久保田利伸
2002-04-10

【収録曲】
全曲作詞作曲 久保田利伸
4.11.作詞 松尾潔
7.作詞 山田詠美
8.作曲 久保田利伸、柿崎洋一郎
全曲編曲 柿崎洋一郎
プロデュース  久保田利伸

1.United Flow 〜Foreplay〜
2.まんまでGO ★★★★☆
3.無常 ★★★★☆
4.DO ME BABY ★★★☆☆
5.Respect (this & that) 〜Extended Funky Jam Version〜 ★★★★★
6.My Bad ★★★★☆
7.Heaven? ★★★★☆
8.United Flow 〜Replay〜 ★★★★☆
9.Because of U ★★★★☆
10.Free your Soul ★★★☆☆
11.MOONSTRUCK ★★★★☆
12.Candy Rain ★★★★★
13.In your flow 〜Eternal Flow Version〜 ★★★★☆

2002年4月10日発売
SME Records 
最高位9位 売上6.8万枚

久保田利伸の10thアルバム。先行シングル「Candy Rain」「Respect (this & that)」を収録。前作「As One」からは約1年7ヶ月振りのリリースとなった。初回盤はアコースティックライブ応募券が付属していた。

ニューヨークに拠点を移してからの作品ということもあり、より本格的なR&Bが展開されたアルバムとなっている。しかし、日本におけるR&Bのパイオニアと言える久保田利伸だけあって、ただのR&Bではない。本場のR&BをJ-POPレベルにまで上手く落とし込んでいる。今作をリリースした当時の邦楽界はR&Bブームが起こっていたが、そこに殴り込みをかけるようである。ベテランとしての実力を遺憾無く発揮している。


「United Flow 〜Foreplay〜」は今作のオープニング曲。英語で歌われている短めの曲。恐らく歌われていることに意味は無い。R&B色の強いサウンドとなっており、今作のオープニングとしてはうってつけだろう。


「まんまでGO」は実質的なオープニング曲。勢いのあるファンクナンバー。トークボックスが多用されている。スクラッチも効果的に使用されている。とても日本人が歌っているようには感じられないくらい黒さに溢れている。クラブで流したらこれ以上無いほどに盛り上がりそうである。歌詞はノリを重視した感じのものだが、そのままで生きていこうというメッセージが感じられるものになっている。格好良くもあるが、楽しさも持っている。久保田利伸らしさを感じさせる曲。


「無常」はバラードナンバー。Black StarのMos Defがラップで参加している。バラードとラップは一見全く合わないように思えるが、この曲では上手く絡み合っている。それだけMos Defのラップが凄いのだろう。ムードや深みのあるバラードとなっている。久保田利伸のシルキーな歌声もこの曲を彩っている。歌詞は恋人同士の夜を想起させる濃厚なもの。全体的に円熟味に溢れたバラードとなっており、ベテランR&Bシンガーとなった久保田利伸だからこそ作ることのできる曲と言える。


「DO ME BABY」はミディアムバラードナンバー。作詞は松尾"KC"潔が担当した。淡々とした打ち込みサウンドが心地良い。久保田利伸の伸びのあるボーカルを楽しめる曲となっている。歌詞は大人の男の恋を想起させるものになっている。「ふたつの瞳開けば そこだけ朝は来る」というフレーズが印象的。久保田利伸が書く歌詞とはまた違った味わいがある。独特なグルーヴを崩さない言葉選びは絶品。


「Respect (this & that) 〜Extended Funky Jam Version〜」は先行シングル曲。アルバムバージョンでの収録となっている。とはいえそこまで違いは無い。アップテンポの曲。打ち込みのバックで鳴っているギターのカッティングが特徴的。歌詞はメッセージ性の強いもの。お互いを尊敬し合って、お互いの違いも認め合おうという想いが込められた歌詞になっている。これは「As One」というフレーズで久保田利伸が前作でも伝えたメッセージである。それだけ久保田利伸が大切にしていることなのだろう。それでも重苦しさは感じさせず、ノリの良い曲になっている。


