久保田利伸
1990-07-14


【収録曲】
全曲作詞作曲 久保田利伸
3.作詞 Brother Tom
7.作曲 久保田利伸・柿崎洋一郎
プロデュース 久保田利伸


1.Feel so real 省略
2.大ボラ of LIFE ★★★★☆

3.Tell me why〜この恋の行方〜 ★★★★☆
4.MAMA UDONGO~まぶたの中に…〜 ★★★★★
5.Be wanabee ★★★★★
6.BONGA WANGA 省略
7.SHOOT THE HOOP! ★★★☆☆

8.Love under the moon ★★★☆☆
9.Somethings' comin' on 省略
10.MIXED NUTS ★★★★★

11.夜想 ★★★★★
12.No more rain ★★★★☆
13.君に会いたい ★★★★☆

14.BONGA WANGA ~Reprise~ 省略


1990年7月15日発売
CBS/Sony Records
最高位1位 売上66.3万枚


久保田利伸の4thアルバム。先行シングルは無し。今作発売後に「Be wanabee」がシングルカットされた。前作「Such A Funky Thang!」からはベスト盤を挟んで約2年振りのリリースとなった。


ベスト盤を経てリリースされた今作は今までのどの作品よりもブラックミュージック色の濃い作品になっている。R&Bやファンクはもちろんのこと、アフリカの民族音楽も取り入れている。日本のブラックミュージックのパイオニアは進化し続けるのである。サウンド面では生音はもちろんのこと、当時流行していた超高級楽器であるシンクラヴィアを全編に渡って使用している。


参加したミュージシャンもかなり豪華。ブーツィー・コリンズやヴァーノン・リード、アントン・フィグ等といった世界的なミュージシャンの他にもニューヨークで活躍する実力派ミュージシャンを多く招いている。ジョージ・クリントンも参加している。ノリに乗っていた当時の久保田利伸だからこそできたことなのだろう。



「Feel so real」は今作のオープニング曲。1分45秒程度のインスト曲。インストではあるが久保田利伸とコーラス隊による掛け合いがされている。とてもファンキーなノリである。このアルバムの作風を始まりから象徴していると言える。



「大ボラ of LIFE」は勢いに溢れたファンクナンバー。「Feel so real」からは繋がって始まる。実質的なオープニング曲だろう。終始後ろで鳴っているベースが非常に格好良い。女性コーラスとの掛け合いが展開されており、それも聴きどころの一つ。「雨がすべてを 流すから 大丈夫さ またやり直そう バリバリにノろうぜ」という歌詞が印象的。この楽観的な考え方こそがファンキーなノリというものなのだろう。見習いたいものだ。


「Tell me why〜この恋の行方〜」は甘い雰囲気のあるスローバラード。作詞はバブルガム・ブラザーズのBrother.Tomが担当した。年上の女性に恋してしまった年下の男性を描いている。内容を見る限りだと不倫だろう。久保田利伸のボーカルは憂いを帯びており、情感がこもっている。歌唱力は圧倒的なものがあるが、表現力も素晴らしい。



「MAMA UDONGO~まぶたの中に…〜」はアフリカの民族音楽の要素を取り入れた曲。TBS系ニュース番組『ニュースの森』のテーマソングに起用された。アフリカの民族音楽の要素だけでなく、何語かは分からないが現地の言語による会話も入れられている。壮大な雰囲気があり、どこまでも広がっているような草原に立って歌っているようなイメージがある。「見つめるものは 目の前じゃない 彼方だったはずさ」という歌詞が印象的。曲、アレンジ、ボーカル、歌詞。どれも圧倒的なパワーを持っている。聴いているとその力を貰っているような感覚がある。



「Be wanabee」は今作発売後にシングルカットされた曲。TBS系クイズ番組「世界・ふしぎ発見!」のテーマソングに起用された。今作の中では知名度が高い方の楽曲だと思われる。都会的でクールな雰囲気を持った曲。サウンドの雰囲気だけでなく、歌詞も都会を描いたものになっている。都会の慌ただしさや喧騒を抜け出して、もう少しゆっくり生きてみようと提案するような歌詞になっている。「歩くスピードの ビート少し ゆるめたら 空が青いこと 久かたぶりに 気づいた」という歌詞が印象的。



