松任谷由実
2013-10-02

【収録曲】
全曲作詞作曲 松任谷由実
全曲編曲       松任谷正隆
5.9.ホーンアレンジ Jerry Hey
プロデュース  松任谷正隆

1.Sign of the Time ★★★☆☆
2.砂の惑星 ★★☆☆☆
3.Good-bye friend ★★★★☆
4.Bye bye boy ★★★★☆
5.GET AWAY ★★★★★
6.Hello,my friend ★★★★★
7.RIVER ★★★★★
8.Lonesome Cowboy ★★★★☆
9.Oh Juliet ★★★★☆
10.春よ、来い ★★★★★

1994年11月25日発売
2013年10月2日再発
東芝EMI/EXPRESS
EMI RECORDS(2013年盤)
最高位1位 売上217.2万枚

松任谷由実の26thアルバム。先行シングル「Hello,my friend」「春よ、来い」を収録。前作「U-miz」からは1年振りのリリースとなった。

1980年代後半頃から日本の音楽界の売上を牽引し続けてきたユーミンだが、前々作、前作と売上が150万枚を切るようになっていた。それでも十分過ぎるほど売れたわけだが、ユーミンにしては少し物足りない結果であることは言うまでもない。今作はドラマ主題歌に起用されてミリオンヒットしたシングル曲を収録したためか、自身最多となる200万枚越えを達成した。後にベスト盤「Neue Musik」に抜かれてしまったものの、オリジナルアルバムの中では最多売上を誇っている。
とはいえ1995年以降の音楽界は300万枚越えが頻発するようになったのでユーミンのオリジナルアルバムの中では最後の花火のような売上になってしまったと言える。

今作は前作と同様に、特にテーマを設けずに制作された。古代文明の壁画のようなサイケデリックなジャケ写がインパクト抜群ではあるが、それはテーマには組み込まれていないようである。


「Sign of the Time」は今作のオープニング曲。比較的ロック色の強いサウンドが特徴。キーボードとタイトなバンドサウンドの絡みは聴きどころ。歌詞は恋人同士の心のすれ違いを描いたもの。サビでは恋を「One Way road」と例えている。英語詞を繰り返すサビの歌詞なのでユーミンの歌声も相まって呪文のように聴こえる。複雑な心が伝わってくるような繊細な描写がされている辺りはユーミンならでは。オープニングにしては少し地味な印象が否めないが、不思議とクセになる曲。


「砂の惑星」は民族音楽のテイストを感じさせる曲。TBS系ドラマ『私の運命』の後期主題歌に起用された。サウンドはシンセが主体。生音はアコギだけ。ユーミンのボーカルは他の曲と比べて違っている。他の曲よりも歌い方がふにゃふにゃしている印象がある。清水ミチコがユーミンのモノマネをしている時のような感じ。歌詞はタイトル通り、どこか神秘的な雰囲気が漂うものになっている。「キャラバン」「オアシス」のような砂漠を想起させるフレーズが多く登場するのが特徴。ドラマ主題歌だったということもあったか、非シングル曲ながらそれなりに知られているようだ。後追いである管理人からすると何故こんなに地味な曲がドラマ主題歌?と思ってしまってならない。どうにも馴染めない曲。


「Good-bye friend」は先行シングル「Hello,my friend」のC/W曲。フジテレビ系月9ドラマ『君といた夏』の劇中歌に起用された。元々はこちらがドラマ主題歌になる予定だったものの、イメージに合わないという理由でこの曲を元に作り直した「Hello,my friend」が主題歌となった。タイトルからも分かるが、この2曲は関連している。サビや、「僕が生き急ぐときには〜」の部分の歌詞は2曲ほぼ同じ。今作リリース同年に亡くなった、松任谷夫妻とも親交があったアイルトン・セナの死を悼んで作られた。その背景から作られたためか、「Hello,my friend」よりもしっとりとした曲調になっている。サウンドは輝くようなシンセの音色が前面に出ている。良い曲なのだが、背景を知ると重苦しく感じてしまって積極的に聴こうと思わなくなる。


「Bye bye boy」は失恋ものバラードナンバー。テーマの割には曲調は明るい。シンセによるシタールの音やギターが前面に出ている。歌詞は恋人との思い出を振り返りつつ、別れを告げているもの。思い出を慈しむような、優しく語りかけるようなユーミンのボーカルがこの曲を引き立てている。「いつだってそう 最高だったのに 今日だけを生きていたのに もう帰ろう すぐ帰ろう でも帰れなかった あのときの二人」という歌詞は何とも切ない。アルバム曲ながら、シングルにしていても違和感の無いような曲だと思う。


