My Little Lover
2015-11-25
【収録曲】
DISC1「re:evergreen」
全曲作詞作曲編曲 小林武史
プロデュース        小林武史

1.winter songが聴こえる ★★★★★
2.pastel ★★★★☆
3.星空の軌道 ★★★★☆
4.今日が雨降りでも ★★★★☆
5.バランス ★★★★★
6.夏からの手紙 ★★★★☆
7.舞台芝居 ★★★☆☆
8.送る想い ★★★★☆
9.ターミナル ★★★★★
10.re:evergreen ★★★★★

DISC2「evergreen+」
全曲作詞作曲編曲 小林武史
4.作詞 小林武史・AKKO
7.作詞 AKKO
5.作曲 藤井謙二&小林武史
プロデュース        小林武史

1.Magic Time ★★★★☆
2.Free ★★★★★
3.白いカイト(Album Version) ★★★★★
4.めぐり逢う世界 ★★★★★
5.Hello,Again〜昔からある場所〜 ★★★★★+2
6.My Painting ★★★★☆
7.暮れゆく街で ★★★☆☆
8.Delicacy(Album Version) ★★★★★
9.Man&Woman ★★★★☆
10.evergreen ★★★★★

2015年11月25日発売
トイズファクトリー
最高位22位 売上1.2万枚

My Little Loverの9thアルバム。配信限定シングル「ターミナル」を収録。オリジナルアルバムのリリースは「そらのしるし」以来約6年振りとなった。

今作はMy Little Loverのデビュー20周年記念作品でもある。1995年にリリースされたMy Little Loverの1st「evergreen」をリプロデュースした作品。「evergreen」は300万枚近く売り上げた大ヒット作にしてJ-POPの名盤と名高い作品。新曲のDISC1は「evergreen」を意識して制作されている。「極上のポップアルバム」を目標に作られた。

小林武史が全曲の作詞作曲編曲を担当している。My Little Loverの楽曲制作に関わるのはアルバムでは2008年リリースの「アイデンティティー」以来となる。

DISC2は「evergreen+」と名付けられているが、これはリプロデュース。リプロデュースとは言ってもセルフカバーではない。AKKOが小林武史にボーカルを録り直したいと提案したが却下されたようだ。ボーカルや当時の生演奏はそのままに、打ち込みの部分を生演奏にしたり、キーボードを一部再録したりして構成されている。音を少しいじってリマスターされている形。小林武史本人も「自分の音楽人生の中で一番生楽器の数が多いかもしれない」という旨の発言をしたという。


楽曲の感想についてはDISC1の収録曲のみにさせていただく。DISC2の収録曲の感想は
を読んでいただきたい。


「winter songが聴こえる」は今作のオープニング曲。とても明るい雰囲気の曲で、ウォール・オブ・サウンドを彷彿とさせる分厚いサウンドが展開されている。打ち込みと生演奏をバランス良く織り交ぜており、豪華なサウンドである。タイトルからも察しがつくが、冬を舞台にした曲。クリスマスソングでもある。「今年起こった出来事 ツリーの飾りのように並んでる」という歌詞が印象的。オープニングにふさわしいとてもポップな曲となっている。往年のマイラバのようでもあり、新機軸のマイラバとも言えるような曲。


「pastel」はミディアムテンポのポップな曲。イントロの入り方は何となく「Man&Woman」を思わせる。ホーンやギターのカッティングが前面に出たサウンド。お洒落で上質なサウンドである。サビの跳ね上がるようなメロディーと韻が踏まれた歌詞は聴いていてとても心地良い。歌詞は大人の雰囲気を感じさせるラブソングとなっている。しかし、可愛らしさも感じさせる辺りはマイラバならではと言ったところ。


「星空の軌道」はしっとりと聴かせるバラードナンバー。今作の中では数少ないストリングスが使われた曲。しかし、ストリングスが主張し過ぎない程度のバランスに仕上がっている。歌詞は運命の人に出逢った女性の気持ちが描かれたもの。「巡り巡る 季節も恋も花の色も またいつか 出会ってゆく 星空の 軌道のように」という歌詞が印象的。この曲もまた、大人のラブソングと言えるような雰囲気を持っている。しっとりした曲と、AKKOの無垢な歌声との対比がこの曲の魅力である。


「今日が雨降りでも」はミディアムテンポのバラードナンバー。「星空の軌道」よりはテンポが速め。サウンドはドラムとギターのアルペジオが前面に出ている。他の曲よりもバンドサウンドが目立っている。ストリングスも少し使われている。聴き流していても美しいメロディーだと思えるようなメロディーが展開されている。歌詞は雨の降る街を舞台にしている。暗い気持ちを雨降りに例えている。「心はまだ雨降りでも 今夜もまだ雨降りでも 明日はきっと晴れるから 夜明けはきっと近いから」という歌詞が印象的。


