8月28日、紹介している作品を増やしました。

今回が4回目となります。これは以前行った「私的○○年代ベストアルバム」の続編のようなものです。その企画では管理人が所有する1985年〜2016年リリースのアルバムの中から、好きな作品を1年ごとにベスト5形式(一部それより少なかったり多かったりしましたが)で紹介してきましたが、「曇りめがね的名盤特集」はその中から作品のチョイスに特に迷ってしまった年をピックアップし、好きな作品を紹介していきます。この企画ではランキング形式をやめ、作品及びその解説を並べていくだけの極めてシンプルな形をとります。何作紹介するかという数も決めていません。   
「私的○○年代ベストアルバム」で紹介した作品は解説文がほぼ同じです。既にブログで紹介した作品は作品名のところに記事のリンクを埋め込んであります。紹介している順番については、管理人が使っているCD管理アプリでのアーティストの並び順です。ご了承ください。

「曇りめがね的名盤特集」第四回は1988年。管理人にとっては80年代最高のアルバムの当たり年です。CDが普及し始めたためか、これまでの年に比べると中古屋で安価に作品を入手しやすくなったという印象があります。


追加!・BOX「BOX POPS」



BOXの1stアルバム。杉真理と松尾清憲を中心に結成された4人組バンド。ビートルズからの影響を強く受けたミュージシャンが揃っただけあって、60年代の匂いを感じさせるロックンロール・ポップスが全編に渡って展開されています。杉真理と松尾清憲のツインボーカルや、充実したコーラスワークも聴きどころ。彼らのソロとしての曲を聴いたことが無くても、60年代を実体験していなくても、何故か懐かしいと思えるような作品です。



FAIRCHILD
1994-05-20(再発盤)

FAIRCHILDの1stアルバム。現在はタレントとして活躍するYOUがボーカルを担当していたことで知られるユニット。後に普通のポップス路線になりますが、今作はテクノポップが主体となった作品です。元SHI-SHONENの戸田誠司の優れたポップセンスが発揮されており、どの曲もキャッチーそのもので、シンセと生音のバランスも絶妙。YOUの無邪気さを感じさせる可愛らしい歌声や独特な詞世界も魅力的。そのようなサウンドに力強さを加える、川口浩和のギターもインパクトがあります。バラエティ番組などでFAIRCHILDの話題が出るときは笑い話か黒歴史のような扱いをされがちですが、それは勿体無いと感じられる作品です。



・GRASS VALLEY「STYLE」

GRASS VALLEY
1988-07-01



GRASS VALLEYの3rdアルバム。GRASS VALLEYは80年代後半の日本のニューウェーヴシーンの代表格と言えるバンドですが、今作はこれまでの2作の幻想的な世界観はそのままに、さらにポップ性が増しています。隙のないバンドサウンドやシンセの使い方は今聴いても古臭さを全く感じないどころか、新鮮ささえ感じさせます。特に上領亘による、機械のように正確かつグルーヴ感に溢れたドラムや、本田恭之の絵画的な美しさを持ったシンセは圧巻。全編通して圧倒的な完成度を誇る曲が並んだ構成も素晴らしい。GRASS VALLEY屈指の名盤だと思います。



KAN
1988-06-25


KANの3rdアルバム。KANにとっては初となるチャート入りを果たした作品。前の2作とは異なり、自ら作詞した曲が大多数を占めるため、KAN独特の詞世界が完成した作品とも言えます。弱い男を描いたラブソングという強力な武器が完成しました。曲も松本晃彦との共同アレンジのお陰か、全編通してポップな仕上がりとなっています。「君はうるさい」「だいじょうぶI'M ALL RIGHT」「言えずのI LOVE YOU」といった初期の代表曲も収録されています。いわゆる「初期の名盤」という位置付けの作品です。


追加!・LOOK「OVER-LOOK」

OVER-LOOK
LOOK
1988-02-26




LOOKの4thアルバム。彼らにとってのラストアルバムとなりました。今作は初のニューヨークでのレコーディングが行われ、演奏も大部分が現地のミュージシャンが担当しています。そのため、これまでよりも「大人」なサウンド面が特徴。ただ、卓越したポップセンスはこれまでと全く変わっていません。鈴木トオル、千沢仁、山本はるきちの味わいの異なるボーカルも魅力。サウンド面に時代を感じることはあれど、メロディーの魅力は一切色褪せていません。



