【収録曲】
全曲作詞作曲 松任谷由実
10.作詞作曲   荒井由実
全曲編曲        松任谷正隆
プロデュース  松任谷正隆

1.ありのままを抱きしめて ★★★★☆
2.Cowgirl Blues ★★★★★
3.告白 ★★★☆☆
4.Moonlight Legend ★★★☆☆
5.別れのビギン ★★☆☆☆
6.忘れかけたあなたへのメリークリスマス ★★★☆☆
7.Midnight Train ★★★☆☆
8.最後の嘘 ★★★★☆
9.Called Game ★★★★☆
10.まちぶせ ★★★★☆

1997年2月28日発売
2013年10月2日再発
東芝EMI/EXPRESS
EMI RECORDS(再発盤)
最高位1位 売上78.9万枚

松任谷由実の28thアルバム。先行シングル「まちぶせ」「最後の嘘」「告白」を収録。前作「KATHMANDU」からは約1年2ヶ月振りのリリースとなった。

今作は毎年の恒例となっていた11月下旬〜12月上旬のアルバムリリースをずらしてリリースされた。これは1996年の12月に荒井由実名義でのライブ盤「Yumi Arai The Concert with old Friends」をリリースしたためである。そのライブ盤をもって「時代を牽引するカリスマ」というようなイメージを払拭し、ユーミン自らがやりたい音楽を追求しようと考えたのだろう。

今作はサウンド面でも変化を遂げている。今までの作品よりも格段に生音志向が強くなっている。特にギターについては、ロサンゼルスで活動するギタリスト5人を起用している。また、長らくシンセで表現してきたストリングスも生音で導入されている。ストリングスもロサンゼルスでレコーディングされたようだ。

1987年リリースの「ダイアモンドダストが消えぬまに」から実に10作連続でオリジナルアルバムのミリオンを続けてきたユーミンだが、今作で遂に途切れてしまった。今作以降はベスト盤を除いてどんどん売上を落とし、「落ち目」「枯れた」というようなフレーズがユーミンに飛び交うこととなる。しかし、音楽性はどんどん幅広さを増して味わい深くなる。


「ありのままを抱きしめて」は今作のオープニング曲。力強いギターのカッティングから始まる、ロック色の強い曲。バンドサウンドが前面に出ている。ユーミンのボーカルもいつもに増して力強い印象がある。歌詞は恋人へのメッセージのようになっている。恋人は「私」のことを天使のように見ているのだが、本当はもっと汚い人間である。なので、ありのままの「私」を愛して欲しいと願う内容。そのような詞世界とロック色の強いサウンドはかなり相性が良い。オープニングにふさわしい強さを持った曲である。


「Cowgirl Blues」はパワフルなロックナンバー。1997年に三菱自動車の「RVキャンペーン」のCMソングに起用された。実質的なタイトル曲と言えるかもしれない。エレキギターの演奏に3人の外国人ミュージシャンを起用しており、分厚いギターサウンドが前面に出ている。この曲もシンセがあまり目立っていない。歌詞はメイクで武装して、復縁したい男性の元に向かう女性を描いたもの。その女性をカウガールに例えている。まるで決戦を前にしている時のテーマソングのようである。迫力溢れるロックサウンドにただただ引き込まれる。


「告白」は先行シングル曲。日本テレビ系深夜ドラマ『告白』の主題歌に起用された。ちなみに、このドラマはVHSやDVD化がされていない上に再放送もほぼされていないので観るのは難しいとのこと。ダンスミュージック的なサウンドの曲。シンセとギターのカッティングが主体となったサウンドで聴かせる。歌詞は同性愛者のカミングアウトを描いたもの。タイアップ相手のドラマは同性愛者が主人公だったので、それに合わせたのだろう。「禁断の愛などないの」等と、カミングアウトする人を応援する内容になっている。管理人には分からない世界の話だが、色々と考えさせられる曲だと思う。


「Moonlight Legend」は先行シングル「告白」のC/W曲。1996年の「キリンラガービール」のCMソングに起用された。シンセとサックスが前面に出たサウンドで聴かせる。ここまでのロックナンバーから一転し、ぐっと落ち着けてくるようなサウンドである。歌詞はタイトル通り満月の夜を舞台にしており、恋人たちの愛が描かれている。ストーリー性溢れるロマンチックな内容になっている。CMタイアップがあっただけあって、サビは割とキャッチー。しかし、ここまでの流れから急に変わり過ぎてしまった印象が否めない。曲順が悪かったように感じる。


