Awesome City Club
2015-09-16

 
【収録曲】
1.3.6.7.作詞 マツザカタクミ
2.作詞 atagi
4.5.作詞 マツザカタクミ/atagi
全曲作曲 atagi
1.作曲 atagi/モリシー
プロデュース mabanua 

1.GOLD ★★★★☆
2.what you want ★★★★★
3.WAHAHA ★★★☆☆
4.僕らはここでお別れさ ★★★★☆
5.愛ゆえに深度深い ★★★☆☆
6.アウトサイダー ★★★★★
7.Lullaby for TOKYO CITY ★★★★★

2015年9月16日発売
ビクターエンタテインメント
最高位50位 売上不明

Awesome City Clubの2ndアルバム。先行シングル(クラウドファンディング限定)「アウトサイダー」を収録。前作「Awesome City Tracks」からは5ヶ月振りのリリースとなった。初回盤はスリーブケース入り仕様。

Awesome City Club(略称ACC)はボーカル・ギターのatagi、ボーカル・シンセのPORIN、ギター・シンセのモリシー、ベース・シンセ・ラップのマツザカタクミ、ドラムのユキエの5人からなるバンド。2013年に結成され、2015年にメジャーデビューした。

Awesome City Clubはシティポップリバイバルの旗手として名を挙げられるバンドである。男女ボーカルを生かしたカジュアルなポップスの数々は正にネオシティポップと言ったところ。バンドサウンドとシンセの絡め方も非常に上手い。今作でもその強みがよく現れた曲が並んでいる。

「Awesome City Tracks」シリーズは「Awesome City」という架空の都市を舞台にしたサウンドトラックというコンセプトで作られている。2017年にシリーズの4作目がリリースされ、それで完結となっている。


「GOLD」は今作のオープニング曲。ドラムの連打から始まり、幻想的なシンセの音色が入ってくるイントロはこれ以上無いほどに高揚感を煽る。8ビートがとても心地良い。歌詞はタイトル通り「GOLD」について描かれている。この曲におけるGOLDとは、字面そのままの黄金ではなく、自分で勝ち取った大切なものというような意味があるのだろう。比較的メッセージ性の強い内容の歌詞である。そのような歌詞とキラキラと輝くようなサウンドとの相性は抜群。これぞアルバムのオープニング!と言いたくなるような雰囲気がある。


「what you want」はシンセが多用されたポップナンバー。シンセの使い方を始めとしたサウンドはダンスミュージックのテイストを感じさせる。歌詞は英語詞が多用されている。日本語詞の部分を見ると、デートの待ち合わせをしたのに来ない相手を待つ青年の気持ちが描かれたものとなっている。モヤモヤした気持ちが繊細に表現されていると思う。「Baby,what you want?」と繰り返されるサビはとてもキャッチー。今作収録曲の中でもかなり好きな曲。


「WAHAHA」はファンクやディスコのテイストが強い曲。イントロからキレの良いギターサウンドが展開されており、ワクワクさせてくる。歌詞は語感を重視したようなものとなっている。夏を舞台に、朝まで遊ぶ男女を描いている。このようなカジュアルな雰囲気溢れる詞世界はいかにもACCらしさを感じさせる。中盤からはラップ調のボーカルになる。男女ボーカルという強みを生かして、男女の心の高まりが伝わってくるようなものになっていると思う。このノリの良さにはついつい身体を動かしたくなってしまう。
 

「僕らはここでお別れさ」はしっとりと聴かせるバラードナンバー。繊細さ漂うギターの音色が前面に出ており、曲の世界観を構成している。淡々としたドラムの音との絡みが特徴的。歌詞は遊び終えた後の何とも言えない虚無感を描いたものとなっている。現実逃避をしていたのに、現実に引き戻されてしまったかのような雰囲気がある。若者ならではの不安定な心を絶妙に表現した詞世界になっていると思う。これまでのようなノリの良い曲だけでなく、このような曲もしっかり聴かせられるACCの音楽性は脱帽。


「愛ゆえに深度深い」はソウルテイストの強い曲。淡々としたシンセの音色をバックに、ラップ調で歌われているのが特徴的。明るいようでいて、沈んでいくかのように暗いサウンドが展開されている。まさに「深度深い」サウンドと言ったところか。歌詞は愛について描かれている。二人は相思相愛なのか。それは分からない。散文的で意味は分かりにくいものの、それでも何となく分かる感じがする。この曲でも男女の掛け合いが登場する。男女ボーカルを生かしたこのような曲はACCの王道と言えるかもしれない。


「アウトサイダー」は先行シングル曲。クラウドファンディングという世にも珍しい形でのシングルリリースがされた。イントロからギターのカッティングやストリングスが絡んだ派手なサウンドとなっている。この曲でも男女ボーカルが使われている。男性でも女性でも親しみやすく、共感しやすいような工夫がされていると思う。歌詞はSNSをテーマにしている。受け身でコミュケーションを取る人を「アウトサイダー」に例え、「今変わらなきゃ!」と提案するもの。これはSNSでも実際のコミュケーションでも共通して言えることだろう。この曲のような社会派な内容の歌詞を持った曲は下手にやると説教くさくなりがちだが、あくまでお洒落に、サラッとメッセージを届けているのは流石。


「Lullaby for TOKYO CITY」は今作のラストを飾る曲。7分半の大曲。ピアノが主体となった重厚かつ美しいサウンドで聴かせる。脇を固めるバンドサウンドも優しい感じがする。切なげな音色のギターはこの曲の世界観を彩っている。歌詞は英語詞が多用されているが、日本語詞を見るとかなり内省的な内容である。少年時代、少女時代の思い出を忘れたまま生きる人へのメッセージのようになっている。歌詞は聴き手の心を引くような表現がされている。真夜中の大都会の中に沈んでいくかのような雰囲気がある曲。優しいながらもとても力強い。ラストを飾るにふさわしい曲だと思う。  


ネオシティポップシーンの旗手と称されるバンドだけあって、全編通してお洒落なポップスが展開されている。聴き流しているととても心地良いが、集中して聴いてみるとサウンドがかなり作り込まれているのが分かるはず。1980年代の洋楽のテイストを感じさせるものも多く、それが好きならハマれる作品だと思う。管理人はAwesome City Clubの作品は今作と4作目しか持っていないので何とも言えないが、どちらかというとバンドサウンドが前面に出ている今作の方が好き。

★★★★☆