追加!・THE BLUE HEARTS「TRAIN-TRAIN」

Train-Train
THE BLUE HEARTS
1988-11-23




THE BLUE HEARTSの3rdアルバム。代表曲「TRAIN-TRAIN」「青空」収録。どこまでも真っ直ぐで、格好良くて、優しくて、繊細…ブルーハーツの楽曲の魅力を語るための言葉は色々出てきますが、どんな御託よりも先に聴いて打ちのめされるのが一番でしょう。何故、解散して20年以上経っても楽曲が様々な場面で使用されて愛され続けるのか。何故、歌詞が今でも聴き手の心を掴み続けるのか。聴けばそれがわかるでしょう。



・TM NETWORK「CAROL〜A DAY IN A GIRL'S LIFE 1991〜」

TM NETWORK
2013-02-20
(リマスター・Blu-Spec CD2)


TM NETWORKの6thアルバム。リリース当時の近未来にあたる1991年を舞台にした壮大な物語に沿ったアルバムとなっています。そのストーリーはメンバーの木根尚登によって小説化されました。ロンドンで制作されたためか、プログレッシブロックやニューロマンティックのテイストを取り入れたサウンドが展開された曲が多いのが特徴です。物語に沿った作品なので全体的な流れが良いのは当然。全体の流れだけでなく、一曲一曲の完成度も圧巻。この作品の収録曲に関してはアルバムを通して聴いた方がより良く感じられると思います。管理人は決してTM NETWORKに関して詳しいわけではありませんが、それでも大好きな作品です。


追加!blue tonic「GUTS FOR LOVE」

blue-tonic
1994-10-21

blue tonicの2ndアルバム。「和製Style Council」の異名を持ち、近年では渋谷系音楽の元祖のような存在として名前を挙げられることがあるバンド。グルーヴ感を重視したスタイリッシュな楽曲は今でも古臭さを全く感じさせません。シティポップ・AOR、ソウル、ファンクなと多彩なジャンルを取り入れた楽曲が展開されていますが、どれもポップな仕上がり。その手の音楽が再興している今こそ、blue tonicが再評価されるべきだと思います。リマスター再発が望まれます。



アイリーン・フォーリーン「BODY&VOICE」


ビクターエンタテインメント株式会社
1988-07-21


アイリーン・フォーリーンの3rdアルバム。アイリーン・フォーリーンは決して有名ではありませんが、卓越したポップセンスで多くの名曲を生み出したバンドです。今作は現在でも実力派ギタリストとして活躍する小倉博和がメンバーとして参加しました。1stアルバムは武部聡志、2ndアルバムは小林武史が共同プロデューサーとして参加していましたが、今作はメンバーが主体となって制作されています。これまでの作品とは打って変わって、力強いギターサウンドと緻密なシンセとが絡んだポップナンバーが多いロック色が強めな作品です。ポップでキャッチー、お洒落、格好良い、美しい…様々な要素を持った曲の数々は再評価されるべき完成度があります。 



追加!・カルロス・トシキ&オメガトライブ「DOWN TOWN MYSTERY」

DOWN TOWN MYSTERY
カルロス・トシキ&オメガトライブ
1988-04-06



1986オメガトライブからカルロス・トシキ&オメガトライブ名義になっての1stアルバム。前作「Crystal Night」でAOR路線に傾倒しましたが、今作はその路線を維持した作品。カルロス・トシキ特有の甘い歌声と、和泉常寛による洗練されたメロディーの相性はぴったり。「攻撃的」というフレーズすら似合ってしまうほどに派手なシンセサウンドも聴きどころ。オメガトライブが80年代におけるシティポップ・AORの代表的な存在として扱われるのも納得できる作品です。



追加!・スターダストレビュー「RENDEZ-VOUS」

RENDEZ‐VOUS
スターダスト・レビュー
1991-07-17



スターダストレビューの6thアルバム。これまででのシティポップ・AORの路線はそのままに、エスニックな要素も交えた作品。根本要・三谷泰弘による、都会的でお洒落なメロディーやサウンドの数々を楽しめます。メンバーそれぞれの担当楽器をフィーチャーした曲が並んだ構成になっているのも見事。バンドの知名度がどんどん上昇していた頃にふさわしい、充実感のある作品だと思います。



