東野純直
1993-09-22

【収録曲】
全曲作詞作曲 東野純直
5.7.8.作詞 佐藤ありす
4.作曲 寺田昌司
6.作曲 若松歓
9.作詞作曲 Kevin Gilbert 
9.日本語訳詞 東野純直
10.作詞作曲 Ole Juul
10.日本語訳詞 東野純直
1.9.編曲 村上啓介
2.8.編曲 東野純直&安部潤
3.5.7.編曲 安部潤
4.編曲 船山基紀
6.10.編曲 大村雅朗
3.ストリングスアレンジ 船山基紀
プロデュース 奥島吉雄

1.JOY≒YOUR PRESSURE ★★★★☆
2.KITTO ★★★★★
3.せつないくらいに君しか見えない ★★★★★
4.君とピアノと ★★★★★
5.BIG GAME ★★★★☆
6.セピア色の片想い ★★★★☆
7.そろそろ次の恋がしたくなった ★★★☆☆
8.君は僕の勇気 ★★★★★
9.Waiting for the rain ★★★★☆
10.U&I ★★★☆☆

1993年9月22日発売
テイチクレコード
最高位10位 売上10.0万枚

東野純直の1stアルバム。先行シングル「君とピアノと」「君は僕の勇気」を収録。

東野純直は1992年に第1回ヤマハ・ミュージック・クエストに出場。それの日本大会でグランプリ、世界大会では審査員特別賞を受賞した。それがきっかけで翌1993年にテイチクレコードからデビューした。今作に収録されている「君とピアノと」「君は僕の勇気」が最も知られていると思われる。ヒットしたというと少し違うが、2004年には『実況パワフルプロ野球11』のオープニング主題歌「PRIDE」の作詞とボーカルを担当した。そのゲームをプレイした方なら分かるかもしれない。
名前は「あずまのすみただ」と読む。割と読み間違えが多いものの、名前のインパクトのせいか、世代の方からの知名度は比較的高い。綾小路翔扮するDJ OZMAの設定上の本名「尾妻野 純直(おづまのすみただ)」は東野純直をもじったものである。

東野純直はピアノを主体としたポップスを得意とするアーティストである。ビリー・ジョエルに影響を受けたようだ。大江千里、槇原敬之、KAN、崎谷健次郎、楠瀬誠志郎などといったシンガーソングライターと似た音楽性であると言える。洋楽のテイストを感じさせるAORやブラックミュージック系のメロディーやサウンドを展開しながらも、親しみやすい王道のJ-POPという範疇に収める。このバランスが魅力的なアーティストである。今作でもその作風が遺憾無く発揮されている。


「JOY≒YOUR PRESSURE」は今作のオープニング曲。オープニングにふさわしいポップナンバー。東野純直の伸びのあるボーカルがこの曲の明るさを演出している。バンドサウンドが主体だが、打ち込みによるブラスが要所で使われている。歌詞は応援歌的な内容となっている。プレッシャーすら楽しさに変えてしまおうというメッセージが込められている。「夢は叶えるもの 勇気は示すもの とりあえず いまから START」と歌い上げるサビはとても力強く、聴き手に力を与えるようである。この曲のような、聴き手に寄り添う詞世界は東野純直の楽曲の魅力と言える。


「KITTO」は爽快感溢れるポップロックナンバー。編曲は東野純直との共同でFIELD OF VIEWに加入する前の安部潤が担当した。この曲の他にも一部の曲の編曲を担当している。心なしかFOVの楽曲のようなテイストも感じさせる。タイトなバンドサウンドとそれを固めるキーボードとの絡みが心地良いサウンドである。歌詞は好きな女性に告白しようとしている男性を描いたもの。「愛が止まらない 止められない 君を離さない」と高らかに歌い上げるサビはキャッチーそのもの。シングル曲と言っても何ら違和感の無いような完成度の高いポップスである。


「せつないくらいに君しか見えない」はしっとりと聴かせるバラードナンバー。AORのテイストを感じさせるお洒落なメロディーが聴いていてとても心地良い。キーボードが主体となった清涼感のあるサウンドが展開されている。増崎孝司による間奏のギターソロは絶品。力強いのにどこかせつない。歌詞はタイトル通りのストレートな愛の言葉が並べられている。聴いていて恥ずかしくなってしまうくらい誠実さに溢れている。大きな愛や優しさを感じさせる名バラードだと思う。誠実な男性を描くのは1990年代前半に活躍した男性シンガーソングライターにほぼ共通して言えることだと思う。


「君とピアノと」は先行シングル曲。デビューシングル曲である。テレビ朝日系番組『君といつまでも』のエンディングテーマ、ロッテリアの「イタリアンホット」のCMソングに起用された。アルバムバージョンで収録されている。ピアノによる、流麗さを極めたようなイントロからこの曲に引き込まれてしまう。サウンドは終始ピアノとシンセが前面に出ている。歌詞は別れた恋人との思い出を振り返っているもの。情景が浮かんでくるような、ドラマチックで繊細な描写がされている。「きっと 今なら強く愛せる」という後悔が伝わってくるようである。 歌詞、メロディー、アレンジ、ボーカルのどれを取っても素晴らしく、デビュー曲にして最高傑作の一つと言ってもいいような名曲。


