松任谷由実
2001-06-06

【収録曲】
全曲作詞作曲 松任谷由実
全曲編曲        松任谷正隆
プロデュース  松任谷正隆

1.Age of our innocence ★★★★☆
2.哀しみを下さい ★★☆☆☆
3.110℉ ★★★☆☆
4.リアリティ ★★★★☆
5.MIDNIGHT RUN ★★★★★
6.acacia[アカシア] ★★★★☆
7.Summer Junction ★★★★☆
8.TWINS ★★★★☆
9.Song For Bride ★★★★☆
10.Lundi ★★★☆☆
11.So long long ago ★★★★☆
12.幸せになるために ★★★★☆
13.7 TRUTHS 7 LIES〜ヴァージンロードの彼方で ★★★★★
14.PARTNERSHIP[after] ★★★☆☆

2001年6月6日発売
2013年10月2日再発
東芝EMI/EXPRESS(オリジナル盤)
EMI RECORDS(再発盤)
最高位2位 売上22.0万枚

松任谷由実の31stアルバム。先行シングル「PARTNERSHIP」「幸せになるために」「7 TRUTHS 7 LIES〜ヴァージンロードの彼方で」を収録。前作「Frozen Roses」からは1年7ヶ月振りのリリースとなった。タイトルは「アケイシャ」と読む。アカシアを英語読みしたもの。

今作は実に1982年リリースの「PEARL PIERCE」以来の夏季のリリースとなった。松任谷由実と言えば毎年冬にアルバムがリリースされるのが最早恒例と化していた。

今作はいつになく攻めた内容のアルバムとなっている。松任谷由実のアルバムは基本的に10曲、たまに11曲収録という形でリリースされてきたが、今作は何と14曲収録されている。シングル曲をラストに固めてアルバム曲を重視するという独特な曲順も印象的。この理由については発売時期の延期が影響しているという。「全く違うアルバムを2作立て続けに発売するかもしれない」とまで語ったことがあったようだ。

前作よりも売上がさらに下降している。遂に20万枚台まで落ち込んでしまった。とにかく「落ち目」というフレーズが付きまとっていたようだ。今作以降のオリジナルアルバムは今作の売上を越えることは無かったので20万枚を越えた最後のオリジナルアルバムということになる。


「Age of our innocence」は今作のオープニング曲。オープニングから6分越えの大曲。打ち込みが多用された壮大なポップロックナンバー。後半からはバンドサウンドが主体となる。サビの広がっていくようなメロディーは聴いていて心地良い。歌詞のメインテーマは「きみがいれば汚れない」というもの。「気高くて でも遠い 愛だけをみつめて 音の無い 宇宙を 永久に彷徨おう」という歌詞が印象的。オープニングながらラストの曲のような壮大さや気高さを持っている曲。


「哀しみを下さい」はカントリーテイストのサウンドが展開されたバラードナンバー。サウンドはアコギやパーカッションが前面に出ている。女の子数人によるコーラスワークが結構凝っていて、よく聴こえてくる。歌詞は片想いに終わった人への思いを語ったもの。「あきらめたあのひとよ どこかで変わらずいて いつまでも いつまでも 哀しみを下さい」という歌詞が印象的。曲全体がどこか自虐的な雰囲気を持っている。その雰囲気が意外とクセになる。


「110℉」は南国の雰囲気を想起させるポップな曲。民族音楽のテイストを強く感じさせるサウンドが展開されている。タイトルは華氏による温度である。摂氏に換算すると43.3℃となるようだ。歌詞はその暑い日の中で自殺する女性を描いている。「探さないでよ 私のゆくえを 見つけないでよ そのわけを わからないでよ 何もかも 深い深い海に消えるまで」という歌詞が印象的。「自殺」と聞くととてつもなく重い曲に感じてしまうだろうが、普通に聴いているととてもそうとは思えないくらい明るい曲調やサウンドである。そのギャップが狂気じみている。


