RAZZ MA TAZZ
1996-05-20

【収録曲】
全曲作詞 阿久延博
全曲作曲 三木拓次
6.7.作曲  横山達郎
全曲編曲 今井裕・RAZZ MA TAZZ
プロデュース 今井裕

1.COSMOS ★★★★☆
2.さえない7DAYS ★★★★☆
3.君が生まれた街 ★★★★★
4.悲しみの理由 ★★★★☆
5.MERRY-GO-ROUND ★★★★★
6.EYES ★★★★☆
7.それぞれの日々 ★★★★★
8.Season Train ★★★★★
9.SUMMER CLAP ★★★☆☆
10.美しい地平 ★★★☆☆

1996年5月20日発売
フォーライフ・レコード
最高位2位 売上約11.5万枚

RAZZ MA TAZZの3rdアルバム。先行シングル「Season Train」「MERRY-GO-ROUND」を収録。前作「Whoopee Basket」は10ヶ月振りのリリースとなった。帯によると先着10万名限定でシークレット・フォトカレンダーが付属していたようだ。

RAZZ MA TAZZは1989年に結成され、1994年にメジャーデビューし、1999年に解散したバンド。ボーカルの阿久延博、ギター担当の三木拓次、アコースティックギター担当でリーダーの横山達郎、ベース担当の入江昌哲、ドラム担当の三村隆史の5人で構成されていた。作詞は阿久延博が、作曲は三木拓次が主に担当していた。バンド名は横山達郎がジャズ雑誌から見つけた「輝かしい」「はつらつとした」を意味する言葉だという。解散後は入江昌哲が俳優活動を開始したが、他のメンバーは音楽活動を続けていた。2002年に三木拓次が膵臓癌で亡くなったため、5人での活動再開は叶わなかった。

RAZZ MA TAZZの楽曲の魅力は爽やかながらも切なさも持ったポップなラブソングである。まさに「青春」をイメージさせるような阿久延博のボーカルや詞世界もその魅力の一つ。今作でもそのようなポップスの数々が展開されている。

チャートの上位に食い込んでくるような人気アーティストが作品をリリースしなかった週だったとはいえ、今作はRAZZ MA TAZZにとっては歴代最高位となるチャート2位を獲得した。


「COSMOS」は今作のオープニング曲。スピッツの楽曲を彷彿とさせるような、ギターのアルペジオによるイントロからこの曲の世界に引き込まれる。優しくも浮遊感のある音色が聴いていて心地良い。歌詞はタイトル通り「星」や「夜」をイメージさせる、どこか神秘的な雰囲気を持ったラブソングになっている。「君の涙が 星になる夜 僕の寝言が こだました夜 2人の吐息 はみ出した夜」というラストの歌詞はとてもロマンチックである。オープニングにふさわしく、聴き手をアルバムの中に導くような曲になっていると思う。


「さえない7DAYS」は爽やかなポップロックナンバー。ハネたバンドサウンドや息の合ったコーラスワークでしっかりと聴かせる。力強く伸びのある阿久延博のボーカルも曲を彩っている。歌詞は曲名の通り、曜日が多用されている。「ため息」「寝ぼけまなこ」「電話でどなる」「遅刻だらけ」「君に泣かれた」等、冴えない日々を送っていることがわかるような状況ばかり。しかし、最後には「鮮やかなSunday」と明るく締められている。詞世界に反して、気だるさを感じさせないような爽やかな雰囲気に満ちた曲である。


「君が生まれた街」はしっとりと聴かせるラブソング。優しく寄り添うようなギターの音色が聴いていてとても心地良い。歌詞は彼女が生まれ育った街を初めて訪れる男性を描いたもの。たとえ知らない街だったとしても、恋人が生まれ育ったというだけで何となく特別な感じがして、わくわくすると思う。そして、自分が生まれ育った街を彼女に紹介したくなるはず。そのような心をこれ以上無いほど上手く表現した歌詞が展開されている。いつかは同じことをしてみたいと思ってしまう。優しく爽やかな曲やサウンドも素晴らしいが、それ以上にその詞世界に引き込まれた。


「悲しみの理由」は今作の中では比較的ロック色の強い曲。力強いのにどこか悲しみを感じさせるようなギターサウンドが特徴的。特に間奏のギターソロは泣いているかのような音色である。歌詞は真冬の雨が降っている日を舞台に、彼女との心のすれ違いを描いた切なさ溢れるもの。一番近いようでいて、一番遠く感じてしまう。そのような心情や二人の心の距離が飾ることなく綴られた詞世界となっている。「このまま君を愛し続ける バカでいい」という歌詞は男性の気持ちを直球で表現したものだと思う。誠実な男性なら誰もが良いと思えるような歌詞が展開された曲。


