【収録曲】
DISC1
全曲作詞作曲 岸田繁
全曲編曲       くるり

1.ワンダーフォーゲル ★★★★★ 
2.ばらの花 ★★★★★+2

3.虹 ★★★★★
4.ワールズエンド・スーパーノヴァ ★★★★★
5.THANK YOU MY GIRL ★★★★★
6.BABY I LOVE YOU ★★★★★
7.ハローグッバイ ★★★★☆

8.春風(Alternative) ★★★★★
9.ナイトライダー(QURULI version) ★★★★★
10.リバー ★★★★☆
11.ハイウェイ ★★★★★
12.飴色の部屋 ★★★★☆
13.赤い電車(Ver.金沢文庫) ★★★★★


DISC2
全曲作詞作曲 岸田繁
全曲編曲       くるり

1.水中モーター(Jam Remix) ★★★★☆
2.ロックンロール ★★★★★ 

3.東京 ★★★★★
4.青い空 ★★★★★

5.リボルバー ★★★★★
6.男の子と女の子 ★★★★★

7.BIRTHDAY ★★★★☆
8.Superstar ★★★★☆ 

9.尼崎の魚 ★★★★☆
10.街 ★★★★☆
11.サンデー・モーニング ★★★☆☆
12.家出娘 ★★★★☆
13.HOW TO GO ★★★★★


(初回盤のみ)DISC3
全曲作詞作曲 岸田繁
全曲編曲       くるり


1.怒りのぶるうす ★★★☆☆
2.Giant Fish ★★★★☆
3.さっきの女の子 ★★★★☆
4.人間通 ★★★★★


プロデュース くるり
2006年7月26日発売
SPEEDSTAR RECORDS
最高位3位 売上17.2万枚


くるりの1stベスト。結成10周年記念として制作、リリースされた。初回盤は3枚組でBOXケース入り仕様。

くるりの10年を振り返る内容のベスト盤だが、契約消化や事務所の意向といったありがちなものではない。メンバーが事務所に対して「ベスト盤を出したい」という旨のお願いをしたことがきっかけ。選曲はメンバー全員で行われた。基準は「多くの人に望まれ、受け入れられやすい曲」というもの。


選曲は2006年までにリリースされた全てのシングル、アルバム未収録だったC/W曲、さらには初のCD化、音源化となる曲まで揃っている。初めてくるりの音楽に触れるリスナーから、ヘビーなリスナーまで幅広い層を取り込める選曲となっている。曲順はオリジナルアルバムのように凝ったものになっている。


今作を最後にギターの大村達身が脱退することとなった。彼がいた時期はギターサウンドが最も分厚かった時期だった。



楽曲の感想については今作が初収録となる曲のみにさせていただく。(初収録のシングルバージョンは除く)ちなみに、今作で初めて収録されたシングルバージョンの曲は「ワールズエンド・スーパーノヴァ」「ハイウェイ」「東京」「Superstar」「HOW TO GO」である。


「ハローグッバイ」は2002年にリリースされた10thシングル「男の子と女の子」のC/W曲。ダークな雰囲気を持ったロックナンバー。サビでバンドサウンドが入って盛り上がる。イントロや最後には水の音が入っている。別れを描いた歌詞が展開されている。「いつからか あなたのこと忘れてしまいそう この次はいつだろう 歩きたいのに雨が降っている」という歌詞が印象的。ダウナーな曲なのだが、それが魅力。


「春風(Alternative)」は2000年にリリースされた5thシングル「春風」のリミックスバージョン。高山徹によるリミックスがされた。元のバージョンは岸田繁がミックスしたが、そちらよりも音が少し厚くなっている。曲の長さもこちらの方が少し長い。それ以外の違いはよく分からない。「くるりの20回転」にもこのバージョンが収録されており、シングルバージョンは現在もなおアルバム未収録。曲はアコースティックなサウンドが心地良いバラード。岸田繁が自身の結婚式で歌ったという。歌詞の語尾ははっぴいえんどを彷彿とさせる、ですます調。自然を切り取った美しい歌詞。「遠く汽車の窓辺からは春風も見えるでしょう ここで涙が出ないのも幸せのひとつなんです」という歌詞が印象的。春の空気を感じさせるようなとても暖かい曲。



「ナイトライダー(QURULI ver.)」は2006年にリリースされたシングル「Juice」のC/W曲。くるりとRIP SLYMEのコラボシングル。こちらはRIP SLYMEは参加しておらず、くるりのみ。当然RIP SLYMEが参加したバージョンもあるが、聴いたことはない。演奏は同じものらしい。ノリの良いロックナンバー。英語で曜日の名前が入るサビはキャッチーそのもの。タイトルのフレーズは出てこないものの、曲全体に漂う疾走感は正にライダーのようである。



「赤い電車(Ver.金沢文庫)」は2005年にリリースされた16thシングル「赤い電車」の未発表バージョン。シングルバージョンとこのバージョンを何度も聴き比べてやっと分かったが、打ち込みサウンドが増えている。終始流れているチキチキした感じの音。正直シングルバージョンとほとんど違いがないのであまり気にして聞かなくても良い。


