電気グルーヴ
1992-10-21

【収録曲】
1.2.4.9.10.作詞 石野卓球
3.5.6.7.作詞 ピエール瀧
11.作詞 石野卓球、ピエール瀧
全曲作曲 石野卓球
3.作曲 石野卓球、良徳砂原
5.作曲  ピエール瀧、良徳砂原
8.10.作曲 良徳砂原
プロデュース 電気グルーヴ、渡辺省二郎

1.スネークフィンガー ★★★★☆
2.Twist Of The World ★★★★☆
3.ザ・ケトルマン ★★★☆☆
4.人事を尽くさず天命を待つ ★★★★☆
5.ドカベン ★★★☆☆
6.Hi-Score ★★★★★
7.デマリンピック ★★★☆☆
8.KARATEKA 省略
9.March ★★★★★
10.Let's Go!無間地獄 ★★★☆☆
11.DS Massive ★★★★☆

1992年10月21日発売
キューン・ソニーレコード
最高位13位 売上2.3万枚

電気グルーヴの3rdアルバム。シングル「スネークフィンガー」が今作と同日に発売された。前作「UFO」からは11ヶ月振りのリリースとなった。

今作は電気グルーヴのメンバーから最低の評価を下されていたアルバムだった。今作発売以降のライブでも今作収録曲が演奏されることはほとんど無かったうえに、セルフトリビュートアルバム「The Last Supper」でも一切選ばれなかった。現在では多少はライブで演奏されるようになり、少しずつではあるがメンバーの考え方が変わっていることがうかがい知れる。石野卓球は「自分に新しくやりたい音楽ができたのに、パブリックイメージ通りのものを作らなければならない辛さがあった」と語っている。

今作は今まで通り、ヒップホップの要素が強い。ナンセンスな笑いを追求したような曲が目立っている。しかし、当時の電気グルーヴにとってはあまりやりたくなかった音楽だったのかもしれない。


「スネークフィンガー」は今作と同時発売されたシングル曲。テレビ東京系バラエティ番組『浅草橋ヤング洋品店』のオープニングテーマに起用された。タイトルはThe Residentsのサポート・ギタリストだったSnakefingerに由来する。お洒落なテクノサウンドを響かせているが、歌詞はかなりゲス。無理してダイエットに励む女性をバカにしたもの。「痩せない 痩せない 痩せないよ そんな目標果たせないよ 痩せない 痩せない 痩せないよ そんだけ食べてりゃ痩せないよ」と歌い上げるサビはインパクト抜群。この曲で歌われているような女性に聴かせたいところだが、間違いなく怒られるだろう。


「Twist Of The World」はポップなテクノナンバー。NHK教育テレビの『まんが日本史』のオープニングテーマに起用された。歌詞は直球なラブソング…と言いたいところだが、そこは電気グルーヴ。ふざけている。体目当てで女性にでまかせばかりを言う男を描いている。「パンツの中身は同じだな イジクリまわしてやりたいな うん あの娘のあんなトコあの娘のこんなトコ」という歌詞が印象的。サウンドはポップなのだが、ろくでもない歌詞である。


「ザ・ケトルマン」はハゲている人を題材にした曲。サウンドは終始ガチャガチャとしている。歌詞はハゲている人の良いところを苦し紛れに挙げていくもの。特に「紙がないときにメモにもなるじゃん」というフレーズはインパクト抜群。「ハゲてるからってカツラはねえじゃん」というフレーズは不思議と力強い。電気グルーヴならではのアホなテーマではあるが、割とクセになる曲である。


「人事を尽くさず天命を待つ」は当時の石野卓球の心情が現れたような曲。サウンドはテクノとロックを混ぜたような感じ。割と格好良いサウンドである。歌詞は虚無感に溢れている。「やれば出来ると言われるけれど 出来なくてもいいから やらずに済す」という歌詞が印象的。気分が落ち込んだ時に聴くと意外と励まされる…かもしれない。恐ろしくネガティブなフレーズが並んでいるため、そのような気分に浸りたい場合は良いだろう。


「ドカベン」はヒップホップテイストの強い曲。曲調は比較的ハード。ボーカルはラップ調。歌詞は夢に破れた人を描いたもの。ピエール瀧作詞だけあってシュールなネタが展開されている。「夢かまぼろしか ねぼけた眼で 夢から覚めずに八方ふさがり」という歌詞が印象的。夢破れた人を応援するわけではなく、その人の虚しさを描く辺りが電気グルーヴらしい。


「Hi-Score」はゲーマーをテーマにしたシュールな曲。サウンドは懐かしさすら感じさせるようなテクノ。ピエール瀧による作詞。コミカルな描写が並んでいる。会社では冴えない男がゲーセンに行って「ゲーセン魔人」になる…というもの。「夜までカンストめざしてプレイ クソの役にも立ちゃあしねえ」という歌詞が印象的。 ゲーセンに入り浸っている方には身につまされるような歌詞かもしれない。今作収録曲の中ではかなりの名曲。


「デマリンピック」はタイトル通りデマを題材にした曲。ラストにはピエール瀧が即興で歌っている部分がある。「本当にそうか 本当にそうか 黒か白かをはっきりしようか 本当にそうか 確認しようか 困らなければどっちでもいいか」というサビの歌詞が印象的。ネタのようでいて結構皮肉が込められている。あまり情報を鵜呑みにするのも良くないのだろう。


「KARATEKA」は今作のタイトル曲。インスト曲。インストではあるがナレーションが入っている。その声の主は熊倉一雄。曲はアシッドハウスのテイストが強い。次作「VITAMIN」に収録されていそうな感じ。「空手のマネして新聞配る 社長のふりして会社でいばる これぞ究極のKARATEKAなり」というナレーションのインパクトが凄い。どんな空手家なんだよと突っ込みたくなる。


「March」は別れをテーマにした曲。ふざけた歌モノメインな今作の収録曲の中でも珍しいほど真面目な曲。今作リリース直後のインタビューで石野卓球は「電気グルーヴの解散を想定して書いた」という旨の発言をしている。「いい事しか残らないよ 思い出なんて 悪いことはみんな忘れちゃうモノ どんなイヤな事でも時がたてば懐かしさで錯覚をするよ」という歌詞が印象的。内省的な雰囲気がたまらない。初期の電気グルーヴを代表する名曲だと思う。


「Let's Go!無間地獄」はヤクザをテーマにした曲。とんでもないテーマではあるが曲調はとてもポップ。普通の家庭の普通の子供が段々とグレていく様が描かれている。中学生になってからグレ始めて16歳で親になり、20歳でヤクザにスカウトされて、現在は幹部…という経緯。「こーゆー風になるなんて まさか誰にも分からない こーゆー風になるなんて まさに親のみぞ知るだね」というラストの歌詞が印象的。


「DS Massive」は今作のラストを飾る曲。曲はハードなヒップホップ。ボーカルはラップ調。タイトルの「DS」「土方スピリット」の略だが、流石に放送禁止用語なのでピー音が入っている。歌詞は極めてナンセンスなもの。とても紹介できたものではない。ラストには再び熊倉一雄のナレーションが入る。最初からまた聞きたいならこのCDを捨ててもう一度買い直せという旨のもの。めちゃくちゃなことを言っている。


中古屋ではそこそこ見かける。1stアルバムから今作まではヒップホップの要素が強い曲が多く並んでいる。次作「VITAMIN」以降は本格的なテクノやハウスが展開される。 かなりナンセンスな笑いを追求した曲が多いのが特徴。どうしても笑いたくなった時に聴いてほしいと思う。深夜を過ごすお供としておすすめ。

★★★☆☆