谷村有美
1988-09-01

【収録曲】
全曲作詞 谷村有美
2.9.作詞 竹花いち子
4.6.作詞 戸沢暢美
5.作詞 谷村有美・あさくらせいら
1.3.5.9.作曲 谷村有美
2.7.作曲 伊秩弘将
4.6.作曲 西脇辰弥
8.作曲 溝口肇
1.3.編曲 松本晃彦
2.8.9.編曲 溝口肇
4.6.編曲 西脇辰弥
5.7.編曲 有賀啓雄
プロデュース 横内伸吾・春名源基

1.生まれたての朝〜Brand New Sunshine〜 ★★★★☆
2.すべて わがまま ★★★★☆
3.ガラスの午前4時 ★★★★★
4.朝は朝 嘘は嘘 ★★★☆☆
5.Tonight ★★★★★
6.かもめのように ★★★☆☆
7.FEEL ME ★★★★★
8.夏の終り ★★★★☆
9.恋をしなさい ★★☆☆☆

1988年9月1日発売
CBSソニー
最高位不明 売上不明

谷村有美の2ndアルバム。先行シングル「ガラスの午前4時」を収録。今作発売後に「朝は朝 嘘は嘘」「Tonight」がC/W曲としてシングルカットされた。前作「BELIEVE IN」からは約9ヶ月振りのリリースとなった。

今作は前作よりも谷村有美自身による作詞作曲がされた曲が増えている。しかし、やはり外部による提供の方がメインとなっている。この辺りからはシンガーソングライターとアイドルの要素を併せ持った「B級アイドル」としてのキャラクターを目指していたことがうかがい知れる。

今作は谷村有美の楽曲の路線が定着し始めた作品と言える。同世代の女性やOLに向けた応援歌やラブソング、フュージョンやAORのテイストを取り入れた少々マニアックなサウンドが特徴的なバラードナンバー…次作以降はさらにこの路線を突き進んでいくこととなる。フュージョン系の楽曲については、アマチュア時代にフュージョンバンドでキーボードを担当していたという谷村有美の趣味が反映されているのかもしれない。

タイトルは信条や信頼を意味する「Faith」「face to face」をかけたもの。「Faith」というフレーズは後にファンクラブの名前にもなった。


「生まれたての朝〜Brand New Sunshine〜」は先行シングル「ガラスの午前4時」のC/W曲。今作の中では数少ない、谷村有美作詞作曲による曲。シンセとサックスが使われた軽快なイントロが特徴。コーラスワークが凝っている。ギターのカッティングにも聴きごたえがある。歌詞はポジティブなメッセージが並んだものとなっている。恋人に出逢えた女性の喜びが伝わってくるようである。C/W曲ながらもA面ばりの完成度を誇る曲だと思う。ポップな曲調や作り込まれたサウンドが印象的なので1回聴いてすぐにハマれた。


「すべて わがまま」はしっとりとしたバラードナンバー。無機質な響きを持ったシンセが前面に出ており、その音色はまさに1980年代と言ったところ。歌詞は女性のわがままな心が描かれている。好きな人と一緒になろうとしたのもわがままなのかもしれない。「あなたが傷つき 悲しむよりは わたしが少し 泣くほうがまし」という歌詞が印象的。この曲は繊細なメロディーラインと美しいボーカルが魅力。作曲を担当した伊秩弘将は後にSPEEDのプロデュースで知られることとなるが、この頃からその実力を発揮していたことが分かる。


「ガラスの午前4時」は先行シングル曲。TBS系情報番組『ドーナツ6』のテーマソングに起用された。タイアップ相手は谷村有美がメインMCを担当し、知名度が上がるきっかけとなった番組である。派手なシンセの音色とパワフルなバンドサウンドの絡みが特徴的なポップロックナンバー。歌詞は午前4時を舞台に、恋人に別れを切り出した女性を描いている。「ガラスの心を寄せあって ひとつの夢見たのに いつの間にか二人 別々の生き方を探してた」という歌詞が印象的。作り込まれたサウンドはとても聴きごたえがある。ライブで盛り上がる曲だったというのも頷ける。


