思議な光景である。


「Another Chance」は応援歌的な歌詞が展開された曲。そのためか、ファン人気が結構高いようだ。独特なシンセのリフとギターの絡みが耳に残る。応援歌というよりもラブソングの要素の方が強い気がするが、応援歌だと解釈しておく。「夢からさめた時に君がそこにいてくれたら oh 何もいらない」というフレーズが印象的。歌詞について共感できるという女性ファンが多いという。それも何となく分かる気がする。


「Interlude」はアルバムの流れを調節する曲。インストのようでいて、歌っている部分がある。一部は次作収録の「言葉にならない気持ち」で使用されている。特に集中して聴く必要は無いと思う。


「Give Me A Reason」は今作のラストを飾る曲。今作では数少ない、打ち込みが控えめな曲。アコギが前面に出ている。サウンドがずっしりとしている印象がある。「何にも縛られたくないって叫びながら 絆 求めてる hey 守られるだけじゃなく 誰かを守りたい」という歌詞が印象的。16歳という時期ならではの感情を上手く描き出していると思う。後の楽曲にも通じるような内省的な雰囲気を持っている。


「Automatic -Johnny Vicious Remix-」はボーナストラック。タイトル通り「Automatic」のリミックスバージョン。元のバージョンよりもテンポが速い。その分サウンドが軽くなってしまっているように思う。アルバムの流れからは完全に離脱している感じなので、要らなかった印象がある。原曲をぶっ壊したリミックスではないのは好印象。


765万枚という邦楽歴代ナンバーワンの売上を記録した化け物のようなアルバムだけあって、中古屋ではいくらでも見かける。Amazonのページを見ていただくと分かるが、在庫数が凄い。在庫数はヒットしたということの裏付けでもある。
1stアルバムと言うにはあまりにも完成度が高い。恐ろしい。後のアルバムに見られるような深遠な世界観は無いのだが、それでも普遍性がある。背伸びしているようでいて、同世代の人に寄り添った曲が多い印象。そのような能力を持ったアーティストはあまりいない。

★★★★☆