L-R
1992-11-16(オリジナル盤)

(再発盤)




L⇔R
2017-02-08
(リマスター盤)




【収録曲】
1.2.3.4.12.作詞 L⇔R
5.作詞 Brian Peck
6.作詞 嶺川貴子
8.作詞作曲 Clark Dave・Davidson Lenny
9.11.作詞 黒沢秀樹
7.10.13.作詞 黒沢健一
全曲作曲 黒沢健一
4.作曲 L⇔R
プロデュース  岡井大二


1.LAUGH SO ROUGH ラフ・アンド・ラフ ★★★☆☆
2.YOUNGER THAN YESTERDAY 迷宮の少年たち ★★★★★
3.BABY BACK ベイビー・バック ★★★☆☆

4.PUMPING'92 素敵なパンピング 省略
5.RIGHTS AND DUES ライツ・アンド・デューズ ★★★★☆

6.(too many flowers and mirrors)IN MY ROOM イン・マイ・ルーム ★★☆☆☆
7.WHAT"P"SEZ? はっきりしようぜ ★★★★★
8.I CAN'T STAND IT 気分は限界 ★★★☆☆
9.PASSIN' THROUGH pt.1 '73追憶の日々 ★★★☆☆
10.ONE IS MAGIC(and the other is logic) 魔法と理屈 ★★★★☆
11.PASSIN' THROUGH pt.2 パッシン・スルーpt.2 ★★★☆☆
12.LAUGH SO ROUGH(reprise) ラフ・アンド・ラフ(リプリーズ) 省略
13.(I WANNA)BE WITH YOU ビー・ウィズ・ユー ★★★★★


1992年11月16日発売
1997年7月25日再発
2009年4月1日再発(SHM-CD)
2017年2月8日再発(リマスター・UHQCD)
ポリスター
最高位97位 売上0.3万枚(オリジナル盤)
最高位108位 売上0.05万枚(2017年盤)


L⇔Rの2ndアルバム。先行シングル「(I WANNA)BE WITH YOU」を収録。前作「Lefty in the Right 左利きの真実」からは約7ヶ月振りのリリースとなった。

今作は洋楽ポップスからの影響を強く感じさせる作品となっている。洋楽のカバーも収録されており、その点からは洋楽の影響が顕著に現れているように感じる。前作よりもマニアックな印象が強い。


先行シングルの「(I WANNA)BE WITH YOU」はボーナストラック扱いされており、アルバムの本編はほぼ全て新曲で構成されている。アルバムの流れを考えると、シングル曲は少し浮いているように感じられるのでラストに配置するほか無かったと思われる。


今作は徹底的に作り込まれたという印象の曲と肩肘張らずに作られたという印象の曲が両極端になっている感じ。それが今作のタイトルにも現れているのかもしれない。


「LAUGH SO ROUGH ラフ・アンド・ラフ」は今作のオープニング曲。全編英語詞による1分40秒ほどの短めな曲。軽い感じのポップナンバーとなっている。様々な楽器とメンバーによる美しいコーラスワークが絡み合っている。嶺川貴子の神秘的な雰囲気すら感じさせるような歌声がコーラスの良いアクセントとなっている。聴き流しているだけだと分かりにくいが、サウンドはかなり緻密に作り込まれている。今作そのもののイントロと言えるような存在の曲である。



「YOUNGER THAN YESTERDAY 迷宮の少年たち」はミディアムテンポのポップロックナンバー。ソフトで優しいサウンドやメロディーで聴かせていく曲かと思えば、サビで何かから解放されたかのように明るくキャッチーなメロディーとなる。曲や歌詞に表情を付けるような黒沢健一のボーカルは聴き惚れること間違い無し。随所で楽しめるファルセットは非常に美しく、この曲の聴きどころとなっている。歌詞はストーリー性のあるもの。少年と少女の旅を描いたような詞世界だと解釈している。どこまでも繊細で透明感のあるバラードである。今作のアルバム曲の中で一番好きな曲。



