【収録曲】
全曲作詞作曲 岸田繁
7.作詞 岸田繁、佐藤征史、松任谷由実
9.作詞 岸田繁、松任谷由実
10.作詞 岸田繁、堀川裕之、藤井琢磨
全曲編曲       くるり&bobo
プロデュース  くるり

1.無題 省略
2.さよならアメリカ ★★★★☆
3.東京レレレのレ ★★★☆☆
4.目玉のおやじ ★★★★☆
5.温泉 ★★★★☆
6.魔法のじゅうたん ★★★★★
7.シャツを洗えば ★★★★★
8.コンバット・ダンス ★★★★☆
9.FIRE ★★★★☆
10.犬とベイビー ★★★★☆
11.石、転がっといたらええやん ★★★★★
12.麦茶 ★★★★☆

2010年9月8日発売
SPEEDSTAR RECORDS
最高位4位 売上約4.8万枚

くるりの9thアルバム。先行シングル「シャツを洗えば」「魔法のじゅうたん」を収録。前作「魂のゆくえ」からはベスト盤を挟んで1年3ヶ月振りのリリースとなった。初回盤は先行シングル2曲のPVの他に、くるりの歴代のヒット曲のPVや蔵出し映像がランダム再生される「言葉にならないDISC」が付属。これはCDとは別に、ボール紙のような紙ジャケに入れられている。神経質な方は管理に注意が必要。

様々なジャンルに挑戦してきたくるりだが、今作は前作同様明確なテーマが設けられていない。しかし、タイトルや歌詞の数々はメッセージ性に満ちたものになっており、メッセージ性の強い作品だと言える。

今作は「TEAM ROCK」以来9年振りに全曲を国内でレコーディングした。プリプロはメンバーの地元、京都で行なった。サウンド面は、岸田繁と佐藤征史、サポートメンバー(ドラム)のboboによるスリーピースのシンプルなバンドサウンドがメイン。メンバー以外の人物が作詞に参加しているが、これはくるりのアルバムの中では初。

今作について岸田繁は「どんなアルバムになるのかはわかってなかったけど、絶対にポジティブなアルバムにはしたいと思っていた」と語っている。「悲しいストーリーとかで喜ぶ人らを喜ばせたくない」とも語っている。今作の作風は岸田繁の想いも強く込められているのだろう。


「無題」は今作のオープニング曲。わずか40秒程度の非常に短い曲。アコギの弾き語りによるもの。歌詞は「言葉にならない 笑顔を見せてくれよ」という今作のタイトルが使われている。


「さよならアメリカ」は実質的なオープニングと言える曲。ゆったりとした曲調が心地良い。サウンドはフォークロックテイスト。終戦直後の日本の様子を描いたような歌詞があるのが特徴。「何もない焼け野原 僕らは背を向け歩いてゆく チョコレイト もうひとつ 甘くておいしい思い出の」というもの。「日の本」というフレーズが使われているのが印象的。「日本」は今作のテーマとも言える。ふと懐かしい感覚になれるような曲である。過去の日本の姿に思いを馳せながら聴きたい。


「東京レレレのレ」は今作リリース前から公開されていた曲。今作と同年にリリースされたカップリング曲ベスト「僕の住んでいた街」に新曲として収録されていた。この曲は民謡のようなテイストを持っている。祭り囃子のような声も入っている。タイトル通り東京の光景を描いているのだが、これまた懐かしい雰囲気溢れるもの。「手ぶら 散歩帰りの延長線上 幸せだけを持ちかえろ」という歌詞が印象的。


「目玉のおやじ」は爽快なロックナンバー。ギターが前面に出ている。メロディーからは純朴な雰囲気が漂っている。歳をとった親父の不器用な優しさを描いた歌詞が展開されている。「茶碗の中」という本家目玉のおやじを彷彿とさせるフレーズも登場する。「頼りないお前の分まで 全部見てやる どこまでも」という歌詞が印象的。


