東野純直
1994-06-22


【収録曲】
全曲作詞作曲 東野純直
2.作詞 東野純直&佐藤ありす
3.作詞 佐藤ありす
4.作詞作曲 MIRACLE WORKERS
5.作詞 澤地隆
10.作曲 若松歓
1.編曲 東野純直&安部潤
2.4.6.10.編曲 岡本洋
3.5.8.9.編曲 安部潤
7.編曲 大村雅朗
プロデュース 奥島吉雄,鈴木道夫

1.GO WEST ★★★★★
2.summer-est〜一番眩しい夏〜 ★★★★☆
3.Eternal ★★★★☆
4.ORDINARY TOWN ★★★☆☆
5.二度と愛さない ★★★★★
6.Dream and Dream ★★★★☆
7.君だから Album Version ★★★★☆
8.僕らのSomeday ★★☆☆☆
9.韋駄天Windyのテーマ ★★★★☆
10.Breath ★★★★☆

1994年6月22日発売
テイチクレコード
最高位10位 売上3.6万枚

東野純直の2ndアルバム。先行シングル「君だから」「summer-est〜一番眩しい夏〜」を収録。前作「Actor&Actress」からは10ヶ月振りのリリースとなった。

東野純直は1992年、第1回ヤマハ・ミュージック・クエストに出場。それの日本大会でグランプリ、世界大会では審査員特別賞を受賞した。それがきっかけで翌1993年にテイチクレコードからデビューした。前作に収録されている「君とピアノと」「君は僕の勇気」が最も知られていると思われる。ヒットしたというと少し違うが、2004年には『実況パワフルプロ野球11』のオープニング主題歌「PRIDE」の作詞とボーカルを担当した。そのゲームをプレイした方なら分かるかもしれない。
名前は「あずまのすみただ」と読む。割と読み間違えが多いものの、名前のインパクトのせいか、世代の方からの知名度は比較的高い。綾小路翔扮するDJ OZMAの設定上の本名「尾妻野 純直(おづまのすみただ)」は東野純直をもじったものである。

東野純直はピアノを主体としたポップスを得意とするアーティストである。ビリー・ジョエルに影響を受けたようだ。大江千里、槇原敬之、KAN、崎谷健次郎、楠瀬誠志郎などといったシンガーソングライターと似た音楽性であると言える。洋楽のテイストを感じさせるAORやブラックミュージック系のメロディーやサウンドを展開しながらも、親しみやすい王道のJ-POPという範疇に収める。このバランスが魅力的なアーティストである。今作でもその作風が遺憾無く発揮されている。


「GO WEST」は今作のオープニング曲。打ち込みとキレの良いギターのカッティングが前面に出たポップナンバー。シティポップを彷彿とさせるサウンドとなっている。脇を固めるバンドサウンドもタイトそのもの。爽やかでノリの良いメロディーはとても心地良い。歌詞はポジティブなメッセージが並んだ応援歌といった感じ。誰も辿り着けない未開の夢を目指して進んでいこうというメッセージが込められている。東野純直の突き抜けていくようなハイトーンボーカルがこの曲の力強さを何よりも演出している。オープニングにふさわしく、聴き手をワクワクさせるような曲になっていると思う。


「summer-est〜一番眩しい夏〜」は先行シングル曲。テレビ朝日系番組『世界とんでもヒストリー』のエンディングテーマ、住通チェーンのCMソングに起用された。タイトルは「夏の最上級」を意味する造語。恐らく「夏の盛り」というような意味だろう。シンセとギターのカッティングが前面に出たポップナンバー。ギター以外は全て打ち込みで処理されている。歌詞はタイトル通り夏を舞台にしたラブソングである。夏以外に聴いても体温が上がってしまいそうなくらい熱い描写がされている。ギラギラした夏の太陽を想起させる。 隠れた夏の名曲だと思っている。


「Eternal」はここまでの流れを落ち着けるような、聴かせるバラードナンバー。打ち込みが主体となったサウンドが展開されている。生音はギターのみ。AORのテイストを感じさせる美しいメロディーが心地良い。作詞は佐藤ありすが担当した。歌詞は彼女と別れた男性の心情が描かれたもの。「永遠」に続くものはなく、必ず終わりがある。いつまでも続くと思っていた二人の関係には終わりがあった。男性の後悔が伝わってくるような繊細な心理描写がされている。外部による作詞だが、概ね東野純直が書く歌詞に寄り添ったような出来になっていると思う。この手のバラードにはまず外れがない。


「ORDINARY TOWN」はMIRACLE WORKERSの楽曲のカバー。MIRACLE WORKERSは、東野純直と同じ年にヤマハ・ミュージック・クエストの世界大会に参加して金賞を受賞したイギリスのグループらしい。ミディアムテンポのバラードナンバー。バンドサウンドが前面に出ている。サビは比較的キャッチー。歌詞は当然全編英語詞によるもの。歌詞カードには日本語訳が掲載されている。対訳を見る限りだと、一つの町を舞台にしたメッセージソングのような感じ。ラブソングとも解釈できると思う。タイトルは「平凡な町」と訳されている。 洋楽カバーではあるが、今作の作風に寄り添ったアレンジがされているので今作の中から浮いているということはない。


