CHAGE and ASKA
2001-12-24


【収録曲】
1.作詞 ASKA,松井五郎、作曲 ASKA
3.5.7.9.作詞作曲 ASKA
2.作詞 CHAGE and ASKA
10.作詞 青木せい子
2.4.10.作曲 CHAGE
6.8.作曲 CHAGE,Tom Watts
1.5.7.編曲 ASKA,鈴川真樹,Richard Cottle,
Paul Staveley O'Duffy
2.編曲 松本晃彦
3.9.編曲 松本晃彦,ASKA
4.編曲 Paul Staveley O'Duffy,村田努
8.編曲 十川知司
10.編曲 Elder Street Boys
※6.は編曲のクレジットなし。
プロデュース CHAGE and ASKA

1.not at all ★★★★★

2.ふたりなら ★★★★☆
3.鏡が映したふたりでも ★★★★☆

4.アジアンレストランにて ★★★☆☆
5.パラシュートの部屋で ★★★★★

6.凛 ★★★★☆
7.C-46 ★★★★☆
8.夢の飛礫 ★★★★★
9.ロケットの樹の下で ★★★★☆

10.告白 ★★★★☆


2001年12月27日発売
キティMME(ユニバーサルミュージック)
最高位10位 売上10.0万枚


CHAGE and ASKAの20thアルバム。先行シングル「ロケットの樹の下で」「パラシュートの部屋で」「C-46」「夢の飛礫」を収録。前作「NO DOUBT」からは2年4ヶ月振りのリリースとなった。初回盤はブックレットの表紙と裏表紙がクリアシートのようになっているクリアカード・ジャケット仕様。CD-EXTRA仕様だが、特典のスクリーンセーバーは現在利用できないので意味は無い。


2000年にはリリースが無かったものの、2001年にレコード会社を東芝EMIからユニバーサルミュージックに移籍して再始動した。それに伴ってか、アーティスト名がCHAGE&ASKAからCHAGE and ASKAに改名されている。これまで何度か変更されてきたが、現時点ではこの名義が最終形態となっている。これまでの作詞作曲編曲クレジットの表記で使われていた「飛鳥涼」名義も「ASKA」に変更されている。


今作も前作に引き続き、セルフプロデュースによる作品である。1992年発表の「GUYS」以来となるロンドンでのレコーディングがされた。ロンドンに渡った当初はCHAGEとASKA、スタッフでの共同生活だったというが、CHAGEとASKAの生活スタイルが違っていたので2週間ほどで別々のところに住むようになったという。


内容としては、2001年にリリースされたシングルが多数収録されているためか、大多数が既発曲で構成されているという内容。10曲と今までの作品よりも収録数が少ないのも特徴。


「not at all」は今作のオープニングを飾るタイトル曲。TBS系情報番組『エクスプレス』のオープニングテーマに起用された。美しいメロディーで聴かせる重厚なバラードナンバー。サビまではアコギが主体だが、それ以降はバンドサウンドが合流して盛り上げていく。歌詞は大人の男としての境地を感じさせるようなものになっている。様々な迷いや葛藤を乗り越えた者にしか辿り着けないような心情が綴られている。そのような詞世界を力強いバンドサウンドがさらに説得力を持たせている。オープニングでありながらラストに位置していてもおかしくないような曲である。タイトル曲にふさわしい風格を持っている名曲。



「ふたりなら」は先行シングル「ロケットの樹の下で」のC/W曲。CHAGEによる曲であるが、作詞はCHAGE and ASKA名義となっている。繊細なイメージのメロディーだが、ロック色の強い曲になっている。力強いバンドサウンドで曲を盛り上げている。歌詞は別れた恋人への想いが語られたものになっている。遠い約束を少し遅れてしまったが、守ることができた。懐かしい雰囲気を感じさせつつも、とても切ない詞世界が展開されている。CHAGEの美しい歌声もこの曲の世界観を彩っている。この曲もベテランとしての境地を感じさせる曲だと思う。


「鏡が映したふたりでも」は優しい雰囲気溢れるバラードナンバー。NECの企業CMソングに起用された。アコギが前面に出た爽やかなサウンドが聴いていて心地良い。曲のイメージにぴったりと合ったサウンドだと思う。歌詞はストレートなラブソングとなっている。温もりを感じさせる詞世界である。「心はいつも寂しさを連れてるから 支え合うための言葉を欲しがってると思える そうだろう」という歌詞が印象的。1990年代前半のチャゲアスのラブソングのようなドラマチックさはあまり無いものの、恋人同士の心の交流がその頃よりも繊細に描かれていると思う。


