WANDS
1994-02-02
(再発盤)
商品説明では今作のことがかなり辛辣に批判されているので注意。

【収録曲】
全曲作詞 上杉昇
4.作詞 上杉昇・魚住勉
10.作詞 上杉昇・中山美穂
1.6.作曲 大島康祐
2.10.作曲 織田哲郎
3.5.8.作曲 柴崎浩
4.作曲 多々納好夫
7.作曲 川島だりあ
9.作曲 上杉昇
1.5.6.7.10.編曲 明石昌夫
2.4.8.9.編曲 葉山たけし
3.編曲 WANDS
プロデュース 長戸大幸

1.時の扉 ★★★★☆
2.このまま君だけを奪い去りたい ★★★☆☆
3.星のない空の下で ★★★★★
4.もっと強く抱きしめたなら ★★★★★
5.ガラスの心で ★★★★☆
6.そのままの君へと… ★★★☆☆
7.孤独へのTARGET ★★★☆☆
8.Mr.JAIL ★★★★☆
9.Keep My Rock'n Road ★★★☆☆
10.世界中の誰よりきっと〜Album Version〜 ★★★★★

1993年4月17日発売
東芝EMI/TMファクトリー
最高位1位 売上162.6万枚

WANDSの2ndアルバム。先行シングル「もっと強く抱きしめたなら」「世界中の誰よりきっと」「時の扉」を収録。前作「WANDS」からは10ヶ月振りのリリースとなった。初回盤は三方背BOXケース入り仕様らしいが、管理人は見たことが無いので何とも言えない。

今作は第2期WANDSとして最初のアルバム。先行シングル「もっと強く抱きしめたなら」を最後にキーボードの大島康祐は自らのユニットSO-Fiを結成するために脱退した。シングル「時の扉」の時に新たなキーボーディストである木村真也が加入し、第2期WANDSがスタートした。ちなみに、大島康祐は脱退してからもストック曲という形や作家として楽曲を提供する形でWANDSに関わっていた。

今作はWANDSにとっての最大のヒットアルバムとなった。4週連続でチャート1位を獲得し、WANDSにとっては唯一のミリオンを達成したアルバムでもある。


「時の扉」は先行シングル曲にして今作のタイトル曲。テレビ朝日系深夜ドラマ枠『ネオドラマ』の主題歌に起用された。脱退した大島康祐が作曲を担当しているが、これはストック曲だったからだという。キーボードを多用したダンサブルなサウンドと、若干のロック色を感じさせるサウンドが展開されている。ギターサウンドも主張しているが、それ以上にキーボードの方が前面に出ており、かなりポップなアレンジとなっている。サビでの突き抜けるようなハイトーンボイスがとにかく格好良い。歌詞については、上杉昇は「自分が落ち込んだりした時に、自分自身を元気付けるような曲が欲しかった」と語っている。次のステップを踏み出そうとする際に勇気をくれるような、ストレートなメッセージが込められた歌詞だと思う。 今になって聴くとサウンド面を始めとして時代性の強い曲となっているが、メロディーの良さや歌詞、上杉昇の歌唱力は今でも魅力的。


「このまま君だけを奪い去りたい」は上杉昇がDEENに歌詞を提供した曲のセルフカバー。シングルは今作がリリースされる1ヶ月前にリリースされ、大ヒットしている途中だった。DEENのバージョンと比べるとバンドサウンドが控えめな印象。こちらのバージョンはシンセドラムが使われているためだろうか?終始ポコポコッという音が聴こえるアレンジとなっている。サビでの「奪い去りたい」の歌い回しもDEEN版と比べるとかなり違う。DEEN版は「奪い去りたい〜ぃ〜」と伸ばしているが、こちらは伸ばすことなくサラッと歌っている。他にも、「心震えるほどに」と「に」をつけて歌っているのも異なる点。こちらのバージョンも良いのだが、やはり最初に聴いたDEEN版には敵わない。しかし、 池森秀一も上杉昇のどちらも優れたボーカリストだというのは変わりない。


