YUKI
2003-03-26

【収録曲】
全曲作詞 YUKI
3.作詞 日暮愛葉
7.作詞 YUKI,Caravan 
1.4.作曲 會田茂一
2.作曲 YUKI 
3.作曲 日暮愛葉
5.作曲 太田朝子
6.9.作曲 ナンバキイチロウ
7.作曲 Caravan 
8.10.作曲 松浦友也
11.作曲 スネオヘアー
12.作曲 辻村豪文
全曲編曲 會田茂一
2.3.編曲 日暮愛葉
6.編曲 YUKI&PRISMIC YUKI BAND、會田茂一
プロデュース 會田茂一

1.SWELLS ON THE EARTH 省略
2.泣きそうだ ★★★★☆
3.Good Times ★★★☆☆
4.ストロベリー ★★★☆☆
5.ロックンロールスター ★★★★☆
6.スタンドアップ!シスター ★★★★☆
7.ハミングバード ★★★★☆
8.センチメンタルジャーニー ★★★★★
9.ファンキー・フルーツ ★★★★☆
10.恋人よ(version) ★★★☆☆
11.コミュニケーション ★★★★★
12.砂漠に咲いた花 ★★★★☆

2003年3月26日発売
エピックレコードジャパン
最高位11位 売上9.0万枚

YUKIの2ndアルバム。先行シングル「スタンドアップ!シスター」「センチメンタルジャーニー」「ハミングバード」を収録。前作「PRISMIC」からは1年振りのリリースとなった。

今作は會田茂一をプロデューサーに迎えて制作された。前作でも編曲で参加していたが、今作ではほぼ全曲の編曲を担当している。前作のプロデュースを担当した日暮愛葉も一部の曲で参加している。

今作のテーマは「1970年代」と「SLOW」というもの。曲を噛み締めて聴いてほしいというYUKIの意向が現れているようだ。JUDY AND MARY時代とはまた違ったロックが展開されている。この頃のYUKIは妊娠を控えていた。それも今作の作風に影響していると言える。

今作はYUKIのオリジナルアルバムの中では唯一トップ10以下を記録したアルバムとなり、通算でもかなり低い売上である。何が原因で今作だけ売上が下降したのだろうか?


「SWELLS ON THE EARTH」は今作のオープニング曲。インスト曲である。サウンドはアコギやピアノで構成されている。ゆったりとした優しいサウンドと曲調が展開されている。優しい雰囲気に包まれた今作のオープニングを飾るには最適の曲だろう。


「泣きそうだ」は今作では唯一のYUKI作詞作曲による曲。ギターが掻き鳴らされたロックナンバー。終始同じギターリフが演奏されている。ギターは日暮愛葉が演奏している。歌詞についてはYUKI曰く「死を感じさせるような切ない感じを歌いたかった」とのこと。「愛情 幸せの形なんて人それぞれ 変わってゆくもの 紫陽花のブルー 生きる私のルール 雨は休まず ふり続く」という歌詞が印象的。今作のテーマ通り、1970年代の洋楽ロックを彷彿とさせる曲になっている。


「Good Times」は重厚感のあるロックナンバー。作詞作曲編曲は前作でも参加していた日暮愛葉が担当した。歪んだギターサウンドやベースが前面に出ている。後半から急に激しい曲調になるが、そこの低いパートは日暮愛葉が歌っている。日暮愛葉の歌詞はYUKIが書く歌詞とはまた違った過激さがある。「ああ 楽しい タバコをふかす前に キスをすると ああ おいしい…」という歌詞が印象的。YUKIの低音ボーカルを楽しめる曲でもある。前作で展開されたロックナンバーよりもマニアックで深みがある印象。


「ストロベリー」はゆったりとした曲調が心地良いポップロックナンバー。タイトルは大島弓子の漫画『苺物語』の影響を受けて付けられたという。YUKIの好きな漫画らしい。シンプルなバンドサウンドが展開されている。歌詞は少女性を感じさせるもの。「まぶたには 虹のイヤリング 悪夢だわ もう 戻れないわ 裸足の乙女よ つられて笑うよ 誰よりストロベリー」という歌詞が印象的。よく分からない世界観の曲だが、何となく可愛らしい。


「ロックンロールスター」は爽やかなポップロックナンバー。YUKIの自信作でもあるらしい。バンドサウンドと同じくらいピアノが前面に出ており、とてもポップなサウンドが展開されている。歌詞はロックンロールスターの影の部分を描いたもの。「ロックンロールスター 夢見せた 騙されていよう 花になろう」という歌詞が印象的。華やかなサウンドとは裏腹に、どことなく虚しさを感じさせる曲になっている。