「アジアンレストランにて」は先行シングル「パラシュートの部屋で」のC/W曲。CHAGEによる曲。ここまでの流れを壊すようなハードロックナンバー。歪んだギターサウンドが前面に出ている。サウンドだけ聴いていると、とてもチャゲアスの曲とは思えないくらいである。歌詞はハードボイルドなイメージを持ったもの。タイトルのフレーズは歌詞の中に一切登場しない。何かに苛立っている男が描かれている。ストーリー性を持った詞世界だと思うが、どのような状況なのかはよく分からない。チャゲアスの楽曲像を壊してくるような曲になっていると思う。とにかく格好良い。



「パラシュートの部屋で」は先行シングル曲。フジテレビ系番組『金曜エンタテイメント』のオープニングテーマや、三井住友海上火災保険「MOST」のCMソングに起用された。今作の中でも群を抜いてポップでキャッチーな曲。ピアノが主体となったサウンドが聴いていてとても心地良い。サウンドと共にスッと流れていくようなメロディーも素晴らしい。歌詞はかなりアダルトなイメージを持ったものになっている。複雑な比喩が多用されているが、それを使ってアダルトなイメージを薄くしているのはASKAならでは。サウンドやメロディーも相まって、むしろ爽やかなイメージすら漂っている。2000年代のチャゲアスの楽曲の中では管理人の一番好きな曲。極めてヒット性が高い曲だと思うが、売れなかったのは不思議である。



「凛」はフォーク色の強い曲。1分57秒とかなり短い曲である。アコギと歌だけで構成されたとてもシンプルな曲。左からはCHAGEの声が、右からはASKAの声が聴こえてくるような音作りがされている。イヤホンやヘッドホンで聴くとよく分かると思う。歌詞は恋人と過ごすこれといって何もない一日を描いたもの。しかし、そのような日が一番幸せなのかもしれない。小品ではあるが好きな曲である。



「C-46」は先行シングル曲。日本テレビ系情報番組『スーパーテレビ情報最前線』のエンディングテーマに起用された。後にASKAがセルフカバーしている。ゆったりとしたメロディーが心地良いバラードナンバー。タイトルは46分のカセットテープのこと。そう言っても伝わらない世代も増えているだろう。歌詞は別れた恋人たちが、共に過ごした部屋を懐かしんでいるというもの。そのため、一人称は「僕ら」になっている。地味と言ってしまったらそれまでだが、メロディーの良さに引き込まれる曲である。1990年代前半くらいのチャゲアスのバラードを彷彿とさせる感じ。


「夢の飛礫」は先行シングル曲。テレビ東京系新世紀ワイド時代劇『壬生義士伝 〜新撰組でいちばん強かった男〜』の主題歌に起用された。アウトロが変更されているので、アルバムバージョンである。実に1987年リリースの「ロマンシングヤード」以来となるCHAGEによる単独A面シングル曲。壮大なバラードナンバー。どこまでも続いていきそうな広がりのあるメロディーが特徴的。特にサビは素晴らしい。歌詞は大きな愛が描かれている。曲調だけでなく歌詞もかなり壮大。 CHAGEの曲はASKAの曲に劣ると思っている方にこそ聴いていただきたい名曲。CHAGE曲の中では管理人の一番好きな曲。



「ロケットの樹の下で」は先行シングル曲。三井住友海上火災保険「MOST」のCMソングに起用された。移籍後初シングルであり、CHAGE and ASKAに名義を変えてから最初の作品。ミディアムテンポの壮大なロックナンバー。力強いバンドサウンドが曲を盛り上げている。歌詞はマイナスな状況に対して「ここは途中だ」と言い聞かせて前に進もうと決意するもの。ASKAは「自らの同級生を励ますために作った」と語っているが、確かにCHAGEやASKAと年代が近い人ほど良いと思えるような歌詞だと思う。大人の深みを持った応援歌である。


「告白」は1991年にリリースされた27thシングル「SAY YES」のC/W曲。これまでアルバム未収録曲だったが、リテイクされて収録された。アコギが主体となったシンプルなバラードナンバー。ドラマチックを極めたようなA面曲に比べると幾分か地味な印象が否めないものの、この曲もストレートなラブソングである。「あなたのことしかもう 考えられない」と言い切る歌詞が印象的。A面が目立ち過ぎているだけで、この曲も中々良い。しかし、 収録のタイミングが謎である。どう考えても収録曲数稼ぎとしか思えない。


チャゲアスの作品としてはあまり売れた方ではないが、中古屋ではよく見かける。リリース当初は既発曲が多くを占めていたのであまり評判が良くなかったようだが、後追いで聴くとそれが全く気にならない。既発曲が多く、収録曲数が少なめとマイナス要素があるのだが、内容はかなり充実している。ASKAの曲は一曲一曲の完成度が非常に高く、これまでアルバムの幅担当のような扱いをされてきたCHAGEの曲もASKAの曲と互角に渡り合えるくらいである。前作のダウナーな作風でも、大ヒットしていた1990年代前半の作風でもない、CHAGE and ASKAとしての凄みを感じさせるアルバムになっていると思う。


★★★★★