横山輝一
1993-04-15


↑ジャケ写(アマゾンのページに掲載されていなかったので)

【収録曲】
全曲作詞作曲編曲 横山輝一
5.作詞 佐藤ありす
2.編曲 横山輝一&門倉聡
プロデュース        横山輝一

1.INTRODUCTION〜D.C.〜 省略
2.SWEET PRETENDER ★★★★☆
3.Good Days,Bad Days ★★★☆☆
4.Touch Me(Remix) ★★★★☆
5.YA-YA-YA ★★★★★
6.Lovin' You ★★★★★
7.Sensitive ★★★★☆
8.Get Love ★★★★☆
9.FIX IT ★★★★☆
10.SHINE ON ME ★★★☆☆
11.STAY WITH ME FOREVER ★★★☆☆

1993年2月25日発売
1993年4月16日再発
ポリスター
最高位15位 売上7.5万枚

横山輝一の7thアルバム。先行シングル「Get Love」「Lovin' You」を収録。前作「HIT ME!」からは1年3ヶ月振りのリリースとなった。

今作は横山輝一にとっての最大のヒット曲「Lovin' You」が収録されたアルバム。そのためか、オリジナルアルバムの中では最高の売上を記録した。

横山輝一は1986年にファンハウスからデビューしたシンガーソングライターである。1989年に一旦活動を休止して渡米し、音楽を学んだ。1991年にポリスターに移籍して活動再開した。そして今作にも収録されているシングル「Lovin' You」が最大ヒットを記録した。その後はシンガーソングライターのみならず、作曲家やプロデューサーとしても活動している。恐らく提供した中で一番著名なのはMAXの「Ride on time」だろう。現在ではファンクラブを中心にライブ活動や作品のリリースを行なっている。

横山輝一はブラックミュージックを基調としたポップスを得意としている。R&B、ファンク、ソウルを取り入れた曲が多いが、中でも一番得意なのはニュージャックスウィングだろう。ニュージャックスウィングは1980年代後半に開発された、ファンクにヒップホップやソウル、ゴスペル等を加えたジャンル。今作でもそのジャンルを取り入れた楽曲が展開されている。


「INTRODUCTION〜D.C.〜」は今作のオープニング曲。ほぼインスト同然ではあるが後半にはコーラスが入っている。アルバムの始まり!という感じでワクワクさせてくる。聴き流さずにしっかり聴くことをおすすめする。


「SWEET PRETENDER」はノリの良いポップナンバー。キーボードとギターのカッティングが主体となったサウンドは思わず体が動いてしまう。メロディーは疾走感に溢れている。英語が多用されたサビはとてもキャッチーである。歌詞は思わせぶりな態度をとる女性への気持ちを描いたもの。曲調やサウンドも相まって、とてもスリリングな雰囲気に溢れている。横山輝一の突き抜けるような高音も冴え渡っている。シングルと言っても違和感の無いくらいポップな曲である。


「Good Days,Bad Days」はファンク色の強い曲。ファンキーなベースと派手なシンセが絡むサウンドはニュージャックスウィングと言った方が良いだろうか。ヒップホップのテイストも感じさせる部分がある。時代性の強いサウンドではあるがそれがたまらない。歌詞はメッセージ性の強いもの。相手がいる女性に恋した男性を描いている。「誰かの替わりじゃダメさ」と歌い上げる部分はインパクトがある。曲に表情をつけるように多彩な横山輝一のボーカルがこの曲の聴きどころ。


「Touch Me(Remix)」は先行シングル「Lovin' You」のC/W曲。アルバムバージョンで収録されている。シンセが多用されたサウンドが展開されたポップナンバー。要所を飾るブラスが曲の明るさを引き立てている。高揚感を煽るようなイントロからこの曲に引き込まれる。この曲のサビもとてもキャッチー。歌詞はストレートなラブソング。「素直なままで言うよ 愛していると」と歌い上げるサビは力強さに溢れている。A面曲が有名過ぎて埋もれてしまっているイメージがあるが、こちらも良曲である。


「YA-YA-YA」はZOOに提供した曲のセルフカバー。「Choo Choo TRAIN」ほどではないがZOOの曲の中でも著名な部類に入る曲だと思われる。派手なブラスやシンセが多用されたダンスナンバー。聴いていると思わずノりたくなってしまう。横山輝一の朗々とした歌声もこの曲の楽しさを演出している。佐藤ありすによる歌詞は語感を重視したような感じで意味は分かりにくいものの、メロディーと一体になって乗っている印象がある。サウンドだけでなく、言葉にもグルーヴがあるのだと感じさせる。ZOOのバージョンも良いが、こちらも素晴らしい。