「リアリティ」はヒップホップテイストの曲調を取り入れた曲。ゲストボーカルにはm-floのLisaが参加している。当時のm-floは3人組だった。終始一定のテンポで進んでいく曲調。イントロでは怪しげな音色を持ったホーンが前面に出ている。そこからは打ち込みがメインになる。歌詞はタイトル通り「リアリティ」について語られたもの。「ニュースがとび込むたびに なぜか薄れてゆくリアリティ 政治も事件もワイドショーもみんな夢の出来事みたい」という歌詞が印象的。 松任谷由実にしてはかなり異色な曲調だったので、合わないように思っていたが、意外と様になっているのには驚いた。


「MIDNIGHT RUN」は力強いポップロックナンバー。ギターサウンドが中心となったバンドサウンドやサックスが使われ、勢いのあるサウンドが展開されている。間奏のサックスソロは鳥肌もの。歌詞は三角関係の恋愛に敗れた男を描いている。「ずっときみが好きだったって言いたかった でもそれだけはどうしても言えなかった 本当に悪いのはぼくの方だから あいつのせいじゃない」という歌詞が印象的。疾走感のある曲調やサウンドが男の心情を表しているようである。今作のアルバム曲の中では一番好きな曲。


「acacia[アカシア]」は今作のタイトル曲。美しいメロディーが心地良いバラードナンバー。サウンドはアコギが前面に出ている。間奏ではバイオリンが使用されている。メロディーにはどこか懐かしい感じが漂っている。歌詞はコンサートツアーで北陸を訪れた際、能登でアカシアの花が散っていた様子を思い出して作ったという。「今は見えない未来にたったひとつの道しるべ なつかしすぎる未来が たったひとつの探しもの」という歌詞が印象的。タイトル曲らしく、今作の優しい世界観を象徴するような曲になっていると思う。


「Summer Junction」はポップなメロディーが展開されたバラードナンバー。MITSUBISHI MOTORSの「軽自動車キャンペーン」のCMソングに起用された。サウンドはギターが前面に出ている。歌詞はタイトル通り、高速道路を舞台に、別れようとしている恋人達を描いたもの。しかし、しばらく会えなくなるということなので完全に別れる訳ではない。「今のあなたと 今の私と 今のふたりが 消えてゆくの気づかないで見送っていた」という歌詞が印象的。爽やかな曲調なのだが、何故か切ない。松任谷由実らしい世界観が現れた曲だと思う。


「TWINS」は先行シングル「幸せになるために」のC/W曲。NHK教育テレビの海外少年少女ドラマ『アニマル・レスキュー・キッズ』のテーマソングに起用された。打ち込みが多用されたポップな曲。松任谷由実にしては異色なタイアップがされているが、タイアップ相手のことを考えてか、歌詞は分かりやすい言葉が多め。恋人達の出会いについて描かれている。「幸せすぎるとなんで涙が出るの 幸せの次に何が見えるの」という歌詞が印象的。聴いているだけでワクワクしてくるようなメロディーが展開されている。松任谷由実のボーカルも他の曲より優しい印象。


「Song For Bride」は先行シングル「7TRUTHS 7LIES〜ヴァージンロードの彼方で」のC/W曲。サウンドはピアノが前面に出ている。それ以外はほぼ打ち込みで構成されている。歌詞はタイトル通りのウエディングソング。新郎新婦の友人を主人公に描いているのだろうか?「いつか話そう 今日の微笑み あなたの大事な人に」という歌詞が印象的。流麗なメロディーが聴いていてとても心地良い。結婚を控えた人たちやその親しい人に聴いてほしい曲である。


