FLYING KIDS
1996-11-25


【収録曲】
全曲作詞 浜崎貴司
全曲作曲編曲 FLYING KIDS
プロデュース  FLYING KIDS

1.ハジマリ 〜Ignition〜 省略
2.快楽天国 ★★★★☆
3.ディスカバリー ★★★★★
4.僕であるために ★★★★★
5.少年の宝物 ★★★★☆
6.真夏のブリザード ★★★★★
7.新しい自転車 省略
8.ブルー ★★★☆☆
9.HEY GIRL!〜君を知りたい〜 ★★★☆☆
10.溢れる想いがあるかぎり ★★★★★
11.暖炉 ★★★★☆
12.真夜中の革命 ★★★★☆
13.オワラナイ オワリ 〜Daybreak〜 省略

1996年11月25日発売
ビクターエンタテインメント
最高位10位 売上4.2万枚

FLYING KIDSの10thアルバム。先行シングル「真夏のブリザード」「ディスカバリー」を収録。今作と同日にシングル「僕であるために」がリリースされた。前作「HOME TOWN」からは1年振りのリリースとなった。

FLYING KIDSは元々ファンクバンドとしてデビューした。デビュー当初から本格的なファンクをやっていたが、1993年頃から王道なポップスを取り入れるようになり、ポップス中心のバンドへと変貌を遂げた。それに伴ってセールスも上昇した。しかし、ファンクバンドとしての彼らを望む者も多く、そのようなファンは離れることとなった。

今作はFLYING KIDSにとっては1st「続いてゆくのかな」以来のアルバムチャートトップ10入りを果たした。なお、それを達成したのは今作が最後となった。


「ハジマリ 〜Ignition〜」は今作のオープニングを飾るインスト曲。曲と言うよりはSF映画のワンシーンのような印象のインスト。英語?と思われるナレーションや10カウントが入っている。爆発音のような音も入っているので、スペースシャトルの打ち上げを模したインストだろう。ジャケ写からもSF的な雰囲気が漂っているが、その雰囲気に沿ったような始まり方になっていると思う。


「快楽天国」は実質的なオープニングと言えるハードロックナンバー。歪んだギターサウンドが曲を盛り上げている。暴れ回るような激しいバンドサウンドが非常に格好良い。歌詞はダンスフロアを舞台に、快楽を追い求める若者の心情を吐き出したもの。この曲の主人公は「とにかく今を生きるだけ 楽しくなければ意味が無い」という考えで生きる若者のようだ。サビでは堂々「キモチヨクナリタイ ヤリタイダケ キスシタイ キメタイ イキタイダケ」と歌い上げており、FLYING KIDSのキャリアを通しても屈指の攻めた歌詞と言える内容。 爽やかなポップスを中心にやるようになっても、この曲のようにアクの強い要素を忘れない姿勢が素晴らしい。


「ディスカバリー」は先行シングル曲。サッポロビールの「冬物語」のCMソングに起用された。前の曲からは繋がって始まる。ポップス路線に転向してからは異色な曲と言えるファンクロックナンバー。ポップス路線になってからのシングル曲は「爽やか」という印象の曲が多かったが、この曲は「格好良い」という印象が強い。歪んだギターサウンドを始めとしたパワフルなバンドサウンドが曲を盛り上げている。それでもサビはキャッチー。歌詞はタイアップ相手を考えてか、冬が舞台となっている。歌詞全体としては比較的メッセージ性の強い内容。「急いで 急いで 駆け抜けろ」と歌うサビはインパクト抜群。サビ前〜サビの高揚感がたまらない。浜崎貴司の野性味溢れるボーカルもそれを引き立てている。「FLYING KIDS」と検索するとサジェストにこの曲が出るくらいなので、FLYING KIDSの代表曲と言って良いかもしれない。


「僕であるために」は今作と同日にリリースされたシングル曲。アニメ『逮捕しちゃうぞ』の初代オープニングテーマに起用された。後に『天才てれびくんワイド』のコーナーの一つ「MTK」でカバーされた。爽やかなポップナンバー。バンドサウンドが主体となったサウンドで聞かせる。ゆったりとした曲調ではあるが、サビはとてもキャッチー。とにかく聴き心地の良い美しいメロディーが展開されており、それがこの曲最大の聴きどころ。歌詞はストレートなラブソング。「君を幸せにしたい 僕が僕らしく僕であるために」と歌うサビ終わりの部分が印象的。サビはメロディーと歌詞のぴったり具合が凄く、一度聴いただけで口ずさめるような感じ。 メロディーの素晴らしさもそうだが、歌詞も普遍性を持っているので、子供向け教育番組でカバーされたのも頷ける。


「少年の宝物」は先行シングル「真夏のブリザード」のC/W曲。アコギが主体となったシンプルなサウンドが展開されており、温かみのあるサウンドとなっている。歌詞はタイトル通り、少年時代の思い出を振り返っている内容。どことなく、小学生時代の夏休みの光景を想起させる。「貝殻」「海」といったフレーズが登場するからだろう。浜崎貴司のボーカルもいつもの力強いボーカルから一変して優しい感じになっている。思い出を愛おしむように丁寧なボーカルとなっている。それがこの曲の懐かしい雰囲気を引き立て、聴き手それぞれの思い出を蘇らせているのかもしれない。C/W曲という位置にふさわしい、心に沁みるような隠れた名曲という印象がある。


