L-R
1994-10-21



【収録曲】
全曲作詞作曲 黒沢健一
5.10.作曲 黒沢秀樹・黒沢健一
6.作詞作曲 木下裕晴
7.作曲 L⇔R
9.作詞 黒沢健一、作曲 木下裕晴
全曲編曲 L⇔R、岡井大二&遠山裕
10.編曲 遠山裕
プロデュース 岡井大二&L⇔R

1.SOCIETY'S LOVE -ソサエティ・ラヴ- ★★★★★
2.REMEMBER -リメンバー- ★★★★★+2
3.STAY AWHILE -ステイ- ★★★★☆

4.CATCH THE TUBE -地下鉄で行こうよ- ★★★★☆
5.IT'S ONLY A LOVE SONG -イッツ・オンリー・ラヴ・ソング- ★★★★☆
6.EASY ANSWERS -イージー・アンサーズ- ★★★★☆

7.THEME OF B.L.T. -B.L.T.のテーマ- 省略
8.SEVENTEEN -17- ★★★★★

9.PARANOIAC STAR -パラノイアック・スター- ★★★★★
10.KEEP THE CIRCLE TURNING -サークル・ターニング- ★★★☆☆
11.HELLO, IT'S ME(ALBUM MIX) -ハロー・イッツ・ミー- ★★★★★+1


【初回盤の曲順】
DISC1「FACE-A」
全曲作詞作曲 黒沢健一
3.作曲 黒沢秀樹・黒沢健一
4.作詞作曲 木下裕晴

1.SOCIETY'S LOVE -ソサエティ・ラヴ- ★★★★★

2.CATCH THE TUBE -地下鉄で行こうよ- ★★★★☆
3.IT'S ONLY A LOVE SONG -イッツ・オンリー・ラヴ・ソング- ★★★★☆
4.EASY ANSWERS -イージー・アンサーズ- ★★★★☆
5.HELLO,IT'S ME(ALBUM MIX) -ハロー・イッツ・ミー- ★★★★★+1


DISC2「FACE-B」
全曲作詞作曲 黒沢健一
3.作曲 木下裕晴
4.作曲 L⇔R
6.作曲 黒沢秀樹・黒沢健一
 
1.REMEMBER -リメンバー- ★★★★★+2
2.STAY AWHILE -ステイ- ★★★★☆

3.PARANOIAC STAR -パラノイアック・スター- ★★★★★ 
4.THEME OF B.L.T. -B.L.T.のテーマ- 省略
5.SEVENTEEN -17- ★★★★★

6.KEEP THE CIRCLE TURNING -サークル・ターニング- ★★★☆☆


1994年10月21日発売
2017年2月8日再発予定(UHQCDリマスター)
最高位14位 売上11.4万枚


L⇔Rの5thアルバム。先行シングル「REMEMBER」を収録。シングル「HELLO,IT'S ME」が今作と当日にリリースされた。翌年には「IT'S ONLY A LOVE SONG」が「KNOCKIN' ON YOUR DOOR」のC/W曲としてシングルカットされた。前作「LAND OF RICHES」からは約10ヶ月振りのリリースとなった。初回盤はレコードのA面とB面を意識したような形の2枚組で、通常盤とは曲順が異なる。


今作はデビュー以来所属したポリスターから、ポニーキャニオンに移籍して初のアルバム。そして、紅一点だった嶺川貴子が脱退して元々の3人体制に戻った。ポリスター時代のアルバムからあった、タイトルをLとRで繋ぐ法則は移籍後も健在。

今作と同日にリリースされた「HELLO,IT'S ME」がL⇔Rにとって初のヒット曲となった。それに引っ張られてか、今までのアルバムよりも順位も売上も格段に向上している。


楽曲の感想については、通常盤の曲順を基準にして書いていく。


「SOCIETY'S LOVE」は今作のオープニング曲。2分半程度の短いポップロックナンバー。L⇔Rなら「ポップンロール」と言うべきだろうか。疾走感の溢れるメロディーは聴いているとつい体が動いてしまう。サビの解放感は鳥肌もの。サウンドはアコギが主体で、サビから激しいバンドサウンドが入ってくる。歌詞はサラリーマンを描いたようなラブソングとなっている。オープニングにふさわしく、聴き手をワクワクさせてくるような曲である。かつてのライブでの定番曲だったためかファン人気が高いようで、活動休止後にリリースされたベスト盤「Last Roll-11 years of L⇔R-」ではファン投票1位となって収録された。



「REMEMBER」は先行シングル曲。CASIOの「20BAR」のCMソングに起用された。ポニーキャニオン移籍後初のシングルであり、シングルとしては初のオリコンチャート入りを果たした。爽やかで切ないメロディーが展開されたポップナンバー。イントロのピアノが終わって黒沢健一の伸びのあるボーカルが入ってくる瞬間から引き込まれてしまう。キーボードが多用されたエバーグリーンなサウンドも絶品。歌詞は過ぎた夏の恋を思い出しているもの。青春時代の輝きを想起させるようである。
レコード会社移籍が影響したのか、ポリスター時代のマニアックさを取り払ったストレートなポップスという印象がある曲である。メロディー、アレンジ、ボーカル、コーラスワーク、歌詞…どれを取っても素晴らしい。管理人の中ではL⇔Rの最高傑作。L⇔Rを最初に聴いたのはこの曲がオープニングを飾った「Singles&More」だったので尚更印象深い。



「STAY AWHILE」は懐かしい雰囲気を持ったバラードナンバー。3連のバラード。サウンドはピアノが主体。この曲もまた、青春時代の光景を思い出させるような歌詞が展開されている。「乾いた口びるから 解き放たれた夢 二度と見れないパレードが僕らを載せていた まばたきさえ 許されない夏に」という歌詞が印象的。歌詞だけ見ていると「REMEMBER」の続編のようでもある。黒沢健一の美しいファルセットは聴いていてたまらなく心地良い。リスナーの思い出を少しずつ蘇らせてくれるような感じすら漂っている。



