サザンオールスターズ
2008-12-03


【収録曲】
全曲作詞作曲 桑田佳祐
11.作詞作曲 大森隆志  
全曲編曲       サザンオールスターズ
3.4.5.13.弦管編曲 八木正生
7.9.管編曲 新田一郎
8.弦管編曲 新田一郎&国本佳宏
プロデュース  高垣健 サザンオールスターズ

1.DJ・コービーの伝説 ★★★★☆

2.思い出のスター・ダスト ★★★★☆
3.夏をあきらめて ★★★★★
4.流れる雲を追いかけて ★★★★☆

5.匂艶 THE NIGHT CLUB ★★★☆☆
6.逢いたさ見たさ病める My Mind ★★★★☆
7.PLASTIC SUPER STAR (LIVE IN BETTER DAYS) ★★★★☆
8.Oh!クラウディア ★★★★★
9.女流詩人の哀歌 ★★★★★

10.NUDE MAN ★★★★☆
11.猫 ★★☆☆☆
12.来いなジャマイカ ★★★☆☆
13.Just A Little Bit ★★★★☆


1982年7月21日発売(LP、CT)
1984年6月21日発売(初CD化)
1989年6月25日再発(CD、CT)
1998年4月22日再発(CD)
2008年12月3日再発(CDリマスター、現行盤)
ビクター
最高位1位 売上57.6万枚(LP)
最高位1位 売上39.0万枚(CT)
最高位64位 売上0.5万枚(1998年盤)
最高位89位 売上0.2万枚(2008年盤)


サザンオールスターズの5thアルバム。先行シングル「匂艶 THE NIGHT CLUB」を収録。前作「ステレオ太陽族」からは丁度1年振りにリリースされた。1998年盤の初回盤は紙ジャケ仕様で、2008年盤の初回盤はデジパック仕様。

今作リリース前の1982年1月には「チャコの海岸物語」が久々のトップ10ヒットを記録するも、今作には未収録。2月には桑田佳祐と原由子が結婚した。そのような話題性もあってか、チャートでは1位を獲得し、今作までのサザンのアルバムの中では最多の売上を記録した。

今作では桑田佳祐らが大学生時代に所属していたサークル「BETTER DAYS」の後輩である国本佳宏がキーボードで参加している。メンバー一覧の下にゲストミュージシャンとは別に名前を掲載されていたり、アーティスト写真ではメンバーと一緒に写っていたりと実質7人目のメンバーのような待遇を受けていた。


裸の男のお尻が露わになったジャケ写がなんとも印象的だが、桑田佳祐曰く「カメラマンがインドかパキスタンの海岸で撮った写真の中から選んだもの」らしい。リリース当初は桑田佳祐が写真の男の正体ではないか?という説もあった。



「DJ・コービーの伝説」は今作のオープニング曲。ノリの良いポップロックナンバー。サウンドはピアノが前面に出ている。ビリー・ジョエルを彷彿とさせるような曲になっていると思う。タイトルの「DJ・コービー」は桑田佳祐と親交が深い小林克也のこと。小林克也によるDJも入っている。トミー・スナイダーと作業をするようになるまでは小林克也に英語を聞くことがあったという。歌詞は日本語と英語をごちゃ混ぜにしたようなもの。意味は分からないがとりあえず楽しそうなことは伝わってくる。オープニングにふさわしい曲になっていると思う。



「思い出のスター・ダスト」はしっとりと聴かせるラブソング。AOR色の強いサウンドが展開されている。女性コーラスが参加しており、曲を盛り上げている。歌詞は横浜の街を舞台にしている。かなりストレートな愛の言葉が並べられている。タイトルの「スター・ダスト」は横浜の米軍基地の近くにあったバーの名前だという。聴いているだけで横浜の街並みが浮かんでくるような曲である。



「夏をあきらめて」は歌謡曲テイストの強いバラードナンバー。後にベスト盤「海のYeah!!」に収録された。今作リリースの直後に研ナオコがカバーしたことでも知られている。サウンドはストリングスやホーンが効果的に使われたものになっている。歌詞はタイトル通り夏を舞台にしたバラード。「胸元が揺れたら しずくが砂に舞い 言葉も無いままに あきらめの夏」という歌詞が印象的。ゆったりした曲調ではあるがサビは中々にキャッチー。メロディーメーカーとしての桑田佳祐の実力がうかがい知れる。


「流れる雲を追いかけて」は原由子ボーカル曲。ピアノやホーンが前面に出たゆったりとした曲。歌詞の舞台は満州で、中国残留孤児を描いている。桑田佳祐の父親が満州からの引揚者であることに影響されたようだ。「大連」「進軍ラッパ」など、その時代を想起させるようなフレーズが並んでいる。この曲のような社会派な内容の曲は以降のサザンの楽曲に定期的に見られるが、その路線は今作から現れるようになった。



