定期的に行なってきた企画「○○年代私的ベストアルバム」が思いの外好評?だったのでその続きを行なっていきたいと思います。今回は1980年代後半の作品を扱っていきます。1989年〜1985年の作品を紹介したいと思います。これまで通りトップ5形式でいきます。音楽を聴く範囲が狭いゆえ、贔屓のアーティストが多数登場するのはご了承ください。既に当ブログで紹介した作品はURLを貼っています。今回より前の作品はランキングを組めるほど所有していないので「○○年代私的ベストアルバム」シリーズは今回で終了とさせていただきます。
【1989年】
5位 フリッパーズ・ギター「three cheers for our side〜海へ行くつもりじゃなかった」
Flipper's Guitar
1993-09-01
(再発盤)
フリッパーズ・ギターの1stアルバム。全編英語詞による作品です。この頃はまだ5人組のバンドでしたが、今作発売後に小山田圭吾と小沢健二の2人組となります。デビュー作とは到底思えないような洗練されたポップスを楽しめます。渋谷系音楽の象徴として語られることの多いフリッパーズ・ギターの歴史を振り返る上では欠かせない作品。ネオアコやギターポップの名盤の一つだと思います。
4位 岡村靖幸「靖幸」
岡村靖幸の3rdアルバム。前作「DATE」で片鱗を見せた、変態でナルシストな世界観が今作では前面に出ています。岡村靖幸独自の楽曲の世界観が遂に完成したと言える作品です。そのため、岡村靖幸のオリジナルアルバムの聴き始めにはぴったりな作品。今作を聴いて駄目ならもう岡村靖幸は聴けないと思います。
3位 佐野元春「ナポレオンフィッシュと泳ぐ日」
佐野元春の6thアルバム。ロンドンで生活し、現地のミュージシャンと制作されたアルバム。ブリティッシュロックに傾倒した、シンプルなロックンロールが展開された作品です。佐野元春ならではの文学的な詞世界も冴え渡っています。ロックナンバーだけでなく、ポップな曲も多いのでとても聴きやすく、ロックアルバムとしてもポップアルバムとしても楽しめる作品だと思います。
2位 鈴木祥子「水の冠」
鈴木祥子の2ndアルバム。鈴木祥子はヒット曲はあまりありませんが、優れた音楽性やマルチプレイヤーとしての才能から、同業者からの評価が高いミュージシャンズ・ミュージシャンと言える存在です。PUFFY、草野マサムネ、奥田民生、佐藤竹善、YUKI等が鈴木祥子を評価しています。このアルバムは陰を感じさせるような繊細なボーカルと爽やかなアコースティックサウンドに彩られたポップスが展開された作品です。シンプルなようでいて作り込まれたサウンドやメロディーは絶品。最早神秘的な雰囲気すら持っている名盤です。
1位 高野寛「RING」
高野寛の2ndアルバム。前作は高橋幸宏プロデュースによる作品でしたが、今作はセルフプロデュースがされました。一部の収録曲は当時新進気鋭のプロデューサーとして知られつつあった小林武史と制作されています。高野寛の卓越したポップセンスが炸裂した作品です。優れたメロディーを飾る作り込まれたデジタルサウンドが聴いていてとにかく心地良いです。楽曲の要所で使われる装飾音も曲を彩っています。ゆったりとした曲が多いためか、何度聴いても飽きない魅力があります。まさに珠玉のポップアルバム。管理人の中では高野寛の最高傑作は今作です。
【1988年】
5位 浜田省吾「FATHER'S SON」
浜田省吾の12thアルバム。前々作、前作と続いてきた「少年が大人になっていく過程」を描いた作品の最終作。日米関係や戦争について語られた社会派なロックナンバーが並んだ作品です。重苦しい作品に思えますが、そのような曲の合間に挟まれるラブソングが素晴らしいものばかり。前作「J.BOY」ほど評価されることはない印象ですが、今作もかなり優れたアルバムです。
4位 桑田佳祐「Keisuke Kuwata」
桑田佳祐のソロ1stアルバム。桑田佳祐、小林武史、藤井丈司の3人で制作されたアルバムです。スタジオにこもって曲作りに熱中したいという桑田佳祐の意向が今作を制作するきっかけとなりました。聴き流しているだけでもサウンドが徹底的に作り込まれているのがよく分かるようなポップアルバムとなりました。今となっては古臭く聴こえてしまうようなシンセの音も気にならないほどです。小林武史のプロデューサーとしての出世作となった名盤。3人の優れた才能が溢れた作品です。
3位 TM NETWORK「CAROL 〜A DAY IN A GIRL'S LIFE 1991〜」
