KAN
2010-10-27

【収録曲】
全曲作詞作曲 KAN
全曲編曲       KAN、小林信吾
2.編曲 KAN、前嶋康明
8.編曲 KAN、YUICHI TAKAHASHI(漢字表記が分からなかったのでこの表記をさせていただく)
プロデュース KAN

1.ロック試練の恋 ★★★★☆
2.Solitude ★★★☆☆
3.Rock'n Soul in Yellow ★★★★☆
4.Happy Time Happy Song ★★★★★
5.50年後も ★★★★★
6.WHITE LINE〜指定場所一時不停止〜 ★★★☆☆
7.英語でゴメン ★★★★★
8.車は走る ★★★★☆
9.紅のうた ★★★☆☆

1999年4月21日発売
2010年10月27日再発(リマスター)
ワーナーミュージック・ジャパン
アップフロントワークス(2010年盤)
最高位31位 売上1.3万枚

KANの12thアルバム。先行シングル「英語でゴメン」「Happy Time Happy Song」を収録。前作「TIGERSONGWRITER」からは1年1ヶ月振りのリリースとなった。

今作は今までの作品よりもロック色の強い作風となっている。KAN曰く、「ここまで数年間に渡り作り続けていたロックテイストの強いナンバーがここにきていっきに3曲完成。」ということらしい。前作をリリースしてからKANはロシアを訪れたようで、そこでロシアにかぶれ、テーマカラーを赤にしたという。タイトルもそこから来ているのだろう。


「ロック試練の恋」は今作のオープニング曲。オープニングにふさわしい、ノリの良いポップロックナンバー。爽やかなギターリフが聴いていて心地良い。今までの曲よりも力んだような歌い方が特徴。歌詞はタイトル通り難しい恋愛について描かれている。「チャンスはどこにでもあって 必ず夢はかなうって風な 単調な慰めのフレーズなんか聴きたくはない」という歌詞が印象的。自らの過去のヒット曲すら批判しているような雰囲気がある。


「Solitude」はピアノの弾き語りによる短い曲。ピアノの弾き語りとストリングスのみで構成されている。曲は1分55秒とかなり短い。歌詞は恋人と喧嘩して別れた男の感情が描かれている。「孤独」を意味するタイトルからも、切なさが溢れている。もう少し長い曲だったらもっと評価されていたかもしれない。


「Rock'n Soul in Yellow」は洋楽のテイストを強く感じさせるロックンロールナンバー。曲は7分半ほどある。ハードなバンドサウンドだけでなく、ピアノも前面に出ているのがKAN流のロック。歌詞は英語と日本語をごちゃ混ぜにしたエロ路線である。結構攻めた感じの歌詞だが、それを曲調やサウンドで上手くごまかしている。「そうさ男はみんなエロがっぱ」という歌詞が印象的。渾身のロックナンバーということがよく伝わってくる。割と凝っているのだが、少し曲が長過ぎる印象が否めない。


「Happy Time Happy Song」は先行シングル曲。後にベスト盤「IDEAS」に収録された。ここまでの流れをぐっと落ち着けて癒してくれるようなポップな曲である。ピアノのリフから始まり、段々バンドサウンドが入ってくる構成が特徴。歌詞はタイトル通りのポジティブなもの。3000円の料金で恋を占う街角の占い師を描いた歌詞。しかし、その正体は「小さい小さい音楽家」。KAN自身をモチーフに描いているのだろう。「でもどっち道 憂う背中を3000円で押す役目です」という歌詞が印象的。占いの料金とアルバムの価格をかけている。この辺りの言葉遊びはKANならでは。 KANの作品としては異色な曲が並ぶ中で、王道と言えるこの曲が入るとさらに良曲に感じられる。


「50年後も」はしっとりと聴かせる王道のバラードナンバー。ピアノとストリングスが前面に出た重厚なバラード。歌詞は恋人への想いを語ったもの。「明日の朝もしも僕が死んでいたら君はどうする?」という歌い出しからインパクト抜群。「春の日には花が咲くように ぼくたちも変わらずに笑ってるかな 50年後も今日みたいに」という歌詞が印象的。今作をリリースしたくらいの時期にKANは結婚をしたようなので奥様に宛てた曲なのだろう。それにしてもこのようなテーマのバラードが多い気がする。しかし、どれも名曲ぞろいである。


「WHITE LINE〜指定場所一時不停止〜」はここまでの流れを変えるようなハードロックナンバー。BON JOVIを意識して作ったようだ。歪んだギターサウンドが前面に出ている。タイトルのインパクトが凄いが、歌詞はKAN自らの交通違反について語られている。「誰も皆死にもの狂いの競争社会です たとえばあの信号が青のうちに走りぬけたい」という歌詞が印象的。KANならではのユニークな世界観を持った曲である。とてもKANの曲とは思えない曲調なのだが、その歌詞のおかげでKANの曲と実感できる。


「英語でゴメン」は先行シングル曲。キーボードのキラキラした音色が前面に出たミディアムテンポのラブソング。直球な愛の言葉が並んでいる。「'Cause I love you,I love you 英語でゴメンね しかも歌で」というサビの歌詞が印象的。日本語で言うのではなく英語で言って照れ隠しするというセンス。美しいメロディーとサウンドだけでも引き込まれるが、このユニークな詞世界もたまらない。今作の中に入ることでさらに良さが際立っている。


「車は走る」は槇原敬之を意識して作られた曲。KANは槇原敬之を「最も尊敬する同業者の一人」と評価している。曲調、アレンジ、歌詞の言葉遣いはもちろん、歌い方に至るまで真似している。歌詞はストーリー性に溢れている。大どんでん返しには是非とも注目していただきたいところ。普通のアーティストがやったら「パクリ」と言われてしまうようなことをやっている。しかし、ただのネタではなくKANの曲として質の高いポップスに仕上げている。それが凄いところ。


「紅のうた」は今作のラストを飾る曲。重厚なロッカバラードナンバー。KANの伸びやかなボーカルがこの曲を彩っている。ロシアへの想いが語られた曲。ロシアというよりはソ連と言った方が良いかもしれない。「感傷もない 歓喜もない 無欲のうたをうたおう」という歌詞が印象的。虚無感を感じさせるような曲になっている。ロック色の強い今作をしっかりと締めている。


売上が低迷したためか中古屋ではあまり見かけない。前作「TIGERSONGWRITER」から中古屋での遭遇頻度が格段に下がってくる印象がある。ロック色の強いアルバムとしてよく語られるが、全曲がそうというわけではない。むしろ半々くらいの比率。正直KANの歌声とハードロックはあまり合わないと思う。そのためか、激しいロックナンバーに挟まれている王道な作風のポップな曲が際立って名曲だと感じられる。一曲単位だと良い曲が多いが、アルバムを通して聴くと微妙な感じ。いつも通りの、様々なジャンルを取り込んだポップスが展開されたアルバムが一番良いということに気がついた。

★★★☆☆