「温泉」は温かみ溢れるメロディーが心地良いフォークソング。何故かこの曲はPVが作られており、先行シングル「魔法のじゅうたん/シャツを洗えば(ヴァージョン2)」の初回盤DVDに収録されている。「目玉のおやじ」からの「温泉」という繋がりが地味に良い。温泉街で流れていそうな曲である。温泉の魅力を文字通り熱く語っている。「は〜 あっちちのち〜」というフレーズがやたら耳に残る。「風呂に入って みんなと一緒に 前向いて日の出を眺めれば は〜 今日はいい日だな」というラストの歌詞が印象的。


「魔法のじゅうたん」は先行シングル曲。くるりのパブリックイメージの一つと言える「チオビタ」のCMソングに起用された。イントロ無しで歌が始まる。どこか懐かしく、温かみのあるくるり王道のポップナンバー。アコギ中心のシンプルなバンドサウンドが展開されており、とても爽やかなサウンド。「君のこと沢山 知ってるつもりだったな」という歌い出しの歌詞が印象的。「チオビタ」のCMの映像が浮かんでくるようである。


「シャツを洗えば」は先行シングル曲。「くるりとユーミン」名義でリリースされた。このシングルは雑誌サイズのCD(A4雑誌サイズのCDBOX仕様)という不思議な形態でリリースされた。そのため、チャートはシングルではなくブックチャートの方で集計された。くるりだけのバージョンものちにシングル化されている。ユーミンは作詞とボーカルで参加した。岸田繁とユーミンの歌声とギターがメインのポップロックナンバー。サウンドだけ聴いていると重厚なロックなのだが、そこに岸田繁の無機質なボーカルとユーミンのふんわりとしたボーカルが乗ると爽快なサウンドになる。高く澄んだ青空が浮かんでくるようである。


「コンバット・ダンス」はファンクロックテイストの曲。うねうねとしたベースとキレの良いギターのカッティングの絡みがとても格好良い。ラスト近くで急に激しくなるドラムが特徴的。「いざピンチになっても しょうがないから動じない そうそうパンチをよく見て 相手の背後に廻れよ」という歌い出しの歌詞が印象的。戦いを描いたような歌詞ではあるが、どこか気だるい雰囲気がある。サウンドにハマれる曲。


「FIRE」はくるりとユーミンが共演した曲。作詞でユーミンが参加した。曲は2分50秒程度と短め。民族音楽とフォークを混ぜたような幻想的なサウンドが展開されている。アコギが前面に出ている。「燃えろ 紅い炎よ ぱちぱちと 火垂るよ来い 小さい火の粉よ ここまで来い」という歌詞が印象的。静かな曲調ではあるが不思議と力強さを感じさせる。


「犬とベイビー」は重厚感のあるロックナンバー。サウンドはギターロック色の強いもの。作詞ではサポートメンバーのboboや藤井琢磨が参加している。歌詞は終始話し言葉になっている。岸田繁のボーカルがかなり割れている印象。特にサビでは枯れてしまっている。それだけ張り上げていたのだろう。「ベイビー 君のこと 好きなだけだよ どうしようもない」というラストの歌詞が印象的。


「石、転がっといたらええやん」は1960年代のロックンロールを彷彿とさせる曲。タイトルは岸田繁がROCKIN'ON JAPAN誌上で連載しているコラムと同じ。たった2分程度の曲であるがとても力強い曲になっている。ボーカルもかなり力強い。「子供だましで ええじゃないか 死ぬまで続く暇つぶし」という歌詞が印象的。


「麦茶」は今作のラストを飾る曲。フォークロック色の強い曲になっている。アコギの音色がとても美しい。暑い夏の光景が浮かんでくるような歌詞が展開されている。ラストの「さぁ 出ておいで さぁ 出ておいで 小さい生命よ 出ておいで」と呼びかける歌詞が印象的。この曲でアルバムを締めるのは好采配だろう。タイトルだけ見て変な曲だと思ったら大間違いである。


中古屋ではたまに見かける。他の作品とは違ってサウンドにおけるメインテーマが無いため、地味な印象が否めない。一回聴いただけでは良さがあまり分からないと思う。全編通してサウンドがシンプルなのもその印象を強めている。歌詞は恐らく和風をテーマにしている。どことなく和のテイストを持った歌詞が多い感じ。アルバムの長さは比較的コンパクトなので、ゆっくり味わいながら何度も聴くのが良いだろう。

★★★★☆