追加!・ラ・ムー「THANKS GIVING」




ラ・ムーの1stアルバム。菊池桃子が突然始めたバンドということで、世代の方にとってはかなりのインパクトがあったことでしょう。「ロックをやりたい」という理由で結成されたようですが、今作はファンクやAOR要素の強いサウンドが展開された曲ばかり。メロディーもかなりキャッチーなものが揃っています。

強力なバンドサウンドと緻密なシンセサウンドの絡みはこの頃の音楽ならではの魅力。そのようなサウンドと黒人の女性コーラス2人のソウルフルなコーラス、菊池桃子の弱々しい歌声が作り出す唯一無二の楽曲を楽しめます。



追加!・中山美穂「CATCH THE NITE」

CATCH THE NITE
中山美穂
1988-02-10



中山美穂の6thアルバム。エレクトロファンクに傾倒していた頃の角松敏生がプロデュースを手がけた作品。バッキバキのエレクトロファンク路線の曲と、角松敏生にとっての王道と言えるシティポップ路線の曲で分かれた構成となっています。攻撃的なシンセサウンドの数々は聴いていて思わず笑ってしまいそうになるほど。プロデューサーの角松敏生もコーラスで参加し、中山美穂のボーカルを食わんばかりに存在感を放っています。

後で紹介する角松敏生の「BEFORE THE DAYLIGHT」とはリリース日も近く、作風も似通っているのでセットで聴くと楽しめるでしょう。




久保田利伸
1988-09-30

久保田利伸の3rdアルバム。自身初の海外レコーディングが行われた影響か、前の2作と比べても格段にブラックミュージック色が強くなり、本格的なR&Bやファンクが前面に出た作品となっています。本格的なブラックミュージックを追求しつつも、そのジャンルにあまり詳しくないリスナーでも良いと思えるようなポップ性も忘れていない。そのバランスのお陰でとっつきやすい作品になっていると思います。今作のオープニング曲である「Dance If You Want It」は久保田利伸のファンクの一つの到達点と言える名曲。


追加!・原田真二「Urban game」

原田真二
1988-11-21


原田真二の10thアルバム。デビュー当初の楽曲からはイメージできないかもしれませんが、エレクトロファンク・ポップに傾倒していた時期の作品です。緻密に作り込まれた都会的かつダンサブルなサウンドと、どのような曲でもキャッチーにまとめる優れたメロディーセンスが冴えに冴えています。それはアップテンポな曲だけでなく、メロウな雰囲気漂う曲でも同様。まさに「ポップス職人」と言いたくなるような佇まいの作品。どうしてもデビュー当初の楽曲が注目されがちですが、この頃の原田真二も再評価が望まれます。




大江千里
1988-07-21


大江千里の7thアルバム。前作の明るく陽気な作風とは打って変わって、全編通して内省的な雰囲気を持った作品です。明るい曲でもどこか陰を感じさせる詞世界が繰り広げられています。バブル景気に浮かれていた当時の日本を皮肉るような曲まであります。一曲一曲の完成度が極めて高い上に、内省的な作品の割に全体的な流れがとても良くて聴きやすいのが魅力。大江千里の代表曲と言える「GLORY DAYS」や、槇原敬之や秦基博のカバーによって近年注目を集めている「Rain」が収録されているのも大きなポイント。 今作を大江千里の最高傑作に挙げるファンが多いのも頷ける、確かな名盤です。



小林武史
1988-11-21

↑ジャケ写が掲載されていなかったので。

小林武史の1stアルバム。小林武史と言えばプロデューサーとして活躍するイメージが強いですが、ほんの一時期だけシンガーソングライターとしても活動していました。その時代の1stアルバムが今作。新人シンガーソングライターとは思えないような、徹底的に作り込まれたポップスの数々を楽しめます。メロディーの良さにも魅かれますが、それ以上にアレンジの才能が冴え渡っている印象。後の天才ポップス職人としての姿はこの頃からあったのです。渋くて格好良い歌声も素晴らしい。 アーティストは有名なのに、作品は無名。まさにJ-POPの隠れた名盤。入手は少し難しいと思いますが、それでも手に取っていただきたい作品です。