「Lovin' You」は先行シングル曲。TBS系『世界アルペン選手権』の中継テーマソング、「SUZUTAN」のCMソングに起用された。横山輝一にとっての最大ヒット曲となった。ニュージャックスウィングのテイストを感じさせるダンスポップナンバー。一回聴いたら口ずさめそうなくらい親しみやすくキャッチーなのだが、実際に歌ってみると曲の高低差が激しくて中々苦戦する。特にサビは相当に高い。歌詞はポジティブなメッセージが並んだものとなっている。明るい曲調も相まって歌詞の説得力が増しているように感じられる。 数多くのヒット曲や名曲が生まれた1990年代J-POPの歴史の中で埋もれてしまいがちな印象があるが、この曲も名曲。横山輝一の魅力が凝縮された曲だと思う。


「Sensitive」はここまでの流れを落ち着けるようなバラードナンバー。曲全体からはどことなくAORのテイストを感じさせる。繊細さを感じさせるしっとりとしたメロディーやキーボードの音色が特徴的。歌詞は前の彼女を振り返っているもの。失恋に対しての後悔が淡々と語られた詞世界は何とも切ない。丁寧な情景描写も切なさを演出している。ここまでは明るい曲調ばかりだったので、よりこの曲に浸れる印象がある。横山輝一はこの手のバラードも得意としている。もう一つの王道と言える。


「Get Love」は先行シングル曲。この曲の英語バージョンが読売テレビ系番組『鶴瓶上岡パペポTV』のオープニングテーマに起用された。ニュージャックスウィングの要素を取り入れたポップナンバー。シンセとホーンやギターのカッティングが絡み合う派手なサウンドは絶品。歌詞は好きな人に想いを伝えようとする男性を描いたもの。軽い男性が主人公のようでいて、誠実な男性が描かれている。都会的な雰囲気を感じさせる詞世界となっている。マニアックな曲になってしまいそうなところを絶妙に親しみやすい曲に仕上げている。その技術は横山輝一ならでは。


「FIX IT」は力強いファンクロックナンバー。ヘビーなベースやギターサウンドが前面に出たサウンドはファンキーそのもの。脇を固めるシンセにも隙がない。間奏のサックスソロは絶品。歌詞は気になる女性に言い寄る男性を描いたもの。英語詞が使われたサビはかなりキャッチー。メロディーと歌詞がぴったりと合っている感じが聴いていてとても心地良い。アルバム曲ながらもシングル曲ばりのキャッチーさとサウンドである。ただ曲の格好良さに引き込まれてしまう。


「SHINE ON ME」は打ち込みが多用されたポップナンバー。派手なシンセの音色が前面に出ている。バックを飾る、キレの良いギターのカッティングがとても格好良い。歌詞は英語が多用され、何となくスカした印象のものになっている。恋人に対して「感じるままに魅せて」と呼びかける内容になっている。そのフレーズを始めとして、何となく官能的なイメージの歌詞なのだが、サウンドのノリの良さのおかげでサラッと聴けてしまう。評価が低めだが、ここまで来ると似たような曲調が多いためか、印象に残りづらくなってしまったのが理由。


「STAY WITH ME FOREVER」は先行シングル「Get Love」のC/W曲。ミディアムテンポのバラードナンバー。打ち込みが多用された軽めのサウンドが展開されている。キラキラと輝くようなイメージのサウンドとなっている。歌詞はタイトル通りのストレートな愛の言葉が並べられたものである。歌詞の一言一言を丁寧に歌う横山輝一のボーカルが印象的。先行シングルのC/W曲なのだが、今作のラストのために作られたかのような雰囲気がある。それだけの風格がある曲なのだろう。


横山輝一の作品の中ではかなり売れた部類に入る作品なので中古屋ではよく見かける。セルフタイトルだけあって全曲が洗練されており、充実した作品となっている。最大のヒット曲「Lovin' You」が収録されているため、横山輝一のオリジナルアルバムの入門としてもおすすめできる。横山輝一は才能の割に過小評価されている印象が否めないアーティストである。圧倒的な歌唱力や高い作詞作曲編曲の能力は今でもなお凄みを感じさせる。2000年代前半以降のR&Bやファンク系アーティストが好きな方は是非聴いてみてほしい。ハマれるはず。

★★★★☆