CHAGE&ASKA
2001-04-18


【収録曲】
1.2.4.6.8.11.作詞作曲 飛鳥涼
3.5.7.9.10.作詞作曲 CHAGE
1.2.編曲 松本晃彦
3.10.編曲 西川進
4.編曲 松本晃彦、飛鳥涼
5.編曲 亀田誠治
6.8.編曲 十川知司、飛鳥涼
7.編曲 岡本洋
9.11.編曲 十川知司
プロデュース CHAGE&ASKA


1.no doubt ★★★★★
2.the corner ★★★★☆

3.swear ★★★☆☆
4.僕がここに来る前に ★★★☆☆
5.熱帯魚 ★★☆☆☆
6.higher ground ★★★★★
7.two of us ★★★★★
8.群れ ★★★☆☆

9.もうすぐ僕らは ふたつの時代を超える恋になる ★★★★☆
10.vision ★★★★☆
11.この愛のために ★★★★★


1999年8月25日発売
2001年4月18日再発
2009年11月25日再発(リマスター、SHM-CD)
東芝EMI(オリジナル盤)
ヤマハミュージックコミュニケーションズ(2001年盤、2009年盤)
最高位1位 売上25.1万枚(オリジナル盤)


CHAGE&ASKAの19thアルバム。先行シングル「この愛のために/VISION」「群れ」を収録。前作「CODE NAME.2 SISTER MOON」からは3年4ヶ月振りのリリースとなった。初回盤はデジパック仕様。


今作はチャゲアスのデビュー20周年記念作品。リリース日は彼らのデビュー日にぴったり合わせた形でのリリースとなっている。今作はチャート1位を獲得した。なお、今作が最後のチャート1位獲得作品である。

今作はチャゲアスにとって初となるセルフプロデュースによる作品。今までの作品は山里剛との共同プロデュースがされてきた。セルフプロデュースについてCHAGEは「面白かった」と語っている。ASKAは「前に比べて自分のスタイルみたいなものに対してのこだわりはなくなった」と語っている。お互いの曲作りに介入できるようになったようで、2人にとってセルフプロデュースは良い体験になったようだ。


ソロ活動を経ての制作だったため、お互いにソロ活動の感覚からCHAGE&ASKAとしての感覚を取り戻すまでに時間がかかってしまったという。制作は1998年の11月頃から始まった。



「no doubt」は今作のオープニングを飾るタイトル曲。NECの企業CMソングに起用された。今作と同年にリリースされたベスト盤「VERY BEST ROLL OVER 20TH」にも収録された。ミディアムテンポのロックナンバー。比較的重い雰囲気のある曲となっている。サビは広がりのある力強いメロディーになっており、聴きどころ。歌詞は恋人との別れを描いたものなのだが、極めて淡々と語られている。最早一切の未練や後悔が無く、まるで他人事のようである。何とも言えない重い雰囲気があるが、それでもサビはキャッチー。その辺りにはASKAの意地を感じさせる。シングルにしても違和感の無いような曲だと思う。



「the corner」は爽快なポップロックナンバー。ディレクTV 冬のキャンペーンCMソングや、JALの企業CMソングに起用された。今作の中では割とポップな曲で、従来のチャゲアスと言った感じ。重厚なバンドサウンドでがっちりと固められたサウンドが展開されている。歌詞のテーマは「群れ」とリンクしており、逆の見方をしたものらしい。それを知った上で聴いてもその繋がりがよく分からないが、どちらかというとポジティブな言葉が並んでいる。確かにそのような解釈もできると思う。対極をなす存在と言える「群れ」よりもよっぽどシングル向きだったと思うのだが…



「swear」は先行シングル「群れ」のC/W曲。CHAGEの作詞作曲による曲。歪んだギターサウンドとキーボードが前面に出た、ロック色の強い曲。曲調はゆったりとしている。サビのコーラスワークが特徴。タイトルは「誓う」というような意味がある。罪のない嘘や笑ってくれた恋人に対して愛を誓うという内容の歌詞。サビでは「DA. DA. DA. DA.」と歌っている部分があり、そこがやたらと耳に残る。曲全体を通してどことなく気だるい感じが漂っている。今作の雰囲気によく合った曲だと思う。


「僕がここに来る前に」はしっとりと聴かせるバラードナンバー。テレビ朝日系ドラマ『輝ける瞬間』の主題歌や、NECの企業CMソングに起用された。ピアノが主体となった静謐なサウンドが特徴的。歌詞はASKAが少年時代に見た情景や当時の生活を表現したものになっている。そのせいか、温かみや懐かしさを感じさせるような詞になっている。このようなアプローチの歌詞は今までの楽曲にはあまり無かった。終始盛り上がりがほとんど無い曲なので相当地味なのだが、聴く度に心に沁みてくるだろう。聴き手それぞれの昔の思い出を蘇らせてくれるような曲である。



「熱帯魚」は実験性の強い曲。CHAGEの作詞作曲による曲。編曲にはCHAGEがかねてから一緒に仕事をしてみたかったという亀田誠治が参加した。ASKAのコーラスは一切入っていない。それについては「サウンドだけで完璧にできあがっていて、あとは僕のボーカル1本だけでいいってところにきちゃった。」とのこと。後に売れっ子プロデューサーとしてJ-POP界を牽引していく亀田誠治が関わったとは思えない程にサイケでマニアックな音作りがされている。歌詞は恋人との別れを描いたもの。2人の複雑な関係を熱帯魚に例えている。この曲に関しては「マニアック担当」としてのCHAGEの姿がよく現れているように感じる。