「水中モーター(Jam Remix)」は2002年リリースのアルバム「THE WORLD IS MINE」の収録曲のリミックスバージョン。フィルム映画『Jam Films』のサウンドトラック盤にしか収録されていなかったため、聴くのが困難な状況だった。曲の長さが大分変わっている。元のバージョンは7分だったが、こちらは3分10秒程度とかなり縮小されている。他はあまり変わっていない。聴きやすさはこちらの方が上かもしれない。



「リボルバー」は2001年にリリースされた8thシングル「リバー」のC/W曲。キレの良いギターロックナンバー。たった2分半程度の曲なので一気に始まってあっという間に終わる。サビのうねうねとしたメロディーが特徴的。歌詞は人間関係を銃に例えている。作風で言うと「TEAM ROCK」よりも「図鑑」の頃を想起させる。



「尼崎の魚」は1998年にリリースされた1stシングル「東京」のC/W曲。重厚感溢れるギターロック。バンドサウンドの力強さに反して弱々しい岸田繁のボーカルが特徴。歌詞や曲調はどことなくひねくれている。「踏みつぶされたら初めて気付いたよ 僕は弱いんだ」という歌い出しの歌詞が印象的。くるりの楽曲の本質と言える、ひねくれたダークな部分がよく現れた曲だと思う。



「サンデーモーニング」は1999年にリリースされた3rdシングル「青い空」のC/W曲。激しいバンドサウンドが展開されたロックナンバー。それでいて気だるい雰囲気に溢れているのはくるりならでは。一生懸命ひねり出したような岸田繁の高音がこの曲の世界観を構成している。タイトル通り歌詞は日曜日の朝について語られているのだが、闇を感じさせるもの。「疲れた顔で 僕らを見下ろして笑いましょうよ 本当は泣きたいかも知れませんよ」という歌詞が印象的。



「家出娘」は初CD化曲。映画『リアリズムの宿』の主題歌として作られた。モノラル録音で制作された。映画の主題歌として別の曲を用意していたものの、監督に「暗過ぎる」と却下されたので、ムッとしてさらに暗い曲を作ったら採用されたという。本当に暗い曲である。ぼそぼそと呟いているような岸田繁のボーカルは特に暗さを表現している。バンドサウンドもかなりダーク。聴いているとこちらまで暗くなるような曲である。



以下はDISC3の収録曲。



「怒りのぶるうす」はアルバム「アンテナ」のアウトテイク。あまりにもアルバムの雰囲気と合わなかったためにボツになってしまった曲。力強いバンドサウンドに乗せて岸田がひたすらシャウトしている。よく分からないが怒っているのはよく伝わってくる。アウトテイクになったのも頷ける。



「Giant Fish」はデビュー前に制作されていた未発表音源。「さよならストレンジャー」の時期のくるりを彷彿とさせるフォークロック色の強い曲。力強いバンドサウンドとどこか懐かしいメロディー。この絡みが心地良い。歌詞については掲載されていないので何とも言えないが、聴いている限りだとかなり歌詞が多め。シングルのC/W辺りに入っていればもう少し評価されていたと思う。



「さっきの女の子」はアルバム「NIKKI」のアウトテイク。アメリカで録音されたが、「NIKKI」の収録曲はイギリスで録音されており、作風に合わなかったためにボツになった。軽快なポップロックナンバー。この曲も歌詞が掲載されていないのではっきりと分からないが、すれ違った女の子が可愛かった…と思い出している内容。何ともしょうもない内容だが、いかにもくるりと言ったところ。



「人間通」はアルバム「TEAM ROCK」のアウトテイク。岸田繁曰く「ゴミで作った芸術の最高峰」とのこと。「TEAM ROCKを凝縮した曲」とも語っている。実験性の強いロックナンバー。打ち込みも取り入れているあたりは当時の作風を思わせる。「人間通」と何度も繰り返す部分は正に意味不明。このようなサイケで意味不明な曲はくるりの楽曲に比較的多いが、例に漏れず好きな曲である。


中古屋ではそこそこ見かけるが、今でもそれなりの価格で売られている。今作でしか聴けない曲がかなり多いからだろう。2016年には「くるりの20回転」がリリースされたが、価値は未だ失われていない。

入門としては「くるりの20回転」と並んでおすすめできる。こちらはオリジナルアルバムのような選曲になっているため、くるりの楽曲の世界により入り込みやすい感じ。「くるりの20回転」はシングルをリリース順に並べているものなので音楽性の変遷が分かりやすい。どちらを聴くかは好みに任せる。
メンバーが選曲しただけあって、シングル曲からアルバム曲まで幅広く聴くことができる。「TOWER OF MUSIC LOVER」というタイトル通り、音楽好きなら誰もが楽しめるベスト盤だと思う。

★★★★★