浜田省吾
1999-09-29

【収録曲】
全曲作詞作曲 浜田省吾
1.2.9.編曲 町支寛二
3.8.編曲 板倉雅一
4.編曲 古村敏比古
5.6.7.10.編曲 梁邦彦
プロデュース 浜田省吾

1.BLOOD LINE (フェンスの向こうの星条旗) ★★★★★
2.RISING SUN(風の勲章) ★★★★☆
3.DARKNESS IN THE HEART(少年の夏) ★★★★★
4.WHAT'S THE MATTER,BABY? ★★★★☆
5.A LONG GOOD-BYE(長い別れ) ★★★★★
6.I DON'T LIKE "FRIDAY"(戦士の週末) ★★★★☆
7.BREATHLESS LOVE ★★★★☆
8.NEW YEAR'S EVE ★★★★★
9.RIVER OF TEARS ★★★★☆
10.THEME OF FATHER'S SON(遥かなる我家) ★★★★☆

1988年3月16日発売
1999年9月8日再発(リマスター盤初回盤)
1999年9月29日再発(リマスター盤通常盤)
CBSソニー
クリアウォーター(1999年盤)
最高位1位 売上43.5万枚
最高位26位 売上1.5万枚(1999年盤)

浜田省吾の12thアルバム。先行シングルは無し。今作発売後に「BREATHLESS LOVE」がシングルカットされた。前作「CLUB SURF&SNOWBOUND」からは約9ヶ月振りのリリースとなった。オリジナル盤の初回盤は三方背BOX入り仕様。

今作は1984年発表の「DOWN BY THE MAINSTREET」、1986年発表の「J.BOY」に続く三部作の最後を飾る作品。少年が大人になっていく過程を描いた作品である。それには浜田省吾自身の姿も反映されていた。

今作の大きなテーマは日本とアメリカの関係や戦争と戦後といったものが中心に語られている。重苦しいアルバムに感じられるが、多くはラブソングである。浜田省吾はこの頃に30代半ばを迎えていたため、「いつまでも若者の歌は歌えない」という考えからより大人らしい世界観を持った曲が展開されている。

ジャケ写が特徴的だが、これはブルース・スプリングスティーンのパロディ。本人はジョークのつもりだったのだが、周囲には本気で取られてしまったため後悔しているようだ。


「BLOOD LINE (フェンスの向こうの星条旗)」は今作のオープニング曲。今作発売後にシングルカットされた「BREATHLESS LOVE」のC/W曲となった。そちらはシングルバージョンで収録された。力強さ溢れるハードロックナンバー。激しいギターサウンドが展開されている。アメリカ軍兵士の父親と日本人の母親の間に生まれ、本当の父親が誰かを知らないという青年が描かれている。このような話は実際にあった話のようだ。青年の怒りや悲しみが激しいバンドサウンドと力強いボーカルで表現されている。 浜田省吾の社会派ロックの到達点と言える曲。


「RISING SUN(風の勲章)」は戦後の日本について語られたロックナンバー。アコギによるシンプルなイントロから激しいロックへと移っていく。1945年の焼け野原だった日本が這い上がって行った姿が描かれている。そして、豊かになって大切なものを失った日本を痛烈に皮肉っている。「過ぎ去った昔の事と 子供達に 何一つ伝えずに この国 何を 学んできたのだろう」という歌詞が印象的。


「DARKNESS IN THE HEART(少年の夏)」は父親について語られたロックナンバー。サウンドはバンドサウンドとシンセが使われている。シンセの方が前面に出ている印象がある。段々と迫ってくるような感覚に陥るシンセの音色がこの曲の緊迫感を煽っている。当時、浜田省吾の父親が亡くなったようで、その経験がこの曲に生かされている。曲の中の主人公は浜田省吾自身をモデルにしているのかもしれない。「暗闇」は誰の心の中にも潜んでいるのだろう。サウンド、歌詞、ボーカル共に素晴らしい曲。


