ASKA
1995-02-27


【収録曲】
全曲作詞作曲 飛鳥涼
3.作曲 飛鳥涼・Kevin Gilbert
10.作詞 岩谷時子
10.作曲 宮川泰
1.5.8.11.編曲 十川知司
2.編曲 武部聡志
3.編曲 Kevin Gilbert・澤近泰輔
4.編曲 飛鳥涼・十川知司
6.編曲 松本晃彦
7.10.編曲 井上鑑
9.編曲 澤近泰輔
プロデュース ASKA&山里剛

1.晴天を誉めるなら夕暮れを待て ★★★★★
2.HELLO ★★★★★
3.NEVER END ★★★★☆ 
4.you&me ★★★★☆
5.I'm busy ★★★★☆
6.どうってことないさ ★★★★☆
7.next door ★★★★★
8.オンリー ロンリー ★★★☆☆
9.はるかな国から ★★★★☆
10.君をのせて ★★★☆☆
11.月が近づけば少しはましだろう ★★★★★

1995年2月27日発売
2001年6月20日再発
東芝EMI EAST WORLD(オリジナル盤)
ヤマハミュージックコミュニケーションズ(2001年盤)
最高位1位 売上64.2万枚

ASKAの3rdアルバム。先行シングル「晴天を誉めるなら夕暮れを待て」を収録。前作「SCENE Ⅱ」からは約3年8ヶ月振りのリリースとなった。

これまでのソロアルバム「SCENE」2作はバラードと他のアーティストに提供した楽曲のセルフカバーで構成されたアルバムだったが、今作ではポップな曲からロック色の強い曲まで幅広い楽曲が並んでいる。また、チャゲ&飛鳥時代の楽曲のセルフカバーを行なっている。本体であるCHAGE&ASKAの作風をそのままソロでやっている感じ。

CHAGE&ASKAではまだポニーキャニオンに所属していたが、先行シングル「晴天を誉めるなら夕暮れを待て」で東芝EMIに移籍した。後にCHAGE&ASKAとして東芝EMIに移籍することとなる。


「晴天を誉めるなら夕暮れを待て」は今作のオープニングを飾る先行シングル曲。今作収録にあたってイントロやアウトロが長くなっている。ASKAソロ=バラードというイメージを打ち破るようなロックナンバー。タイトルは諺「晴天を誉めるには日没を待て」が元ネタ。ASKAがこの諺をこの曲のタイトルで間違って覚えていたという。諺の意味は「物事は終わるまでどうなるかわからないので、最後まで油断してはならない」というようなもの。
長めのSEが終わって激しいバンドサウンドが入る瞬間は鳥肌が立ってしまう。サビ前に入ってくる鐘の音は聴き手の気分をどんどん高めてくれる。サビでの叫ぶような荒々しいボーカルや解放感溢れるメロディーは絶品。思わず一緒に口ずさんでしまうことだろう。歌詞はメッセージ性の強いもの。「科学は正しいという迷信の風で育った」という1番のサビ前や「命尽きるまで 愛し続けたい 命尽きるまで すべての嘘を守りたい」という2番の歌い出しのフレーズが特に好き。ロックスターとしてのASKAの姿に惚れること間違いなしな名曲。


「HELLO」は爽やかなポップナンバー。テレビ朝日系情報番組『ニュースステーション』の天気予報コーナーのテーマソングに起用された。帯にも記載されていたので、シングル曲と同等の扱いをされていた曲と言えるだろう。編曲は以前から仕事しましょうとお願いしていたという武部聡志が担当した。これまでには無かった人選はソロならでは。サウンドは分厚いストリングスと軽やかなバンドサウンドに彩られている。ASKAの必殺技と言える、転調が冴え渡っている。明るい曲調がほんの一瞬だけ暗くなるが、そこが不思議とクセになる。歌詞はポジティブなメッセージが並んだもの。「負けないとか 逃げないとか 妙に言葉 育たなくて」というフレーズが好き。歌詞全体としては、何かを始めるからといって無理をするのではなく、あるがままの姿で臨もう…というメッセージが込められていると解釈している。ここまで突き抜けるようにポップな曲は今までのソロアルバムには無かった。これまでとの違いを実感させてくれるような曲だと思う。


