松任谷由実
1999-02-24

【収録曲】
全曲作詞作曲 松任谷由実
全曲編曲         松任谷正隆
プロデュース  松任谷正隆

1.リフレインが叫んでる ★★★★★
2.Nobody Else ★★★★☆
3.ふってあげる ★★★★☆
4.誕生日おめでとう ★★☆☆☆
5.Home Townへようこそ ★★★★★
6.とこしえにGood Night(夜明けの色) ★★★☆☆
7.恋はNo-return ★★★☆☆
8.幸せはあなたへの復讐 ★★★☆☆
9.吹雪の中を ★★★☆☆
10.September Blue Moon ★★★★☆

1988年11月26日発売(CD,CT,LP)
1999年2月24日再発(リマスター)
2013年10月2日再発(1999年盤の廉価再発)
東芝EMI/EXPRESS
最高位1位 売上158.4万枚

松任谷由実の20thアルバム。先行シングルは無し。前作「ダイアモンドダストが消えぬまに」からはほぼ1年振りのリリースとなった。初回盤はジャケットが3D仕様になっている。

今作はユーミンにとって初のミリオンを達成したアルバム。今作以降は1995年リリースの「KATHMANDU」まで実に8年連続、8作連続でミリオンを達成していた。今作の辺りから音楽界の売上をリードする存在となったと言える。その存在はもはや社会的にもかなり大きなものだったのだろう。

今作は前作から続いてきた「純愛3部作」の2作目。前作のテーマは「もののあはれ」だったようだが、今作のテーマは「純愛」である。語感の良いタイトルが特徴的だが、これは「舌を入れないキス」という意味があるという。

サウンド面では前作「ダイアモンドダストが消えぬまに」に引き続き、当時の超高級楽器・シンクラヴィアを多用しているのが特徴。そのため、サウンドは打ち込みが主体となっている。


「リフレインが叫んでる」は今作のオープニング曲。1988年に三菱自動車の「ミラージュ」のCMソングに起用されたほか、1989年にTBS系ドラマ23『東京ホテル物語』の主題歌に起用された。他にもこの曲を題材にしたドラマが制作されている。このようなタイアップの多さから、シングル曲も同然の扱いと言える。非ファン層からもある程度の知名度がある。独特なシンセのリフによるイントロやシンクラヴィアが使われた派手なサウンドはかなりのインパクトがある。間奏のギターソロはこの曲に確かな力強さを与えている。歌詞の舞台は葉山から秋谷海岸が舞台になっているとされている。歌詞全体としては別れた男女の後悔が語られたもの。タイトルにちなんてか、「どうして どうして」とリフレインするサビが特徴。インパクトのある歌詞やメロディー、力強いサウンド、表情豊かなボーカルとどれを取っても完成度が高く、とても好きな曲。後追いで聴いてシングル曲ではなかったことに驚いた。


「Nobody Else」はポップなバラードナンバー。シンセが多用されたキラキラとしたサウンドで聴かせる。ドラムはシンクラヴィアが主体だが、「Additional Drums」というクレジットで外国人ミュージシャンが参加している。恐らく一部で生音が使われているのだろう。歌詞は失恋した後の女性の心を描いたもの。通り雨が降っている日が舞台となっている。傷みや苦しみが伝わってくるような繊細な心理描写がされている。別れてしまったのに、元の恋人を忘れることができない。「あなたの代わりはいない」と言わんばかりの歌詞である。ただ、男性の場合は元の彼女に自分のことをそれくらいに思っていてほしいという願望もあると思う。女性でも男性でも共感できるような、ユーミンらしさを感じさせるバラードと言ったところ。


「ふってあげる」はホーンが多用されたポップナンバー。この曲では打ち込みは使われておらず、全て生音で構成されている上に、ストリングスも使用されている。そのためか、どことなく豪華な感じのサウンドとなっている。歌詞はタイトル通り、恋人のことをフる女性を描いたもの。どうせこのままだと別れるのだから、いっそ自分から「ふってあげる」という内容。それでも「あの日の二人は消えない」「あなたが最後に悩まぬように」と相手を気遣っての判断のようだ。幸せな別れ方だったのか、そうではなかったのか。モヤモヤしてしまう。サウンドが管理人の好みなので評価が高めになっている。


「誕生日おめでとう」はしっとりと聴かせるバラードナンバー。涼しげなアコギの音色が前面に出ているが、演奏クレジットがされていないのでシンクラヴィアで処理されたものだと思われる。パーカッションとストリングスは生音となっている。歌詞は別れた恋人の誕生を祝う女性が描かれている。そして、遠くでその人の幸せを願っている。そのような主人公を優しい人と解釈するか、未練がましい人と解釈するかでこの曲が好きになれるかが決まると思う。管理人は後者だったので何とも微妙な印象の曲となってしまった。