「星のない空の下で」は爽やかなポップロックナンバー。柴崎浩が単独で作曲を担当した最初の曲。力強いギターサウンドとキラキラしたキーボードとが絡んだサウンドが展開されている。今作は全体的にポップでキャッチーな作風なのだが、その中でも群を抜いてポップなアレンジがされている。歌詞は上杉昇が亡くなった親友への想いを綴ったものだとされている。そのせいか、明るく爽やかなメロディーやサウンドながらもどことなく切なさが漂っている。「あの日見た夢は 少しでもつかめたの? どうか教えてよ Dear My Friends」という歌詞が印象的。力強いのにどこか哀愁を帯びた上杉昇の歌声がこの曲では特に冴え渡っている。亡くなった友人に語りかけているかのよう。メロディーやサウンドはまさに大ヒットしていた頃のWANDSの王道そのもの。シングル向きの曲だったと思う。


「もっと強く抱きしめたなら」は先行シングル曲。三井生命のCMソングに起用された。特に記載は無いものの、Aメロや間奏のギターが異なっており、アルバムバージョンとなっている。どちらかというとシングルバージョンの方がロック色の強いギターサウンドとなっていて好き。大島康祐が在籍した第1期WANDSとしては最後のシングルであり、WANDS単独では最大ヒット曲。第1期WANDSと言えばダンサブルな楽曲が多かったが、この曲はその姿は見る影もなく、ギターサウンドが前面に出た当時のビーイングの王道なアレンジとなっている。ちなみに、作詞を上杉昇と行った魚住勉はタイアップ相手のCMに出演した浅野温子の夫である。歌詞は恋心をストレートに歌ったものなのだが、後に 上杉昇は全く望まなかった路線であるという旨の発言をしている。「もっと強く君を抱きしめたなら もう他に探すものはない」と歌い上げるサビはかなり格好良いのだが、その発言を知ってからだと急に哀愁を感じる。爽やかなのだが、それと同じくらい切なさや哀愁を感じさせる。上杉昇のボーカルの影響だろうか。DEENやFIELD OF VIEWとはまた違った、WANDSならではの魅力が現れた曲だと思う。


「ガラスの心で」は比較的ロック色の強い曲。とはいえポップなアレンジがされているのでそこまで浮いている印象は無い。イントロでは特にハードなギターサウンドが前面に出ている。キーボードはダンサブルなサウンドとなっており、ロックとダンスを融合したものと言える。これは第1期WANDSの王道のスタイル。そのようなサウンドは独特な焦燥感を生んでいる。歌詞は別れた彼女との思い出を振り返っているもの。上杉昇の力強い歌声だと分かりにくいが、歌詞はかなり繊細な内容となっている。一人であることは自由でもあり、窮屈でもある。孤独について描かれた歌詞は何とも切ない。曲としてはアルバム曲ながらサビが極めてキャッチーであり、シングル曲にしても良かったのでは?と言いたくなる。


「そのままの君へと…」はしっとりと聴かせるバラードナンバー。作曲は大島康祐が担当した。ストックだったと思われる。ここまでは明るい曲で来たので、ここでぐっと落ち着いた感じがする。終始淡々とした曲調である。サビは少し壮大なイメージのメロディーとなる。間奏のギターソロは哀愁に満ちており、この曲の聴きどころ。歌詞は別れた彼女への想いを語ったもの。「もう戻らぬ時を憎んで 君だけを求めつづける」という歌詞が印象的。この歌詞だけでなく、全体的に歌詞が切ない。あまりにも切なさに溢れているので、ただの失恋ではないのかと勘繰りたくなってしまう。 ここまでバラードらしいバラードは今作では珍しいので、少し浮いてしまっている印象がある。


