竹内まりや
2014-11-19

【収録曲】
全曲作詞作曲 竹内まりや
全曲編曲         山下達郎
プロデュース  山下達郎

1.もう一度 ★★★★★
2.プラスティック・ラブ ★★★★★
3.本気でオンリーユー(Let's Get Married) ★★★★☆
4.One Night Stand ★★★★☆
5.Broken Heart ★★★★★
6.アンフィシアターの夜 ★★★★☆
7.とどかぬ想い ★★★☆☆
8.マージービートで唄わせて ★★★★☆
9.水とあなたと太陽と ★★★☆☆
10.ふたりはステディ★★★★☆
11.シェットランドに頬をうずめて ★★★★☆
(↓30th盤のみ収録のボーナストラック)
12.赤のエナメル[Previously Unreleased]
13.プラスティック・ラブ[12"Extended Club Mix]
14.プラスティック・ラブ[12"Original Length ReMix]
15.プラスティック・ラブ[Karaoke]
16.本気でオンリーユー(Let's Get Married)[Karaoke]
17.アンフィシアターの夜[Previously Unreleased Karaoke]
18.マージービートで唄わせて[Previously Unreleased Karaoke]

1984年4月25日発売(LP,CT)
1999年6月2日発売(CD)
2014年11月19日発売(30th Anniversary Edition)
MOON RECORDS
最高位1位 売上48.3万枚(LPとCTの合算)
最高位13位 売上不明(30th盤)

竹内まりやの6thアルバム。先行シングル「もう一度/本気でオンリーユー(Let's Get Married)」を収録。今作発売後に「マージービートで唄わせて」「PLASTIC LOVE(EXTENDED CLUB MIX)/PLASTIC LOVE(NEW RE-MIX)」がシングルカットされた。前作「PORTRAIT」からは約2年4ヶ月振りのリリースとなった。

今作は山下達郎と結婚して活動を休止し、復帰してから最初のアルバムである。本格的な復帰作であり、初の全曲作詞作曲を果たした作品でもある。今までの竹内まりやはアイドル的な立ち位置であり、他者からの提供がメインだった。以前の作品でも数曲作詞や作曲に絡んでいたが、全曲を手がけるのは初。竹内まりやのシンガーソングライターとしての原点と言える作品である。

休業中は主にアイドル歌手への楽曲提供を行なっていた。それが自作曲のアイデアを多く産むことに繋がったという。制作当初は今まで通り他者に楽曲提供を依頼する予定だった。山下達郎は4曲を他者の楽曲提供、4曲を山下達郎本人、4曲を竹内まりや、シングル曲は桑田佳祐にお願いするという構想があったようだ。竹内まりやが書き溜めた曲を聴き、山下達郎はそのクオリティに驚き、全曲の作詞作曲を竹内まりやが行うこととなった。

リリースが長女の出産と重なるという状況で思うようなプロモーションができなかった。しかし、チャート1位を獲得し、結果的に独身時代のアルバムよりも良いセールス結果を残した。今作以降は人気シンガーソングライターとしてさらに高い支持を集めていく。


「もう一度」は先行シングル曲。「本気でオンリーユー(Let's Get Married)」とは両A面シングルだった。TBS系ドラマ『くれない族の反乱』の主題歌に起用された。活動再開後最初のシングルにして、最初のアルバムのオープニング曲。イントロから展開される山下達郎のコーラスは高揚感に溢れている。現在に至るまで続く竹内まりやと山下達郎のコンビネーションの原点である。ポップだが美しいメロディーは流石。そこに乗る伸びやかなボーカルは思わず聴き惚れる。歌詞は男の元から離れることを選んだ女性を描いたもの。「Let's Try Again」というフレーズが印象的。竹内まりやのシンガーソングライターとしての原点と言える名曲。


「プラスティック・ラブ」は今作発売後にシングルカットされた曲。シングルカットされたのは12インチシングルでリミックスされたバージョン。竹内まりやが休業中に書いた曲をまとめたカセットテープを山下達郎に聴かせた際、この曲はその1曲目だったという。山下達郎の曲と言っても違和感の無いようなファンク色の強い曲。ベースのフレーズも竹内まりや自ら考えたという。ベース、ギターのカッティング、正確かつ力強いドラム。これらが絡むサウンドは絶品そのもの。歌詞は高飛車な女性を描いたようなものになっている。歌詞はさておき、 サウンドがとにかく格好良い。


「本気でオンリーユー(Let's Get Married)」は先行シングル曲。「'84カゴメ・リベラ」のイメージソングに起用された。「もう一度」とは両A面シングルだった。8分の6拍子によるバラードナンバー。全編英語詞による曲。イントロにシンセによるパイプオルガンが入っているが、坂本龍一が弾いている。竹内まりやが結婚した直後だったので、その縁があってかウエディングソングである。歌詞はよく分からないものの、恐らくプロポーズだろう。ウエディングソングならではの壮大さと優しさを併せ持っている。