「朝は朝 嘘は嘘」は今作発売後に「Boy Friend」のC/W曲としてシングルカットされた曲。サウンドは全てシンセや打ち込みによるもの。シンセドラムの音色は時代性を感じさせる。繊細さに溢れたメロディーや谷村有美の線の細いボーカルがこの曲の世界観を構成している。歌詞は女性の切ない感情が描かれたものになっている。「嫌いにはなれなくて わがままになりすぎて あなたより 少しだけ 先に決めてた 別れ」という歌詞が印象的。聴いているとこちらも切ない気持ちになるような曲である。


「Tonight」は今作発売後に「がんばれブロークン・ハート」のC/W曲としてシングルカットされた曲。後にベスト「with」「タニムラベスト」にも収録された。ライブではラストで演奏されることが多かったというバラードナンバー。サウンドはひんやりとした質感のシンセの音が前面に出ている。本田雅人による間奏のサックスソロは絶品。歌詞は恋人への素直な気持ちを打ち明けたもの。苦しいほどの感情が伝わってくるような繊細な心理描写がされているのが特徴。人気曲というのも頷ける。谷村有美を代表する名バラードだと思う。


「かもめのように」はミディアムバラードナンバー。サウンドは打ち込みが主体。生音はエレキギターだけ。歌詞は自分をかもめに例え、恋人への気持ちを語ったもの。何故いきなりかもめ?と思ってしまったが、海辺のホテルを舞台にしているので、かもめが登場するのも何となく分かる。「かもめのように心は飛ぶの 自分を愛に閉じ込めないの」というサビの歌詞が印象的。この曲も谷村有美特有のクリスタルボイスを楽しめる曲になっている。


「FEEL ME」は軽快なポップナンバー。後にベスト「タニムラベスト」にも収録された。ライブでは盛り上げ担当の曲として定番だった。「ME」というのは「私」という意味はもちろん、谷村有美のあだ名という意味も含まれている。そちらは「MIE」と表記されることが多いが。サウンドは力強いバンドサウンドとシンセで勢い良く聴かせるものとなっている。メロディーにも疾走感を感じさせる。「Come On!」というシャウトから始まるサビは圧倒的なキャッチーさを持っている。歌詞はストレートなラブソング。 曲のハイテンション振りが凄いので聴いているだけでテンションが上がる。「B級アイドル」路線の谷村有美を代表する名曲だと思う。


「夏の終り」はAOR色の強いバラードナンバー。ピアノとバンドサウンドの絡みが心地良い上質なサウンドが展開されている。間奏のピアノソロはとても美しい。歌詞は夏の終りと恋の終りをかけて描かれている。「夏の終りの 静かな午後 夢からさめて 季節がゆく 恋の終り」という歌詞が印象的。上質でおしゃれなサウンドだけでなく、気だるさを感じさせるメロディーも素晴らしい。隠れた名曲としての位置が似合う曲だと思う。


「恋をしなさい」は今作のラストを飾る曲。重厚なバラードナンバー。ピアノ主体のサウンドだが、チェロも使われているのが特徴。イントロがかなり長く、歌い出しまで1分少しかかる。命令形のタイトルは中々インパクトがあるが、曲自体はかなり地味なバラード。歌詞は恋をしていない少女を描いたもの。「恋していない少女には季節が長いだけ 恋していない少年とおしゃべりしたいだけ」という歌詞が印象的。ラスト以外置き場所が無いような曲ではあるが、ここまで来てテンションをグッと落とされるような感覚がある。どうにも馴染みにくい曲。


あまり売れた作品ではないが、中古屋ではよく見かける。クリアなハイトーンボイスを生かした良質なガールポップを楽しめる作品となっている。後にライブの定番となる「Tonight」や「FEEL ME」と言った人気曲が収録されているのでキャリアを通じても重要な作品と言える。どこか儚げな表情のジャケ写からも何となく察しがつくが、バラードが比較的多めなのが特徴。そのせいでアルバムの流れが少し悪くなっている部分がある。それが残念なところ。

★★★★☆