RAZZ MA TAZZ
1995-07-21

【収録曲】
全曲作詞 阿久延博
4.作詞 けいこMoon
全曲作曲 三木拓次
5.作曲 横山達郎
10.作曲 阿久延博
全曲編曲 外間隆史+冨田恵一 with RAZZ MA TAZZ
プロデュース 松田直

1.罪とビーナス ★★★★☆
2.白い夜 ★★★★★
3.Like a Typhoon-エンゼルフィッシュの休暇- ★★★★☆
4.LOVE Re-Do ★★★★★
5.FM ★★★★☆
6.僕のままで 君のままで[Miracle Voices] ★★★★★
7.消えゆく想い ★★★★☆
8.The Day before Tomorrow ★★★☆☆
9.サヨナラのキスではじめよう ★★★★★
10.彼女の猫は土の中 ★★★☆☆

1995年7月21日発売
フォーライフ・レコード
最高位74位 売上不明

RAZZ MA TAZZの2ndアルバム。先行シングル「僕のままで 君のままで」「LOVE Re-Do」「サヨナラのキスではじめよう」を収録。今作発売後に「白い夜」が「Season Train」のC/W曲という形でシングルカットされた。前作「Ordinary Story」からは1年1ヶ月振りのリリースとなった。

RAZZ MA TAZZはボーカル担当の阿久延博、アコースティックギター担当でリーダーの横山達郎、ギター担当の三木拓次、ベース担当の入江昌哲、ドラムス担当の三村隆史からなるバンド。1989年に結成され、1994年にメジャーデビュー、1999年に解散した。独特なバンド名が印象的だが、これは横山達郎がジャズ雑誌から見つけた言葉。「輝かしい」「はつらつとした」というような意味があるようだ。作詞は阿久延博が、作曲は三木拓次が主に担当していた。
解散後は俳優としての活動を始めた入江昌哲以外は音楽活動を続けていた。しかし、2002年に三木拓次が膵臓癌で亡くなったため、5人での活動再開は叶わなくなってしまった。33歳というあまりにも早過ぎる死だった。

RAZZ MA TAZZの楽曲の魅力は爽やかさと切なさを併せ持ったポップなラブソングである。それは三木拓次が紡いだメロディーの功績が大きい。阿久延博による「青春」をイメージさせるようなボーカルや詞世界も大きな魅力。今作でもその魅力が遺憾無く発揮されている。


「罪とビーナス」は今作のオープニング曲。ミディアムテンポのラブソング。ギターサウンドが前面に出た、比較的重厚なサウンドで聴かせる。RAZZ MA TAZZとしてはロック色の強いサウンドという印象がある。歌詞は内省的な雰囲気がある。誰かが誰かを愛したり、愛されたりすることを罪なことのように捉えて描かれている。他にも、自らのことを「傷ついたまま そう生まれてきたよ」と語っている。このようなシニカルな詞世界が展開された曲をオープニングに据えるのは中々に驚かされるが、この曲のダウナーな雰囲気に不思議と引き込まれる。


「白い夜」は今作発売後に「Season Train」のC/W曲としてシングルカットされた曲。ミディアムテンポのバラードナンバー。この曲も重厚なバンドサウンドが前面に出ている。サビの部分に入ってくるシンセの音色が曲を彩っている。この曲の聴きどころは切なさが滲んだようなメロディー。力強さを感じさせつつも、切なさも持っている。サビをはじめ、とにかく美しいメロディーである。歌詞は彼女と別れた男性の心が描かれたもの。阿久延博の文学性がよく現れた歌詞となっている「雪が霧雨に変わり 永遠のシールはがすよ 2人にはこんなにも白い夜」という歌詞は聴く度に鳥肌が立ってしまう。 永遠をシールに例えるセンス。あまりにも刹那的である。それ以外の歌詞も男性の感情がよく分かるような繊細な心理描写がされている。主人公の男性になってしまったのではと思うくらいに感情が伝わってくる。歌詞もメロディーも冴え渡っており、RAZZ MA TAZZの曲の中でも特に好きな曲に入ってくる。


「Like a Typhoon-エンゼルフィッシュの休暇-」は爽やかなポップナンバー。涼しげなギターの音色が聴いていてとても心地良い。手数の多いドラムもこの曲の軽快さを演出している。歌詞は付き合いたての恋人たちを描いたもの。この曲でも内省的な雰囲気を持った歌詞が登場する。「ときどき自分が誰なのか わからない」「渋谷の街には今日もまた たくさんの人達 何を求め 捜しては 急いでる?」という歌詞が顕著。歌詞全体としては、休みを取ったら2人で出かけようと約束をする内容。幸せな感じもあるのだが、何とも言えない虚無感も伝わってくるような詞世界である。それでも三木拓次が紡いだメロディーにかかればサラっと聴かせる。 聴き終わった後には「爽やか」という感想しか残らないくらいにしてしまう。


