RAZZ MA TAZZ
1994-06-17


【収録曲】
全曲作詞 阿久延博
全曲作曲 三木拓次
3.作曲 横山達郎
7.作曲 阿久延博
8.作曲 三村隆史
全曲編曲 佐久間正英・RAZZ MA TAZZ
プロデュース 佐久間正英 

1.Sentimental Soda ★★★★☆
2.Bye-by April Afternoon ★★★★☆
3.Silent Blue ★★★☆☆
4.Private Eyes ★★★★★
5.Kiss in the rain ★★☆☆☆
6.Love Holic ★★☆☆☆
7.Ordinary Story ★★★☆☆
8.モノクローム・サンセット ★★★☆☆
9.僕らのシークエンス ★★★★☆
10.Lesson ★★★★☆

1994年6月17日発売
フォーライフ・レコード
最高位不明 売上不明

RAZZ MA TAZZの1stアルバム。先行シングル「Private Eyes」を収録。今作発売後に「僕らのシークエンス」がシングル「僕のままで君のままで」のC/W曲としてシングルカットされた。

RAZZ MA TAZZはボーカル担当の阿久延博、アコースティックギター担当でリーダーの横山達郎、ギター担当の三木拓次、ベース担当の入江昌哲、ドラムス担当の三村隆史からなるバンド。1989年に結成され、1994年にメジャーデビュー、1999年に解散した。独特なバンド名が印象的だが、これは横山達郎がジャズ雑誌から見つけた言葉。「輝かしい」「はつらつとした」というような意味があるようだ。作詞は阿久延博が、作曲は三木拓次が主に担当していた。
解散後は俳優としての活動を始めた入江昌哲以外は音楽活動を続けていた。しかし、2002年に三木拓次が膵臓癌で亡くなったため、5人での活動再開は叶わなくなってしまった。33歳というあまりにも早過ぎる死だった。

RAZZ MA TAZZの楽曲の魅力は爽やかさと切なさを併せ持ったポップなラブソングである。それは三木拓次が紡いだメロディーの功績が大きいと思う。阿久延博による「青春」をイメージさせるようなボーカルや詞世界も大きな魅力。今作は1stではあるが、その魅力を遺憾無く発揮している。

今作は佐久間正英がプロデュースを担当した。佐久間正英と言えばJUDY AND MARYやGLAYを始めとして様々なバンドのプロデュースを担当してきたことでも知られる存在。しかし、今作が最初で最後の仕事となってしまった。


「Sentimental Soda」は今作のオープニング曲。オープニングにふさわしい、突き抜けるような明るさが特徴的なポップナンバー。キレの良いギターのカッティングが効果的に曲を盛り上げている。透き通るようなギターサウンドはRAZZ MA TAZZの楽曲には欠かせない要素である。歌詞は八月の海を見るためにドライブに行った男女を描いたもの。女性の方は「大切な友達」としか思っていないようだが…歌詞のもう一つの特徴として、食べ物や飲み物の名前が数多く登場することがある。タイトルでも飲み物が使われているが、他にも「チョコ・ドーナツ」「レモン」「カルボナーラ」「ガムシロップ」が登場する。二人の感情を簡単に想像できるような歌詞、爽やかなメロディーやサウンド…RAZZ MA TAZZの楽曲の魅力がよく現れている曲だと思う。


「Bye-by April Afternoon」は爽やかなポップナンバー。テーブルランドの「フルーツキャロット」のCMソングに起用された。阿久延博の少し鼻にかかったようなボーカルやアコギの音色がこの曲の爽やかさを演出している。歌詞は好きな女性が別の人を愛していることに気付いた男性の感情が描かれている。「忘れてた 時間の中で 全ては移ろうことを」「僕らめぐりあって 再びちぎれてく」「いつの日にも君のこと 永遠と信じてた 僕の方さ 幻を抱いていたのは」…などと、明るい曲調に反して歌詞がかなり切ない。 爽やかなのにどこか切なさを感じるこの曲はRAZZ MA TAZZの王道と言えるだろう。


「Silent Blue」は今作では唯一となる、横山達郎が作曲を担当した曲。ギターサウンドがこれまでの曲と比べると前面に出ている印象があり、少しロック色が強めな感じ。作曲者は違えど、ポップでキャッチーという部分は共通している。歌詞は好きな女性に告白しようとしている男性の気持ちが描かれたもの。このまま友達でいた方が楽なのだろうが、それはできない。「愛してる」とひとこと言おうものなら、「なにもかもがこわれる」かもしれない…恐らく多くの男性が同じような感情を抱いたことがあるのではなかろうか。真面目や誠実を絵に描いたような男性を主人公にしたラブソングは90年代の男性アーティストに多く見られる。この曲も例に漏れず。


「Private Eyes」は先行シングル曲。RAZZ MA TAZZにとってのデビュー曲である。エレキギターとアコギが絡み合ったRAZZ MA TAZZ独自の爽やかなギターサウンドが展開されている。どこまでもポップでキャッチーなメロディーは聴いていてとても心地良い。歌詞は彼女へのメッセージのようになっている。彼女とは付き合って三年目になるが、お互い何も言えないまま。そのような状態で、男性の素直な想いが語られている。「ときどきは迷惑かけすぎてもいいよ」というサビのフレーズは二人の幸せさがよく伝わってくるようである。 デビュー曲ではあるが彼らの王道中の王道と言えるような曲になっている。デビュー当初から完成度が高いバンドだったということだろう。


