谷村有美
1989-06-21

【収録曲】
1.5.6.作詞 谷村有美
2.3.4.作詞 戸沢暢美
7.9.作詞 竹花いち子
8.作詞 谷村有美・戸沢暢美
10.作詞 小西康陽
1.2.5.7.8.作曲 谷村有美
3.4.6.作曲 西脇辰弥
9.作曲 伊秩弘将
10.作曲 有賀啓雄
1.5.8.9.編曲 松本晃彦
2.7.10.編曲 有賀啓雄
3.4.6.編曲 西脇辰弥
プロデュース 横内伸吾

1.明日の恋に投げKISS ★★★★☆
2.ボンネットに太陽 ★★★★☆
3.がんばれブロークン・ハート ★★★★★
4.傘を持ってでかけよう ★★★★☆
5.BOY FRIEND(Special Arranged Version) ★★★★★
6.HALF MOON ★★★★★
7.もう恋は。 ★★★☆☆
8.HELP ★★★☆☆
9.2人はいきなり ★★☆☆☆
10.ポストカード ★★★★☆

1989年6月21日発売
CBSソニー
最高位10位 売上約3.4万枚

谷村有美の3rdアルバム。先行シングル「Boy Friend」「がんばれブロークン・ハート」を収録。今作発売後に「明日の恋に投げKISS」がシングルカットされた。前作「Face」からは約8ヶ月振りのリリースとなった。

今作は前作と同じように、外部の提供をメインとしつつも、一部を谷村有美自身で作詞作曲という形で制作された。前作では作曲や編曲で溝口肇が参加していたものの、今作では参加していない。松本晃彦、西脇辰弥、有賀啓雄の3人がメインで作曲や編曲を担当しており、それぞれの味が出た曲作りがされている。

今作のタイトルは「私はここにいるよ」という意味の「Here」と「耳を澄ませて聴いてみてほしい」という意味の「Hear」をかけたものとなっている。


「明日の恋に投げKISS」は今作発売後にシングルカットされた曲。TBS系ドラマ『ホテル物語・夏!』の主題歌に起用された。谷村有美が作詞作曲を行った、今作の中では数少ない曲。シンセが多用されたポップな曲。いかにも1980年代後半と言った感じの派手なサウンドである。歌詞は新たな恋の始まりを予感する女性を描いたもの。「しみひとつない日曜 見える全てがおろしたて」という歌詞が印象的。歌声も相まってとても可愛らしい曲になっている。シングルカットされたのも頷ける。


「ボンネットに太陽」はしっとりと聴かせるバラードナンバー。サウンドはシティポップやAORのテイストを持ったもの。無機質な響きを持ったシンセの音が前面に出ている。サビでのギリギリな感じの高音はかなりインパクトがある。歌詞は微妙な関係の男女を描いたもの。「少し臆病なのは あなたを大切だと思うしるしね 思い出達が教えている」という歌詞が印象的。上質なサウンドは聴いていて心地良い。ポップな曲だけでなく、バラードも谷村有美の大きな魅力である。


「がんばれブロークン・ハート」は先行シングル曲。JCB・三和カードのCMソングに起用された。世代の方からの知名度はそこそこあり、谷村有美の代表曲の一つとも言える。この曲で谷村有美を知った方も多いだろう。シンセやキーボードが多用されたポップな曲。跳ね上がるようなメロディーがとても楽しげ。歌詞はタイトル通り失恋した女性の心情が描かれたもの。自分自身を励ましている感じの歌詞。作詞は戸沢暢美なのだが、谷村有美が作詞したかのような感覚がある。「もしも私が私みたいじゃなくなったら生きていると思えないよね きっと」という歌詞が印象的。サウンドには少々時代性を感じてしまうが、曲自体は普遍性があると思う。