小田和正の2ndアルバム。オフコース在籍中のリリースとなりました。オフコースのドラム担当であり、メンバー同士の仲を取り持つ役割だったという大間ジローが小田和正との共同プロデューサーとして参加しているのが大きな特徴。全体的に派手な曲が少なく、一聴しただけだと地味な作品のように感じられるはず。しかし、その地味な感じが今作最大の魅力なのだと思います。作品そのもののコンパクトさも相まって、何度も聴きたくなるような作品になっています。



山下達郎
1988-10-19


山下達郎の9thアルバム。後にも先にも日本語タイトルのオリジナルアルバムは今作のみ。アナログからデジタルへとレコーディング環境が変わり、その変化との戦いの中で制作された作品。タイトル曲は娘が生まれたばかりの頃に作られたようで、それが今作のテーマである「自分の中の大人と子供のせめぎ合い」「少年が大人になっていく過程」に反映されていると言えます。そのため、今作はコンセプトアルバムの趣がある作品です。全編通して内省的な雰囲気がありますが、それが今作最大の特徴。一曲一曲の出来栄えや統一感ともに圧倒的なものがあり、管理人の中では山下達郎の最高傑作となっています。


​・岡村孝子「SOLEIL」

岡村孝子
1988-07-01



岡村孝子の4thアルバム。リミックス・セレクションアルバムの「After Tone」のロングヒットの影響を受けてか、初のチャート1位を獲得したヒット作。サウンド面では少々時代性を感じさせる部分がありますが、メロディーや詞世界は普遍性に満ちたものばかり。透き通るような美しさと聴き手を包み込むような優しさを持った歌声も絶品。「夢をあきらめないで」のイメージが強い岡村孝子ですが、今作を聴くとそれ以外にも数多くの名曲を生み出しているアーティストであることがよくわかると思います。







・島崎路子「fleurer(フルーレ)」




島崎路子の1stアルバム。島崎路子は1988年にシングル3作、そして今作を残して音楽活動を終えたアイドルです。「美少女」というフレーズがよく似合う容姿や、頼りなくふわふわした感じの歌声が魅力的。今作はシングル曲3曲を収録しつつも、コンセプトアルバムのような趣を持っています。それは島崎路子自らによる曲順選びや、少女の日常や感情を切り取ったピュアな詞世界による影響が大きいと言えます。井上鑑、武部聡志、清水信之を始め、 当時の最高峰の作家陣やスタジオミュージシャンが数多く参加しており、一曲一曲の完成度も圧巻。楽曲に彩りを加えるシンセの音作りも隙がありません。そのような音作りに埋もれない島崎路子の丁寧な歌唱も素晴らしい。80年代はアイドルの名盤が数多く生まれた時代。今作は決して著名な作品ではありませんが、どの著名な作品にも劣らない名盤です。




リアリズム
崎谷健次郎
1988-03-21


崎谷健次郎の2ndアルバム。代表曲「もう一度夜を止めて」が収録され、崎谷健次郎のオリジナルアルバムの中で最大の売上を記録した作品。今作は崎谷健次郎=バラードシンガーというパブリックイメージが確立された作品と言えます。そのようなパブリックイメージに応えつつも、次作で傾倒することになるハウスミュージックやファンクにも挑戦しています。その他にもボサノバやレゲエのテイストを持った曲もあり、王道でありながら異色な作品とも感じられます。



Delight Slight Light KISS
松任谷由実
1988-11-26


松任谷由実の20thアルバム。ユーミンにとっては初となるミリオンを達成したアルバムで、今作以降8作連続でミリオンを達成しています。ユーミンが音楽業界のトップに立ったことを誇示するかのようなセールスです。非シングル曲ながら代表曲と言える存在である「リフレインが叫んでる」が収録された作品でもあります。サウンド面では前作から使われていた当時の超高級楽器・シンクラヴィアを全面的に使用し、打ち込みが主体となっているのが特徴。当時の売れ線な音楽やサウンドを徹底的に突き詰めた印象の作品なので、今聴くと中々に時代性を感じさせる作品です。バブル期の日本を実体験した世代ではない管理人でも、今作を聴くとその当時の空気が何となく伝わってくる感覚があります。



桑田佳祐
1992-06-27
(再発盤)