「バランス」は壮大なバラードナンバー。バンドサウンド主体の力強いサウンドが展開されている。その割にはギターが少し後ろで聴こえる印象がある。これは近年の小林武史の傾向とも言える。張り詰めたサウンドとふわふわしたAKKOの歌声とのギャップが特徴的。歌詞は恋人同士のすれ違う感情を描いたもの。小林武史らしい歌詞のテーマである。女性目線の歌詞だが、これを元妻のAKKOに歌わせるのか?と言いたくなるような際どいフレーズもある。それでも良い曲として収まっているのはサウンドやボーカルの「バランス」が取れているからなのだろう。


「夏からの手紙」はここまでの流れを変えるようなポップな曲。ピアノやバンドサウンドを中心として、様々な音が使われたカラフルなサウンドになっている。歌詞はタイトル通り夏を描いたもの。小さな頃の夏休みを思い出させるような懐かしい雰囲気に溢れている。「夏の祭りの音がする 鐘や太鼓の革の音は変わらない 笑ってる 子供と大人が ふいに入れ替わったりしてる」という歌詞が印象的。いつ聴いても夏休みに戻してくれるような感覚がある。この曲だけは何故か「evergreen」ではなく、 「PRESENTS」辺りの作風に似ている感じがする。


「舞台芝居」はAORやジャズテイストの曲。ホーンやベースが前面に出た、ムードのあるサウンドが展開されている。メロディーは何となく歌謡曲っぽい。特にサビ。歌詞は恋人との関係や世間を舞台芝居に例えたもの。「この世はまるで 舞台芝居 悲劇と喜劇が交じりあう 酔わせたり意表をついたりして 歌ってる この世の素晴らしさと切なさ」というサビの歌詞が印象的。タイトルやサウンドから、今作の中でもかなり浮いている印象がある。それでも何故か印象に残り、クセになるという不思議な曲。今までのマイラバの楽曲には見られなかったような曲だと思う。


「送る想い」はゆったりとしたバラードナンバー。バンドサウンド主体の淡々とした曲調が特徴。小林武史にしては捻りがないと感じるくらいシンプルなアレンジなのだが、それが逆に普遍性や力強さを生んでいる。歌詞は別れた恋人への想いを語ったもの。普通の別れというよりも死別したような感じがする。「あなたには 伝えること ありすぎて まだ おしまいには 出来ないようです」という歌詞が印象的。いつ聴いても違和感の無いような普遍性を持った曲である。


「ターミナル」は配信限定の先行シングル曲。映画『起終点駅 ターミナル』の主題歌に起用された。壮大なバラードナンバー。力強いバンドサウンドと流麗なストリングスの響きがとても心地良い。力んだようなAKKOのボーカルがこの曲の世界観を上手く表現している。突然はぐれてしまった恋人を捜す女性を描いた歌詞。映画の世界に寄り添ったテーマの歌詞である。絶望の中にある希望や灯が描かれている。重苦しいようでいて優しさに溢れた曲である。映画の主題歌にふさわしい名曲。


「re:evergreen」は今作のラストを飾るタイトル曲。ホーンやピアノが前面に出たミディアムテンポの曲。ラストのコーラスは圧巻。「列車」のフレーズが出ているため、「ターミナル」との繋がりを感じさせる。歌詞のラストは旅立ちを思わせるものになっており、これは「Magic Time」を想起させる。小林武史曰く「作りながらそうなっていったこと」らしいが、上手く出来ている。アレンジや曲の構成は「evergreen」を思わせるが、元の「evergreen」とはまた違った力強さを感じさせる。現在のMy Little Loverにしか表現できない世界観である。


名盤「evergreen」を意識しただけあって、全編通してバリエーション豊かなポップスが展開されている。装飾音と生音を絶妙なバランスで取り入れている。小林武史=ピアノ、ストリングスばかりだと考えている方こそ今作を聴くと感動するかもしれない。天才ポップス職人・小林武史が蘇っているのである。そもそも今作ではピアノやストリングスをほとんど使っていない。この進化は感動的。

DISC2は生音重視のサウンドに作り変えられている。元の作品よりも上質なサウンドになっている印象。この手の再録は元の作品を汚すようなものになってしまうことがよくあるが、今作は決してそうなっていない。しかし、藤井謙二が担当していたギターの部分が控えめになっている印象が否めない。小林武史は「ギターで音の壁を作りたくない」という旨の発言をしていたようだが、その傾向がかなり現れている。そこは残念だったが、それ以外は素晴らしい作品だった。

★★★★★