久保田利伸
1991-09-21

【収録曲】
全曲作詞作曲 久保田利伸
3.作詞 久保田利伸・清水美恵
7.作詞作曲 B.Withers-W.Salter-R.Macdonald 
8.作詞 川村真澄 作曲 久保田利伸・羽田一郎
10.オリジナル詞 川村真澄 KUBOJAH版作詞 久保田利伸
プロデュース 久保田利伸

1.Keep On JAMMIN' ★★★★☆
2.雨音 ★★★★★
3.Honey B ★★★☆☆
4.Love Like a Rastaman ★★★★☆
5.男たちの詩(うた)〜My Yout〜 ★★★★☆
6.TELEPHOTO ★★★★☆
7.Just the 2 of Us(DUET WITH CARON WHEELER) ★★★★★
8.You were mine(KUBOJAH VERSION) ★★★★☆
9.神なるものと薔薇の刺 ★★★☆☆
10.北風と太陽(Bro.HUSSEIN&Bro.BUSH) ★★★★☆
11.JAMAICA〜この魂のやすらぎ〜 ★★★☆☆

1991年9月21日発売
SONY RECORDS
最高位1位 売上57.0万枚

久保田利伸の5thアルバム。先行シングル「Honey B/Keep On JAMMIN'」を収録。今作発売後に「雨音」がシングルカットされた。前作「BONGA WANGA」からは約10ヶ月振りのリリースとなった。

今作のタイトルである「KUBOJAH」の「JAH」はJehova(エホバ、ヤハウェ)の略。Jehovaはラスタファリズムの実践者であるラスタファリアンの呼ぶ神様のこと。ラスタファリズムは1930年代のジャマイカで労働者階級や農民たちの間で起こった宗教的思想運動。アフリカ中心主義を奨励していたという。菜食主義やドレッドロックス(いわゆるドレッドヘア)、ガンジャ(大麻)を聖なるものとして見ること等がラスタファリアンのアフリカ中心主義指向の例。その考えは1970年代にレゲエ音楽、ボブ・マーリーのようなジャマイカ出身のアーティストによって世界中に広められた。「ジャー」はレゲエの業界でよく使われるワードになっている。
説明が長くなってしまったが、久保田利伸はレゲエ音楽の影響を受けたのだろう。「クボジャー」は今では久保田利伸のあだ名の一つにもなっている。

今作はR&Bやファンクよりもレゲエ色の濃い作品になっている。今までとは違い、「PARALLEL WORLD」と銘打った作品になっている。「もうひとつの久保田利伸」というキャッチコピーめいたものが帯にも掲載されていた。「パワー・オブ・ラブ」をテーマにしたという。
ちなみに、「PARALLEL WORLD Ⅰ」とあるくらいなのでシリーズ化されたのだろうと思いきや、今作以降は音沙汰無し。実に約22年後の2013年に「PARALLEL WORLD Ⅱ KUBOSSA」がリリースされてシリーズは復活することとなった。そちらはボサノバに挑戦している。そこから察するに、「PARALLEL WORLD」シリーズは久保田利伸のメインジャンルであるR&Bやファンクとは違ったジャンルに挑戦するシリーズなのだろう。


「Keep On JAMMIN'」は今作のオープニングを飾る先行シングル曲。「Honey B」とは両A面シングルだった。三菱電機の「AVミラクルキャンペーン」のCMソングに起用された。今作の作風に合わせてレゲエの要素をたっぷりと取り込んだ曲になっている。言葉にはし難いが、レゲエ特有のリズムが前面に出ている。しかし、久保田利伸らしくポップな仕上がりになっており、とっつきにくさはない。サウンドと久保田利伸の熱いボーカルを聴いているとジャマイカにいるかのような感覚に陥る。


「雨音」は今作発売後にシングルカットされた曲。カメリアダイヤモンドのCMソングに起用された。雨が降っている日に聴きたくなること請け合いなしっとりとしたバラードナンバー。サウンドはレゲエ風。メロウで甘い雰囲気に溢れた曲。ファンキーな久保田利伸もいいが、メロウな久保田利伸も素晴らしい。「さあ雨よ 激しく打て ぼくのこの窓を」というサビのフレーズが印象的。久保田利伸は雨を描いた曲が多い印象があるが、その中でもかなり好きな部類の曲。


「Honey B」は先行シングル曲。「Keep On JAMMIN'」とは両A面シングルだった。カメリアダイヤモンドのCMソングに起用された。甘くアダルトな雰囲気に満ちたミディアムナンバー。この曲もまたサウンドはレゲエ調。「甘い残り香に このからだ 包まれて 深いため息を 数えるだけ」という歌詞が印象的。久保田利伸の伸びやかなボーカルに圧倒される曲である。シングルにするには少々向かなかったような印象がある。