「My Bad」は甘いソウルバラードナンバー。最早甘ったるいという言葉の方が合うくらい。サウンドは抑えめで、どこかもやがかかっているような感じ。エレピやキーボードとベースの絡みが特徴的。歌詞は過ぎた恋を振り返っているもの。あまり張り上げない控えめなボーカルがこの曲の世界観によく合っていると思う。この曲のような色気のある切ないバラードは久保田利伸の得意技だと言える。


「Heaven?」はスローバラードナンバー。作詞は作家の山田詠美が担当した。この曲もまた、甘ったるい雰囲気のある曲である。久保田利伸の美しいボーカルがこの曲の世界観を構築している。ところどころで登場するファルセットがたまらない。女性が聴いたら興奮してしまうのではなかろうか。男性が聴いても引き込まれるものがあると思う。歌詞は恋人同士の行為を想起させるものになっている。何とも濃厚な詞である。久保田利伸の書く歌詞よりもさらに濃厚さが増している感じ。流石は作家と言ったところ。


「United Flow 〜Replay〜」はアルバムのインタルード。1曲目よりも長くなっている。普通のボーカルなのかラップなのか分からないような独特なボーカルが特徴的。1分半ほどの曲ではあるが言葉が詰め込まれている。インタルードだからといって飛ばすのは勿体無い。


「Because of U」は都会的な雰囲気を持ったR&Bナンバー。シンセの使い方が何ともお洒落。派手ではないが、確実に盛り上げていくようなサウンドである。歌詞は好きな人への想いを切々と語ったもの。「夢の抜けた 地図が今 音を色を 吹き返す」という歌詞が印象的。この曲の歌詞も大人の雰囲気を感じさせるものである。円熟味を帯びたバラードだと思う。


「Free your Soul」はスローバラードナンバー。サウンドは打ち込みが多用されている。所々で使われる木琴のような音が特徴的。どこか懐かしい雰囲気を感じさせるメロディーが心地良い。歌詞はストレートな愛の言葉を並べたもの。「ときめきも 悲しみも どこまでも透き通る君が愛しい」という歌詞が印象的。一曲単位で聴くと良いのだが、アルバム単位で聴くと似たようなスローバラードが多いので印象に残りにくい。


「MOONSTRUCK」はグルーヴ感のあるサウンドが心地良いソウル。作詞は松尾"KC"潔が担当した。Felicia Grahamという女性ボーカルがフィーチャーされている。誰かはわからないが、ソウルフルな歌声でこの曲を彩っている。サウンドは打ち込み主体。スクラッチも使用されている。歌詞は浮気性な男の恋を描いたものになっている。エロくもあり、お洒落でもある不思議な曲。


「Candy Rain」は先行シングル曲。フジテレビ系ドラマ『水曜日の情事』の主題歌に起用された。甘い雰囲気に満ちたラブソング。浮遊感のあるシンセの音色が心地良い。久保田利伸の色気のあるボーカルがこの曲を彩っている。歌詞は切なさ溢れるもの。「恋のかたちは 皆 違ったもので 誰も 決して 神には なれないけど」という歌詞が印象的。シングル曲だけあってやはり聴きやすさが違う。本格的なR&Bではあるが、J-POPの範囲にも入るような味付けにされている辺りは久保田利伸ならでは。


「In your flow 〜Eternal Flow Version〜」は先行シングル「Candy Rain」のC/W曲。NECの「携帯電話N503iS」のCMソングに起用された。アルバムバージョンでの収録となった。ゆったりとしたR&Bナンバー。エレクトリックシタールが前面に出た、エスニックなサウンドが展開されている。曲調はR&Bなのだが、シタールが使われていることで無国籍なサウンドになっている。歌詞は恋人たちを星の屑に例えたもの。ロマンチックなイメージの歌詞になっている。この曲をラストに配置したことで、もう一周聴きたくなるような中毒性を産んでいると思う。


あまり売れた作品ではないが、中古屋ではそこそこ見かける。久保田利伸ならではのR&Bやソウルを楽しめる作品である。ここまで来ると安定感に溢れている。2000年代以降の久保田利伸の代表曲と言える「Candy Rain」が収録されているのでライトリスナーでも馴染みやすい作品だと思う。全体的にムードのある曲が多いので、夜に聴くのがおすすめ。

★★★★☆