TM NETWORKの6thアルバム。キャロルという少女を主人公としたファンタジー作品を基にして作られたコンセプトアルバム。後にメンバーの木根尚登による小説も発表されています。これまではシンセが多用された音楽を展開してきましたが、今作ではバンドサウンドが主体となった曲が多めです。プログレッシブロックを彷彿とさせるような作品となっています。そのため、聴いていると物語の中に入っていくような感覚になります。小室哲哉の曲も木根尚登の曲もどちらも圧倒的な完成度を持っており、ストーリー性を考慮しなくても優れたアルバムと感じられるようになっていると思います。
2位 山下達郎「僕の中の少年」
山下達郎の9thアルバム。前作「POCKET MUSIC」で取り入れられたデジタルサウンドをさらに突き詰めた作品となっています。これまでアナログな曲作りをしてきた山下達郎にとって、かなり難産となった作品です。当時の山下達郎は父親になったということもあり、それがタイトルや作風にも反映されています。そのため、コンセプトアルバムのような趣がある作品となっています。これ以外無いと思うくらい曲順がよく、抜群の聴きやすさがあります。一曲一曲の完成度やキレで言うと1970年代〜1980年代前半の作品に負けてしまうような印象がありますが、
統一感ではどの作品にも勝っていると思います。管理人にとっての山下達郎の最高傑作は今作。
1位 大江千里「1234」
大江千里の7thアルバム。現在様々なアーティストによってカバーされ、再評価されている「Rain」が収録されています。モノクロのセルフポートレートによるジャケ写から何となく分かるかもしれませんが、内省的な作風が特徴的な作品です。バブルに浮かれていた当時の日本を冷ややかに見るような曲もあります。一回聴いただけでは良さが分かりにくい印象ですが、聴く度に新たな発見ができるような作品。この頃が大江千里の全盛期だと思っています。
【1987年】
5位 谷村有美「BELIEVE IN」
谷村有美の1stアルバム。これでデビューしました。後にシンガーソングライターとして才能を発揮する谷村有美ですが、この頃はまだアイドル的な要素が強かったようです。そのため、自作曲がかなり少なく、大部分が外部に提供された曲で構成されています。全曲の編曲を大村雅朗が行なったためか、シティポップやフュージョン色の強いサウンドが展開されています。谷村有美特有の「クリスタルボイス」は堅い感じですが、1stアルバムらしさを感じさせる点はそれくらい。谷村有美を聴いていくなら外せない作品です。
http://megane0924.blog.jp/archives/19718659.html
4位 久保田利伸「GROOVIN'」
(再発盤)
久保田利伸の2ndアルバム。前作で本格的なR&Bやファンクを披露して音楽界に衝撃を与えた久保田利伸ですが、今作ではさらに本格的なブラックミュージックを楽しめます。バブル時代ならではの明るさを感じさせる曲もあります。優れた作品なのは言うまでもありませんが、唯一の難点は音質の悪さ。CDが定着し始めた当初の作品なので仕方がないですが。リマスターされればさらに良い作品だと感じられるようになるかもしれません。
http://megane0924.blog.jp/archives/10217565.html
3位 竹内まりや「REQUEST」
(再発盤)
竹内まりやの7thアルバム。アイドルに提供した楽曲のセルフカバーが主に収録された作品となっています。そのためか、長きに渡って売れ続け、実に発売から4年後にミリオンを達成することとなりました。「駅」「けんかをやめて」「元気を出して」辺りはセルフカバーという枠を超えて竹内まりやの代表曲と言えます。普遍性に溢れたポップスを楽しめる作品だと思います。
http://megane0924.blog.jp/archives/12688392.html
2位 崎谷健次郎「DIFFERENCE」
崎谷健次郎の1stアルバム。日本でAORが定着する前から本格的なAORを取り入れた上質なポップスを展開していた崎谷健次郎ですが、今作ではその高い音楽性を遺憾なく発揮しています。優れたポップセンスに加え、卓越したアレンジ能力で彩られた楽曲の数々は見事。歌詞はほぼ全て秋元康が手がけています。秋元康の詞世界も素晴らしい。割とマイナーなアーティストですが、もう少し評価されても良いのではと思います。
http://megane0924.blog.jp/archives/18978339.html
1位 大江千里「OLYMPIC」
(再発盤)