「孤独へのTARGET」はノリの良いポップロックナンバー。作曲はWANDSとの同僚であるFEEL SO BADの川島だりあが担当した。川島だりあはこの曲のコーラスでもパワフルな歌声で存在感を放っている。いきなりサビから入るという構成はかなりインパクトがある。オーケストラヒットが多用された派手なサウンドは全盛期のビーイングらしさを感じさせる。サビのメロディーは中々にキャッチー。歌詞は別れた友人や恋人への想いを語ったもの。この曲も「星のない空の下で」のように、死別した大切な人への想いを綴ったもののように感じられる。自らのことを「まるで広い砂漠にポツリ とり残されている 空しいだけのサボテンの花 ひっそりと散るのか?」と表現しているのが印象的。明るい曲調ではあるが歌詞からは喪失感や虚無感が漂っている。そのギャップに引き込まれる。


「Mr.JAIL」は爽快なポップロックナンバー。今作の中でも特に自由に伸び伸びと作られたような雰囲気が感じられる。力強いギターサウンド、終始派手な音色で曲を彩るシンセ…これらの絡みがたまらない。柴崎浩作曲による曲もかなりポップである。メロディーメーカーとしての柴崎浩の実力がうかがい知れる。歌詞は当時の上杉昇自らの姿を「Mr.JAIL」に例えたようなものとなっている。自らは本格的なロックをやりたいと思っていたのに、ポップな曲ばかりやらされる。その想いが語られていると思う。 「たしかに僕は そうSINGIN' DOLL」と例えているのがインパクト抜群。後の「PIECE OF MY SOUL」の作風を予感させるような歌詞である。明るくノリの良い曲調とのギャップが凄まじいのだが、それがこの曲の魅力である。


「Keep My Rock'n Road」は上杉昇が初めて作曲を担当した曲。2分と少しの短い曲。しっとりとしたバラードナンバー。他の曲はかなり音の数が多かったが、この曲は音の数は少なめ。比較的アコースティックなサウンドとなっている。そのせいか、上杉昇のボーカルもどこか柔らかい感じ。歌詞はメッセージ性の強いもの。失意の中から抜け出して前向きに歩き出そうとする姿が見えてくるようである。「咲きほこる花と 瓦礫の中をずっと歩き続けよう」という歌詞が好き。高いセールスで音楽界のトップに立つ喜びと、自らが本当にやりたい音楽をできないもどかしさや苦しみ。そのどちらも伝わってくるような歌詞だと思う。ラストの「ラララ」と合唱している部分はWANDSにしては新鮮な印象がある。


「世界中の誰よりきっと〜Album Version〜」は先行シングル曲。シングルバージョンは中山美穂&WANDS名義だったが、こちらはWANDSのみの演奏でセルフカバーされている。コーラスは宇徳敬子が担当した。何故中山美穂とコラボすることになったのかはわからないが、この曲がWANDSにとっての出世作となった。結果的にWANDSの最大ヒット作であり、作曲を担当した織田哲郎や編曲を担当した葉山たけしにとっても最大ヒット作となった。シングルバージョンと比べると幾分かバンド色が強いサウンドとなり、力強さが増している。このバージョンの編曲を担当した明石昌夫は「地味なアレンジ」と語っている。アレンジは大幅に変わっているが、メロディーの良さは全く変わっていない。歌詞は上杉昇と中山美穂の共作なのだが、どちらがどの部分を手がけたかはわからない。何となく上杉昇の方が主体だったのではと想像している。 正直歌詞の意味はあまり分からない。主人公は男性とも女性とも取れるし、ラブソングとも叶わなかった夢を歌ったものとも取れる。とはいえメロディーを中心に未だに色あせない圧巻の名曲だというのには変わりない。オリジナルバージョンが一番好きなのだが、こちらのバージョンも好き。


大ヒット作なので中古屋ではよく見かける。当時の流行りのサウンドを全面的に取り入れたため、極めてポップでキャッチーな曲が並んでいるのが特徴。当時ならではの売れ線ポップアルバムと言ったところか。そのため、数回聴くとすぐに飽きが来てしまうのが欠点。とはいえ全盛期のビーイングの魅力を凝縮したような作品になっていると思う。今作はビーイング系アーティストの作品に触れていくなら欠かすことのできない存在であるというのは言うまでもない。

★★★★☆