RAZZ MA TAZZ
1999-04-21


【収録曲】
全曲作詞 阿久延博
全曲作曲 三木拓次
6.作曲 横山達郎
全曲編曲 RAZZ MA TAZZ
10.編曲 YU IMAI with RAZZ MA TAZZ
10.ストリングス編曲 Simon Hale
プロデュース RAZZ MA TAZZ

1.Network Paradise ★★★★☆
2.Stay ★★★★★
3.Somewhere ★★★★☆
4.アマイワナ ★★☆☆☆
5.MERMAID ★★★☆☆
6.インテリア ★★★☆☆
7.孤独なCowboy ★★★★★
8.冬の自画像 ★★★☆☆
9.Room ★★★★☆
10.MESSAGE〜遠い君に贈る歌〜 ★★★★☆
11.Sanctuary-Life goes on- ★★★★☆

1999年4月21日発売
フォーライフ
最高位46位 売上不明

RAZZ MA TAZZの5thアルバム。先行シングル「Room」「MESSAGE〜遠い君に贈る歌〜」「Sanctuary-Life goes on-」を収録。前作「Dialogue」からはベスト盤を挟んで1年8ヶ月振りのリリースとなった。

RAZZ MA TAZZはボーカル担当の阿久延博、アコースティックギター担当でリーダーの横山達郎、ギター担当の三木拓次、ベース担当の入江昌哲、ドラムス担当の三村隆史からなるバンド。1989年に結成され、1994年にメジャーデビュー、1999年に解散した。独特なバンド名が印象的だが、これは横山達郎がジャズ雑誌から見つけた言葉。「輝かしい」「はつらつとした」というような意味があるようだ。作詞は阿久延博が、作曲は三木拓次が主に担当していた。
解散後は俳優としての活動を始めた入江昌哲(後に入江昌樹名義)以外は音楽活動を続けていた。しかし、2002年に三木拓次が膵臓癌で亡くなったため、5人での活動再開は叶わなくなってしまった。33歳というあまりにも早過ぎる死だった。

RAZZ MA TAZZの楽曲の魅力は爽やかさと切なさを併せ持ったポップなラブソングである。それは三木拓次が紡いだメロディーの功績が大きいと思う。阿久延博による「青春」をイメージさせるようなボーカルや詞世界も大きな魅力。

今作はRAZZ MA TAZZにとって最後のオリジナルアルバムである。解散を前提に制作されたとされている。メンバーが「もうこれ以上のアルバムは作れない」と言うほどの自信作。阿久延博も今作が一番好きな作品だと語っている。今作は彼らにとって最初で最後のセルフプロデュースによる作品でもある。それは「PRESENT」「Dialogue」の共同プロデューサーだった今井裕の提案によるものだったようだ。


「Network Paradise」は今作のオープニング曲。透明感溢れるギターサウンドが心地良いポップナンバー。そのようなギターサウンドはRAZZ MA TAZZの楽曲の大きな特色であり、魅力である。味わい深いアコギの音色は職人的な雰囲気を感じさせる。概ね彼らの王道と言える作風の曲だが、一部でボーカルが加工されている部分があるのが特徴。歌詞は横文字が多用されており、どことなくスカしたイメージのもの。 恋人に対して抱く欲望をネットワークに例えた詞世界は何とも意味深である。「狂乱と喧騒にむせぶ街は 懐かしい景色を失くしてしまった」という歌詞が好き。阿久延博のダークな部分が現れたキレの良い歌詞だと思う。RAZZ MA TAZZの曲では珍しい、ひねくれた感じのある曲。


「Stay」は先行シングル「Sanctuary-Life goes on-」のC/W曲。爽やかなメロディーが耳の保養になりそうなラブソング。ここまで優しく心地良い音色を出せるのか?と思ってしまうようなギターサウンドがたまらない。透き通ったギターの音色は曲や聴き手を包み込むようである。メロディーは爽やかな上に、どことなく懐かしい雰囲気を感じさせる。心をグッと掴まれるようなキャッチーなサビも良い。歌詞は恋人と共に生きていくことを決めた男性の心情が描かれたもの。「君はいつでも日々の大切さ教えてくれる」と相手への感謝を伝えているのが印象的。これからの二人を応援したくなる詞世界となっており、結婚式でも使えるような曲だと思う。C/W曲ではなく、A面でも全く違和感の無い曲である。


