【収録曲】
全曲作詞作曲 久保田利伸
2.英詞 Gene Lees 
8.作詞 Paul Ftancis Webster
2.作曲 Antonio Carlos Jobim
4.作詞作曲 O'Kelly Isley Jr./Ronald Isley/Rudolph Isley/Emest Isley/Christopher Howard Jasper/Marvin Isley
5.作曲 久保田利伸,Rod Antoon
6.作曲 久保田利伸,森大輔
8.作曲 Johnny Mandel
11.作詞作曲 Stevie Wonder,Henry Cosby and Sylvia Moy
1.7.編曲 久保田利伸、森大輔
2.8.編曲 伊藤ゴロー
3.4.10.11.編曲 川口大輔
5.6.編曲 森大輔
9.編曲 草間信一
プロデュース 久保田利伸

1.As you're in Rio 〜Foreplay〜 ★★★☆☆
2.Corcovado(Quiet Nights of Quiet Stars) ★★★★☆
3.Smile・Eyes・Cry ★★★★☆
4.Between The Sheets ★★★★☆
5.Dance If You Want It(KUBBOSA ver.) ★★★★★
6.Heavenly Lady ★★★★★
7.As you're in Rio〜The play〜 ★★★☆☆
8.The Shadow of Your Smile ★★★★☆
9.a Love Story(KUBBOSA ver.) ★★★★☆
10.雨音(KUBBOSA ver.) ★★★★☆ 
11.My Cherie Amour ★★★★★

(初回盤のみ)DVD
Documentary in Rio de Janeiro
〜イパネマの息子〜

2013年7月3日発売
SME Records 
最高位11位 売上4.2万枚

久保田利伸の14thアルバム。先行シングルは無し。前作「Gold Skool」からは1年11ヶ月振りのリリースとなった。初回盤はDVD付属の2枚組仕様。

今作は実に22年振りとなる「PARALLEL WORLD」シリーズである。一作目は1991年リリースの「PARALLEL WORLD ⅠKUBOJAH」で、レゲエに挑戦したアルバムだった。今作ではタイトル通りボサノバに挑戦している。「PARALLEL WORLD」シリーズは恐らく、久保田利伸がいつもやっているR&Bやファンクとは違ったジャンルに挑戦するものなのだろう。久保田利伸はR&Bやファンクだけでなく、ボサノバにも影響を受けているようだ。ちなみに、「KUBOJAH」を制作した時点で次はボサノバにしようと決めていたという。

今作はボサノバの本場であるブラジルでレコーディングされた。今作を作り上げるにあたってはいつもの歌い上げてしまう癖を治すのに苦戦したという。今作制作後は「エモーションを追求し続けるR&Bのものとは違う、素朴でかつ、カラフルな歌い方を発見することができました。今後作っていく曲たちにも、なんらかのよい影響を与えそうです」と語っている。


「As you're in Rio 〜Foreplay〜」は今作のオープニングを飾る曲。50秒ほどの短い曲。全編英語詞の曲である。久保田利伸の涼しげな歌声を楽しめる。ほぼインストと言って良いだろう。


「Corcovado(Quiet Nights of Quiet Stars)」はボサノバの定番曲のカバー。アントニオ・カルロス・ジョビンが作った曲。ピアノとアコギが主体になった、シンプルで聴き心地の良いサウンドが展開されている。歌詞は当然英語詞。対訳を見る限りだと美しいバラードである。タイトル通りコルコバードの丘を舞台に描かれている。いつもとは違った、久保田利伸の抑えたボーカルが特徴的。ちなみに、ピアノを演奏しているのはアントニオ・カルロス・ジョビンの孫であるダニエル・ジョビン。彼の奏でるピアノは曲を美しく彩っている。


「Smiles・Eyes・Cry」は書き下ろしの新曲。作曲は森大輔との共同で行われた。シンプルなアコギの音色が前面に出た、清涼感溢れるサウンドが展開されている。久保田利伸が作詞しただけあって日本語詞の方が多め。「つなぎ合う手の中 確かめた愛は こぼれたあの涙 ぬぐえぬまま消えた」という歌詞が印象的。優しい歌声が聴いていてとても心地良い。ボサノバがよく分からない人でも楽しめる曲だと思う。


「Between The Sheets」はアイズレー・ブラザーズの楽曲のカバー。対訳は久保田利伸自ら行なっている。この曲もアコギやストリングスが主体となったシンプルなサウンド。少ない音の数なので久保田利伸のボーカルを限りなく引き立てている。歌詞は対訳を見る限りだとかなり濃厚な内容のラブソングである。タイトルを久保田利伸流に訳すと「シーツにくるまれて」となる。何ともアダルトな世界観の曲だが、このシンプルで美しいサウンドとボーカルにかかれば清涼感のある曲になる。ボサノバの味付けのバランスがかなり良い。