「GET AWAY」はノリの良いポップナンバー。「キリンラガービール」のCMソングに起用された。タイトル通りの疾走感のあるバンドサウンドに加え、ホーンが使われた豪華なサウンド。歌詞は冬休みに入る前日を舞台にしている。「最後の授業」とあるので主人公は学生だろう。二人で何処かに出かけようとする姿が描かれている。ユーミンの少女性がよく現れた詞世界だと思う。そのような詞世界や疾走感のある曲調のため、聴いているだけでワクワクしてくるような曲になっている。かなりキャッチーでらノリが良いのでタイアップがついたのも納得。この曲もシングルばりの名曲である。


「Hello,my friend」は先行シングル曲。フジテレビ系月9ドラマ『君といた夏』の主題歌に起用されてミリオンを達成したヒットシングル曲。前述の通り「Good-bye friend」が原型となってできた曲である。ミディアムテンポのバラードナンバー。サウンドはキーボードだけでなく、バンドサウンドも主張しているため割と力強い。歌詞は失ってしまった「君」への想いが語られたもの。夏の終わりを舞台にしている。ただ単に別れたとは解釈しにくい。亡くなってしまったのだろうか?「悲しくて 悲しくて」「淋しくて 淋しくて」と繰り返すサビは切なさに溢れている。聴いていると、もう会えなくなってしまった大切な人を思い出してしまう。管理人がユーミンを本格的に聴く前から知っていて好きだったため、この曲にはかなり思い入れがある。この曲で描かれている季節とはかなり外れているが、卒業式のシーズンになるとよく聴いている。


「RIVER」は力強いロックナンバー。サウンドはキーボードとギターが前面に出ている。マイケル・ランドウによる、唸りをあげるようなギターサウンドが非常に格好良い。歌詞は別れた恋人のことを忘れられずに苦しむ女性を描いたもの。「忘れるはずもなく 断ち切るすべもなく ただ 夜の深さに 泣いている」という歌詞が印象的。狂おしい感情が歌詞、アレンジ、ボーカル等から伝わってくるようである。サウンドが管理人の好みどストライクだったので評価がかなり高くなっている。


「Lonesome Cowboy」はゆったりとしたバラードナンバー。力強いバンドサウンドが展開されており、比較的ロック色が強い。シンセドラムかと思ってしまうほど高いドラムの音が特徴。スコーンと抜けていく感じが聴いていて心地良い。歌詞は孤独な日々を送る人をカウボーイに例えて描かれている。「夢を見ているの ふるさとの青い空 思い出してるの なつかしい遠い夏」という歌詞が印象的。今作の中だと少々地味な印象が否めないものの、聴く度に段々良いと思うような曲である。


「Oh Juliet」はミディアムテンポのラブソング。苗場プリンスホテルの1994年度CMソングに起用された。バンドサウンドに加えてホーンも前面に出ており、かなり派手なサウンド。歌詞はタイトル通り『ロミオとジュリエット』を彷彿とさせるものになっている。ユーミンは歌詞について「ちょっとシニカルな部分が出ちゃった」と語っている。確かに、二人の恋模様を冷ややかな感じで描いているように感じられる。ユーミンとタイアップ相手の苗場プリンスホテルとは切っても切れない関係ではあるが、そのタイアップにふさわしい壮大な曲になっていると思う。


「春よ、来い」は今作のラストを飾る先行シングル曲。同タイトルのNHK朝ドラの主題歌に起用されてミリオンを達成したヒットシングル曲。その後にも多くのCMソングに起用されている。朝ドラ主題歌というよりも春の歌の定番として世代を超えて定着している印象がある。童謡「春よ来い」に影響を受けて作られたようで、アルバムのブックレットにもその旨の記述がある。今作に収録されているバージョンでは終わりに小さな音で「春よ来い」が聴こえてくる。そのため、シングルバージョンよりも若干長い。ピアノによる美しいイントロからこの曲の世界に引き込まれてしまう。春の情景が浮かんでくるような繊細な描写がされた歌詞も絶品。 この国に四季がある限り愛され続けるであろう名曲。


大ヒット作なので中古屋ではよく見かける。200万枚越えのヒット作だけあって、世間が思うユーミンの楽曲像に応えたような王道の作品である。音楽界を牽引してきたユーミンの貫禄を見せつけた作品と言える。とはいえ、バブル時代を経てユーミンの存在が巨大化、ブランド化していく中で失われつつあった初期のテイストを持った曲もある。ヒットシングルやタイアップがついた曲が多いのでライトリスナーでも聴きやすいだろう。アルバム曲もシングルばりの曲が多い。 1990年代以降のアルバムの中では屈指の名盤だと思う。

★★★★★