桑田佳祐の1stアルバム。KUWATA BAND時代の活動に疑問を抱いた桑田佳祐は、「ポップス」という言葉に再び愛着を抱き、スタジオにこもって曲作りに熱中することを考えました。それが今作が制作されるきっかけとなりました。今作は桑田佳祐、藤井丈司、小林武史の3人が主となって制作され、特に小林武史が全面的なプロデュースを手掛けたようです。小林武史とは後にサザンでも作業することとなります。そのため、 徹底的に作り込まれたサウンドが展開されたポップスを楽しめます。今になって聴くと少々古さを感じてしまうところもありますが、それでも引き込まれてしまいます。若く才能に溢れていた当時の3人だからこそできた傑作。


・楠瀬誠志郎「aisA(アイシア)」
楠瀬誠志郎
1992-02-21(再発盤)

↑ジャケ写が掲載されていなかったので。

楠瀬誠志郎の3rdアルバム。前2作と同様に、コーラスワークを重視したポップスを楽しめる作品。シティポップやAORのテイストを持った曲が多めなのも特徴。何よりも素晴らしいのは楠瀬誠志郎による美しいメロディーと歌声。ポップでキャッチーなのに思わず身を委ねたくなるような美しさや心地良さを持ったメロディーです。透き通るようなハイトーンボイスは清涼感に溢れています。蒸し暑い夏に聴くとその清涼感がよく分かると思います。夏を過ごすお供として聴くのがおすすめ。



横山輝一
1988-02-25


横山輝一の3rdアルバム。横山輝一はファンハウス所属時代とポリスター所属時代で作風がかなり違いますが、ファンハウス時代にリリースされた今作は王道なポップスにブラックミュージックやシティポップの要素を織り交ぜたバラエティ豊かな作品となっています。それは数人のアレンジャーを起用したことも大きいと思います。横山輝一の圧倒的な歌唱力も遺憾無く発揮されています。ファンハウス所属時代のオリジナルアルバム4作の中で管理人の一番好きな作品です。



浜田省吾
1988-03-16


浜田省吾の12thアルバム。前々作「DOWN BY THE MAINSTREET」、前作「J.BOY」と続いてきた三部作のラストを飾った作品。浜田省吾自身の姿も投影しつつ、少年が大人になるまでの過程が描かれています。「日本とアメリカ」「戦争と戦後」といったテーマの作品のため、重苦しいアルバムなのかと思ってしまいますが、実際は収録曲の半分以上がラブソングでメッセージソングは少なめ。 浜田省吾による歌詞やメロディーの完成度はとても高く、激しさと落ち着きの両方を感じさせる作品となってきます。前作「J.BOY」ほど評価される機会が少ない印象が否めませんが、今作も優れた作品です。


追加!・渡辺満里奈「SUNNY SIDE」

SUNNY SIDE
渡辺満里奈
1988-07-21



渡辺満里奈の3rdアルバム。前作「EVERGREEN」で確立された、爽やかでお洒落なポップスという路線を突き進んだ作品。山川恵津子に加えて、井上鑑や武部聡志など新たな編曲家も参加しました。聴き心地の良いメロディーや作り込まれたサウンド面は不変。

タイトルやジャケ写からも想像できるかもしれませんが、今作はリゾートミュージック的な味わいを持った曲が多いのが特徴。どの時期に聴いても楽しめるような曲が揃っていますが、やはり夏に聴くのが一番でしょう。




渡辺美里
1991-07-01
(再発盤)





渡辺美里の4thアルバム。当初はベスト盤として制作するという計画があったようですが、結局それは実現せず。しかし、ベスト盤かと思ってしまうほどに全編通してポップな作風となっています。今作のキャッチコピーは「戦後最大のポップアルバム」という壮大なものでしたが、そのキャッチコピーにも恥じないくらいの作品になっていると思います。当時のレーベルメイトだった大江千里、TM NETWORKの小室哲哉と木根尚登、岡村靖幸に加えて佐橋佳幸、伊秩弘将と音楽界をリードする実力派が多数楽曲制作に関わっており、 曲は言うまでもなく素晴らしいものばかり。
渡辺美里はアーティストなのかアイドルなのかよくわからない立ち位置だったせいか、作品が表立って評価されることが少ない気がしますが、それでも今作は名盤だと思います。


・米米CLUB「GO FUNK」
米米CLUB
1997-03-31
(再発盤)



