Mr.Children
2007-03-14

【収録曲】
全曲作詞作曲 桜井和寿
全曲編曲       小林武史&Mr.Children
プロデュース  小林武史

1.叫び 祈り 省略
2.Wake me up! ★★★★☆
3.彩り ★★★☆☆
4.箒星 ★★★★★
5.Another Story ★★★★☆ 
6.PIANO MAN ★★★★☆
7.もっと ★★★★☆
8.やわらかい風 ★★★☆☆
9.フェイク ★★★★☆
10.ポケット カスタネット ★★★☆☆
11.SUNRISE ★★★★★
12.しるし ★★★☆☆
13.通り雨 ★★★★☆
14.あんまり覚えてないや ★★★★☆

2007年3月14日発売
トイズファクトリー
最高位1位 売上120.7万枚

Mr.Childrenの13thアルバム。先行シングル「箒星」「しるし」「フェイク」を収録。前作「I❤️U」からは約1年半振りのリリースとなった。初回盤はドキュメンタリー映像が収録されたDVDが付属。

前作「I❤️U」は比較的ダークな作風が展開されていた作品だったが、今作はとにかく穏やかで優しい雰囲気に溢れた作品である。これは桜井和寿が今までの作品を振り返って、今作のような作品が無かったことに気付き、意図的にそうさせたからである。家族愛や心の拠り所の象徴と言えるような「HOME」というタイトルにしたのも印象的。家系図を模したようなジャケ写も今作の世界観を象徴している。そのような作風のため、全体的に暖かみのある曲が多く並んでいる。

今作は「IT'S A WONDERFUL WORLD」から4作連続で1位を獲得した。そして、シングルとアルバムの総売り上げが5000万枚を突破。120.7万枚を売り上げて結果的にMr.Children史上初となるアルバム年間売上1位を獲得した。


「叫び 祈り」は今作のオープニングを飾る曲。インストではあるが桜井の声が叫びとして入っている。バンドサウンドが前面に出た、ロック色の強いサウンドで構成されている。アルバムのオープニングらしく、ワクワクさせてくるようなものになっている。ただ、今作の内容はこのインストほどロック色の強いものではない。


「Wake me up!」は躍動感のあるポップロックナンバー。バンドサウンドだけでなく、ホーンも前面に出ている。歌詞は目覚めをテーマにしている。一日の始まりというだけでなく、自分が変わる瞬間も「目覚め」として描いている。ポジティブなメッセージが語られている。「明日になる前に 今日が終わる前に 見出せるかな 産まれては消える命の意味を」という歌詞が印象的。アルバムの実質的なオープニングにふさわしい明るさを持っている。


「彩り」は労働について描かれた曲。今作発売後にオリンパスの「デジタル一眼レフカメラ E-410」のCMソングに起用された。今作のCMの際にも使われていた。ゆったりとしたメロディーが心地良いミディアムナンバー。まるで槇原敬之の楽曲のような世界観だが、実際にメンバーも 「槇原くんが作ったのをブルーハーツが歌っているイメージ」という旨の発言をしており、それを認めている。歌詞のテーマは単純な作業でも回り回って誰かの幸せに役立っているから無駄ではない…というもの。何ともメッセージ性の強い内容だが、かなり好き嫌いが分かれるものだと思う。 素敵なメッセージだと思う方もいれば、ミスチル程のバンドが庶民に寄り添った曲を歌うのか?説得力が無い!と思う方もいるかもしれない。今作の作風を象徴するような曲と言える。


「箒星」は先行シングル曲。トヨタ自動車の「トビラを開けよう」キャンペーンのCMソングに起用された。爽快感溢れるポップロックナンバー。勢いの良いバンドサウンドが前面に出てサウンドを引っ張っている。曲全体を通して突き抜けるような明るさを持っている。歌詞もポジティブそのもの。「目を瞑っても消えない光 夜空に託した祈り 今日もどこかで光ってる 誰の目にも触れない場所で 悪いとこばっかり見付けないで 僕ら一緒に探そう」という歌詞が印象的。ポップでキャッチーでありながらしっかりとバンドサウンドが主張している。このようなシングル曲は今作以降あまり見られなくなる。 これぞミスチル!と言いたくなるような王道ソングだと思う。  


「Another Story」はしっとりと聴かせるミディアムバラードナンバー。独特なメロディーが展開されている。Aメロの早口な歌い方が特徴。ワウがかかったようなギターサウンドやピアノが前面に出ている。間奏のサックスソロがたまらない。歌詞は男の情けないところを描いたようなものになっている。「ごめんねって言葉 君は聞き飽きてるんだろうけど 誤解がしょうじないように 簡潔に伝えられぬもんかなぁ」という歌詞が印象的。一筋縄ではいかないひねくれたメロディーが不思議とクセになる。


「PIANO MAN」はジャズテイストの強い曲。ピアノやホーンが前面に出たサウンドが展開されている。歌詞はメッセージ性の強いもの。自己嫌悪を想起させるようなフレーズが多く登場する。社会風刺の要素も持っているが、自己嫌悪の要素の方が強い。「政治も株価も道行く人も怪しいけれど 自分を誰より信用できないでいる」という歌詞が印象的。ミスチルとジャズは割と相性が良い。定期的に聴きたくなるような曲調になっていると思う。


