曽我部恵一
2002-09-25

【収録曲】
全曲作詞作曲 曽我部恵一
プロデュース 曽我部恵一

1.ふたり ★★★☆☆
2.夏 ★★★★☆
3.ちょっとまってて ★★☆☆☆
4.テレフォン・ラブ ★★★★★
5.愛のゆくえ ★★★★☆
6.5月 ★★★☆☆
7.真昼のできごと ★★★★★
8.100年後の世界 ★★☆☆☆
9.おとなになんかならないで ★★★☆☆
10.ギター ★★★★☆
11.mellow mind ★★★☆☆

2002年9月25日発売
2013年9月4日再発(SHM-CD)
ユニバーサルミュージック
最高位34位 売上不明

曽我部恵一の1stアルバム。先行シングル「ギター」を収録。今作発売後に「テレフォン・ラブ」がシングルカットされた。

2000年にサニーデイ・サービスが解散してから、曽我部恵一は雑誌への寄稿やDJ活動をしていた。1年間は作品のリリースから遠ざかっていた。2001年に自らの事務所「MUGEN」を立ち上げ、同年12月には小西康陽が立ち上げたレコード会社のレディメイドからソロデビューシングル「ギター」をリリースした。
翌年にはユニバーサルミュージックに移籍した。

今作はサニーデイ・サービス時代よりもさらにシンプルなフォークロックが展開された作品となっている。しかし、ポップでどこか懐かしいメロディーは健在。余計な物を全て取り払ったようなサウンドに乗る曽我部恵一のシルキーな歌声が素晴らしい。

曽我部恵一は歌詞の面でも高く評価されてきた存在だが、その面でも大きな変化を遂げている。サニーデイ・サービスでは街を舞台にして恋人達の様子を描くという詞世界がメインだったが、今作では自らの日常生活を丁寧に描き出した詞世界が中心。今作以降のソロ作品は日記のような形の詞世界を持った曲が多くなっている。


「ふたり」は今作のオープニング曲。1分半程度の短い曲。アコギと木琴のような音が前面に出た静かなサウンドが展開されている。歌詞はタイトル通り恋人達について描かれたもの。短い曲ではあるが、その中にストーリーが詰め込まれている。もう少し長かったらもっと良い曲だと感じたかもしれない。


「夏」はゆったりとした曲調が特徴的なポップな曲。アコギの他にもキーボードが多用されており、キラキラした雰囲気のサウンドである。今作の中では珍しくゲストミュージシャンを多く招いている。そのためか、バンドサウンドが割と目立っている。どこか幻想的な雰囲気も漂っている。歌詞は夏の日の光景を描いたもの。「ぼくの夢 今日の夢 だれかの腕で夏が終わる」というフレーズが印象的。夏のギラギラした感じというよりも夏の終わりの何とも言えない寂しさが感じられる。


「ちょっとまってて」は幻想的な雰囲気に溢れた曲。どちらかというとサイケと言った方が正しいかもしれない。キーボードやパーカッションが前面に出ている。音の数はかなり少なく、モヤモヤした感じのサウンドが展開されている。恋人に語りかけるような優しい印象の歌詞。「思い出して 思い出してね いつのことでもかまわないから ほんとにさみしいときは いつも一緒にいてあげるから」という歌詞が印象的。サニーデイ・サービス時代にもサイケな曲が定期的に見られていたが、それらとはまた違った味わいがある。


「テレフォン・ラブ」は今作発売後にシングルカットされた曲。全て大文字の英語によるタイトル表記もあるが、ケース裏面の曲目リストはカタカナなのでそちらに合わせる。キレの良いギターのカッティングが爽快なポップロックナンバー。終始ギターのカッティングが前面に出ている。間奏には口笛が入っている。歌詞は恋人に電話越しで愛の言葉を伝えようとする男を描いている。飾り気の無いストレートな歌詞やサウンドが素晴らしく、シングルカットされたのも頷ける。とにかく軽快な曲調なので聴いていて心地良い。今作収録曲の中では一番好き。