「別れのビギン」はエスニックなサウンドが特徴的な曲。1996年の苗場プリンスホテルのCMソングに起用された。サウンドは、バイオリンやビオラ、チェロと言った弦楽器が多用されている。シンセによる、アコーディオンのような音も使われている。歌詞はタイトル通り、別れようとしている恋人たちが描かれている。ぱっと見幸せそうなラブソングに感じられるが、「愛してた面影」というフレーズで別れなのだと実感させられる。繊細な描写がされた詞世界である。しかし、サウンドのせいか、ロック色が強めな作品の中で浮いている印象が否めない。


「忘れかけたあなたへのメリークリスマス」は先行シングル「最後の嘘」のC/W曲。シンセによるシタールの音色が使われているほか、ストリングスが多用された上質なサウンドが展開されている。曲調はとてもゆったりとしている。歌詞はタイトル通りのクリスマスソング。一人で過ごすクリスマスの光景が描かれている。クリスマスを迎える前に別れてしまった恋人への想いが語られている。虚しいほどに輝く街の様子が浮かんでくるような描写がされているので、クリスマスに聴くには切なすぎる。


「Midnight Train」はジャズテイストの強いバラードナンバー。ホーンとストリングスが効果的に使われ、サウンドが彩られている。歌詞はストーリー性の強い内容となっている。深夜の電車に乗って、知らない自分や恋人に出逢いに行く。その光景が浮かんでくるような詞世界となっており、まるでその電車に乗っているかのような感覚に襲われる。生音重視の上質なサウンドも相まってか、夜のイメージを限りなく強く感じさせる曲だと思う。


「最後の嘘」は先行シングル曲。TBS系ドラマ『ひとり暮らし』の主題歌に起用された。今作収録に際してストリングスが加えられているようで、アルバムバージョンである。曲はしっとりと聴かせるバラードナンバー。ピアノやストリングスが前面に出たサウンドとなっている。歌詞は恋人に嘘をついてほしいと願う女性の心が描かれたもの。別れを決めた2人なのだろう。「人を幸せにする嘘ならついてもいい」ということはよく言われるが、この曲の世界観ではそれが当てはまるように感じる。あまり売れなくなってからの曲なので過小評価されている印象があるが、名バラードと言ってもいいような曲だと思う。


「Called Game」はしっとりと聴かせるバラードナンバー。アコギが主体となったフォーキーなサウンドで聴かせる。優しいメロディーが聴いていてとても心地良い。歌詞はタイトル通り、野球をテーマにしたもの。雨でコールドになってしまった試合と恋の終わりを例えたもの。虚無感と切なさに溢れた詞世界は「ノーサイド」の野球バージョンというような味わいがある。「ノーサイド」ほど知名度のある曲ではないが、この曲はもう少し知られてもいいのではないかと思う。


「まちぶせ」は荒井由実名義で1996年にリリースされたシングル曲。日本テレビ系番組『TVおじゃマンボウ』 のエンディングに起用された。1976年に三木聖子に提供した曲のセルフカバー。その後も様々なアーティストにカバーされているが、1981年に石川ひとみがカバーしたバージョンが一番有名だと思われる。独身時代の作品なので、今作の作詞作曲クレジットも荒井由実と表記されている。ちなみに、表記はされていないがアルバムバージョンでの収録。三木聖子、石川ひとみバージョン共に松任谷正隆が編曲しているが、それらとは異なり、 レゲエテイストのアレンジになっている。歌詞は松任谷正隆は「ストーカーの曲」と語っている。そう言ってしまえば終わりだが、切ない恋心を繊細に表現した詞世界だと思う。石川ひとみバージョンの印象が強すぎるが、これはこれで良い。


そこそこ売れた作品なので中古屋ではよく見かける。久し振りに生音志向を強めた作品なのだが、サウンドが分厚いかというとそこまででもない。しかし、いつになくロック色の強い曲も収録されているので、当時のユーミンにしては意欲作だったのかもしれない。意欲作だったのならもっとロック色を強めてしまった方が良かったように思う。特に中盤のアルバム曲において中途半端な印象が否めない。
余談だが、ジャケ写が悪い意味でインパクトが強い。当時を体験していない管理人が勝手に想像するバブル時代の女性の服装がジャケ写のような服装。1990年代後半なのに時代性が強過ぎる。それなら、ケース裏面で使われている、外国人女性2人と写っているユーミンの写真の方が古臭さが薄まったと思う。

★★★☆☆