高野寛
1996-11-07

【収録曲】
全曲作詞作曲編曲 高野寛
4.作詞 高野寛,BIKKE
1.編曲 屋敷豪太
2.7.編曲 高野寛,斎藤誠
プロデュース       高野寛

1.KAORI (Album Version) ★★★★☆
2.Moon Shadow (Album Version) ★★★★★
3.何も知らないで生まれて ★★★☆☆
4.TIME WAVE ZERO ★★★★☆
5.Sunny Day Weekend ★★★★★
6.夕凪 ★★★☆☆
7.Overture〜僕が二人にできること ★★★★☆
8.Love Letter ★★★★☆
9.今日も地球の何処かで ★★★★☆
10.Cheerio! ★★★★★
11.Planetarium Rain〜Epilogue ★★★★☆

1996年11月7日発売
2007年12月17日再発(リマスター、紙ジャケ)
東芝EMI/イーストワールド
最高位80位 売上不明

高野寛の8thアルバム。先行シングル「Cheerio!」「Moon Shadow」「KAORI」を収録。前作「Sorrow and Smile」からは1年7ヶ月振りのリリースとなった。

前作も多数のゲストミュージシャンを招いて制作されていたが、今作も多数のミュージシャンを招いた。サザンオールスターズのサポートギタリストとしての仕事が有名な斎藤誠、TOKYO No.1 SOUL SETのボーカルであるBIKKE、SOUL II SOULやシンプリー・レッドで活躍した屋敷豪太等が参加した。

今作はAORの要素を持った曲が多く収録されている。ポップス、ロックをメインとしてきた高野寛の作品の中では珍しい。


「KAORI」は今作のオープニングを飾る先行シングル曲。アルバムバージョンで収録された。編曲は屋敷豪太が担当した。AOR色の強い曲になっている。甘い雰囲気に溢れたラブソングである。タイトルについては高野寛が当時付き合っていた女性の名前が由来とされている。「キムタクに楽曲提供を依頼されたら」というコンセプトで作られたという。「僕だけが知っている あなたといつまでも 二人の秘密を求めあった」という歌詞が印象的。そのまま溶けていってしまうように美しく、甘い曲である。このような曲は高野寛の楽曲の世界観に合わないように思えるが、意外にも合っている。


「Moon Shadow」は先行シングル曲。TBS系列の番組『川柳役者』のテーマソングに起用された。編曲は高野寛と斎藤誠の共同で行われた。歪んだギターサウンドがイントロに使われているが、とてもポップな曲である。いつになく力が入ったようなボーカルが特徴的。サウンド面が非常に格好良い。後半のギターとホーンが絡む所はたまらない。ポップス職人・高野寛ならではの貫禄すら感じさせる曲なのだが、全く売れなかった。時代が合わなかったのかもしれないが、代表曲になっていてもおかしくないような曲である。


「何も知らないで生まれて」はラップのようなボーカルが特徴的な曲。曲調はとても明るい。異色なイメージの曲だが、違和感無く聴くことができる。歌詞は社会風刺のようなものになっている。「何も知らないで生まれて 愛と欲望にゆられて そして働いて眠って 罪と栄光に踏まれて」というサビの歌詞が印象的。全体的にかなりメッセージ性の強い歌詞が連発されているが、明るい曲調もあってかサラッと聴ける。


「TIME WAVE ZERO」はR&B色の強い曲。TOKYO No.1 SOUL SETのボーカルのBIKKEが作詞とラップで参加した。高野寛とのツインボーカルのようになっている。喋りかけてくるようなBIKKEのラップがインパクト抜群。浮遊感のあるサウンドが展開されている。後に高野寛とBIKKE、斉藤哲也でバンドを結成するわけだが、その兆候はこの頃からあったのかもしれない。


「Sunny Day Weekend」は爽やかな雰囲気溢れるポップナンバー。タイトル通り晴れた週末に聴きたくなるような曲である。そのような曲調に反して歌詞は気だるい感じがある。「筋書きのない未来は僕らのため 偶然をもてあそぶように続く」という歌詞が印象的。シングルと言っても違和感の無いような圧倒的な完成度を誇るポップスになっている。しかし、そのような曲をアルバム曲にする辺りがポップス職人たる所以なのかもしれない。


「夕凪」はここまでの流れを落ち着けるようなしっとりとした曲。サウンドはアコースティックなものである。三線が使われており、その音色は曲を上手く彩っている。「心のおもむくまま歌って 体のおもむくまま踊って」というサビの歌詞が印象的。この曲のような民族音楽テイストの曲は高野寛の楽曲に多い。


「Overture〜僕が二人にできること」は先行シングル「Moon Shadow」のC/W曲。「Overture」が追加されているので実質的にはアルバムバージョンと言える。編曲は高野寛と斎藤誠の共同で行われた。最初はストリングスが使われ、荘厳な雰囲気で始まる。それが終わるとギターによる爽やかなサウンドが入る。重厚なバンドサウンドが展開されているが、流麗なメロディーがとても心地良い。歌詞はタイトルからも察しがつくかもしれないが、三角関係を描いたものになっている。「「ずっと君のことを愛していたよ」その一言だけは胸にしまおう この長い夜がいつか明けたなら 二人の未来に乾杯をしよう」という歌詞が印象的。サウンドに反してとても切ない曲である。


「Love Letter」はしっとりと聴かせるバラード。ゆったりとした曲調が心地良い。遠距離恋愛をテーマにした歌詞。季節は冬である。遠くにいる恋人のためにラブレターを書いている男が描かれている。「他愛のない言葉の向こうに 本当のあなたの優しさが見えて 伝えきれない思いが この胸の中で揺れる」という歌詞が印象的。温かみのある曲だと思う。


「今日も地球の何処かで」は世界旅行を描いた楽しげな曲。曲調はとてもポップ。サウンドはパーカッションやピアノが前面に出ている。「ニューヨーク」「リオ・デ・ジャネイロ」「チチカカ湖」が登場する。遠くで自分のことを想っていてくれる恋人へのメッセージのような歌詞が展開されている。「今日も地球の何処かで 強い雨が降っている でも 今日も地球の何処かで 僕はあなたに恋してる」という歌詞が印象的。この曲のように、旅について語られた曲は高野寛の楽曲に多く見られる。


「Cheerio!」は先行シングル曲。ギターサウンドとホーンが前面に出たポップナンバー。曲調に反して恋人との別れを描いた歌詞である。しかし、円満な別れ方をしたのだろうか。この曲はサウンドがとても好き。タイトルは英語で「またね」「さようなら」と言った感じの意味があるようだ。飲み物やアイスの会社のイメージしか無かったが、それは違った。この曲もまた、ヒットしていてもおかしくない曲だと思う。


「Planetarium Rain〜Epilogue」は今作のラストを飾る曲。ラストにふさわしい壮大な雰囲気のある曲。サウンドはエレクトリックシタールが前面に出ている。エレクトリックシタールはこの時期の高野寛の曲に多く用いられていた。「この小さな星の上 誰もがひとり 生まれて 出会って 別れて」という歌詞が印象的。最後のフレーズが終わった時、また最初から聴きたくなること請け合い。


ヒット作ではないので中古屋ではたまに見かける程度。どうしても地味な印象を持ってしまうが、全編通して非常に高品質なポップスが展開されている。曲のキレだとヒットしていた1990年前半頃にも勝るかもしれない。アルバムとしての流れも非常に良く、何度も聴きたくなるような魅力がある。隠れた名盤と言っても良いだろう。

★★★★★