「Home Townへようこそ」はポップなラブソング。シンクラヴィアによるドラムの音から始まるイントロは時代性を感じさせる。それ以降はシンセが主体となったサウンドで曲を彩っている。いかにも80年代後半!という感じの煌びやかなサウンドがたまらない。歌詞は恋人の地元を訪れる女性を描いたもの。1番ではその光景が、2番ではその逆の立場、女性の地元を男性が訪れる光景が描かれている。恋人の出身地を訪れる(恋人を出身地に招く)というシチュエーションの曲は様々なアーティストにあるが、どの曲も好き。御多分に洩れずこの曲も好き。聴いていると何故かワクワクしてしまう。


「とこしえにGood Night(夜明けの色)」はしっとりとしたミディアムバラードナンバー。イントロ無しでいきなり歌い出す構成が特徴的。サウンドは生音が主体となっている。ギターやサックスがサウンドに渋さを与えている。特に間奏のサックスソロは絶品。歌詞は恋人との別れを決めた女性を描いたもの。歌詞の舞台は神戸港の「メリケン波止場」とされている。「海の匂いの霧」というフレーズはその光景をイメージさせるものだろう。これからどうなってしまうかはわからないが、それでも別れる。女性の固い決心が伝わってくる。そのような歌詞と明るい曲調とのギャップは不思議とクセになる。


「恋はNo-return」は打ち込みが多用されたポップナンバー。フジテレビ系番組『オレたちひょうきん族』のエンディングテーマに起用された。番組にとっては最後のエンディングテーマだった。聴いただけで打ち込みで処理されたとわかるような独特な音色のドラムがインパクト抜群。他の部分もシンセが多用されている。時代性を感じさせるサウンドだが、それが良い。歌詞は情熱的な恋模様が描かれている。体目当てで終わるはずだったのに、この人なら本当の恋ができるかもしれない…と揺れ動く女性の心が描写されている。サウンドや高飛車な女性像が描かれた歌詞など、バブル時代の空気に溢れた曲だと思う。


「幸せはあなたへの復讐」は重厚なバラードナンバー。シンクラヴィアによる派手なサウンドが前面に出ている。これまたドラムの音が固い印象がある。サウンド全体としては比較的ロック色が強い感じ。歌詞はタイトル通り元の恋人へのメッセージのようになっているもの。歌詞のテーマは、スペインの「幸福に暮らすことが最高の復讐である」という恋愛における諺がモチーフになっているようだ。元の恋人への未練がタラタラな女性である。歌詞の中には現在の恋人も登場するのだが…男の管理人としては聴いていると中々怖くなってくる。


「吹雪の中を」はしっとりと聴かせるバラードナンバー。サウンドはギター以外全てシンクラヴィアによる打ち込みで構成されている。どことなく無機質な印象のサウンドは冷たさを感じさせる。歌詞はタイトルに反して、幸せな雰囲気漂うものになっている。歌詞を字面通りに解釈すると、吹雪の中を車で走って恋人の元へと急ぐ女性を描いたもの。「夜を越えて会いたい」「あなたなしではいられない」といったフレーズはとても力強い。淡々とした曲調なのに不思議と切迫感を感じる。それは歌詞のせいなのだろう。


「September Blue Moon」は今作のラストを飾る曲。シンセやホーンが前面に出たラテン風の賑やかなサウンドが展開されている。バンドサウンドもしっかり主張してサウンドを構成している。歌詞は男性のことを「September Blue Moon」に例えたもの。歌詞の舞台は夏の終わり。タイトルはどういう意味なのか分からないが、落ち込んでいる状態のことを表していると思う。落ち込んでいる男性を励まし、それで付き合おうと考えているのだろう。ラストを飾る曲というにはかなり派手な曲という印象があるが、これはこれで良いと思う。


大ヒット作なので中古屋ではよく見かける。当時の売れ線サウンドを極めたポップアルバムと言った感じの作品。158万枚という当時としては驚異的な売上を記録したのも頷ける。しかし、シンクラヴィアがバンドサウンドの殆どをカバーして生音が少ないというのが気になる。特にドラムは音が固い印象がある。そのせいで今になって聴くとサウンド面でかなり時代性を感じてしまう。今作を聴くと当時を過ごした世代ではないのに、バブル時代の日本にタイムスリップしたような感覚に襲われる。 それだけ当時の空気をパックした作品なのだろう。管理人が思うバブル時代の光景はユーミンの作品に凝縮されているように感じる。

★★★☆☆