「匂艶 THE NIGHT CLUB」は先行シングル曲。後にベスト盤「海のYeah!!」に収録された。「匂艶」は「にじいろ」と読む。当然これは桑田佳祐の造語である。このフレーズは後に「Moon Light Lover」でも登場する。ホーンとベースが前面に出た歌謡曲。ボーカルは特に歌謡曲そのまま。歌詞はナイトクラブを舞台にしており、下ネタ路線のもの。余談だが、ゴールデンボンバーの鬼龍院翔が「女々しくて」を作る際にこの曲のアレンジを参考にしたとか。サザンの歴史の中では地味な曲のようでいて与えた影響はかなり大きい。



「逢いたさ見たさ病める My Mind」はしっとり聴かせるバラードナンバー。松下電器の「ザ・サード」のCMソングに起用された。イントロには電話のコール音が入っている。サウンドはピアノが前面に出ている。歌詞は別れた恋人に逢いたい男の心を描いたもの。電話をかけても出てくれないのだろうか?「時折君がそばにいた頃の 香りが風に舞うような気がする」という歌詞が印象的。CMソングに起用されたこともあってか、地味な曲調ではあるがサビはキャッチー。



「PLASTIC SUPER STAR (LIVE IN BETTER DAYS)」は大学生時代のライブテイク。青学在籍時代に所属していたサークル「BETTER DAYS」で演奏されたもの。ちなみに、スタジオ音源は無い。曲自体はノリの良いロックナンバー。英語と日本語をごった煮にした歌詞や独特なボーカルは大学生時代から健在。観客の歓声もかなり入っている。特にラストは観客の歓声で終わり、それで次の曲に繋がるためコンセプトアルバムのようになっている。サザンの大学生時代の姿がうかがい知れる曲である。



「Oh!クラウディア」はゆったりとしたバラードナンバー。流麗なメロディーが展開されており、まさに耳の保養と言ったところ。サウンドはストリングスが曲を彩っている。過ぎた夏の恋を思い出すというサザンの王道とも言えるテーマの歌詞。「心にしむ恋は 今宵悲しく 一人でいると なおのことだよ」という歌詞が印象的。前の賑やかな曲から一転してこの曲になるのでギャップがすごい。もう少し評価されても良いバラードだと思っている。


「女流詩人の哀歌」はAOR色の強いバラード。ユニ・チャームや講談社文庫、鈴乃屋、雪印の「スライスチーズ」のCMソングに起用された。異常にタイアップが多い。サウンドはピアノやホーンが前面に出ている。流れるようなメロディーが聴いていてとても心地良い。艶のある桑田佳祐のボーカルがこの曲の世界観を構成している。歌詞は夏の海辺を舞台にした下ネタ路線のもの。歌詞とサウンドの乖離ぶりがたまらない。サウンドが管理人の好みどストライクなので評価がかなり高くなっている。


「NUDE MAN」は今作のタイトル曲。松下電器の「ヘッドフォンステレオ WAY」のCMソングに起用された。1分11秒という非常に短い曲。歌が入っているのだが、歌詞は掲載されていない。公式サイトでも歌詞が無い扱いをされている。どうやらロッキード事件について描かれたものらしい。ノリの良いポップロックになっているので、もっと長いバージョンを聴いてみたい。かなり曲が短いのは、CM用に作ったからなのだろうか?



「猫」は大森隆志作詞作曲による曲。ボーカルも大森隆志が担当した。2分半ほどの短い曲。タイトル通り猫について歌われている。お世辞にも上手いとは言い難いボーカルではあるが、味のあるボーカルである。桑田佳祐が歌うとまた違った曲になる気がする。アルバムの流れの調整として桑田佳祐以外のメンバーによるボーカル曲は大きな役割を持っていると思う。


「来いなジャマイカ」はレゲエ調の曲。日産自動車の「パルサー」のCMソングに起用された。南国風の涼しげなアレンジがされているが、それに乗る歌詞は過激なもの。歌詞カードでも一部カットされている部分がある。女性コーラスがフィーチャーされており、かなり目立っている。歌詞については、はっきり言って全く意味が分からない。むしろ意味が分かったら別の世界に入ってしまうような気がする。桑田佳祐の才能が暴走したという他ない曲。


「Just A Little Bit」は今作のラストを飾る曲。本格的なジャズナンバー。ストリングスやホーンがフィーチャーされている。歌詞は英語詞が多め。元々は全編英語詞にする予定だったらしい。「言葉はいつも互いのため心を映してる ただよりそうだけじゃ通り過ぎるみたい」という歌詞が印象的。ラストにふさわしい落ち着いた曲である。様々な曲調を取り込んだ、とっ散らかったアルバムもここで美しく締められる。


度々再発されているので中古屋ではそこそこ見かける。現在ではリマスター盤も出回っているのでそちらを聴くことをおすすめする。次作以降ではコンピューターサウンドを導入するようになるので、純粋なバンドサウンドが展開される作品は「Young Love」まで長らく見られなくなる。楽曲の面では、学生バンドのノリが大分薄れているのがよく分かる。学生時代を懐かしんでいるような曲が多くなる印象。様々な曲調が展開されているので飽きにくい作品である。初期(コンピューターサウンドを導入するまで)のアルバムの中では一番の完成度を誇る作品だと思う。

★★★★☆