「BABY BACK ベイビー・バック」はしっとりとした雰囲気のあるバラードナンバー。ゆったりした曲調で聴かせる。サウンドは終始アコギが主体となっている。聴き手に語りかけるような優しさを感じさせる黒沢健一の歌声がこの曲の魅力。かつての思い出を慈しむような繊細さも漂っている。歌詞は恋人を失った者の喪失感や虚無感が描かれている。映画のワンシーンのように鮮やかな情景描写がこの曲の切なさを演出している。この曲は聴き流すのではなく、じっくりと曲の世界に浸りながら聴くべきだと思う。そのようにして聴かないと良さが分かりにくいだろう。



「PUMPING'92 素敵なパンピング」はロカビリーのテイストを感じさせるロックナンバー。Dave Clark Fiveというイギリスのバンドの楽曲「Pumping」をL⇔R流に料理した曲のようだ。つまりはオマージュ。インストであり、歌詞は無い。勢いに溢れたバンドサウンドが縦横無尽に駆け回っており、楽しそうに楽器を演奏しているメンバーの姿すら浮かんでくるようである。もう少し長い時間聴いていたくなるインスト曲。アルバムのインタルード的な存在の曲なので仕方がないが、1分と少しというのは短過ぎた気がする。


「RIGHTS AND DUES ライツ・アンド・デューズ」はミディアムテンポのロックナンバー。この曲も全編英語詞である。バンドサウンドだけでなくストリングスも使われており、この曲を壮大に盛り上げている。力強さと美しさを併せ持ったメロディーとそれに乗せられている英語は相性が抜群であり、全く違和感無く聴けてしまう。洋楽のカバーかと思ってしまうほど。サビで終わらない構成となっており、アウトロでは様々な音が入ってさらに賑やかなサウンドとなる。聴き手をいつでも楽しませてくれる予測不可能な展開はL⇔Rならでは。アクが強い曲のようでいてとても親しみやすい。


「(too many flowers and mirrors)IN MY ROOM イン・マイ・ルーム」は嶺川貴子によるボーカル曲。しっとりと聴かせるスローバラードナンバー。サイケなテイストを持ったサウンドを脇を固めている。アンビエント風でもある。歌詞はおとぎ話のような感じのものになっている。「ねぇ 私 微笑んでるの? ねぇ 私 何をしてるの?」という冒頭のフレーズはインパクト抜群。タイトル通り主人公の女性の部屋が舞台になっているのだろうが、何故か海外の大きな屋敷を想像してしまう。か弱く儚い雰囲気を持った嶺川貴子の歌声がこの曲の世界観を何よりも表現している。最早不気味さすら感じてしまう。


「WHAT"P"SEZ? はっきりしようぜ」はノリの良いポップロックナンバー。前の曲の暗さや静謐な雰囲気を打ち砕くような勢いを感じさせる。エフェクトの効いた独特な音作りがされており、バンドサウンドがより迫力を増している。聴き手の目の前で演奏しているかのような迫力がある。歌詞は皮肉めいた内容となっている。「無邪気すぎるこの世界は 何も時を変えやしない 忘れかけてる約束 それじゃ何も出来やしない だから夢見てる君 信じないのさ」というフレーズが顕著。一回聴いたら口ずさめてしまいそうなキャッチーなメロディーにもかかわらず、どこか捻くれている印象。そのような一筋縄ではいかないメロディーはL⇔Rの得意技と言える。



「I CAN'T STAND IT 気分は限界」はDave Clark Fiveの楽曲のカバー。当時のL⇔RのメンバーはDave Clark Fiveが好きだったのだろうか?当然全編英語詞による曲。1分半程度の短い曲であり、この曲もアルバムのインタルード的な存在の曲だろう。洗練された隙の無いサウンドや黒沢健一の力強いボーカルを楽しめる。そのため、短いからと言って聴き流すのは勿体無いと思う。