「NEVER END」は今作のタイトル曲。作曲はケビン・ギルバートと共同で行われた。彼が作った曲を聴いた時、ASKAは自分と音楽性が似ていると感じたようだ。曲を書いている時から派手ではない部分の「アメリカ」をイメージしていたらしく、それが曲にも反映されているようだ。どことなく陰を感じさせる曲になっている。少ない音の数でしっかりと聴かせるイメージがある。流麗なピアノが前面に出ている。歌詞もどこか重い雰囲気を感じさせるもの。「もういつか僕は 変わり続けることでしか 生きて行くことができなくなってる」というフレーズには後のASKA本人の姿を重ね合わせてしまう。 タイトル曲という点から想像できるような派手さは全く無い。それでも引き込まれてしまうような魅力がある。


「you&me」は黒田有紀とのデュエット曲。当時黒田有紀はデビュー前の新人。この曲がデビュー作。この年の4月にASKAプロデュースでデビューしたものの、翌年に結婚を理由に引退してしまった。今作の中では最後に制作された曲のようだ。ピアノやギターが中心となった力強いバラードナンバー。今作はラブソングが殆ど無い。世間が思う、ASKA=バラードというイメージに沿ったような曲となっている。ラブソングが殆ど無いという点を考慮して作られた曲なのかもしれない。歌詞は恋人と出逢えたことへの喜びをストレートに語ったものとなっている。「もしも君が別れの手紙を書くときは 真っ白な紙に白い文字で読めないように 気づかぬように」というこの曲の中で唯一のネガティブなイメージの歌詞はASKAらしい絶妙なものだと思う。黒田有紀の美しい歌声とASKAの力強い歌声との相性も抜群。二人の歌声の良さがしっかりと活かされていると思う。


「I'm busy」はレゲエを取り入れたポップナンバー。イントロのキーボードがABBAの「Dancing Queen」そっくりなのはご愛嬌。意図的に仕込んだものではなかろうか。当初はシングル候補だったようだ。女性コーラスがかなり目立っているのが特徴で、曲を華やかに盛り上げている。曲はとてもポップで、シングル候補だったというのも頷ける。歌詞はタイトルからも想像できるかもしれないが、当時のASKA自身を描いた感じ。忙しさを描いたユニークな詞世界となっているが、特に印象的なのは 「彼女はいつもの涙で消えてった 僕はピアノを叩きながら 歌の中では恋が上手くなった」というフレーズ。初めて聴いた時にすげえ!と思って鳥肌が立ったことを覚えている。コーラスワークはどことなくチャゲアスっぽさを感じさせる。「ひとりチャゲアス」というイメージの今作を象徴するような曲だと思う。


「どうってことないさ」は打ち込みが多用されたポップナンバー。編曲は後のASKAソロやチャゲアスで活躍することになる松本晃彦が担当した。ギター以外は全て打ち込み。キーボードや打ち込みが前面に出たサウンドは曲そのもののポップさをさらに強めている印象がある。歌詞は「男の気持ちの揺れ」をテーマにしている。揺れ動く気持ちとは、浮気のこと。この曲の主人公の男は浮気をしている。なお、サビでは浮気を「どうってことないさ」と堂々肯定している。揺れ動く気持ちを「僕のエンタープライズ 操縦不能で カーク船長どこへ」と表現しているのに圧倒される。これはASKAが子供の頃に好きだったという『スタートレック』をイメージしたもの。遊び心が押し出された詞世界が魅力的な曲だと思う。


「next door」は複雑なメロディーが展開されたバラードナンバー。あちこちに転調が張り巡らされており、曲の随所に聴きどころがある。それでも曲がとっ散らかっていることは無い。最早曲の全てがサビなのでは?と言いたくなってしまう。ASKAの圧倒的なメロディーセンスを実感できるような曲だと思う。サウンドは重厚なバンドサウンドで構成されている。後半ではトランペットも使われており、それも曲を効果的に盛り上げている。歌詞は終わってしまった恋への未練や後悔を描いたもの。別れた後も、自分の気持ちは続いている。その上、相手のことも思いやる。「人の心は不思議なもので 瞳の奥を感じてしまう」というフレーズはどこか哲学的な雰囲気すら感じさせる。アルバム曲の中でも特に完成度の高い曲だと思う。ASKAの王道中の王道と言えるようなバラードであり、まずこの手のバラードが外れることはない。


