【収録曲】
全曲作詞作曲 草野正宗
全曲編曲       スピッツ&亀田誠治
プロデュース  スピッツ&亀田誠治

1.未来コオロギ ★★★★★
2.小さな生き物 ★★★★★
3.りありてぃ ★★★★☆
4.ランプ ★★★☆☆
5.オパビニア ★★★★☆
6.さらさら ★★★★★
7.野生のポルカ ★★★★☆
8.scat 省略
9.エンドロールには早すぎる ★★★★☆
10.遠吠えシャッフル ★★★☆☆
11.スワン ★★★★★
12.潮騒ちゃん ★★★★☆
13.僕はきっと旅に出る ★★★★☆
↓(デラックスエディション盤のみ収録)
14.エスペランサ 省略

2013年9月11日発売
ユニバーサルミュージック
最高位1位 売上12.6万枚

スピッツの14thアルバム。先行シングル「さらさら/僕はきっと旅に出る」を収録。前作「とげまる」以来約2年11ヶ月振りのリリースとなった。その間にスペシャルアルバム「おるたな」をリリースしているため、実質的には1年7ヶ月振りのリリースである。

今作はスピッツ自身初の複数形態での発売。「デラックスエディション盤」「期間限定盤」「通常盤」の3種。他にも、アナログ盤でもリリースされた。デラックスエディション盤と期間限定盤はSHM-CD仕様。田村明浩は複数買わないとコンプリートできない仕様にはしたくなかったという。デラックスエディション盤が最上位である。管理人が持っているのは期間限定盤。

今作でも亀田誠治との共同プロデュースが行われている。最早安定感抜群の作品となっている。サウンド面最大の特徴はストリングスを使用していないこと。草野マサムネは「ここ10年くらいでバンドにストリングスが凄く多くなったから距離を置くべきだと思った」と語っている。亀田誠治はストリングスを多く使うプロデューサーとしても知られているが、彼との制作をした上でストリングスを避けたのは凄い。

管理人は期間限定盤を持っているため、デラックスエディションのみ収録の「エスペランサ」の感想は省略させていただく。いずれ購入したら書き足したいと思う。


「未来コオロギ」は今作のオープニング曲。当初はこの曲が今作のタイトルになる予定だったという。爽快感溢れるロックナンバー。イントロを聴いた瞬間にこれぞスピッツだ!というような感覚を持つはず。爽やかなギターリフが心地良い。「未来コオロギ」はスピッツの姿自身のことを指しているのだと解釈している。スピッツからファンへの決意表明のような曲なのかもしれない。聴き手を優しく包み込むような歌詞にボーカル、バンドサウンド。スピッツの新たな名刺代わりになるような曲だろう。


「小さな生き物」は今作のタイトル曲。「センチュリー21」のCMソングに起用された。力強くも優しさを感じさせるメロディーとバンドサウンドが展開されている。金管楽器も使われており、曲を美しく彩っている。歌詞は生きているもの全てへの愛を歌っているような、メッセージ性に溢れたものである。「臆病な背中にも 等しく雨が降る それでも 進む とにかく先へ 有っても無くても」という歌詞が印象的。タイトル曲だけあって今作の作風を象徴するような曲である。


「りありてぃ」は重厚なバンドサウンドが展開されたロックナンバー。しかし、メロディーはポップで爽やかなもの。「リアリティ」を「りありてぃ」と表記する辺りはスピッツならではと言ったところ。ひらがなで表記すると、可愛らしくもひねくれたイメージがある。「犠牲の上のハッピーライフ 拾って食べたロンリネス 終わらない負の連鎖は 痛み止めで忘れたけど」という歌詞が印象的。心の奥底を鋭く抉るような歌詞だと思う。


「ランプ」はしっとりと聴かせるラブソング。歌謡曲を彷彿とさせるゆったりとしたメロディーは優しさに包まれている。「街にあふれる歌 誰かを探してる くだらないって言いながら 同じだなぁ」という歌詞が印象的。歌詞の中では「ランプ」を命に例えているところがある。死生観についても触れられていると思う。聴いた人の心をそっと照らしてくれるような雰囲気がある曲。


「オパビニア」は爽やかなポップロックナンバー。タイトルは古生代カンブリア紀に生息していた生物のこと。草野正宗による造語というわけではない。「何か誰にも似ていないもの」の象徴としてオパビニアを使ったようだ。長らく恋愛をしていなかった男を描いた歌詞。それを古代の生物に例えているのはいかにもスピッツっぽいというべきか。「恋も希望も取り返す ちょっとやそっとじゃ終われない」という歌詞が印象的。情けない感じのフレーズが多く登場するが、最後はしっかりと決めてくる。


