【収録曲】
全曲作詞作曲 KAN
1.4.5.10.編曲 KAN
2.6.編曲 大谷幸
3.9.編曲 奈良部匠平
7.8.編曲 松本晃彦
プロデュース 平野治


1.UNIT OF SOCIETY ★★★★☆
2.OLD FASHIONED GIRL ★★★★★
3.REGRETS ★★★★★

4.GO PLAIN ★★★☆☆
5.君から目がはなせない ★★★★☆
6.ALL I WANT IS YOU ★★★★☆
7.FOREIGNER ★★☆☆☆

8.REAL REACTION ★★★☆☆
9.A MAN IN DISSATISFACTION ★★☆☆☆
10.東京ライフ ★★★★★


1989年6月21日発売
2010年10月27日再発(リマスター)
ポリドール(オリジナル盤)
アップフロントワークス(再発盤)
最高位89位 売上1.3万枚


KANの4thアルバム。先行シングル「東京ライフ」を収録。今作発売後に「REGRETS」がシングルカットされた。前作「GIRL TO LOVE」からは約1年振りのリリースとなった。


今まで外部による作詞が多かったものの、今作では遂に全曲作詞作曲を達成した。今作以降は全曲作詞作曲を続けている。歌詞カードもブックレット化された。今までは紙を広げるタイプのものだった。大きな変化を遂げた作品だと言える。


1st〜3rdまでのアルバムが思うように売れなかったため、悩みながら作った作品だという。曲もどこか重い雰囲気のものが多い。


前作ではKANと松本晃彦との共同アレンジによって制作されていたが、今作ではそのスタイルをやめている。10曲中6曲を松本晃彦、奈良部匠平、大谷幸の3人にアレンジを委託、残り4曲をKAN自らがアレンジした。



「UNIT OF SOCIETY」は今作のオープニング曲。元々今作のタイトル候補だったというが、難しい響きだったのでやめたという。打ち込みを多用したポップな曲。仕事や恋愛に追われる男の姿を「UNIT OF SOCIETY」と例えた歌詞。「好きときらいじゃ きらいが多い 得意の分野 試験にでない ああ あんな会社 明日やめてやる」という歌詞が印象的。どこか悲壮感のある歌詞であるが、当時のKANの精神状態が現れていると言える。



「OLD FASHIONED GIRL」は前作の作風を思わせるポップなラブソング。サウンドはホーンが多用されている。歌詞は真面目な生き方をしている女性へのメッセージのようになっている。そのような女性を「OLD FASHIONED GIRL」つまり流行遅れと言っている。主人公の男はその女性に恋しているようだ。「ぼくの気持ちなんか わかるわけない 君でいい」というフレーズが印象的。サウンド、歌詞共に割と好きな曲なのだが、何とも地味な印象が否めない。今作の中ではかなり派手な部類だが…


「REGRETS」は今作発売後にシングルカットされた曲。2ndアルバム収録曲の「ALL I KNOW~僕にわかることは~」を基にして作ったという。そのため、そちらの曲は現在では封印されたような扱いになっている。初期の名バラードと名高い曲。別れた恋人に伝えられなかったことを淡々と歌ったバラード。サウンドはバンドサウンドとストリングスの絡みがメイン。主人公の後悔が聴き手の心を鋭く抉ってくるようである。ドラマチックに盛り上げるサウンドも相まってかなり力強い。「いまさら おそいけど 大声で笑ってても 何かに怒ってても 君はもういない」という歌詞が印象的。 初期のKANを代表する名曲である。


「GO PLAIN」は打ち込みが多用されたポップな曲。サウンドは少々古臭さを感じさせる。彼女に対して自然体でいることを求める男を描いた歌詞。「ここへ来て ぼくを見て 好きなこと なんでもすればいいよ 君が弱ってる時だけのぼくだって それはそれでいいもん」というサビの歌詞が印象的。突き放すようなイメージのある歌詞やマニアックさを感じさせるサウンド。この時期のKANの混迷がよく現れた曲だと言える。



「君から目がはなせない」は先行シングル「東京ライフ」のC/W曲。打ち込みが多用されており、ユーロビートを彷彿とさせる。作風は前作の明るさを受け継いでいる印象がある。比較的キャッチーな曲だが、ギリギリまでシングル候補だったようだ。結果的にC/W曲となったが。サウンドは全て打ち込みによるもの。「君から目がはなせない 君と話したい」というサビの歌詞が印象的。サビ終わりのギリギリの高音がインパクト抜群。



「ALL I WANT IS YOU」は今作発売後にシングルカットされた「REGRETS」のC/W曲。しっとりと聴かせるバラードナンバー。AORテイストの強い曲であり、都会的な雰囲気を持っている。ピアノとホーンが前面に出たサウンド。歌詞も夜の街を舞台にしている。サビは英語詞が多め。「もしかすると今夜この街は ぼくと君しかいないかもしれない 二人の時くらい現実はなれよう」という歌詞が印象的。何ともお洒落な雰囲気に溢れた曲。


「FOREIGNER」は打ち込みが前面に出た曲。無機質で冷たいイメージのサウンドが展開されている。曲調はかなり重厚感のあるものになっている。比較的ロック色の強い曲。KAN自身によるコーラスワークがかなり凝っている。歌詞はとても重苦しい雰囲気のあるもの。「恋に自由はありえない 自由な恋はできない 本当のぼくをもっとわかってくれるはずの君が泣きだした」というフレーズが印象的。この頃の KANの精神状態がよく現れている。聴いているこちらも憂鬱になるようである。



「REAL REACTION」は前作の作風を思わせるポップなラブソング。明るい感じに仕上がってはいるのだが、無理して明るくしたような印象が否めない。サウンドは打ち込みがメイン。古臭いシンセの音色が当時の時代を思わせる。意思疎通に苦労する恋人たちを描いた歌詞。「本当の気持ち ききたいよ 君が ああ 好きだから」という歌詞からは男の感情がよく伝わってくる。どことなく闇を感じさせる曲だ。



「A MAN IN DISSATISFACTION」はKANの楽曲の中でもかなり異色な曲。サビまではほとんどメロディーを無視して語るような歌い方で進んでいく。そのためか、歌詞が詰め込まれている。歌詞は友人を励ましているものなのだが、KANの人生観がよく現れている。「誰も信じられないような感じもわかるけど 自分を信じてあげなきゃあんまりかわいそうだよ」というサビの歌詞が印象的。メロディーが大きな魅力であるKANがメロディーを半ば放棄したような曲。完成度はさておき、インパクトはかなり強い。



「東京ライフ」は今作のラストを飾る先行シングル曲。今作収録バージョンは全て打ち込みによるサウンドだが、1992年リリースのベスト盤「めずらしい人生」ではピアノ弾き語りバージョンで収録されている。そちらも素晴らしい完成度。東京に暮らしている男を描いた歌詞。迷いばかりを抱えて生きているようだが、「君」の存在だけが男を支えている。「雨が降っても 道をえらべば 傘をささずに歩ける きずつかないで生きてくために 時々 自分もだます」という歌詞が印象的。一人暮らしをしている方には色々と響いてくる曲かもしれない。



ヒット作ではないが中古屋ではそこそこ見かける。「悩み多き一枚」とKAN自らが語っているように、当時のKANの精神状態がよく現れたような暗い雰囲気の曲が並んでいる。ネガティブな世界観を持った曲が多い。しかし、曲自体はキレッキレ。アルバムとして聴くととっ散らかっている様がよく分かるが、今でも愛される名曲「REGRETS」「東京ライフ」が収録されているのであまり侮れない作品である。

★★★☆☆