「PASSIN' THROUGH pt.1 '73追憶の日々」は先行シングル「(I WANNA)BE WITH YOU」のC/W曲。ミディアムテンポのゆったりとした曲調で聴かせる。ピアノが前面に出た落ち着いたサウンドが展開されている。それでいて聴き手をぐいぐいと引き込むような不思議な力強さがある。段々と聴き手に迫ってくるようなピアノの音色のせいだろうか?歌詞は男女のすれ違う感情をテーマにしている。しかし、この曲最大の聴きどころは曲の中盤やラストのスキャットの部分。メロディーと歌声の美しさに魅かれるばかりである。


「ONE IS MAGIC(and the other is logic) 魔法と理屈」はサイケな雰囲気を持ったロックナンバー。力強いバンドサウンドが曲を牽引している。遠くで演奏されているかのような感覚に襲われる独特な音作りがされている。浮遊感のあるサウンドとなっている印象がある。つかみどころのないメロディーなのだが、サビで一気にキャッチーなものになる。こうして聴き手を引き込む構成がたまらない。歌詞は「君」の様子を淡々と語っているものだが、サビでは「logic」「magic」「trick」「gimmic」と韻が踏まれているのが特徴。 6分20秒ほどある中々に長尺な曲なのだが、至る所で変貌を遂げるメロディーやサウンドのお陰で飽きることなく聴けてしまう。


「PASSIN' THROUGH pt.2 パッシン・スルーpt.2」は「PASSIN' THROUGH pt.1 '73追憶の日々」の続編。続編とは言ってもリプライズのようになっており、変わっているのはサウンドのみ。全体的にオーケストラアレンジが前面に出ており、pt.1よりも荘厳なイメージのサウンドとなっている。後半からはロック色が強めのアレンジとなる。この曲もまたアルバムのインタルードと言える存在だろう。pt.1と聴き比べるのも楽しみ方の一つ。



「LAUGH SO ROUGH(reprise) ラフ・アンド・ラフ(リプリーズ)」は「LAUGH SO ROUGH」のリプライズ。「リプリーズ」なのか「リプライズ」なのかはあまり気にしないでいただきたい。管理人は「リプライズ」派だが。前の曲からそのままフェードインしてすぐにフェードアウトしてしまう。「(I WANNA)BE WITH YOU」への長めのイントロだと思って聴くといいかもしれない。ただ、実質的なアルバムのラストはこの曲だろう。


「(I WANNA)BE WITH YOU ビー・ウィズ・ユー」は今作のラストを飾る先行シングル曲。本編の流れから外れたボーナストラックの扱いをされている。今作収録のバージョン以外にも多数のバージョン違いがあるので聴き比べてみると面白いかもしれない。全体的にマニアックな作風と言える今作の中では群を抜いて分かりやすくキャッチーな曲。突き抜けるような爽やかさを持ったポップナンバー。管理人はサビ前のメロディーが一番好き。美しいコーラスワークが曲を彩っている。歌詞はストレートに恋人への想いを語っているもの。「I still,I love you」と力強く歌い上げる部分は必聴。この曲がラストを飾っていることで、切ない余韻を残している印象がある。

余談だが、この曲は黒沢健一が高校生の時に原形が作られており、アマチュア時代のバンドでコンテストに参加した際に演奏された。その時に審査員の小室哲哉から特別賞を与えられたという。黒沢健一の圧倒的な才能は高校生という早い時期から発揮されていたようだ。


あまり売れた作品ではないので中古屋ではたまに見かける程度。捻くれているのにポップでキャッチーな曲が並んでいた前作とは打って変わって、マニアックな要素が強めな作品となっている。恐らく60年代〜70年代くらいの洋楽に造詣が深い方ほどハマりやすいと思う。今作をポリスター時代の最高傑作と称するファンも多いようだ。数々のインタルードで区切られていたり、ほぼ全曲が新曲で構成されていたりするので、前作よりもアルバムとしてのまとまりがある印象。 一曲単位で聴くよりも今作を通して聴いた方が良いと感じる曲ばかりである。


★★★★☆