「BIG GAME」は打ち込みが多用されたダンスナンバー。こういうアプローチもできると言わんばかりの曲調である。打ち込み主体のサウンドだが、間奏のサックスソロは印象的である。歌詞は夜の街を舞台に、車を走らせる男性を描いたもの。作詞は佐藤ありすが担当したが、東野純直が書く歌詞に寄り添ったような仕上がりとなっている。繊細な心理描写は聴き手を曲の世界に引き込んでいくかのようである。主人公になった感覚で聴けると思う。東野純直の音楽性の幅広さを実感させられるような曲。


「セピア色の片想い」はしっとりと聴かせるバラードナンバー。サウンドはピアノが前面に出ている。脇を固めるアコギの音色との絡みが聴いていて心地良い。歌詞は青春時代の恋愛を振り返っているもの。片想いに終わってしまった恋だったようだ。どんなに後悔してももう戻ることはできない。切なさに溢れた詞世界は聴き手の胸を締め付けるようである。そのような歌詞と懐かしさを感じさせるようなメロディーとの相性はぴったり。この曲もとても好きなバラード。


「そろそろ次の恋がしたくなった」はブラックミュージックのテイストを強く感じさせる曲。打ち込みとギターのカッティングが前面に出たファンキーなサウンドが展開されている。要所を飾るサックスもファンキーさを演出している。ボーカルはところどころ囁くような歌い方になっているのが特徴。女声かと思ってしまうようなファルセットもインパクトがある。歌詞はタイトル通り、次の恋をしようかと考える男性が描かれている。一人で過ごすのが辛いことがあるが、その時の心情が絶妙に表現されていると思う。ボーカルやサウンドは他の曲には無いような印象であり、これまた東野純直の音楽の範囲の広さを見せつけるような曲だと思う。


「君は僕の勇気」は先行シングル曲。テレビ朝日系番組『ビートたけしのTVタックル』のエンディングテーマ、テレビ東京系番組『アンモナイト』のエンディングに起用された。東野純直にとっての最大ヒット曲。アルバムバージョンで収録されている。爽やかなポップロックナンバー。そのようなメロディーと正反対なイントロの歪んだギターサウンドはインパクト抜群。バンドサウンドとキーボードがバランス良く絡むサウンドがたまらない。歌詞はタイトル通りの直球なラブソング。「君は僕の勇気」と力強く歌い上げるサビ終わりはインパクトが凄い。作詞は佐藤ありすなのだが、東野純直の歌詞そのものと言いたくなるような完成度の高さ。 「君とピアノと」と並んで東野純直を代表する名曲だと思う。


「Waiting for the rain」は洋楽カバー。原曲はケビン・ギルバートというアーティストらしいが聴いたことがないので分からない。東野純直自ら日本語訳をしてカバーしている。打ち込みと歪んだギターサウンドで聴かせるサウンドが展開されている。かなりロック色の強いサウンドや曲調となっている。歌詞はネガティブな感情をさらけ出すようなもの。「始まりなんて終わりへの program」「本音はいつも隠せない裏切り」といったフレーズが顕著。このようなロックナンバーは後の東野純直の楽曲に多く見られるようになる。後の自身の姿を予見するかのような曲である。


「U&I」は今作のラストを飾る曲。この曲も洋楽カバーである。やはり原曲は聴いたことがないので違いについては分からない。この曲も東野純直自ら日本語訳を行なっている。曲はしっとりと聴かせるバラード。流麗なストリングスが前面に出たサウンドは美しく、力強い。歌詞はストレートな愛の言葉が並んでいるもの。東野純直のボーカルも他の曲より力が入っている印象がある。ラストを飾るにふさわしい風格を持った曲になっていると思う。


そこそこ売れた作品なので中古屋ではよく見かける。2大ヒット曲と言える「君とピアノと」「君は僕の勇気」が収録されているので入門としてもおすすめできる。爽やかでお洒落なポップスを楽しめるアルバムとなっている。管理人は東野純直のアルバムは1st〜3rdまでしか所有していないので何とも言えないが、その中でも一番好きな作品。
東野純直は大ヒットを飛ばせないままフェードアウトしてしまった印象が否めないものの、楽曲はどれを取ってもヒット性に溢れたものばかり。東野純直はチャートの上位に来ることは少なかったが、間違いなく1990年代J-POPシーンを彩っていた存在である。メロディーやサウンド、ハイトーンなボーカルは今でも古臭さを感じさせない。この記事を読んで興味を持った方は是非入手してみてほしい。価格以上の満足感があるはず。

★★★★★