「WHAT'S THE MATTER,BABY?」は仕事に追われるビジネスマンを描いたロックナンバー。サウンドはバンドサウンドとサックスが前面に出ている。今作がリリースされたのはバブルの全盛期と言える1988年。ビジネスマンが中心になって頑張っていた時代だろう。「ウォール街の悪夢 パニック 発狂した為替レート」という歌詞が印象的。今でも通じる内容の曲だと思う。色々と浮かれていたバブル時代の光景が浮かんでくるようである。


「A LONG GOOD-BYE(長い別れ)」はしっとりと聴かせるバラード。サウンドはシンセがメイン。東京を舞台に、別れようとしている恋人たちを描いている。イントロには雨音が入っており、歌詞の中にも雨のフレーズが出てくる。二度と会うことのない二人なのだろう。「愛することは罪なのか こんなにも重すぎる罰背負い 別れてゆくなんて」という歌詞が印象的。聴いていると胸を締め付けられるような、痛切な想いが込められた曲である。


「I DON'T LIKE "FRIDAY"(戦士の週末)」はビジネスマンを主人公にしたポップロックナンバー。ホーンが効果的に使われ、曲を盛り上げている。一緒に仕事を頑張ってきた同僚が結婚してしまい、金曜の夜が寂しくなった…という内容の曲。同僚との仲が伝わってくるような微笑ましい歌詞である。管理人の「企業戦士」という言葉に対するイメージはこの曲にある。当時、浜田省吾は週刊誌の「FRIDAY」に奥様との写真を盗撮され、掲載された。それもサングラスをかけていない姿。浜田省吾はそれに激怒し、週刊誌の「FRIDAY」を皮肉る曲を作った。それがこの曲。その背景を知った上で聴くと面白い。


「BREATHLESS LOVE」は今作発売後にシングルカットされた曲。ミディアムテンポのバラードナンバー。サウンドはギターやアコーディオンが前面に出ている。名前を知らない女性に恋してしまった男を描いている。満たされない愛に心を病んでいる様が手に取るようにわかる。「愛と名付けるには暗く激しすぎて 奪っても 見たしきれない」という歌詞が印象的。大人の恋愛といった雰囲気がある。大人の男の苦しさが伝わってくるようである。


「NEW YEAR'S EVE」はしっとりと聴かせるバラード。後にバラードセレクションアルバム「初秋」にも収録された。タイトル通り大晦日の夜を舞台にしている。歌詞を見る限りだと子供もいる夫婦が別れる光景を描いているように解釈できる。つまりは離婚して、電車に乗ってどこかへ行くのだろう。しかし、円満な別れ方のように感じられる。「幸せの方へ真っすぐに歩いておくれ 見送る僕を振り返らずに」という歌詞が印象的。男の哀愁や優しさが溢れている。


「RIVER OF TEARS」は今作では数少ないポップなラブソング。サウンドは激しいバンドサウンドとサックスが前面に出ている。この二つの絡みは浜田省吾の楽曲らしさを感じさせる。年を経た男が新たな恋に落ちて変わっていく様を明るく表現している。「向こう岸まで 濁流の中を辿り着きたい 光の中へ」という歌詞が印象的。ここまで来るとアルバムの雰囲気も救われたような感じがする。
 

「THEME OF FATHER'S SON(遥かなる我家)」は今作のラストを飾る曲。今作のタイトル曲と言っても良いだろう。ストリングスとピアノによるゆったりとした曲。浜田省吾曰く「自分の中で帰郷している」曲なのだという。懐かしい雰囲気に溢れた曲である。少年が大人になり、再び故郷を訪れてきたようなイメージがある。歌詞は短いものの、日本語、英語、中国語で歌われている。激しいロックで始まった今作の最後は静かに幕を降ろす。


ヒット作なので中古屋ではそこそこ見かける。社会派な内容のアルバムだと思ってしまいがちだが、そのような内容の曲は最初の3曲くらいである。後はラブソングがメイン。そのため、言うほど取っつきにくい作品というわけでもない。全ての曲を通してメロディーが冴え渡っており、良曲ばかり。「J.BOY」が語られることが多くて今作に触れられることが少ない印象があるが、名盤だと言われても良いような作品だと思う。

★★★★★