「MERRY-GO-ROUND」は先行シングル曲。TBS系音楽番組『COUNT DOWN TV』のオープニングテーマに起用され、RAZZ MA TAZZにとっての最大ヒットシングルとなった。"Album Mix"とアルバムバージョンで収録されているが、シングルは聴いたことがないので違いは分からない。とびきりキャッチーでポップな曲である。遊園地のようにワクワクさせてくるようなメロディーやギターの音色がたまらない。歌詞は不安定な恋心をメリーゴーランドに例えたもの。「君を抱きしめていいの?」と不安になったかと思えば、「君の匂いをそばで感じていたいよ」と自信に溢れたことを言う。言葉に表現しにくい恋心を、メリーゴーランドという分かりやすいものに例えてサラッと表現してしまうのは阿久延博ならではと言ったところ。


「EYES」は横山達郎による曲。三木拓次の作る曲とはまた違った良さがあると思う。比較的ロック色が強いサウンドではあるが、サビはとてもキャッチーでポップ。歌詞は少年時代から現在に至るまでを振り返っている内容。「大げさな未来を叶えるためにありふれた今日を映すよ」という歌詞が好き。管理人は1970年代〜1990年代の光景を実際に見たわけではないのだが、それでも懐かしいと思ってしまうような繊細な描写がされている。爽やかで、何となく懐かしい。RAZZ MA TAZZらしさを感じさせる曲だと思う。


「それぞれの日々」は「EYES」と同じく横山達郎による曲。ゆったりとした、心に沁みてくるような優しいメロディーが展開されている。そのメロディーを彩る美しいギターの音色が心地良い。歌詞は別れることを決めた恋人たちを描いたもの。男性は彼女と別れて違う生き方を選んだ。しかし、そこには未練は無い。彼女と過ごした日々を振り返りながらも、前を向いて生きていく。「幸せのもろさ」を感じさせる切ない詞世界である。RAZZ MA TAZZ屈指の名バラードだと思う。


「Season Train」は先行シングル曲。ブルボン「ピックルEX」のCMソングや、ニッポン放送『オールナイトニッポン』のエンディングテーマに起用された。RAZZ MA TAZZにとっての出世作と言える曲。"Album Mix"とアルバムバージョンで収録されているが、シングルバージョンは聴いたことがないので違いは分からない。繊細なアルペジオで彩られたサウンドが心地良いポップな曲。爽やかで切ないメロディーが素晴らしい。歌詞は季節の移ろいを感じさせるものになっている。季節が変わっても彼女と過ごしたいという想いが伝わってくるようである。「景色は少しずつ 変わってゆく そして僕らもいつか 大人になる」というフレーズは青春時代ならではの希望や不安を的確に表現していると思う。曲、サウンド、歌詞と全てにおいてRAZZ MA TAZZの王道と言えるだろう。


「SUMMER CLAP」はノリの良いポップロックナンバー。今作収録曲の中では珍しく、ベースが前面に出たロック色の強いサウンドが展開されている。歌詞は夏特有の気分の高まりが表現されたものになっている。海岸線をドライブしている様子が浮かんでくるようで、聴いているだけでその場にいるかのような気分になれる。しかし、楽しい時はすぐに終わってしまう。そのような切なさもしっかり描かれている。夏の楽しさと虚しさを絶妙に描いた曲だと思う。


「美しい地平」は今作のラストを飾る曲。アコギが主体となった、シンプルながらも力強いバンドサウンドで聴かせる曲。歌詞は希望や願いを想起させるものになっている。「美しい地平」はいつか見えるものとして描かれている。それを見るために祈りを捧げる。歌詞の一言一言を丁寧に歌う誠実なボーカルもこの曲の世界観を表現している。ラストを飾るにふさわしい詞世界やサウンドだと思う。この曲以外に最後に配置できる曲は無いだろう。


そこそこ売れた作品なので中古屋ではよく見かける。全編通して爽やかなポップスを楽しめるアルバムとなっている。RAZZ MA TAZZは現在となってはマイナーなバンドという印象が否めないが、楽曲の良さはどのメジャーなバンドにも劣らないと思っている。スピッツやMr.Children、L⇔R、FIELD OF VIEWといったバンドが好きなら是非とも聴いてほしい。ポップでどこか切ない曲の数々はJ-POPが好きな方なら誰もが好きになれるはず。このまま隠れた名盤として扱われてしまうのはあまりにも勿体無い。少しでも多くの方に今作を始めとしたRAZZ MA TAZZの作品を聴いていただきたい。

★★★★★