【収録曲】
全曲作詞作曲編曲 槇原敬之
9.作詞作曲 松任谷由実
9.編曲 Tomi Yo
プロデュース 槇原敬之


1.Introduction ~Believer's Theme~ 省略  
2.一歩一会(Renewed) ★★★☆☆

3.不器用な青春時代 ★★★★★
4.Souvenir〜思い出〜 ★★★☆☆
5.運命の人 ★★★★★

6.テレビでも見ようよ ★★★★★
7.5 minutes(Renewed) ★★★★☆
8.You are what you eat. ★★★★☆
9.A HAPPY NEW YEAR ★★★☆☆

10.信じようが信じまいが ★★★☆☆
11.理由 ★★★☆☆
12.超えろ。(Renewed) ★★★★☆
13.もしも ★★★★★+1


(初回盤のみ)DVD
1.超えろ。(PV)
2.理由(PV)


2016年12月14日発売
Buppuレーベル
最高位 売上


槇原敬之の21stアルバム。先行シングル「超えろ。」「理由」を収録。前作「Lovable People」からは約1年9ヶ月振りのリリースとなった。初回盤はスリーブケース入りでDVD付属。


発売直後なので詳細な情報は情報が入り次第更新させていただく。


今作は「第3章の幕開け」と位置付けられた作品である。今までに無いような新たなアプローチやアイデアを盛り込んだ曲を収録している…という触れ込みでリリースされた。そもそも第1章と第2章は何なのだろうか?管理人はデビュー〜逮捕までが第1章、復帰〜前作までが第2章、今作以降が第3章と解釈している。


とは言っても楽曲のテーマは今までとそこまで変わりは無い。ラブソング、ライフソング共にバランス良く収録されている。



「Introduction〜Believer's Theme~」は今作のオープニングを飾るインスト曲。ギターだけでなく、ブズーキやダルシマーという耳慣れない民族楽器が使われているのが特徴。打ち込みによるストリングスが幻想的な雰囲気を演出している。映画の中で流れていそうな曲になっており、今作のオープニングを飾るのにふさわしい曲である。



「一歩一会(Renewed)」は先行シングル「理由」のC/W曲。テレビ朝日系番組『じゅん散歩』のテーマソングとして書き下ろされた。ミディアムテンポで、どことなく温かみを感じさせる曲になっている。タイトルは番組がテーマに掲げているフレーズ。歌詞の中にも登場している。車に乗って街を見るのではなく、敢えて歩くことで見つかるものがあるのでは…?と提案する歌詞になっている。「物足りないと思った 何かを二人で探そう 宝の地図はない方がいい 一歩一会の散歩に行こう」という歌詞が印象的。今作がリリースされた2016年はポケモンGOが大人気だった。やはり「歩いた分だけ出会う 歩いた分だけ見つかる」ということなのだろう。



「不器用な青春時代」はテクノとロックを混ぜたような曲調が展開された曲。イントロの入り方はイモ欽トリオの「ハイスクールララバイ」を彷彿とさせる。焦燥感を煽るようなチキチキとしたシンセの音色である。サウンドは終始エレキギターが前面に出ている。歌詞は三次元の女性に初めて恋に落ちてしまったオタクを描いたもの。「妄想を追い続けた」日々を不器用な青春時代に例えている。「壁のポスターの二次元の彼女」「アニメ」を始めとしたフレーズは特にインパクトがある。これぞ第3章の幕開け!と言いたくなるようなテーマである。今作収録曲の中でも特に印象に残った曲。



「Souvenir〜思い出〜」はラップ調のボーカルが特徴的な曲。少し字余りしたような歌い方になっている。曲はミディアムテンポのポップなもの。タイトルはお土産」を意味している。歌詞は海外旅行のお土産を買おうとしたらすぐに店じまいしてしまったことから始まり、2番では少子化問題にも触れている。何ともとっ散らかった歌詞ではあるが、サビではみんなで食べる夕食の楽しさについて語っている。恐らくそれが一番伝えたかったことなのだろう。槇原敬之が伝えたかったことを次々に組み込んだような曲。今までに無かったような歌い方とサビのメロディーは印象に残ったが、歌詞の面ではあまり印象に残らなかった。


「運命の人」は直球のバラードナンバー。ピアノによるイントロから名曲を予感させる。しっとりと聴かせるバラードである。歌詞は恋人に浮気されていたことを知った男の気持ちが語られたもの。しかも浮気相手は主人公の友人。このシチュエーションは往年の名曲「彼女の恋人」を彷彿とさせるが、そちらとは全くアプローチが違う。「彼女の恋人」では怒りや嫉妬が伝わってくるような感じだったが、この曲は恋人のことを嫌いにならずにそのまま諦めることを決意している。優しさとも、達観してしまったとも取れるような感じである。「移ろう季節の中で 僕は移ろわない気持ちもてあましている」という歌詞が印象的。大人の雰囲気を感じさせる曲になっている。 久し振りに心に突き刺さるバラードだった。これは名曲である。



「テレビでも見ようよ」はしっとりと聴かせるバラード。この曲もピアノから始まるイントロ。長年連れ添った夫婦が仲直りしようとする姿を描いた歌詞。40代後半に差し掛かった現在の槇原敬之だからこそ描けるテーマだと言える。「どんな思い出もいつか一人で懐かしむ日が来るなら ここに来て 隣に座って 一緒にテレビでも見ようよ」というサビの歌詞が印象的。飾った愛の言葉ではなく、「一緒にテレビでも見ようよ」と日常的な行動を提案する辺りが槇原敬之らしい。意外とそのような言葉の方が心に響くのだろう。管理人はまだこの曲に共感できるような境地には至っていないが、歳を重ねたらもっと名曲だと感じられるのかもしれない。