「オンリー ロンリー」は先行シングル「晴天を誉めるなら夕暮れを待て」のC/W曲。チャゲ&飛鳥時代の楽曲のセルフカバー。この曲はASKA自身お気に入りで、いつかはもう一度歌ってみたいと思っていたという。アレンジ自体はそこまで大きく変わっていない印象がある。サウンド面はどちらかというとギターよりもピアノが主体となっていると思う。一番大きな変化は新しいメロディーが追加されているところ。元のバージョンに慣れていると、どうしてもそこだけ違和感を覚えてしまうかもしれない。管理人はこの曲を聴き慣れているという訳ではないので、違和感無く聴けたが。やはり、元のバージョンよりも格段に歌唱力が上がっている印象。 1985年→1995年の10年でかなり変わっているのが実感できるはず。


「はるかな国から」はここまでの流れを変えるようなポップナンバー。ギターとキーボードとがぴったり合ったサウンドは爽やかそのもの。メロディーはシンプルな8ビートで、優しさを感じさせる。そのようなメロディーやサウンドに乗せられる歌詞は中々に重厚なテーマである。少年が自殺したという描写から始まるが、その報道への疑問や自殺という行為そのものへの考えが語られている。その報道はASKAにとっては、次の自殺を誘うような取り上げ方に感じられたという。あるがままの姿勢で生きていこうという想いを「夏にはシャツを脱ごう 冬は重ね着しよう 風邪をひくのはとても嫌いだな」という小さな子供でも分かるようなシンプルなフレーズで表現している。 歌詞だけ見るとかなり重いテーマではあるが、曲は明るいのでそれほど聴き苦しさは無い。


「君をのせて」は沢田研二の楽曲のカバー。沢田研二のソロデビューシングル曲である。ジュリーがソロとして活動を始めた時のインパクトや、曲を聴いた時の何とも言えない切なさに引き込まれ、ASKAは少年時代からこの曲が好きだったという。曲はキーボードとギターが主体となっており、しっとりした感じ。原曲は聴いたことがないので違いに関しては語れないものの、ASKAらしい甘く力強い歌声でしっかりと表現されている印象がある。自分の曲としてしっかりと形にしていると思う。この曲への強い愛情が溢れたようなボーカルがこの曲の魅力だろう。


「月が近づけば少しはましだろう」は今作のラストを飾る曲。後にセルフカバーアルバム「12」でセルフカバーされている。ファン人気が非常に高く、あるアンケートではASKAのソロ曲での好きな曲の1位を獲得したほど。壮大で力強いバラードナンバー。シンプルながらも鬼気迫るような雰囲気を感じさせるバンドサウンドはこの曲の壮大さを演出している。ASKAらしい大胆さと繊細さを併せ持ったメロディーも冴え渡っている。歌詞は生きていく上で誰もが経験し、誰もが思うようなことを描いたという。挫折を味わい、それから抜け出そうと努力する人が描かれている。「角を曲がるといつも 消え失せてしまう言葉だけど 心の中では 切れて仕方がない」というサビの歌詞が好き。聴き手の誰もが主人公になったような感覚で聴ける曲だと思う。ASKAのソロ曲の中でも特に好きな曲に入ってくる。


ヒット作なので中古屋ではよく見かける。前述したように、「ひとりチャゲアス」と言えるような作風である。むしろそれはASKA本人も認めていたようだ。ソロのオリジナルアルバムの中では数少ない、王道なイメージを持った作品だと思う。バラエティ豊かな楽曲が並んでいるため、聴いていて飽きが来ないのが魅力。
チャゲアスの作品との違いは歌詞にあると思っている。ソロの方がよりパーソナルなことを描いた歌詞が多い印象がある。今作はチャゲアスの魅力と言えるラブソングは殆ど無く、大多数は内省的な詞世界を持った曲。それでも日常が舞台となっているので親しみやすい。今作はバラエティ豊かな曲だけでなく、歌詞にも注目して聴くことをおすすめする。

★★★★★