槇原敬之
1996-10-25

【収録曲】 
全曲作詞作曲編曲 槇原敬之
プロデュース KENJI KISAKI(木崎賢治)

1.男はつらいっすねぇ ★★★☆☆
2.PENGUIN ★★★★★
3.どうしようもない僕に天使が降りてきた ★★★★★
4.君の自転車 ★★★★☆
5.うん ★★★★★
6.I need you.(ALBUM VERSION) ★★★★☆
7.revenge ★★☆☆☆
8.オオカミ少年 ★★★☆☆
9.THE END OF THE WORLD ★★★★★
10.PAIN ★★★★★ 
11.LOVE LETTER ★★★★★
12.まだ見ぬ君へ ★★★★☆

1996年10月25日発売
1998年11月26日限定紙ジャケ再発
2012年11月14日再発(リマスター)
ワーナー(River Way) 
最高位2位 売上75.8万枚

槇原敬之の7thアルバム。先行シングル「どうしようもない僕に天使が降りてきた」を収録。前作「Ver.1.0E LOVE LETTER FROM THE DIGITAL COWBOY」からはリミックスアルバムを挟んで3ヶ月振りのリリースとなった。初回盤は三方背BOXケース入り仕様。

今作は第一次ワーナー所属時代(1990年〜1996年)最後のオリジナルアルバムである。前作「THE DIGITAL COWBOY」では全編英語詞による曲が展開され、シングルでも2作連続で全編英語詞の曲がリリースされた。そのため、日本語詞によるアルバムのリリースは1994年の「PHARMACY」以来2年ぶりとなる。 

当時の槇原は悲しい出来事が続いたこと、ラブソングばかり求められる現状に嫌気が差したことから、引退を考えてこのアルバムの制作を行ったという。
そのような背景で制作されたためか、全体的に今までの楽曲よりもレベルが上がったような印象がある。シングルはC/W含め2曲のみだが、アルバム曲はシングルを越える程の完成度の高さを誇る曲ばかり。槇原本人もこのアルバムには不満が無いとコメントしている。ライブでもこのアルバムの収録曲を歌うことが多い。


「男はつらいっすねぇ」は今作のオープニング曲。イントロから今までに無いくらい激しいギターサウンドが展開されたハードロックナンバー。恐らく現在に至るまでのキャリアを通しても最もロック色の強い曲だと思われる。槇原のボーカルもかなり力強い感じ。歌詞は槇原自身が思い描く男としての理想の姿がコミカルに語られている。かなり硬派な男の姿が描かれている。この曲をオープニングに配置したことで、今までの作品とは違うということを強調できているような印象がある。


「PENGUIN」はミディアムテンポのバラードナンバー。民族音楽のようなコーラスで始まるイントロからこの曲の世界に引き込まれる。どこか神秘的なイメージのイントロである。作り込まれたサウンドと美しいメロディーがたまらない。歌詞は別れた恋人との思い出を振り返っているもの。誰にも許されない関係だった二人のようだ。そのためか、解釈次第で人物像が分かれると思われる。不倫関係、教師と生徒、同性、兄妹などと解釈できるかもしれない。この曲はファン人気がかなり高い。それも頷ける確かな名バラードだと思う。余談ではあるが、ペンギンには同性カップルが多いと言われている。恐らくこの曲との関係は無いだろう。


「どうしようもない僕に天使が降りてきた」は先行シングル曲。日本テレビ系番組『TVおじゃマンボウ』のエンディングテーマに起用された。これまでのシングルとしては異例のロック色の強い曲。いつになくバンドサウンドが目立っているのが特徴。ギターサウンドが前面に出ている。それでもサビはとてもキャッチー。そのような曲のためか、ライブでも盛り上げ曲としてよく披露される。ファンが白いハンカチを振るパフォーマンスがあり、定番である。歌詞は恋人と喧嘩してしまい、仲直りをしようとする男性が描かれたもの。槇原の友人の実話が元になっているという。ドラマチックな情景描写やリアルな心理描写が展開された詞世界である。 この曲もラブソングではあるが、今までとは違うタッチのサウンドや歌詞。今までとの違いを実感させる。


「君の自転車」は爽やかなポップナンバー。跳ね上がるようなメロディーが展開されており、聴いていてとても心地良い。サウンドはマンドリンのような音が使われているのが特徴。歌詞は「どうしようもない僕に天使が降りてきた」と同じような、恋人と喧嘩して仲直りしようとする男性が描かれたもの。恋人は喧嘩してそのまま家を飛び出してしまった。そのような恋人の様子を見に行くために恋人の自転車に乗って出かけるという内容。コミカルな描写がされている。ラストの「気持ちのサドルを少し下げて」という表現が特に好き。シングルでも何ら違和感の無いような曲だと思う。


「うん」はしっとりと聴かせるバラードナンバー。ピアノの弾き語りが前面に出たシンプルなサウンドは、メロディーやボーカルの美しさを最大限に引き出している。タイトルだけ見るとどのような内容なのか分かりにくいかもしれないが、歌詞は結婚を決めた恋人たちが描かれている。「I LOVE YOU」という言葉の最終形が「うん」となるようだ。100回も「好き」と言われるより、1回の「うん」の方が心に響く。それだけお互いのことを信頼できているのだろう。多幸感に溢れた美しいラブソングだと思う。これぞ隠れた名曲。