「5 minutes(Renewed)」は先行シングル「超えろ。」のC/W曲。NHKプレミアムドラマ『ボクの妻と結婚してください。』の主題歌に起用された。アルバムバージョンで収録されている。言葉では言い表しにくいものの、イントロにはシンセによるホワホワした感じの音が追加されている。ミディアムテンポの優しいバラードナンバー。槇原敬之の王道バラードと言ったところ。駅のホームを舞台に恋人が別れる光景を描いているが、これは人生の終わりにも通じていると思う。タイアップ相手のドラマ(小説)は余命宣告をされた男が主人公だったのでそれに合わせたのだろう。もし5分後に死ぬとしたら、側にいる大切な人に何を伝えられるのだろうか?そのようなテーマになっている。「ありがとうと笑って伝えるための5分にしたいんだ」というフレーズが印象的。かなり重いテーマだが、重苦しさを感じさせないような曲に仕上げる辺りは流石である。



「You are what you eat.」は食べることをテーマにしたポップな曲。サビは壮大なイメージのものになっている。タイトルは「あなたが食べた物があなた自身だ」というような意味があるのだろう。英語のことわざにあるらしい。「そして僕は明日もスタートラインに立って いつものように続きを始める とても大事な事なんだ 食べたものが君になるから」という歌詞が印象的。まるで食育のテーマソングのような曲である。食べ物にまつわる曲は槇原敬之の楽曲に数曲あるが、このような食育へのメッセージのような曲は見られなかった。



「A HAPPY NEW YEAR」は松任谷由実の楽曲のカバー。槇原敬之は松任谷由実の影響を強く受けており、カバーアルバム「Listen To The Music」シリーズでも数曲カバーしてきた。編曲はTomi Yoが担当した。Tomi Yoは「Listen To The Music3」でもメインで編曲を担当していた。ピアノを中心としたかなりシンプルなアレンジになっており、槇原敬之のボーカルを聴かせるイメージのもの。原曲に忠実なアレンジである。ボーカルも原曲に忠実。槇原敬之自身がアレンジしないと不思議と違和感がある。新年の願いが込められた優しい曲である。何故このタイミングでカバーしたかは分からないが、素晴らしい曲には変わりない。


「信じようが信じまいが」はロック色の強い曲。タイトルも中々に攻撃的だが、歌詞もかなり刺々しい感じ。匿名をいい事に他人に誹謗中傷する人間を批判した歌詞になっている。「自分が思うより言葉は誰かを傷つけてしまう」という歌詞が印象的。説教臭いと感じてしまうような歌詞だが、言っていることは正論だと思う。繰り返し登場する「you get what you give.」というフレーズは「自業自得」というような意味があるようだ。サウンドは格好良いものの、歌詞があまり好きになれない。身につまされるからだろう。正論過ぎて耳が痛くなる。



「理由」は先行シングル曲。テレビ朝日系ドラマ『はじめまして、愛しています。』の主題歌として書き下ろされた。近年の曲で言うと「Fall」を彷彿とさせるダンサブルな曲になっている。ギターサウンドが前面に出ているのが特徴。そのような曲に乗る歌詞は「信じることの難しさ」をテーマにした重いもの。ライフソングの要素がかなり濃い。「神様」のフレーズを使ってしまった。自分自身や恋人のことを信じていたのに、いきなり「神様」を信じてしまった。具体的な例えも無くひたすらに説教していくような歌詞である。サウンドは好きなのだが、歌詞が好みではない。



「超えろ。(Renewed)」は先行シングル曲。関西テレビの「超えろ。キャンペーン」のテーマソング、カンテレの社歌として作られた。関西テレビ系情報番組『ゆうがたLIVEワンダー』のテーマソングとしても使われている。アルバムバージョンで収録されている。ファミコンのようなピコピコ音が新たに追加されているのが特徴。曲は壮大な応援歌となっている。曲調こそポップだが、かなりメッセージ性が強い歌詞である。サビでは「超えろ」と連呼している。「七転び八起きの8の文字を横に倒して∞の可能性を見つけろ」というフレーズが印象的。説教臭さや押し付けがましさはあまり感じさせない。サウンド面については、ピコピコ音は入れなくても良かったように思える。


「もしも」は今作のラストを飾る曲。イントロ無しで始まる。ギターが主体になった力強いロッカバラード。ラストにふさわしい壮大さと力強さを持っている。歌詞もかなりメッセージ性の強いものになっている。「もしも突然音楽が聞こえない日が来ても いつでも君の側で僕は歌い続けるから」というサビの歌詞が印象的。これはファンへの決意表明とも解釈できるかもしれない。圧倒的な力強さと優しさを持った曲である。ここまで語られてきたあらゆるメッセージすら超えてくる。間奏のギターソロは鳥肌が立つこと請け合い。「Such a Lovely Place」を思わせる曲である。これ程の名曲を作り上げた槇原敬之の才能にはただただ脱帽するのみ。 今作はこの曲のためだけにあると言っても過言ではない。



感想としては、いつも通りのアルバムと言った感じ。最早安定感の塊である。「第3章の幕開け」と称していたが、言うほどか?と思ってしまった。しかし、あくまで「幕開け」である。次作以降はさらに変貌を遂げていくのかもしれない。近年の作品には珍しく、ラブソングにもライフソングにも当てはまらないような楽曲もあり、この点では変化を遂げていると言える。
インストから始まるだけあってアルバム全体の流れはとても良く、最後までダレることなく聴くことができる。楽曲単位でも印象に残る曲が多く、近年のアルバムの中ではかなり好印象のアルバムだった。特に「運命の人」「もしも」は一回聴いただけで名曲だと確信した。


★★★★★