「Somewhere」はしっとりとした曲調で聴かせるバラードナンバー。シンプルながら心に染み渡るようなアコギの音色が主体となっている。メロディーと絡みつくようなエレキギターの音色も耳に残る。歌詞は別れた彼女への想いを語ったもの。「陽炎が揺れる交差点」で彼女と別れた。どこまでも続くような人混みの中にぽつんと立ち尽くす主人公の男性の姿が浮かんでくるようである。きっとその人混みの中には手を繋いで歩く恋人たちもいるはず。そのような恋人たちを見て主人公の男性は何を思うのだろう。「僕らが選んだ答を今でも 多分 お互いに うなづけずにいる」という歌詞からは、未練のある別れ方だったのだと想像してしまう。 曲やサウンド、歌詞を通して気だるい雰囲気が溢れており、聴いているとその気だるさに引き込まれそうになる。


「アマイワナ」はこれまでの曲とは違った印象のあるポップロックナンバー。イントロからSEや打ち込みサウンドが使われているほか、ところどころではゲームボーイを想起させる、ゲームでもやっているかのような感覚になる音も使用されている。タイトルだけでなく歌詞の表記も独特で、英語のフレーズ以外は全てカタカナで表記されている。サビでは凝ったコーラスワークが展開されており、それも聴きどころ。歌詞は闇(病み)を感じさせるものとなっている。「コンヤオレヲコロシテクレ」という歌い出しから凄まじいインパクトがある。 曲全体からは遊び心というよりは狂気を感じさせる。あまりにも無邪気な子供は時に残酷に見えてしまうものだが、それと同じような感覚がある。この曲は斬新過ぎて馴染めなかった。


「MERMAID」は再び、 しっとりとした曲調で聴かせるバラードナンバー。聴き手に語りかけているかのような、雄弁さを感じさせるギターサウンドが展開されている。表情すら見えてくるようである。サビでは分厚いコーラスワークを楽しめる。阿久延博の歌声は少し加工されているところがあり、それによって神秘的なイメージが作り出されていると思う。歌詞は官能的な世界観を持ったものとなっている。バスローブに包まれ、ベッドの上で美しく舞う恋人の姿を人魚に例えている。主人公の男性に愛されている恋人は、他人には見せない表情を男性に見せて悦んでいるのだろう。聴いているこちらまで溶けていってしまいそうな、甘ったるい詞世界が特徴。この曲ほど生々しさを持った曲は今までには無かった印象がある。


「インテリア」は今作では唯一となる、横山達郎が作曲を担当した曲。いつになくシリアスなイメージを持ったドラムの音から始まるイントロが特徴的。それ以降はいつも通りの清涼感溢れるギターサウンドが前面に出る。哀愁を帯びたメロディーが展開されているが、サビは特に憂いを含んだメロディーである。それでもキャッチーな仕上がりとなっているのは横山達郎のメロディーメーカーとしての実力の現れと言える。歌詞は恋人と別れた後の男性の感情を描いたもの。二人住んでいた部屋から恋人がいなくなると、華やかなインテリアもどこか寂しげなオーラを放つのだろう。全体的に虚無感や喪失感の漂う詞世界となっている。そのためか、主人公の男性になったような感覚で聴ける曲だと思う。


「孤独なCowboy」はここまでの流れを変えるような、爽快なポップロックナンバー。アコギとエレキギターが絡み合うサウンドはRAZZ MA TAZZならではの得意技である。楽しそうに演奏しているメンバーの姿が浮かぶような、生き生きとしたバンドサウンドが展開されている。流れるようなメロディーや勢いのあるバンドサウンドは聴いていると思わず身体が動いてしまう。歌詞は他人を愛することの難しさが描かれた、メッセージ性の強いもの。「のどをうるおすオアシス求めるように いつも愛されたがっていても 自由に他人を愛せないもどかしさ知っている」という歌詞が好き。タイトルのフレーズは何かの例えなのだろうが、管理人には分からない。一人で生きている男性のことなのだろうか?。今作のアルバム曲の中では群を抜いてポップな曲なので好き。