米米CLUBの4thアルバム。プロデューサーとして萩原健太が参加し、自身初となるチャート1位を獲得した作品。今作辺りからどんどんセールスが向上していき、人気バンドとなります。タイトルからもわかるように、今までの作品よりも格段にファンク色が強くなりました。ホーンセクションを生かした曲が多く、全体的に豪華かつ勢いのある作品となっています。ノリの良い曲からAORテイストのメロウな曲まで幅広い内容も魅力。当時の彼らがとても充実していたことがよく分かる作品だと思います。


追加!・荒木真樹彦「SYBER-BEAT」

SYBER-BEAT
荒木真樹彦
1988-10-25



荒木真樹彦の1stアルバム。マルチプレイヤーで、優れた作編曲のセンスを持ったシンガーソングライターです。様々なジャンルを取り入れた楽曲を作り上げることができますが、今作はファンクやロックに寄った作品。どの曲を取っても、キャッチーなメロディーや作り込まれたサウンドが展開されています。

ハスキーで色気のある歌声や、独特な存在感を放つギターサウンドといった荒木真樹彦の魅力は1stから発揮されています。後の作品と比べるとまだまだ荒削りな感は否めませんが、それでもやはり完成度の高い作品です。



角松敏生
1988-02-05


角松敏生の7thアルバム。ニューヨークでレコーディングされ、現地の実力派ミュージシャンを多数招いて制作された作品です。これまで自ら編曲を手掛けることが多かった角松敏生ですが、今作は全曲のプロデュースを外国人ミュージシャンに任せています。その結果、いつになく打ち込みが主体となった作品になりました。生音にも一切の隙がなく、作り込まれたサウンド面は圧巻。 角松敏生によるメロディーも冴え渡っており、8曲のみと少なめな曲数でもかなりの満足感があります。角松敏生に関してはそこまで詳しくないので説得力は無くなってしまいますが、今作は角松敏生のキャリアを通じても特に充実した作品だと思います。


追加!・遊佐未森「空耳の丘」

空耳の丘
遊佐未森
1988-10-21


遊佐未森の2ndアルバム。今作発売後にシングルカットされて代表曲となる「地図をください」が収録された作品。メルヘンでどこか懐かしい作風は遊佐未森の作品の王道だと思いますが、それを確立した作品と言えます。今作のサウンド面での聴きどころは青山純によるドラム。今作全体に溢れる心地良い音を形作っていると言っていいほどの活躍ぶりです。

今作は歌詞、メロディー、サウンドのどれを取っても時代性を感じないのが素晴らしいところ。どの時代になっても違和感無く聴けるような、タイムレスな作品です。



・関口誠人「FOLK SONG」
関口誠人
1988-03-21

↑ジャケ写が掲載されていなかったので。

関口誠人の1stアルバム。C-C-Bを脱退してからはソロ活動を始めましたが、ソロとしての1stが今作。関口誠人は歌謡曲やフォークソングを彷彿とさせる曲を得意とするソングライターですが、今作はシティポップのテイストを強く感じさせる曲が並んでいます。一つの都市をテーマにしたコンセプトアルバムとも取れるような内容となっています。
都市をテーマにした作品というと、今作リリース以前だとはっぴいえんどの「風街ろまん」が、今作リリース以降だと小沢健二の「LIFE」やGOMES THE HITMANの「cobblestone」、曽我部恵一の「LOVE CITY」などが思い浮かびますが、それらの作品と同じような流れを感じさせる作品だと思います。もっと評価されてほしい名盤。



高野寛
1988-10-26

↑ジャケ写が掲載されていなかったので。

高野寛の1stアルバム。高橋幸宏がプロデュースを担当した作品です。高野寛の魅力である、爽やかなのにどこか捻くれたポップスは1stから楽しめます。後にベスト盤にも収録された人気曲「See You Again」「国境の旅人」「夜の海を走って月を見た」が収録されています。セルフプロデュースではないので高野寛の魅力が最大限に発揮できていないという印象が否めないですが、それでも中毒性溢れるポップスばかり。1stアルバムならではの荒削りさがほとんど無い。1stというにはあまりにも完成度の高い作品だと思います。


色々な作品を挙げてきましたが、どれもおすすめです。中古屋やレンタル店に出向く際に参考にしていただけたら幸いです。今後追記する可能性がありますので、その際にはツイッター(@fumimegane0924)で報告しつつ加筆修正していきます。