「傘を持ってでかけよう」は全編打ち込みによるポップナンバー。編曲やシンセの演奏のみならず、コーラスでも西脇辰弥が参加している。サウンドはバブル時代の匂いが漂ってきそうなくらい時代性が強い。しかし、古めかしさが逆にクセになる。歌詞は失恋から立ち直った女性の心が描かれたもの。「邪魔だと思える そんなものが心には大切なのね」という歌詞が印象的。このような歌詞のテーマは谷村有美の楽曲には多く見られる。王道の曲と言ったところ。


「BOY FRIEND(Special Arranged Version)」は先行シングル曲。KDDの「001」のCMソングに起用された。タイトル通りアルバムバージョンで収録されている。シングルバージョンは聴いたことが無いので違いは分からない。今作の中では珍しくバンドサウンドが目立っている曲。イントロでのファンキーなベースが特徴。歌詞は遠距離恋愛をしている恋人達を描いたもの。タイアップ相手に合わせた形なのだろう。「君住む街へ吹く風になりたい 心いやす風に 君住む街に降る雨になりたい 涙を隠すから」という歌詞が印象的。ポップながらも作り込まれたサウンドが展開されている。


「HALF MOON」は今作発売後にシングルカットされた「明日の恋に投げKISS」のC/W曲。シンセが主体となったバラードナンバー。かなり分厚い音作りがされている。これは西脇辰弥の貢献が多いと思われる。歌詞は月の満ち欠けと恋心の変化をかけたもの。「月は満ちた日の輝きを心に残して欠けてゆくけれど 時は流れても変わらない あの日の2人でいたいだけなの」という歌詞が印象的。アレンジや歌詞共に完成度が素晴らしく、谷村有美屈指の名バラードだと思う。もう少し評価されても良いように感じる。


「もう恋は。」はピアノ主体のバラードナンバー。その裏をストリングスで固めている。音の数は少なく、谷村有美の歌声を聴かせる感じのサウンド。伸びのある歌声がこの曲の世界観を構成している。歌詞は自分を振った人へのメッセージのようになっている。「振られたってしかたないし あなたを責めないよ もう恋は愛に変えて ずっと離さないよ」という歌詞が印象的。弾き語りで披露したらさらに良い曲だと感じられると思う。


「HELP」は比較的ロック色の強い曲。作詞は共作だが、谷村有美が作詞作曲を担当した今作の中では数少ない曲。 サウンドはギターとキーボードが前面に出ている。間奏ではサックスソロがある。それもまたこの曲を彩っている。歌詞は好きな人に浮気された女性の心が描かれたもの。そのようなテーマならば「HELP」となるのも当然だろう。谷村有美のボーカルは張り上げるような感じの力強い歌い方になっており、この曲に描かれている女性に乗り移ったかのような感覚に襲われる。


「2人はいきなり」はシンセが多用されたポップな曲。この曲はコーラスワークがかなり凝っている。EVEによるソウルフルなコーラスがこの曲を彩っている。歌詞はいきなりキスをする恋人達を描いており、何とも浮かれた雰囲気に溢れている。「飛んで行くよ君の街 赤い服を着て 夏休みを待てないほど」という歌い出しから相当浮かれている。この曲を何故後半に配置したのだろうか?それが疑問である。


「ポストカード」は今作のラストを飾る曲。ゆったりとした曲調が心地良いバラードナンバー。作詞は小西康陽が担当した。サウンドはシンプルなバンドサウンドが展開されている。清涼感のあるサウンドやメロディーが展開されている。歌詞は寂しい夏の日を描いている。「いまごろ恋人たちは何処かでヴァカンス 私は閑かな街でひとりのヴァカンス」という歌詞が印象的。ラストにふさわしい落ち着いた曲である。


あまり売れた作品ではないが、中古屋ではよく見かける。シンガーソングライターとアイドルの要素を併せ持った「B級アイドル」路線を確立した作品と言える。全編通して質の高いポップスが展開されている。ポップな曲とバラードの落差も素晴らしい。今作の収録曲は代表曲と言える「がんばれブロークン・ハート」をはじめ、1stベスト「with」に多く選曲されているのが特徴。谷村有美の楽曲に興味があるなら聴いて損は無いと思う。

★★★★☆