「Love Like a Rastaman」は今作発売後にシングルカットされた「雨音」のC/W曲。タイトルの「Rastaman」は前述のラスタファリズムを実践する人々の呼び名の一つ。ここまでの曲よりも格段に濃厚なレゲエサウンドである。「傷つくこと おそれて あきらめて 街の灯見つめながら貝になる でもヤツらならすぐに愛をうち明けるのさ うまく行かぬもいとおかし」という歌詞が印象的。熱い曲ではあるが、その分パワーや優しさを感じさせる。


「男たちの詩(うた)〜My Yout〜」はアフリカンサウンドが前面に出た曲。ここまでの曲とはまた違った熱い雰囲気がある。パーカッションが前面に出ているサウンド。外国人コーラスも効果的に使われている。ファンキーな久保田利伸の姿が現れた曲。ボーカルも語りかけるようなイメージのものになっている。歌詞は泥臭さに溢れている。「頑固と言われてなにが悪い 大地が歌うは風の唄 汗のにおいのどこが臭い 雨は歌うよ草木といっしょに」という歌詞が印象的。聴いていると久保田利伸が日本人だと分からなくなる感覚になる。


「TELEPHOTO」はしっとりと聴かせる優しいバラード。レゲエの要素は少し少なめ。間奏のピアノソロがとても心地良い。歌詞は反戦歌の形をとっている。恋人を残して戦場に向かった戦場カメラマンを描いた歌詞。「戦場を写し出す 写真とともに ここにある悲しみと 君への愛を届けたい」という歌詞が印象的。当時は湾岸戦争があった頃なので、その影響を受けた曲なのかもしれない。


「Just the 2 of Us」はR&Bの定番曲のカバー。原曲はグローヴァー・ワシントン・ジュニアが1980年に発表した曲。国を越えて様々なアーティストにカバーされている。イギリスの女性歌手であるキャロン・ウィーラーとデュエットした。サウンドは今作に収録されただけあってレゲエ色の強いサウンドである。二人のソウルフルなボーカルにとにかく圧倒されるばかり。久保田利伸が英語で歌っていても全く違和感が無いのは凄い。


「You were mine(KUBOJAH VERSION)」は1988年に発表した5thシングル曲のセルフカバー。疾走感があった元のバージョンよりも幾分かゆったりとしている。やはりレゲエ調のサウンドである。ボーカルが少しモヤモヤした感じに加工されている。ゆったりとしているので原曲に慣れていると中々に違和感があるのだが、今作をここまで聴いてくればレゲエサウンドにもすぐに慣れると思う。ボーカルの力強さや重厚感は元のバージョンよりもこちらの方が感じられる。これはこれで良いと思う。


「神なるものと薔薇の刺」は歌謡曲とレゲエを合わせたような曲。サビでは英語詞メイン。外国人コーラスとの掛け合いがされており、それは聴きどころの一つ。力強いボーカルを楽しめる。歌詞はアダルトな雰囲気を持ったもの。レゲエ一色のサウンドで来ているので少し地味な印象が否めない。正直この曲の一番印象強いところはタイトルである。


「北風と太陽(Bro.HUSSEIN&Bro.BUSH)」は1987年リリースの2ndアルバム「GROOVIN'」収録曲のセルフカバー。原曲のテイストを残し、レゲエテイストを取り入れたサウンド。タイトルからも察しがつくかもしれないが、歌詞は変更されている。湾岸戦争の当事者であるイラクのフセインとアメリカのパパブッシュを皮肉ったものになっている。サビでは堂々「Bro.HUSSEINとBro.BUSH」と歌っている。社会派としての久保田利伸の姿を垣間見ることができる。 サウンドだけでなく、歌詞もほぼ全編変えられているため最早別の曲だと思った方が良い。


「JAMAICA〜この魂のやすらぎ〜」は今作のラストを飾る曲。2分半程度の短い曲。波の音がイントロに入っている。音の数はかなり少なく、久保田利伸の歌声を聴かせる曲になっている。「何かをさがして 眠れない夜が今では この豊かな愛につつまれて 星に消える」という歌詞が印象的。どこまでも伸びていきそうな久保田利伸のボーカルがこの曲の世界観を構成している。ラストにふさわしいしっとりとした曲である。


そこそこヒットしたので中古屋ではよく見かける。全編通してレゲエサウンドが展開された作品なのでその手のジャンルが好きな方ならハマれると思う。あまり聴いたことがなくても良いと思えるような味付けになっているので安心を。しかし、レゲエに傾倒しすぎてサウンドが似た曲ばかりになってしまっているのが難点。ボーカリストとしての久保田利伸の凄さを実感できるような作品になっていると思う。

★★★★☆