「冬の自画像」は重厚なミディアムバラードナンバー。分厚いバンドサウンドはRAZZ MA TAZZの曲には珍しく、骨太なイメージがある。無骨な感じのギターサウンドが展開されているのは中々にインパクトがある。このバンドは透き通るようなギターサウンドが魅力なのだが、この曲からはその魅力はあまり感じられない。歌詞は難解で意味はよく分からない。「冬の自画像」は自らの欠点のことだと解釈している。眠ることで欠点から逃れようとしているのかもしれない。とりあえず、プラスの意味ではないと思う。「今すぐ さあ 眠ろう 暖かい毛布にくるまって さあ 眠ろう 固く閉じたままの繭のように」というサビの歌詞は脱力感や虚無感に満ちている。ダウナーな雰囲気に飲み込まれそうになってしまう曲である。眠い時に聴いたらそのまま眠ってしまいそう。


「Room」は先行シングル曲。テレビ東京系番組『クイズ赤恥青恥』のエンディングテーマに起用された。優しく爽やかなメロディーが心地良いミディアムポップナンバー。澄み渡る空のようなギターサウンドや聴き手に語りかけるような阿久延博のボーカルは聴いていると安心感がある。歌詞は恋人へのメッセージのようになっているもの。秋が近づいた頃が描かれている。「いつか君を幸せに出来そうな朝を探そう」「お互いの痛みを 試すのはやめよう」といった暖かいメッセージもあるのだが、「にせものの花」「優しさというナイフ」といったフレーズは闇や迷いを感じさせる。とはいえ曲はRAZZ MA TAZZの王道そのもの。彼らの曲に溢れている、優しさや温かみを実感できる曲だと思う。


「MESSAGE〜遠い君に贈る歌〜」は先行シングル曲。テレビ朝日系ドラマ『Tears』のエンディングテーマに起用された。RAZZ MA TAZZのコンサートの最後に演奏されていた曲のようで、ファンの期待に応える形で音源化されたという。今作の中では唯一の今井裕が編曲に参加した曲。イントロではストリングスが使われており、いつになく壮大なロックバラードとなっている。力強さと繊細さを併せ持ったバンドサウンドとストリングスの絡みは絶品。歌詞はタイトル通り「君」へのメッセージのようになっている。「愛とは目の前の当たり前を守り続けてゆけること」という歌詞が好き。 優しさと強さに満ちた曲であり、これまでファンに大切にされてきた曲だというのも頷ける。


「Sanctuary-Life goes on-」は今作のラストを飾る先行シングル曲。フジテレビ系番組『うちくる』のエンディングテーマに起用された。実質的な今作のタイトル曲でもある。イントロ無しでいきなり始まる構成。RAZZ MA TAZZならではの爽やかなアコースティックサウンドが展開されているのだが、メロディーはどことなくダウナーな感じ。それでもサビはキャッチーなので、サビに辿り着くと明るい光が見えたような感覚になる。歌詞は美しい思い出を振り返りつつも、今を生きていくことを誓う…というような内容。「乾いた風のむこうに 新しいシーンが果てしなく続いてゆく」という歌詞が好き。解散して、メンバーそれぞれが新しい道を歩いて行ったことを表現しているかのような歌詞だと思う。 あまりにも美しい終わり方なので、逆に余韻が残らない。


あまり売れた作品ではないので中古屋ではたまに見かける程度。全編通して爽やかでどこか切ないポップスを楽しめる作品。ラストアルバムだけあって、これまでの作品には無かったような異色なイメージの曲もあるのが特徴。解散してしまった以上はどのように妄想しても虚しいだけなのだが、今作を聴くと、次のアルバムはどうなっていたのだろう?と考えてしまう。本当に解散が惜しまれる。

RAZZ MA TAZZは現在となってはマイナーなバンドという印象が否めないが、楽曲の良さはどのメジャーなバンドにも劣らないと思っている。スピッツやMr.Children、L⇔R、FIELD OF VIEWといったバンドが好きなら是非とも聴いてほしい。ポップでどこか切ない曲の数々はJ-POPが好きな方なら誰もが好きになれるはず。RAZZ MA TAZZの楽曲たちは今でも色褪せずに輝き続けている。今回の記事を読んで興味を持っていただいた方は是非とも作品を入手して聴いてみてほしい。出費以上の満足感があるはず。

★★★★☆