「スタンドアップ!シスター」は先行シングル曲。今作の制作はこの曲から始まったという。装飾音は殆ど使われておらず、アンプラグド的なサウンドが展開されている。必要最低限で使われている感じ。後追いで聴くととてもシングル曲とは思えないくらい地味な感じの曲。しかし、サビはそこそこキャッチー。歌詞は女性への応援歌のようになっている。「枕のフリル 海鳴りの夢 幼き日々は あのままで お金だけでは 満たされないわ やりたいことに さからえないわ」という歌詞が印象的。一回聴いただけでは良さが分かりにくい印象がある。何回か聴くと少しずつ良さを見出せるだろう。


「ハミングバード」は先行シングル曲。シンガーソングライターのCaravanが作曲及び作詞で参加している。アコギが前面に出たフォークロック色の強い曲。ストリングスも使用されている。心に優しく沁みるようなメロディーが心地良い。YUKIのボーカルもあまり張り上げない感じでしっとりしている。歌詞は内省的な雰囲気を持ったもの。「せいいっぱいの恋愛で、神経性でスリープレスナイト 楽しんだぶん ヘビーウェイト ああ 泣きたくなるんだ」という歌詞が印象的。正直かなり地味な曲なのだが、少しずつ曲の世界に引き込まれる印象がある。


「センチメンタルジャーニー」は先行シングル曲。YUKIと同じ髪型のウィッグをつけた女性80人が登場するPVが特徴的。今作のジャケ写でもその様子が分かる。この曲もアンプラグド的なサウンドが展開されている。バンドサウンドだけでなく、アコーディオンやトランペットも使われている。歌詞は今までの人生を振り返ったような内容のもの。「おそれないで感じよう ムダなものは 捨ててゆこう」という歌い出しの歌詞が好き。曲や歌詞からはどこか懐かしい雰囲気が漂っている。シングル曲としては決して派手な曲ではないが、懐かしい雰囲気がたまらない。今作の作風を象徴するような曲だと思う。


「ファンキー・フルーツ」はここまでの流れを変えるようなロックンロールナンバー。トリンプの「恋するブラ」のCMソングに起用された。パディ・スミスの影響を受けて作られたようだ。サウンドはバンドサウンドの他にもチェロやシタールの音が使われている。エスニックな雰囲気を持ったサウンドとなっている。歌詞はYUKIならではのふわふわとした言語センスが前面に出たもの。文字で見るだけでは意味不明なのに、いざYUKIが歌うと凄く可愛い感じになる。YUKIの世界観がよく現れた曲だ思う。


「恋人よ(version)」は先行シングル「スタンドアップ!シスター」のC/W曲。アルバムバージョンで収録されている。「ダブをやりたい」というYUKIの意向が反映されたサウンドとなっている。ダブということもあってか、フィッシュマンズのメンバーの茂木欣一や柏原譲が参加している。目を瞑って聴いていると体が少し浮いているような感覚に襲われる。とても作り込まれたサウンドである。歌詞は恋人へのメッセージのようになっている。「向かい風に息もできずに たおれてしまっても 君だけが 僕のことを 知っている」という歌詞が印象的。かなり異色の曲調だが、割と合っていると思う。


「コミュニケーション」は爽やかなメロディーが展開されたポップな曲。作曲はスネオヘアーが担当した。この曲から今作のタイトルが出て来たようで、実質的なタイトル曲と言える。サウンドは優しいギターの音色が前面に出ている。歌詞はタイトル通りコミュニケーションについて語られたもの。「誰にもわかるわけないよ 心の中の中は だからこそまっすぐ伝えよう 今 まちがえてもいいのさ」という歌詞が印象的。タイトル曲にふさわしい存在感を持った曲。とにかくメロディーが心地良い。それだけでもたまらない。


「砂漠に咲いた花」は今作のラストを飾る曲。バンドのキセルと共作した曲であり、2003年5月にはキセルが歌ったバージョンがシングル化されている。サウンドはギターが主体だが、マリンバやチェロと言った楽器も使われている。歌詞は幸せを恐れない」というのがメインテーマ。母親としてのYUKIの姿もうかがい知れるような優しい雰囲気の曲である。アルバムをしっとりと締めている。


あまり売れた作品ではないが中古屋ではよく見かける。ソロデビュー作である「PRISMIC」とヒット作である「joy」に挟まれていて何とも地味な印象が否めない作品。シングル曲もどこか冴えない印象。しかし、中身は決して地味ではない。今までの作品よりも優しい雰囲気を持った作風である。多幸感も感じさせる。過小評価されている感があるが、聴かず嫌いせずに聴いてみてほしい。

★★★★☆