「Lundi」は失恋ものバラードナンバー。大地真央に提供した「失恋」が元になって作られた。タイトルはフランス語で「月曜日」を意味するようだ。キーボードを中心としたサウンドが展開されており、メロディーやサウンドはどこかせわしない感じ。歌詞は恋人と別れた次の日を描いたもの。「いかなくちゃ いかなくちゃ そろそろいかなくちゃ 私を待ってる私がいる」という歌詞が印象的。メロディーやサウンド、歌詞等全てが一体になってとても慌ただしい感じを作り出しており、聴いていると訳もなく焦燥感を煽られる。


「So long long ago」は先行シングル「PARTNERSHIP」のC/W曲。シングルバージョンでは松任谷由実がピアノを弾いていたが、今作収録にあたって松任谷正隆が弾いたバージョンに差し替えられている。実質アルバムバージョンと言える。重厚感のあるバラードナンバー。力強いバンドサウンドが前面に出ている。歌詞は昔の恋人のことを忘れようとしている女性が描かれている。舞台は駅のホーム。「瞬くまに流れ去るホームには 消え残る雪が眩しく浮かんでいた 私は何を置いて来たんだろう ドアに映る顔の向う」という歌詞が印象的。 情景が浮かんでくるような繊細な描写がされたバラードは松任谷由実の王道と言える。


「幸せになるために」は先行シングル曲。TBS系番組『ウンナンのホントコ!/未来日記VIII』のテーマソングに起用された。しっとりとした曲調が心地良い、落ち着いたラブソング。サウンドはアコギと打ち込みで構成されている。歌詞は恋人への想いが語られたもの。「明日になれば あなたに会える そう ただそれだけのために もっと素直に もっとやさしく もっと強くなろうとしてきた」という歌詞が印象的。歌詞の一言一言を丁寧に歌うボーカルがこの曲の世界観を何よりも表現している。地味と言われればそうかもしれないが、聴く度に良さが出てくるような曲だと思う。


「7 TRUTHS 7 LIES〜ヴァージンロードの彼方で」は先行シングル曲。フジテレビ系ドラマ『ムコ殿』の主題歌に起用された。比較的人気のあったドラマなのだが、長瀬智也がドラマで演じている桜庭裕一郎名義で歌った劇中歌がシングルリリースされ、それの方がヒット(TOKIOにとって初の1位だった)するという悲しい事態に。タイトルの「TRUTHS」の部分は当初「TRUTH」で複数形ではなかったが、色々な方に相談した結果複数形となった。曲は打ち込みのみで構成されたポップな曲。独特なキーボードリフが終始展開されており、聴いているとつい指でなぞりたくなる。歌詞はウエディングソング。「だって私はあなたに会って運命を感じてしまったから どんな卑怯な手を使ってでも手に入れなきゃいけないと思った」という歌詞が印象的。割とインパクトのある曲なのだが、あまり売れなかった。管理人はタイアップ先のドラマを再放送で観た記憶があるので、結構思い入れのある曲である。もう少し売れても良かったと思うのだが…


「PARTNERSHIP[after]」は今作のラストを飾る先行シングル曲。日本テレビ系のシドニーオリンピック中継のテーマソングに起用された。[after]とあるが、これはシングルバージョンよりもキーが高くなっているから。曲は松任谷正隆のピアノの弾き語りによるバラードナンバー。歌詞は恋人へのメッセージのようになっているもの。「あなたと手をとり合い 時の川を越えてゆこう 誰も知らない虹を渡り」という歌詞が印象的。正直オリンピック中継のテーマソングにするには地味過ぎた印象。オリンピック中継なら盛り上がる曲の方が良いだろう。


そこそこ売れたので中古屋ではよく見かける。「落ち目」という言葉が付きまとっているのでさぞ地味な作品…かと思いきや、バラエティ豊かな曲が展開されており、これまでに無いような曲調を取り入れたものもある。聴いていると、松任谷由実のどんどん攻めていく姿勢がよく分かるだろう。そのため、いつになく勢いのある作品となっている。「落ち目」「枯れた」というような言葉に踊らされる前に、今作を聴くことをおすすめする。素直に良いと思えるような曲に出逢えるだろう。

★★★★☆