「もっと」はしっとりと聴かせるバラードナンバー。ピアノとフルートが前面に出た比較的シンプルなサウンドで構成されている。この曲の歌詞もメッセージ性の強いものになっている。アメリカ同時多発テロ事件がきっかけで制作された曲らしく、それを考えると頷ける点も多い。「どんな理不尽もコメディーに見えてくるまで 大きいハート持てるといいな もっと もっと もっと もっと もっと もっと」というラストの歌詞が印象的。桜井の優しいボーカルがこの曲を何よりも彩っている。アルバムのラストに置かれていてもおかしくないような曲だと思う。今作のバラード系のアルバム曲では一番好き。


「やわらかい風」はゆったりとしたバラードナンバー。元々は「箒星」のC/W曲候補だったという。ピアノとストリングスが前面に出たサウンドが展開されている。歌詞は別れた彼女への後悔を語ったものになっている。歌詞のテーマだけで言えば初期のようだ。「もっと大きな器で もっと優しくて そういう僕なら君を救えたろうな」という歌詞が印象的。優しい曲調だが、どこか達観したような雰囲気を感じさせる。ストリングスによるアウトロが何となく不気味。それ以外あまり印象に残っていない。


「フェイク」は先行シングル曲。映画『どろろ』の主題歌に起用された。このシングルは1曲収録の500円、40万枚限定生産でリリースされた。とは言えレア物ではない。打ち込みが多用されたロック色の強い曲。ギターサウンドが比較的目立っている。曲調だけでなく、歌詞もかなりアクが強い。「言ってしまえば僕らなんか 似せて作ったマガイモノです」という歌い出しからインパクトが凄い。世界のあらゆる物を疑いたくなるような歌詞である。今作の中では浮いていると感じる程異色な曲である。今作の中では数少ない、毒を持った曲だと思う。


「ポケット カスタネット」は実験性の強い曲。Salyuがコーラスで参加している。サウンドは打ち込みが多用されている。バンドサウンドはかなり控えめ。ゆったりしたまま終わるかと思ったら後半から急に加速して疾走感ある曲調に変貌を遂げる。歌詞はよく意味が分からないが、「季節ごとに咲いた花の香りを僕ら踏みしめてくる」というフレーズが好き。この曲の一番の聴きどころは壮大な間奏。そこは聴く度に鳥肌が立つ。しっとりした曲が並ぶ今作の中ではかなり異彩を放っている。


「SUNRISE」は壮大なロックナンバー。田原健一のお気に入りらしく、イントロのギターには拘ったようだ。今作の中ではかなりバンドサウンドが目立っている方の曲である。ピアノも同じくらい主張している。歌詞は冴えない日々から脱却しようとする男の心を描いたもの。これはニートや引きこもりの歌とも解釈できるかもしれない。「大きなもの 揺るぎないもの そう疑いもしないで過ごした 家族の愛にいつも守られて どうしてこんな 不確かなものを 無邪気に信じていれたんだ? どうしてこんな 不安定なものを…」という歌詞が印象的。 決意表明のような歌詞と力強いバンドサウンドは聴き手の背中を押してくれるようである。もう少し評価されても良いと思う。


「しるし」は先行シングル曲。日本テレビ系ドラマ『14才の母』の主題歌に起用された。70万枚を売り上げ、今の所最後の大ヒットシングルとなっている。7分超のかなり長尺のバラードナンバー。その長尺に加え、ピアノやストリングスが前面に出た相当に濃厚な仕上がり。歌詞は直球なラブソングである。「共に生きれない日が来たって どうせ愛してしまうと思うんだ」という歌詞が印象的。ファンではない層からもかなり知られている曲だが、管理人はあまり好きではない。今作以降のピアノストリングスバラードのテンプレのようになっている印象がある。 あまりにこってりし過ぎていて、1回聴いたらお腹いっぱいになってしまう。ミスチルがあまり好きではない親から「ミスチルはサビだけ聴けば十分」と言われて腹を立てたことがあったが、この曲に関してはそれが頷ける。


「通り雨」はここまでの流れを変えるようなポップな曲。曲は前作をレコーディングした直後にできていたという。ホーンが効果的に用いられており、聴いているとワクワクするような曲になっている。そのような曲調に反して歌詞は中々に重い。「通り雨」を嫌なことや悲しみの象徴として描いているのだろう。「叶わない夢なら 捨てちゃえば身軽だよ 知ってる 分かってるんだけども もう少し抱きしめていたいや」という歌詞が印象的。ラストに差し掛かるこの位置に置かれていることで存在感が増していると思う。


「あんまり覚えてないや」は今作のラストを飾る曲。ゆったりとしたバラードナンバー。シンプルなバンドサウンドとピアノが主体になったサウンド。歌詞は当たり前の光景を描いているようでいて、壮大なストーリーを持っているもの。桜井が歌詞を書きながら泣いてしまったというエピソードがある。1番は「あんまり覚えてない」ことが、2番では「覚えてる」ことが語られている。「じいちゃんになったお父さん ばあちゃんになったお母さん」から続く2番はかなり良い話。ここで御託を並べて解説するのも難なので、直接聴いていただきたい。ラストにふさわしく 今作の世界観を総括するような曲になっていると思う。


大ヒット作なので中古屋ではよく見かける。いつになく優しく穏やかな作風。そのため、ミスチルの大きな魅力の一つである「毒」がほとんど無い。アルバムの長さがミスチルのオリジナルアルバム史上最長(「REFLECTION」の{Naked}除く)の上に様々な曲調で聴かせるアルバムという訳でもないので途中でダレてしまうことがしばしばある。ロック色の強い曲が少なく、ピアノやストリングスの比率が高まっている。俗に言う 「コバチル」状態が進行している。ミスチルの中でもロック色の強いものが好きな方には厳しい作品だと思う。その手の作品の方が好きな管理人にはあまり響かなかった。

★★★☆☆