「One Night Stand」はしっとりしたバラードナンバー。演奏やコーラスでセンチメンタル・シティ・ロマンスが参加している。サウンドはピアノが主体となっている。カントリーのテイストも感じさせる。タイトルは「一夜限りの興行」を意味する。歌詞の中の主人公の恋人は仲間と演奏しながら旅をしているようだ。「汗にまみれた ブルージーンズ 今日もまたはいて 歌えば 昨日は遠く昔」という歌詞が印象的。上質なサウンドが心地良い曲である。


「Broken Heart」は全編英語詞による曲。AOR色の強いサウンドが展開されている。山下達郎の楽曲でもお馴染みのメンバーに加え、松木恒秀、佐藤博も参加した。ホーンも使われており、上質で非常にお洒落なサウンドになっている。コーラスとサックスはロサンゼルスでレコーディングされたという。歌詞はタイトル通りの失恋モノ。竹内まりやの英語の発音の上手さもあって洋楽を聴いているような気分になる。この手のサウンドは管理人の好みなので評価が高くなっている。


「アンフィシアターの夜」はロック色の強い曲。 1980年頃にロサンゼルスのユニバーサル・アンフィシアターという野外会場でキンクスのライブを観たことを思い出しながら書いたという。曲はシンプルなロックンロールである。ライブを意識して作っただけあって、竹内まりやのボーカルはかなり力が入っている感じ。2000年に行った18年振りのライブではオープニングを飾っていた。作った当時の考えは実現したことになる。ライブの時特有の楽しい雰囲気が前面に出た歌詞になっている。高揚感に溢れた曲であり、ライブのオープニングを飾ったのも頷ける。


「とどかぬ想い」はミディアムテンポのバラード。アコースティックなサウンドがメインだが、フリューゲルホルンも使われている。曲の世界観を独特な音色で彩っている。竹内まりやとしては珍しい、裏声を使ったボーカルを楽しめる。歌詞は片想いしている女性を描いたもの。「私だけのかんちがいなら あきらめるわ 許されない愛に戸惑いながら 胸に秘める想い」という歌詞が印象的。


「マージービートで唄わせて」は今作発売後にシングルカットされた曲。ビートルズを意識して作られた曲。竹内まりやはビートルズの影響を強く受けている。ミュージシャンを目指す原点でもあったという。サウンドの感じはどこなくビートルズを彷彿とさせる。歌詞はビートルズへの想いや感謝が語られたものになっている。「あなたが消えてから 淋しくなったけど いつのまにか大人になって 涙さえ乾いてた」という歌詞が印象的。竹内まりやの音楽遍歴がうかがい知れるような曲である。


「水とあなたと太陽と」はボサノバテイストの曲。音の数は少なめ。しっとりとした歌声は聴いていてとても心地良く、耳の保養と言える。歌詞は恋人達のバカンスを描いたものになっており、異国情緒が漂っている。夏の午後をイメージできる。「息をはずませ あなたの両手に飛び込んだとたん 波にのまれて 崩れゆくシルエット 夏を映し出すの」という歌詞が印象的。


「ふたりはステディ」はシャッフルビートの曲。分厚い音作りがされており、ナイアガラサウンドを彷彿とさせる。流石は山下達郎である。歌詞は年下のボーイフレンドとの恋を描いたものになっている。これは竹内まりやの音楽の原点の一つでもあるオールディーズの影響を受けているのだろう。後半では山下達郎のコーラスがかなり前面に出ており、ツインボーカルのような状態になっている。ラストの「私を選んだあなたが好きよ」という歌詞も相まって、いちゃついているように感じられる。それもまた、この曲の多幸感を演出していると言える。


「シェットランドに頬をうずめて」は今作のラストを飾る曲。しっとりと聴かせるバラードナンバー。タイトルはイギリスの地名だが、竹内まりやがイギリスの田舎の丘陵地隊の風景が好きだったことが理由。歌詞は冬が舞台となっている。情景が浮かんでくるような歌詞だが、その光景は不思議と温かみのあるものである。「夢の日々が編み込まれて 素敵な色になってゆく」という歌詞が印象的。ラストにふさわしい落ち着いた雰囲気がある。


ボーナストラックの感想は省略させていただく。


CDはあまり出回っていない印象。1999年にCD化されたものの音質が悪いため、いっそ30th盤を手に取った方が良いと思う。作品としてはタイトル通りバラエティ豊富な曲が並んでいる。王道のポップス、ファンク、カントリー、AOR、ボサノバ…これについては夫である山下達郎のアレンジも凄い。優れたポップアルバムに仕上がっている。今作以降のオリジナルアルバムはベスト盤同然のような作品が多く、新曲主体のアルバムは今作くらいしかない。今作はシンガーソングライター・竹内まりやの原点にして、最高傑作だと思う。

★★★★★