「真夏のブリザード」は先行シングル曲。TBS系番組『王様のブランチ』のエンディングテーマに起用された。力強さと爽やかさを併せ持ったポップロックナンバー。焦燥感を感じさせるようなギターの音色が前面に出ており、曲を効果的に盛り上げている。サビ前では浜谷淳子によるコーラスも入っている。サビの開放感溢れるキャッチーなメロディーがたまらない。歌詞は情熱的な雰囲気溢れるラブソング。サビでは「僕に出会うため君は生まれてきたのさ」と堂々歌い上げている。この圧倒的な多幸感に引き込まれる。聴いていると恥ずかしくなるようなフレーズもあるのだが、FLYING KIDSにかかれば爽やかに、サラッと聴かせてしまう。この曲もポップス路線のFLYING KIDSの代表曲だろう。


「新しい自転車」はインスト曲。インストではあるが後にベスト盤にも収録されており、中々に待遇が良い。アコギを中心に演奏されており、シンプルではあるが爽やかなインストとなっている。タイトルの意味はよく分からないが、聴き心地が良いので自転車に乗りながら聴きたくなるような感覚はある。


「ブルー」は軽快なメロディーが心地良いポップナンバー。前の曲に引き続き、シンプルなバンドサウンドが主体となった温かみのあるサウンドである。ピアノとアコギが前面に出ている。歌詞は学生時代の友人との思い出を振り返っているようなもの。「ヒロシ」「アキラ」「クミコ」「アケミ」などと人名が数多く登場するのが特徴的。それぞれの人との思い出を語っていくような感じ。サビでは「アイツもコイツもなんか笑ってた 本当はどっかでじっと悩んでた」と思い出をまとめている。ふと昔の友人のことを思い出すような曲である。


「HEY GIRL!〜君を知りたい〜」は重厚なロックナンバー。歪んだギターサウンドが前面に出ている。かなりハードなサウンドであり、聴きごたえは抜群。どこがサビなのか分かりにくい構成が特徴的。浜崎貴司以外のメンバーによる、「Hey!Girl!」というコーラスが何度も登場する。そのコーラスの後に女性へのメッセージが語られる…というような歌詞である。メッセージとはいっても下ネタ路線である。「君のヒップドラムを叩きたいよ何度も」というフレーズが中でも一番印象に残っている。FLYING KIDSの楽曲には下ネタ路線の曲がかなりあるが、この曲もその例の一つ。


「溢れる想いがあるかぎり」は美しさと力強さを併せ持ったバラードナンバー。繊細さを感じさせるアコギやピアノの音色に彩られたサウンドはとても心地良い。途中から激しいギターサウンドが入ってくるが、それでも曲の美しさは損なわれない。歌詞は自分を励ましているもの。今まで言い訳ばかりして逃げてきたが、そんな自分とはお別れする。主人公の決意は固い。「負けてたまるか こんなところで 自分に叫ぶ 明日の俺は物凄いのさ」というサビの歌詞は何度聴いても鳥肌が立つ。浜崎貴司のパワフルなボーカルがこの曲の力強さを演出している。歌詞だけ見ているとエレファントカシマシのようなのだが、曲の力強さでは負けていない。 今作のアルバム曲の中では一番好きな曲。シングルと言っても何ら違和感の無いような曲である。


「暖炉」はしっとりと聴かせるバラードナンバー。この曲もアコギが前面に出ており、温もりのあるサウンドとなっている。繊細さ漂うメロディーも聴いていてとても心地良い。シンプルなサウンドはそのメロディーの魅力を限りなく引き立てている。歌詞はタイトルからも何となく察しがつくかもしれないが、冬を舞台にしたラブソングである。クリスマスソングと限定できるような歌詞ではないのが特徴。暖炉の近くで恋人たちが話をしている光景が浮かんでくるようだ。外は寒くてもその部屋や二人は温かいのだろう。地味と言ったらそこまでだが、聴いているとホッとするような優しさを持った曲だと思う。
 

「真夜中の革命」は今作のタイトル曲。爽やかなポップロックナンバー。力強いバンドサウンドによるサウンドは聴きごたえ抜群である。バンドサウンドだけのシンプルなサウンドなので、FLYING KIDSの演奏力の凄さを実感させられる。歌詞はメッセージ性の強いものとなっている。全編通して力のこもったメッセージが並んでいるのだが、中でも一番好きなのは「わずらわしい自意識と 捨てられないプライドを掲げて高く飛べどこまでも」という歌詞。FLYING KIDSの楽曲は浜崎貴司の書く歌詞も大きな魅力だと思う。 この曲は浜崎貴司の歌詞が特に冴え渡っている印象がある。聴いているだけで根拠の無い自信や力が湧いてくるような感覚がある。タイトル曲にふさわしい名曲である。


「オワラナイ オワリ 〜Daybreak〜」は今作のラストを飾るインスト曲。オープニングと同じく、SF映画のような音作りがされている。今度はスペースシャトルが着陸した時のような音となっており、オープニングのインストと繋がっているのがよく分かる。しっかりアルバムの余韻に浸れるようなインストである。またもう一周聴きたくなること請け合い。


あまり売れた作品ではないが中古屋ではよく見かける。ポップス路線に転換してからのFLYING KIDSの代表作と言えるようなアルバムだと思う。「ディスカバリー」「僕であるために」「真夏のブリザード」と比較的著名な曲が並んでいるのでベストの次に聴くオリジナルアルバムとしてもおすすめできる。アルバム曲もシングルばりの完成度を誇る曲がある。爽やかさと格好良さが同居した作品である。もっと多くの方に聴いていただきたい名盤。

★★★★★