「LOVE Re-Do」は先行シングル曲。ブルボン「ピックルEX」のCMソング、日本テレビ系番組『発明将軍ダウンタウン』のエンディングテーマに起用された。アルバムバージョンで収録されている。シングルにふさわしい爽やかなポップナンバー。シンプルなバンドサウンドやサビのコーラスワークがたまらない。阿久延博の突き抜けるような高音もこの曲の爽やかさを演出している。作詞はけいこMoonという作詞家が担当した。RAZZ MA TAZZの曲としては数少ない、メンバー以外が作詞を担当した曲である。歌詞は彼女とのヨリを戻そうとする男性を描いたもの。男性の誠実さが伝わってくるような歌詞だと思う。 外部が作詞しているが、阿久延博が書く歌詞に寄り添って作詞されたような印象がある。ポップでキャッチー。それでもどこか切なさも感じさせるこの曲はRAZZ MA TAZZの王道と言えるだろう。


「FM」は横山達郎が作曲を担当した曲。三木拓次の作るメロディーとはまた違った良さがある。淡々とした感じのメロディーではあるが、サビはそこそこキャッチー。ギターやベースが前面に出た重厚なサウンドが展開されている。歌詞は女友達に誘われて一緒にドライブする男性の心情を描いたもの。しかもその女友達は結婚したようだ。それでも運転手としてその人に付き合ってあげる男性の優しさには感心してしまう。ラストでは「寂しくなったらすぐにでも 電話したっていいからね」と励ます。歌詞の中の男性の優しさに引き込まれる。誠実な男性を描いた曲はRAZZ MA TAZZに限らず、当時の男性アーティストに多く見られる。何故かは分からないが。


「僕のままで 君のままで[Miracle Voices]」は先行シングル曲。TBS系番組『ダウトをさがせⅡ』のエンディングテーマに起用された。明確には分からないが、[Miracle Voices]と記載されているのでアルバムバージョンなのかもしれない。ギターのアルペジオが心地良い、爽やかなポップナンバー。歌詞は彼女の住む街に向かう男性が描かれたもの。全編通して多幸感溢れる歌詞となっているが、彼女への感謝も語られており、その辺りは阿久延博の人となりをうかがわせる。流れるようなポップなメロディーと歌詞がぴったり合っている感じがたまらない。とても好きな曲。


「消えゆく想い」は明るい曲調のバラードナンバー。繊細で美しいアコギの音色が前面に出ており、サウンドを彩っている。歌詞は引っ越してしまった彼女へのメッセージのようになっている。彼女というよりは親友と言った方が良いのかもしれない。悲しみや切なさを感じさせつつも、最後には前を向いて歩き始めることを誓っている。指が覚えた電話番号を忘れていっても、一緒に過ごした日々は忘れない。何ともピュアな感情である。歌詞はとても切ないのにメロディーやサウンドはとても明るい。そのギャップが印象的なのだが、これからの2人を応援しているかのように感じる。


「The Day before Tomorrow」は爽快なポップナンバー。力強いバンドサウンドが主張しているが、涼しげなギターの音色がこの曲の美しいメロディーを引き立てている。後半にはシンセによるストリングスも入ってくる。歌詞は18歳の頃から25歳に至るまでの思い出を振り返っているもの。25歳というのはこの曲が作られた当時の阿久延博の年齢だと解釈している。現在は彼女が側にいるという形で描かれている。自分の過去を振り返りながら聴きたくなる曲である。


「サヨナラのキスではじめよう」は先行シングル曲。フジテレビ系番組『今田耕司のシブヤ系うらりんご』のエンディングテーマ、ニッポン放送のラジオ番組『入江雅人のGo!Go!テレキッズ』のオープニングテーマに起用された。アルバムバージョンで収録されている。アコギが主張した爽やかなサウンドが展開されたポップナンバー。サビのコーラスワークも曲の爽やかさを引き立てている。歌詞は彼女と別れることを決めた男性を描いたもの。別れを「新しいときめきがはじまる」とポジティブに捉えているのが特徴的。それでも「今でも抱きしめたいよ」と未練を覗かせるのは男性ならではの感情だろう。 爽やかさと切なさを併せ持ったこの曲はRAZZ MA TAZZの曲の魅力が詰まっていると思う。


「彼女の猫は土の中」は今作のラストを飾る曲。作詞作曲のいずれも阿久延博が担当している珍しい曲。アコギが前面に出ており、かなりシンプルなサウンドが展開されている。阿久延博の美しいファルセットを楽しめる。あまりファルセットを使わない印象があるので貴重だと思う。歌詞は失った彼女へのメッセージのようになっている。タイトルがインパクト抜群だが、これはどういう意味なのだろうか?何とも言えない虚無感や喪失感を持った曲だと思う。ラスト以外に配置しようのない曲である。


あまり売れた作品ではないが中古屋ではよく見かける。全編通して爽やかなポップスを楽しめる作品である。前作よりも阿久延博のボーカルが上達している感じがする。そのためか、前作よりも洗練されている作品だと感じる。
RAZZ MA TAZZは現在となってはマイナーなバンドという印象が否めないが、楽曲の良さはどのメジャーなバンドにも劣らないと思っている。スピッツやMr.Children、L⇔R、FIELD OF VIEWといったバンドが好きなら是非とも聴いてほしい。ポップでどこか切ない曲の数々はJ-POPが好きな方なら誰もが好きになれるはず。RAZZ MA TAZZの曲は今でも色褪せずに輝き続けている。今回の記事を読んで興味を持っていただいた方は是非とも作品を入手して聴いてみてほしい。出費以上の満足感があるはず。

★★★★★