大江千里の6thアルバム。デビューから4年目、つまり「オリンピックイヤー」を迎えた作品です。前作の暗く内省的な作風からは一変して、全編通して明るいポップスが展開されています。一曲一曲の完成度だけでなく、通して聴いた時の統一感や流れも素晴らしく、何度でも聴きたくなるようなアルバムとなっています。今作が大江千里の最高傑作だと思っています。
http://megane0924.blog.jp/archives/6199845.html
【1986年】
5位 佐野元春「Café Bohemia」
佐野元春の5thアルバム。ヒップホップを取り入れた異色な作風が展開されていた前作からは一変し、今まで通りのロックやポップスに戻りました。とはいえジャズやソウル、スカ、レゲエ等多彩なジャンルを取り入れたカラフルな作風が展開されています。一つのジャンルにとどまらない音楽性は佐野元春の魂を感じさせます。
4位 大江千里「AVEC」
大江千里の5thアルバム。初のセルフプロデュースによる作品です。全曲の編曲を大村雅朗が担当した初のアルバムでもあります。当時の大江千里の精神状態はかなり悪く、死を考えて制作されたようです。そのためか、全体的に暗く内省的な雰囲気が漂っています。しかし、一曲一曲の完成度は極めて高く、良質なアルバムとなっています。
3位 久保田利伸「SHAKE IT PARADISE」
久保田利伸の1stアルバム。日本におけるブラックミュージックのパイオニアと称される久保田利伸ですが、その音楽性は1stから存分に発揮されています。今でも代表曲として愛される「流星のサドル」「Missing」が収録されているという点からもそれが分かると思います。まだまだブラックミュージックを取り入れたポップスという印象の曲が多めですが、それが逆にアルバムの聴きやすさを支えているように感じます。
2位 浜田省吾「J.BOY」
浜田省吾の10thアルバム。2枚組で全18曲という大作。初のチャート1位を獲得し、現在に至るまでの人気を確立したと言える作品です。「J.BOY」「もうひとつの土曜日」と言った人気曲も収録されており、ライトリスナーにも聴きやすい作品だと思います。つい聴きづらいアルバムだと思ってしまいがちですが、社会派なロックナンバーとラブソングやポップな曲とのバランスが取れており、かなり聴きやすいです。浜田省吾屈指の名盤にして、日本のロック史に刻まれるべきアルバムだと思っています。
1位 小田和正「K.ODA」
小田和正のソロ1stアルバム。オフコース在籍時代の作品です。ロサンゼルスでレコーディングされただけあって、実力派ミュージシャンが多数参加しています。それによって優れたAORが展開されたアルバムとなっています。全8曲で収録時間30分台というコンパクトさも魅力的。楽曲の完成度も凄いものがありますが、演奏に耳を傾けて聴くとさらに良さが見えてくると思います。1stではありますが、今作が小田和正のソロとしての最高傑作だと思います。
【1985年】
所有数が少ないのでトップ3とさせていただきます。
3位 大江千里「未成年」
大江千里の3rdアルバム。「十人十色」「REAL」が収録され、最高位5位を獲得した出世作と言える作品。シングル曲に引っ張られている作品なのかと思いきや、アルバム曲の完成度も高く、優れたポップアルバムとなっています。ベスト盤くらいしか聴いていないリスナーにも手にとってほしい作品です。大江千里の初期の名盤と言えば今作。
2位 角松敏生「GOLD DIGGER〜with true love〜」
角松敏生の5thアルバム。ラップやスクラッチをいち早く取り入れた革新的なアルバム。「夜と都会」をテーマに、男女の性愛について描かれた耽美的な楽曲が並んでいます。全編通して圧倒的な完成度を誇るシティポップやAOR、ファンクを楽しめる作品となっています。角松敏生を代表する名盤だと思っています。
1位 サザンオールスターズ「KAMAKURA」
サザンオールスターズの8thアルバム。レコーディングには1800時間という途方もない時間がかけられ、収録内容は2枚組で全20曲という超大作。コンピューターサウンドを全編に渡って取り入れた、作り込まれた楽曲の数々が並んでいます。桑田佳祐の、常軌を逸してしまったようなとてつもない才能が遺憾なく発揮されています。今聴くと古臭く感じるようなサウンドですが、それもまた魅力。サザンを代表する名盤の一つだと思います。
ここで挙げた作品や順位については執筆当時のものなので、幾らでも変動します。そうなったらツイッター(@fumimegane0924)で報告しつつ更新するつもりです。
コメント