「higher ground」はUKロックからの影響を強く感じさせるロックナンバー。ベースや打ち込みが前面に出たサウンド。ベースラインがとても格好良い。歌詞はレコーディングの最後に作られたものらしい。闇を感じさせる詞になっている。「覗き込むような視線で見張られてる 見晴らしのいい 場所で見張られてる」という歌詞は今になって聴くと中々にゾッとしてしまう。サウンドや荒々しいボーカルがマッチしていて非常に格好良い曲となっている。UKロックの影響を受け過ぎている感が否めないが、それでも好きな曲。


「two of us」はフォークロック色の強い曲。作詞作曲はCHAGEによるもの。20周年記念として行われたアコースティックライブのリハーサル中に作曲したらしい。シンプルなバンドサウンドが曲に重厚感をもたらしている。間奏のギターソロは絶品。歌詞のテーマは「1970年代」である。誰もが情景を思い浮かべることができるような詞世界となっている。恋人との別れを描いている。「この街の隅で 泣いたり笑ったり あの頃のふたりに 手を振ろう」という歌詞が印象的。このようなバラードはCHAGEの得意技だと思う。優しさと力強さのバランスが取れている名曲。


「群れ」は先行シングル曲。シングル音源からミックス変更がされており、アルバムバージョンである。シングルのジャケ写はチャゲアス史上初めて、2人とも映っていないものになった。アコギとピアノが前面に出た重苦しいバラードナンバー。大ヒットしていた1990年代前半のような曲ばかりを求めてくるリスナーを揶揄したような痛烈な歌詞が特徴的。それをしゃがれた声で歌い上げている。一応はラブソングのように解釈できるような詞なのだが、それ以上に前述の要素が強過ぎる。「いつまでも俺を あの日の姿で 閉じ込めようとする群れがいる」という歌い出しの歌詞が顕著。ファンをここまで突き放すような曲をシングル化してしまったことが何よりも恐ろしい。売れるような要素は一切として無い。チャゲアスの暗黒を象徴するような曲だと思う。


「もうすぐ僕らは ふたつの時代を超える恋になる」は優しい雰囲気のあるバラードナンバー。JAL SEASONSのCMソングに起用された。CHAGE作詞作曲による曲だが、サビはASKAが歌っている。CHAGEが作ったのに、ASKAの曲のように感じてしまう。力強いバンドサウンドでしっかり聴かせる。歌詞は「1999年から2000年になっても、2999年から3000年になるときでも、やっぱり人は "I love you" の言葉を口にしていてほしい」という思いが込められたものになっている。 幸せな雰囲気溢れる歌詞である。 1999年という世紀末だからこそ作れたような曲。同じように世紀末の影響を受けていても、混沌とした雰囲気を感じさせるASKAの曲との違いが面白い。



「vision」は先行シングル曲。「この愛のために」とは両A面シングルだった。こちらはCHAGEの作詞作曲。NHK BS放送10周年イメージソングに起用された。今作収録に際してミックス変更がされているほか、タイトルが全て小文字に変わっている。重厚なロッカバラードナンバー。サビをユニゾンで歌っているのが特徴的。歌詞は「ふたり」の未来について想像したものになっている。単純に恋人同士とも解釈できるが、CHAGE&ASKAの姿とも解釈できる。CHAGE&ASKAを大切に思っていたのはどちらかというとCHAGEの方だったのかもしれない。サビをふたりで歌っているところからもそれがうかがい知れる。


「この愛のために」は今作のラストを飾る先行シングル曲。NECの企業CMソングに起用された。前半のアレンジやミックス変更がされたアルバムバージョンでの収録。浮遊感のある独特なサウンドが特徴的なロックナンバー。しゃがれた歌声がインパクト抜群。ライトリスナーですら気付きそうなくらい変貌を遂げてしまっている。しかし、その声が曲に圧倒的な力強さを与えている。歌詞はストレートなラブソング。チャゲアスの楽曲としては珍しく、一人称が「俺」、二人称が「お前」となっているのが印象的。そのせいか、いつになく男臭い感じの詞世界となっている。しゃがれた歌声とよく合っていて良いと思う。 今までのラブソングとは違ってアクが強くなっているが、かなり格好良いと感じる。割とクセになる。



そこそこ売れたので中古屋ではよく見かける。お互いのソロ活動で得たものをCHAGE&ASKAの活動に還元したような味わいの作品。それはアレンジャーの人選に顕著に見られる。今まで通りの十川知司に加え、ソロ活動で関わってきた松本晃彦や西川進などを起用している。作風としては、今までの作品にも見られたロックの要素をさらにマニアックに突き詰めている感じ。
今作最大の特徴は2人の作る曲の違い。「マニアックな曲担当」「アルバムの幅担当」として扱われることが多かったCHAGEが比較的優しい雰囲気の曲を作っており、それに反してASKAは闇を感じさせるようなダウナーな曲ばかり作っている。歌声もしゃがれて、ファンを突き放しているような感じになってしまった。CHAGEの曲もASKAの闇に勝てず、結局暗い作品となっている。格好良いと言われればそう思うが、名盤だとは思えない。一回聴いただけでは到底良さが見えてこないだろう。


★★★★☆