「二度と愛さない」はしっとりとした聴かせるバラードナンバー。丁寧なバンドサウンドで構成されている。要所で使われるホーンやシンセの使い方がとても素晴らしい。AOR色の強い上質な音作りがされている印象がある。歌詞は別れた彼女への想いが語られたもの。相手のことを愛しているから「二度と愛さない」。大好きだったからこそ別れが辛いのだろう。男性の苦しい心がよく分かるような心理描写がされており、主人公になったかのような感覚で聴ける。一言一言を丁寧に歌う東野純直のボーカルはこの曲の切なさを引き立てている。切なさに溢れたこの曲は東野純直の隠れた名バラードだろう。


「Dream and Dream」は流れを変えるような明るいポップナンバー。涼しげなシンセの音や力強いギターサウンドが前面に出ている。弾むようなサビのメロディーはとても楽しげな雰囲気がある。フュージョンを彷彿とさせるようなサウンドになっていると思う。歌詞はポジティブなメッセージが語られたもの。過去に約束をした二人が描かれている。これはどのような約束なのかは分からないが、お互いに誓い合った夢を実現しようとしているようだ。そのような詞世界や明るいサウンドは、青春!と言いたくなる。爽やかさを極めた曲だと思う。


「君だから Album Version」は先行シングル曲。テレビ朝日系番組『お茶とUN』のテーマソング、松下電器の「BEGIN」キャンペーンソングに起用された。アルバムバージョンで収録されている。シングルチャートで初登場10位を獲得した。重厚なバンドサウンドとストリングスに彩られた壮大なバラードナンバー。ゆったりとした曲調は力強いサウンドを引き立てている。歌詞は遠距離恋愛をしている二人が描かれたもの。離れているからこそ深まる愛もあるのかもしれない。聴き手に突き刺すかのようにストレートな想いが語られている。 力強さと優しさを持った名バラードである。シングルの中では比較的ヒットしたため、東野純直の代表曲の一つといって良いかもしれない。


「僕らのSomeday」は前の曲に続いて壮大なバラードナンバー。イントロには流麗なバイオリンが入っている。それ以降はバンドサウンドが主体となっている。歌詞のテーマもかなり壮大である。世界平和を願う内容となっている。「Peace of love」というフレーズがこの曲の最も大事なフレーズだと思う。美しい星空を笑顔で眺められる人々は世界には少ししかいない。それを踏まえて「分かり合える日はきっとくる 世界みんなで夜空ながめよう」と主張している。この曲を聴く度に、壮大さに飲み込まれてしまいそうになる。星空という分かりやすいもので難しくなってしまいがちなテーマをしっかり伝えているところからは、東野純直の作詞能力の高さがうかがい知れる。


「韋駄天Windyのテーマ」はここまでの流れを変えるようなポップロックナンバー。跳ね上がるような力強いバンドサウンドやファンファーレのように高らかなサックスの音色が前面に出ている。疾走感のあるメロディーはサウンドをさらにノリの良いものにしている。歌詞はファンタジックな雰囲気溢れるものになっている。「不思議の国 韋駄天Windyの国」が舞台となっている。初めて聴いた時にはアニメソングかと思ってしまった。ただ、そのノリの良さやファンタジックな詞世界に不思議と引き込まれてしまう。アルバムのラストに向かう位置に置かれているのも印象に残りやすい原因だろう。


「Breath」は今作のラストを飾るタイトル曲。作曲は前作でも提供していた若松歓が担当した。ゆったりとしたバラードナンバー。シンセが前面に出た優しいサウンドが展開されている。ストリングスも要所で使われている。歌詞はストレートなラブソング。旅から帰ってきて、彼女の大切さに改めて気づいた。だからもう離れたくはない…という聴いていて恥ずかしくなってしまうくらい直球な想いが語られている。タイトル曲にふさわしい確かな完成度を持ったバラードだと思う。ラストという位置が似合う曲である。


あまり売れた作品ではないが中古屋ではよく見かける。ジャケ写のせいか、どことなく夏をイメージさせるような爽やかな曲が多い。東野純直らしい、親しみやすさとお洒落さを併せ持ったポップスを楽しめる作品である。
東野純直は大ヒットを飛ばせないままフェードアウトしてしまった印象が否めないものの、楽曲はどれを取ってもヒット性に溢れたものばかり。東野純直はチャートの上位に来ることは少なかったが、間違いなく1990年代J-POPシーンを彩っていた存在である。ポップで美しいメロディーや上質なサウンド、ハイトーンなボーカルは今でも古臭さを感じさせない。この記事を読んで興味を持った方は是非入手してみてほしい。価格以上の満足感があるはず。

★★★★☆