「BONGA WANGA」はタイトル曲。タイトル曲ではあるが、インスト。ここまでの流れを落ち着けて次に繋げていく役割。ギターとサックスの絡みがフィーチャーされており、聴いていてとにかく心地良い。思わず体が動いてしまう。ちなみに、今作のタイトルである「BONGA WANGA」。特に意味は無いようだが、言葉の響きがファンキーだからという理由で付けられたという。


「SHOOT THE HOOP!」はバスケを題材にしたファンクナンバー。サウンドは打ち込みがメイン。後ろをギターががっちりと支えている。作曲は久保田利伸と柿崎洋一郎の共作による。バスケと恋愛の駆け引きを絡めた内容の歌詞。サビでは美しいファルセットを披露している。曲全体を通して日本人離れしたボーカルをやってのけている。聴いていると久保田利伸が日本人とは思えなくなる。



「Love under the moon」はしっとりと聴かせるバラードナンバー。熱くなった雰囲気をそっと冷ますようなイメージがある。前の曲で暑苦しいまでのボーカルを披露していたが、こちらではクールなボーカル。サウンドはハーモニカが前面に出ている印象。まるで歌っているかのような響きがある。何故か夏の夜に聴きたくなる。不思議とムードがある曲だ。



「Somethings' comin' on」はインスト曲。インタルードのような役割を持っている。キーボードとベースが前面に出ている。インストではあるが久保田利伸によるスキャットが入っている。



「MIXED NUTS」はファンクロック色の強い曲。サウンドは歪んだギターサウンドとベースがメイン。久保田利伸が強い影響を受けたP-Funkを彷彿とさせる。P-Funkの創始者であり、ファンク界隈の偉人と言ってもいいような存在であるジョージ・クリントンが参加している。「生きざまを 見せるなら ひずんだ音と 挫折の数さ」という歌詞が印象的。今作の中でも最もファンキーな曲だと思う。ファンクよりもロックのテイストの方が強めだが。


「夜想」はしっとりと聴かせるバラード。これまた前の曲の勢いを落ち着けるような曲である。悲しい恋心が描かれた曲。情感がたっぷりとこめられたボーカルがこの曲を何よりも彩っている。「恋は不意の病 心とは何もかかわらず生まれ そして消えゆく」という歌詞が印象的。サウンドは打ち込みがメイン。無機質で冷たいキーボードの音色が素晴らしい。曲全体から漂うもやもやとした雰囲気に引き込まれてしまう。



「No more rain」はメッセージ性の強い曲。サウンドはとても軽快。パーカッションの音色が特徴。歌詞は地球規模での話になっている。「水と大地のドラマから 息吹が生まれて そして人がいる」という歌詞が印象的。「rain」というのは文字通り雨のことではなく、別のことを指しているのだと解釈している。メッセージ性の強い曲だが、重苦しさは感じさせない。流石は久保田利伸と言ったところ。



「君に会いたい」はスローテンポのバラードナンバー。MIZUNOのCMソングに起用された。メロウな雰囲気漂う曲だが、久保田利伸の歌声が鼻にかかっている印象。酒を飲みながらレコーディングしたようだ。「満ちては返す この波の絵筆が 胸をゆらす」という歌詞が印象的。しっとりと始まるが、途中からミディアムテンポに変わっていく。それをいとも簡単に歌いこなしているのが凄い。実際歌ってみるとかなり難しい。


「BONGA WANGA ~Reprise~」は今作のラストを飾るインスト曲。タイトルからも分かるが、タイトル曲のリプライズ。このアルバムが終わることを告げる。こちらでもサックスの音色が良い味を出している。もう一周聴きたくなること請け合い。



ヒット作なので中古屋ではよく見かける。著名な曲が少ないためライトリスナーには手に取りにくい作品だと思うが、久保田利伸のキャリアを通じてもここまでファンクに傾倒した作品は無いだろう。ファンクが好きな方なら必ずやハマれるはず。ファンキーな曲とメロウな曲のバランスが非常に良い。その手の音楽が好きな管理人にはどストライクの作品だった。


★★★★★