「さらさら」は先行シングル曲。「僕はきっと旅に出る」とは両A面シングルだった。J-WAVEの「春のキャンペーン TOKYO NEW STANDARD」のテーマソングに起用された。シングルは今までで最も長い間隔を経てリリースされた。ギターのアルペジオから始まるイントロは不安になる程の美しさを持っている。メロディーも流麗そのもの。コーラスワークもとても凝っている。「夢オチじゃないお話 100度目の答なら 正解 正解」という歌詞が印象的。王道を突いていきながらも、新たな境地を開拓している。


「野生のポルカ」はアイリッシュミュージックの要素を取り入れた曲。この曲はMVも制作されている。バンドサウンドの他には、アコーディオンや笛が使われている。歌詞は動物の視点で歌っているイメージのもの。進化について語ったような歌詞である。ラストのコーラスはスピッツのメンバー全員、亀田誠治、フラワーカンパニーズのメンバーが歌っている。とても楽しげな雰囲気に溢れている。新機軸の曲と言っても良いだろうが、スピッツの曲として違和感無くまとめている辺りは流石。


「scat」はインスト曲。スピッツのアルバムにインスト曲が入ること自体少ない(「ハヤブサ」収録の「宇宙虫」以来)が、草野正宗作曲によるインスト曲はバンド史を通じて初めて。タイトル通りボーカルは全編スキャットによるもの。実質的にインストだろう。激しいバンドサウンドが奏でられている。勢いがありながらもポップな感じも持たせている。アルバムの流れの調整と言うには勿体無い程の曲である。


「エンドロールには早すぎる」は打ち込みが主体になったダンスナンバー。ベースとドラムは参加していない。ギター以外は全て打ち込みによるサウンド。打ち込みではあるがしっかりとグルーヴ感がある。キレの良いギターのカッティングはクセになること請け合い。「あんな当たり前が大事だってことに なんで今気づいてんの?」という歌詞が印象的。アルバムの後半に差し掛かる位置にこのようなタイトルの曲が収録されているのは好采配だと思う。


「遠吠えシャッフル」は社会風刺がされた歌詞が特徴的な曲。ソウル・フラワー・ユニオンの奥野真哉がオルガンの演奏で参加した。タイトル通りシャッフルのリズムによる曲である。「居場所があんのかわかんねぇ 美しすぎるクニには」というフレーズがインパクト抜群。このような投げやりな口調はスピッツには珍しい。曲名は「負け犬の遠吠え」から来ているのだろうか?メッセージ性の強い作品という今作の作風を象徴する曲と言える。


「スワン」はしっとりと聴かせるバラード。サウンドはアコギを主体としたシンプルなバンドサウンドが展開されている。歌詞は亡くなってしまった恋人への愛を歌ったもの。このようなテーマの曲は今までの楽曲には無かった印象。「星空を 見るたびに思い出す さよならも言えないままだった 少し苦く 少し甘く もらった言葉消さないもう二度と」という歌詞が印象的。歌詞、メロディー、ボーカル、サウンド。全てが調和して優しい世界観を作り上げている。


「潮騒ちゃん」はキャッチーなポップロックナンバー。タイトルは朝ドラの『あまちゃん』の影響を受けたのだろうか?歌詞は草野正宗の地元である福岡の博多弁が使われているのが特徴的。「ばってん」「こげな」のフレーズが使われている。「自力で古ぼけた船を 沖に出してみたいんです」という歌詞が印象的。「潮騒ちゃん」と繰り返す部分はかなりインパクトがある。一度聴くと中々耳を離れなくなる。


「僕はきっと旅に出る」は先行シングル曲。「さらさら」とは両A面シングルだった。JTBの「夏旅2013」のCMソングに起用された。バンドサウンドだけでなく、キーボードの音色も前面に出ている。比較的シンプルなサウンドである。歌詞はタイトル通り旅について歌ったもの。2番のサビの「またいつか旅に出る 懲りずにまだ憧れてる 地図にも無い島へ 何を持っていこうかと」という歌詞が印象的。旅に行く前のワクワクする感じが伝わってくるような曲である。アルバムのラストにふさわしい力強さもある。


中古屋ではそこそこ見かける。全編通して聴いても40分台後半程度とかなりコンパクトな作品である。そのためか、何度も聴きたくなるような中毒性がある。東日本大震災の影響を受けたためか、リアルで内省的な歌詞が多い印象がある。それをシンプルなバンドサウンドに乗せている。そのため、メッセージ性が強い作品と言える。楽曲はロックの要素とポップな要素のバランスが取れており、とても聴きやすい。少し聴いただけだと幾分か地味な作品に感じられるかもしれないが、 今作は地味さこそが最大の魅力であり、他の作品との違いだと言える。聴き手に寄り添うような優しさや素朴さを感じさせる。
今から入手するならデラックスエディション盤を入手することをおすすめする。

★★★★☆