「CATCH THE TUBE」はサイケなテイストを持ったロックナンバー。サウンドはバンドサウンドの他にも打ち込みが多用されている。デジタルロック色の強いサウンドと言える。先を予測できないような、うねうねとしたメロディーが展開されている。ラストは次の曲と繋がる形で終わる。歌詞は地下鉄での恋模様を描いているもの。「あぁ退屈が 路上にすぐ溢れ出す わがままにチャンスだけ与えて」という歌詞が印象的。ただのポップアルバムで終わらせないという意志を感じさせるような、ひねくれた印象の曲である。その辺りはL⇔Rならでは。



「IT'S ONLY A LOVE SONG」は翌年に「KNOCKIN' ON YOU DOOR」のC/W曲としてシングルカットされた曲。黒沢兄弟による作曲。爽やかなミディアムテンポの曲。どことなく初期のビートルズを彷彿とさせる。12弦エレキギターやハーモニカが使われたサウンドはまさにビートルズのそれ。歌詞は「とりあえず 君のこと 歌にしよう」と思っている男を描いている。どこか気だるい雰囲気を感じさせる。「ただのラブソング」というようなシニカルなタイトルはL⇔Rらしさが溢れている。



「EASY ANSWERS」は木下裕晴作詞作曲による曲。比較的ロック色の強い曲。ベース担当が手がけただけあって低音が前面に出ているサウンドである。黒沢兄弟の作る曲とは違った味を見せているが、サビはしっかりキャッチーなものにしている。歌詞はスカした感じが漂っている。「"Just Give Me Something" "Just Give Me Money" いつでも望みはそれだけ」というサビの歌詞が印象的。メンバー全員が楽曲制作に関わり、なおかつクオリティーも高いというのが凄い。


「THEME OF B.L.T.」はインスト曲。作曲はL⇔Rとクレジットされている。インストではあるがラララと歌っているパートはある。アルバムのインタルードのような存在の曲だろうが、ブリティッシュロックからの影響を強く感じさせる格好良いサウンドが展開されており、インストだからと飛ばしてしまうにはもったいない。



「SEVENTEEN」は跳ね上がるようなメロディーが心地良いポップナンバー。爽やかでありながら勢いの良さも感じさせるメロディーである。キーボードが主体になったキラキラしたサウンドも素晴らしい。歌詞はタイトル通り、17歳の少年の複雑な心を描き出したもの。大人になることへの不安や迷いが絶妙な表現で描かれている。「いつの間にか 大人になって ソファーの奥 沈んでた」というフレーズはそれが顕著に現れている。シングルと言っても全く違和感の無いようなポップスである。現時点でベスト盤の類に収録されていないことを心底疑問に思う。管理人がこの曲を初めて聴いたのが17歳の時。このことは本当に良かったと思う。


「PARANOIAC STAR」は攻めた雰囲気のあるロックナンバー。作詞は黒沢健一、作曲は木下裕晴という形で制作された。何かが始まる予感を感じさせるようなイントロに、何度も挟まれる「てってってってっ」という音。かなりインパクトの強い曲だが、やはりサビはキャッチーそのもの。歌詞はロックスターのライブの様子を描いたようなもの。「歓声に掻き消され 君はまるでエキストラ」というサビのフレーズが印象的。ビートルズの来日公演のことを描いているという解釈があるが、割と現実味があると思う。サビの高揚感や突き抜けていくような黒沢健一のボーカルがたまらない曲。



「KEEP THE CIRCLE TURNING」はしっとりと聴かせる3連バラードナンバー。初回盤ではラストを飾っている。作曲は黒沢兄弟で、編曲は遠山裕の単独による。曲はイントロ無しで始まる。ゆったりとした美しいメロディーやシンプルなサウンドが耳に優しい。音の数は少なめで、黒沢健一のボーカルを聴かせる印象のもの。「いつか君に会いたい 時の気まぐれ飛び越え 微かなときめきの光を 探して行こう」という歌詞が印象的。アルバムが終わりに向かっていることを実感させてくれる曲である。


「HELLO,IT'S ME(ALBUM MIX)」は今作と同時発売されたシングル曲。グリコの「ポッキー」及び映画『四姉妹物語』の主題歌に起用された。L⇔Rにとっては初のシングルヒットとなった。当時のポッキーのCMは「ポッキー四姉妹物語」と称したストーリー性のある内容だったので覚えている方も多いかもしれない。アルバムバージョンでの収録だが、シングルバージョンよりも音質が良くなっている印象がある。ストリングスが使われた上質なイントロは聴いた瞬間に感動してしまう。歌詞は優しい雰囲気に満ち溢れたもの。「今日からのメロディーは 淋しさの歌じゃなく 優しさを含んでる」という歌詞が印象的。流麗なメロディーや、歌詞の一言一言を宝物のように大切にして歌う黒沢健一のボーカルには聴き惚れるのみ。時代が流れても決して輝きを失わないような曲だと思う。



そこそこ売れたので中古屋ではよく見かける。1曲目から爽快なポップスが展開されており、その勢いのままに最後まで聴けてしまう。レコード会社を移籍して売れることを意識するようになったためか、ポリスター時代の作品に見られたマニアックさが薄れている。今までには無かった曲調も取り入れているので完全にマニアックさが無くなったわけでもない。分かりやすいポップさとマニアックさのバランスが素晴らしい名盤。管理人の一番好きなL⇔Rのアルバムは今作。

★★★★★