「I need you.(ALBUM VERSION)」は先行シングル「どうしようもない僕に天使が降りてきた」のC/W曲。アルバムバージョンで収録されている。槇原の楽曲の中では珍しいR&Bテイストのサウンドが展開されている。その後の音楽シーンはR&Bが席巻するが、その数年前にR&Bを取り入れていたことになる。歌詞は友達以上恋人未満の関係に悩む男性が主人公として描かれている。冬の寒い日が舞台となっている。モヤモヤした気持ちが伝わってくるような繊細な歌詞である。管理人はピアノが前面に出たシングルバージョンの方が好き。


「revenge」は暗い雰囲気漂うバラードナンバー。ピアノが前面に出たサウンドが展開されている。サビまでは淡々と進んでいくが、サビでギターサウンドが出て急に激しくなる。ロックと言っても良いかもしれない。それに合わせて槇原のボーカルも表情を変える。歌詞は別れた恋人へのささやかな反抗を行う男性を描いたもの。歌詞を見ると、女々しい感じの人物像なのが伝わってくる。ここまでの流れを壊さんばかりの曲である。アルバムの中に意図的に配置された外れ曲だと解釈している。


「オオカミ少年」はR&Bテイストの曲。槇原自身によるコーラスが割と凝っているのが特徴。「somebody tell me」のコーラスはかなり格好良い。間奏にはラップ調で歌われている部分がある。サビになっても淡々とした感じのメロディーで進んでいく。その分歌詞とメロディーが一体となっている感覚があり、それが心地良い。歌詞は愛する人を探すために森を出る「オオカミ少年」が主人公である。何も知らないということの強さも描かれている。「revenge」と同じく、一曲単位で聴くと良いのだが、アルバムでは浮いている印象が否めない。


「THE END OF THE WORLD」はAORテイストの強い曲。デイヴィッド・フォスターの影響を受けて作られたようだ。ミディアムテンポの曲調で、優しくて美しいメロディーが展開されている。イントロから心を持っていかれるようなメロディーである。サウンドは打ち込みが主体のシンプルなもの。間奏のギターソロは泣かせるような音色である。歌詞は許されない恋をしている二人を描いたもの。管理人は不倫の曲と捉えている。同性カップルと解釈している方も多いようだ。追い詰められるような心理描写が特徴的。聴き手が主人公になったかのような感覚に襲われる。 メロディー、アレンジ、歌詞、ボーカルのどれを取っても素晴らしい。槇原敬之の楽曲の中でも特に好きな曲に入ってくる。


「PAIN」は晴れやかなポップナンバー。爽やかなキーボードの音色がこの曲を彩っている。ミディアムテンポの落ち着いた曲調だが、サビは中々にキャッチー。当時の槇原敬之の楽曲の中では珍しい、ライフソングの要素を含んだ歌詞が特徴的。東京での生活に疲れた男性がまた頑張ろうと誓うまでの過程が描かれている。歌詞の中には今作リリース当時完成したばかりだったレインボーブリッジを想起させるフレーズが入っている。当時の東京の街並みの様子も浮かんでくるようである。一日の終わりに聴くと、何となく苦労が報われるような、救われるような感覚がある。この曲も槇原敬之の好きな曲の上位に入ってくる。


「LOVE LETTER」は王道の片想い系バラードナンバー。後にNTT東日本のCMソングに起用されたためか、アルバム曲ではあるがそれなりの知名度がある。サウンドは1番はピアノが主体となった落ち着いたもので、2番からはバンドサウンドが入って盛り上がる。このドラマチックな構成は聴き手を曲の世界に引き込むようである。曲に表情をつけるようなギターの音色は絶品。歌詞は前述したように片想いしている男性が主人公。就職のために地元を出てしまう好きな人にラブレターを渡そうとする様子が描かれている。繊細な描写には感情移入しそうになる。 槇原敬之のバラードの到達点と言える存在の曲だと思う。片想い系バラードでこの曲ほど切ないのはそうは無い。


「まだ見ぬ君へ」は今作のラストを飾る曲。ポップなメロディーと優しい曲調がとても心地良い。打ち込みとギターサウンドが前面に出ている。歌詞は当時の槇原の心情を描いていると思われる。このようなドキュメンタリータッチの曲は今までの作品にも何曲かある。いつか一緒になる恋人、つまり「まだ見ぬ君」のために良い姿でいようとする男性が主人公。いつまでも独り身ではいられないという気持ちが伝わってくるようである。ただ、そのようなテーマの曲でも悲壮感は無い。ラストの歌詞「愛のようなものじゃなくて愛をあげたいから」は名言だと思う。この曲ラストに配置したことで、またもう一周聴きたくなるような中毒性を生んでいると思う。


ヒット作なので中古屋ではよく見かける。シングル曲こそ少ないものの、一曲一曲の完成度、アルバム全体の統一感共に素晴らしいものがある。ファン人気の高い曲も数多く収録されている。ベストの次に聴くオリジナルアルバムというよりは2、3枚聴いた後に聴く方が合っている印象がある。槇原敬之の楽曲の魅力を知った上で聴くとハマれると思う。
管理人の中では、槇原敬之のアルバムの中でも最も好きな作品の一つに入ってくる。

★★★★★