「Kiss in the rain」は今作では最も長尺な曲。7分45秒というバンド史を通してもかなりの大作。今作の中では珍しく、骨太なイメージの重厚なバンドサウンドで聴かせる。曲調はゆったりしており、その重厚なバンドサウンドをしっかり聴かせている。歌詞は彼女と喧嘩した後、仲直りをしようとしている男性が描かれている。タイトル通り雨の日が舞台となっている。同じようなシチュエーションの曲は様々なアーティストの曲に見られるが、この曲も例に漏れず力強く歌い上げるバラードである。少し間延びしてしまった印象が否めない。一度聴くとしばらく聴かなくても良いかな?と思ってしまう。


「Love Holic」はダークな雰囲気を感じさせる曲。ギターを始めとした少ない音の数で聴かせるサウンドが展開されている。バンドサウンドだけでなく、鈴の音といった外部音もよく使われている。今作の中では比較的ロック色の強い曲だろう。歌詞は恋心を抱いた男性の心情が語られているもの。サビでは「変だな…」と繰り返されているのが特徴。呪文のように言葉が詰め込まれている曲という印象がある。RAZZ MA TAZZはメロディーが魅力のバンドだが、この曲に関してはその強みがあまり感じられない。


「Ordinary Story」は今作のタイトル曲。作曲は阿久延博が担当した。洗練された雰囲気のあるポップナンバー。バンドサウンドだけでなく、シンセによるブラスやピアノも前面に出ている。作曲者は違うが、やはりサビはキャッチーな仕上がり。そこは一貫している。歌詞は日常生活の光景を描いたようなものとなっている。タイトル通りストーリー性が感じられる歌詞でもある。「誰もがまわる 誰もが消える そうなふうに人の Ordinary Story」という後半で登場するフレーズはどことなく哲学的なイメージがある。 阿久延博の書く詞には時折このような哲学的なフレーズが登場する。それを探すのも楽しみ方の一つだと思う。


「モノクローム・サンセット」は今作では唯一となる、三村隆史が作曲を担当した曲。バンド史を通じても三村隆史が作曲した曲は少ない。そのためかはわからないが、ドラムが他の楽器より前に出て聴こえる印象がある。後半ではハーモニカがフィーチャーされている。繊細な雰囲気の漂うメロディーで聴かせる曲。歌詞は別れようとしているカップルを描いたもの。どことなくどんよりとした感じの詞世界となっている。心の痛みを「二人だけの本当のさよならのしるし」と例えているのが印象的。他のメンバーが作る曲とはまた違った切なさが感じられる曲だと思う。


「僕らのシークエンス」は今作発売後に「僕のままで君のままで」のC/W曲としてシングルカットされた曲。しっとりとした曲調で聴かせるバラードナンバー。曲の要所ではブラスが使われており、上質さを演出している。歌詞は別れた彼女との思い出を振り返っている内容。彼女がいた頃のことを思い出しつつも、「君がいた 恋の季節に 負けぬように 僕は生きてく」と前を向いている。最後には「大切な 君の笑顔を いつの日にも 絶やさないでね」と応援している。男性の優しい人物像がうかがい知れるような歌詞となっている。この曲に関してはメロディーやサウンドよりも歌詞に魅かれたところが大きい。


「Lesson」は今作のラストを飾る曲。軽快なバンドサウンドが心地良いポップナンバー。バンドサウンドが主体となっているが、ところどころでシンセによるストリングスが使われており、それも曲を盛り上げている。歌詞はカップルにとっての「授業」について描かれている。「ふたりがみつめあう時間」の一つ一つが二人にとっての「授業」である。甘ったるさすら感じさせるほど幸せな光景ばかりが描かれている。「二人は Forever」とまで歌っている。眩しいくらいに多幸感のあるラブソングだが、まさに「青春」と言った感じ。


あまり売れた作品ではないので中古屋ではたまに見かける程度。1stとはいえ、RAZZ MA TAZZならではの爽やかなポップスを楽しめる。大体の音楽性は変わっていなかったことがよく分かる。1stだから当然なのかもしれないが、阿久延博のボーカルが後の作品よりも拙い印象がある。しかし、バンドサウンドを主体としたポップスが好きな方なら誰もが良いと思えるような作品となっていると思う。
RAZZ MA TAZZは現在となってはマイナーなバンドという印象が否めないが、楽曲の良さはどのメジャーなバンドにも劣らないと思っている。スピッツやMr.Children、L⇔R、FIELD OF VIEWといったバンドが好きなら是非とも聴いてほしい。ポップでどこか切ない曲の数々はJ-POPが好きな方なら誰もが好きになれるはず。RAZZ MA TAZZの曲は今でも色褪せずに輝き続けている。今回の記事を読んで興味を持っていただいた方は是非とも作品を入手して聴いてみてほしい。

★★★☆☆