「Dance If You Want It(KUBBOSA ver.)」は1988年に発表した曲のセルフカバー。元のバージョンはバブル全盛期の匂いを強く感じさせるダンサブルなファンクナンバーだった。サウンドもシンクラヴィアが多用された派手なサウンドだった。しかし、こちらはアコギやピアノが前面に出た、かなり控え目なサウンドになっている。久保田利伸の突き抜けていくようにパワフルな歌声もささやくように優しいものになっている。歌い回しもかなり変わっている。元のバージョンの派手さが好きなのだが、こちらもこちらでかなり好き。 元のバージョンとの変貌振りが聴いていてとても楽しい。


「Heavenly Lady」は書き下ろしの新曲。この曲も森大輔と共同で作曲された。アコギとストリングスが前面に出た美しいサウンドが展開されている。優しい世界観を持ったラブソングである。歌詞は海を舞台にしている。「アクアマリン溶かしたような波と遊んだ あなたの濡れた髪が 無邪気に静かに時の流れ奪う」という歌詞が印象的。多幸感を感じさせる曲になっている。久保田利伸のシルキーなボーカルがたまらない。いつもの久保田利伸なら上質なバラードになっていただろう。


「As you're in Rio〜The play〜」はアルバムのインタルード的な曲。オープニング曲とは別バージョンで、長さも1分半ほどになっている。ここまでの流れを調整するような役割だろう。そこまで集中して聴かなくても良いと思う。


「The Shadow of Your Smile」はジャズの定番曲のカバー。原曲は1965年公開のアメリカ映画『いそしぎ』(原題『The Sandpiper』)の主題歌として使用され、現在に至るまで多数のアーティストによってカバーされており、世界的なスタンダードナンバーである。ピアノとストリングスが前面に出た、しっとりとしたサウンドが展開されている。この曲でもピアノの演奏でダニエル・ジョビンが参加している。歌詞は全編英語詞なので久保田利伸自ら対訳を行なっている。優しいラブソングのようだ。聴いていると眠くなりそうなくらい優しい曲になっている。


「a Love Story(KUBOSSA ver.)」は2005年にリリースした曲のセルフカバー。元のバージョンはしっとりとしたR&Bナンバーだったが、当然今作ではボサノバ風に味付けされている。サウンドはアコギやフリューゲルホーンが前面に出ている。歌詞は美しい夜の光景が浮かんでくるようなものである。「言葉の代わりに 今は Dance with me 夜空を 落として 揺れるままに」という歌詞が印象的。このバージョンだとさらに耽美的な世界観が現れている印象。元のバージョンよりも好きかもしれない。


「雨音(KUBBOSA ver.)」は1991年に発表した曲のセルフカバー。「PARALLEL WORLD」シリーズの前作である「KUBOJAH」に収録されていた。元のバージョンはレゲエのテイストを取り入れた、しっとりとしたバラードだった。元のバージョンでの情熱的なボーカルはぐっと抑えられており、一言一言を丁寧に歌うようなボーカルになっている。原曲の色は相当に薄められているのでサビを聴くまでは気付かないかもしれない。これはこれで良いと思えるようなセルフカバー。


「My Cherie Amour」はスティービー・ワンダーの楽曲のカバー。スティービー・ワンダーは久保田利伸が強い影響を受けた存在である。R&Bの定番とも言える名曲だが、これを見事にボサノバテイストに味付けして仕上げている。サウンドはキーボードとアコギが前面に出ており、今作の中では割と派手なサウンド。ボサノバらしく抑えて歌うところと、いつもの久保田利伸の力強いボーカルを少しだけ見せるところのギャップが特徴。原曲に耳馴染みがあるためか、今作のカバーの中では一番好き。


あまりヒットしたわけではないが中古屋ではそこそこ見かける。ボサノバにチャレンジしているので、「いつもの久保田利伸じゃない」と思って敬遠しがちかもしれない。しかし、ボサノバをよく分からない方も安心できるようなバランスでアレンジされているため、かなり聴きやすい。久保田利伸の趣味がよく反映された作品と言える。全11曲で40分と少しというコンパクトさも魅力。朝起きた時に聴きたくなるような、美しくて優しい曲ばかり。ボサノバだからと言って敬遠しないことをおすすめする。

★★★★☆