「愛のゆくえ」はフォークロック色の強い曲。アコギとベースが前面に出たシンプルなバンドサウンドが展開されている。間奏にはピアノが使用されている。歌詞はタイトル通り、「愛のゆくえ」について描かれている。自然の描写が多用されており、聴いているとその光景が浮かんでくるようである。繊細な描写は詩人・曽我部恵一の世界観が現れている。フォークロックというとサニーデイ時代の「若者たち」や「東京」を彷彿とさせるが、その頃よりも成熟した印象。


「5月」はフォーキーなサウンドが展開された曲。ほぼアコギのみで構成された極めてシンプルなサウンドである。リラックスしてレコーディングされたような感じが伝わってくる。歌詞は「あの娘」と過ごす日々について語られたもの。タイトルの「5月」というフレーズは一切出てこない。あの娘とバイクで街に出かけるようだ。ところどころ鼻歌で歌っている部分があり、どことなく幸せそうな雰囲気が感じられる。


「真昼のできごと」はサニーデイ・サービス時代にできていた曲のセルフカバー。本来は「真昼の出来事」というタイトルで「24時」に収録されるはずだったが、未収録となってしまった。そちらは解散後にリリースされたベスト盤「サニーデイ・サービス BEST 1995-2000」に収録されて救済されることとなった。歌詞は同じなのだが、サウンドは大幅に異なる。サニーデイバージョンはストリングスが前面に出た派手なサウンドだが、こちらはアコギ主体のフォーク色の強いサウンド。歌詞は恋人と過ごす昼間の光景を描いたもの。「退屈して 電話かけて 映画みて お茶飲んで ふたり きっと見つめあい 大切なこと気づく」という歌詞が印象的。管理人はサニーデイ時代のバージョンよりもこちらの方が好き。


「100年後の世界」はアコギの弾き語りのみで構成された曲。そのようなシンプルな音だからこそ曽我部恵一の歌声がより響いてくる。本当に美しい歌声である。歌詞はタイトル通り100年後の世界を想像する内容のもの。「はるかとおくライトがみえる 忘れられた物語りたち」という歌詞が印象的。スケールが大きい曲だが、日常生活の延長線上と言った感じなのであまり違和感は無い。


「おとなになんかならないで」は子供へのメッセージソング。この頃の曽我部恵一は父親になったようなので、率直な想いを込めて作ったのだろう。タイトルもその現れだと思う。サウンドはアコギが主体となっている。「朝は素敵 いつも 夜は不思議 いつもそう 時はすぐにきみをつかまえてしまう いつだって」という歌詞が印象的。父親としての曽我部恵一の姿をうかがい知れるような曲になっている。


「ギター」は先行シングル曲。曽我部恵一ソロのデビューシングルである。軽快なギターサウンドが心地良いミディアムナンバー。ギターの他にはエレピが使用されている。歌詞はこの曲を作った当時の曽我部恵一自身を描いたようなものになっている。「2001年 10月のまんなか」というフレーズは中々インパクトがある。恐らくこの曲を作った時期だろう。「そしてぼくはギターを弾いている 心の中のこの場所で」という歌詞が印象的。シングル曲と言うには少々地味な印象だが、割とクセになる。


「mellow mind」は今作のラストを飾る曲。1分50秒程度の短い曲。エレピが主体となった静謐なサウンドが展開されている。歌詞はストレートな愛の言葉を語ったもの。「こんにちは ごきげんよう ぼくといてくれてありがとう」という歌詞が印象的。曽我部恵一のタイトル通りメロウな歌声がこの曲を彩っている。アルバムのラストにはうってつけの曲だろう。


あまりヒットした作品ではないが中古屋ではそこそこ見かける。ソロ1stアルバムだが、いつになくシンプルかつ実験的な作風が展開されている。サニーデイ・サービス時代とは別物だと割り切って聴いた方が良いと思う。サニーデイと繋がっていると思って聴くと結構面食らうと思う。セルフタイトルというだけあって、1人の人間としての曽我部恵一の考えや想いが反映されている曲が多い印象。正直かなり地味な作品なので何回か聴くと良さが分かると思う。

★★★☆☆